株式会社和田珍味 様

株式会社和田珍味

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

財務・販管・給与を一元化した
“神の国”のふぐ加工会社

島根県中部の海沿いに位置する大田市でふぐの加工・販売を手がける和田珍味。近隣の下関市や浜田市といった地域ブランドの外にありながら、品質重視の姿勢が高い評価を受けている。そんな同社が2年前に大規模合理化策を実践。和田信三社長、竹下税理士事務所の楫(かじ)伸税理士、稗田雅美監査担当に話を聞いた。

──先代(和田正治氏)が和田珍味の創業者だとか。

和田信三社長

和田信三社長

和田 漁師から塩干物の製造・販売へと転換したのは先々代に当たる祖父ですが、昭和の中期にふぐの加工を手がけたのは父です。当時は、この沖に見える「神島」周辺でふぐ漁が盛んになり、30~40年代の最盛期には45隻ほどの漁船がはえ縄漁でふぐを獲っていました。しかし、漁獲量が増えると当然、価格が落ちるので、父が加工を手がけるようになったわけです。この辺りでふぐの加工をはじめたのは当社が初めてでしょう。

──加工のノウハウはどこから?

和田 浜田市の島根県水産技術センターに通い、いろいろ教えていただきながらいまの主力である「ふぐの味醂干(みりんぼし)」を開発しました。私の代になってからは、もっと緊密に協力し合い、一夜干し、薫製、たたきなど、ほぼすべての商品が同センターのご指導を受けて開発されています。

──材料にこだわりがあるとか。

和田 大田市は、山口県の下関市、あるいは同じ島根では浜田市に比べ、ふぐについての知名度がありません。百貨店などに営業に行っても門前払いを食う場合さえあります。そのため、輸入もの全盛の時代にも現在と同じく鮮度の良い国産のふぐを使用し、丁寧につくっていました。他社と差別化しないと、競争の土俵に上がれなかったのです。

──直販へと進出されたわけは?

和田 先々代、先代と行商をやっていて、いつかは自分の店を持ちたいという夢を持っていました。また、私にとっては、「和田珍味」というブランドをつくりたいという思いがあった。繰り返しますが、大田には地域ブランドがないので卸の業態だけでは勝てません。そこで、平成11年にここ五十猛(いそたけ)に本店を出店。20年に石見銀山、25年に出雲大社の参道に福乃和という店を出店しました。これら店舗で、お客さまの声を直接聞いたことが、われわれのものづくりの意識を劇的に変えたと思っています。

──ブランドづくりという点ではさまざまなマーケティングも手がけておられます。

ふぐの味醂干

ふぐの味醂干

和田 五十猛という地名はスサノオノミコトの息子、イソタケルノミコトに由来すると伝えられています。神島は、この親子が朝鮮半島から上陸したところなのです。そんな神秘性を生かさない手はありません。これを大きくアピールし、神々が上陸した地・五十猛というテーマで街歩きツアーも定期的に開催しています。

──商品開発への意欲も高いようですね。

和田 次々に新しい試みをしないで立ち止まったら、下関などの「本場」のブランド力に負けてしまいます。そのため、ふぐのみりん干しだけではなく、最近ではのどぐろの一夜干しが人気ですし、雑炊スープやお茶漬けといったひとひねりした商品も高く支持されるようになってきました。

──最近、新しい発見もあったらしいですね。

和田 「うず煮」という商品です。出雲大社の祭祀(さいし)を執り行う出雲国造家で代々受け継がれてきた、ふぐを使った特別なおもてなし料理なのですが、最近まで地元の人すら知らなかったものです。これを手軽に味わえるレトルトタイプの商品にしました。この料理の存在は、取引先の出雲大社に詳しい方から教えていただいたのですが、それがちょうど出雲大社の参道に出店しようとしていた時期だったのも不思議な縁のような気がします。

各管理システムを連携し業務の効率化を実現

──2年前、平成26年の秋に大幅な設備投資と合理化をされたとお聞きしました。

広々とした店内

広々とした店内

和田 工場を二十数年ぶりに全面改装しました。パネルをはり替え、空調を完備。休憩室などもリニューアルしました。これはHACCPへの対応と、労働環境の改善という2つの意味があります。また、同時に竹下税理士事務所の指導で、財務や勤怠のシステムも一新しました。

楫税理士 以前は販売管理システムに、若奥さま(社長夫人)が入力されたデータを出力し、さらにそれを、他社の財務管理システムに打ち直すという作業を行っていました。しかし、それではあまりにも無駄が多く、手間がかかるので、『FX4クラウド』を導入し、その販管システムのデータがそのまま財務管理システムに連動する仕組みをつくりました。これにより、社長に「タイムリーに経営戦略を考えていただくためのデータ提供体制」ができつつあると思っています。

和田 もともと3店舗と工場の4部門で管理しているのですが、2年前までは工場は私の母親が手書きで管理していました。『FX4クラウド』の導入で、これらが一元化できたという印象です。また、工場ではアマノ社の勤怠管理システム『TimeP@CK(タイムパック)』を導入していただきました。これも大きかったと思います。

──どのように?

稗田雅美監査担当 以前は大奥さま(社長の母親)が手書きで計算したデータを他社の給与計算ソフトに打ち直すという作業が行われていました。ところが、手書きデータには誤りがつきものだし、また、打ち直す手間も大変です。なので、『タイムパック』とあわせて、データ連動が可能なTKCの給与計算システム『PX2』を導入して、一気に合理化をしていただきました。

──勤怠→給与計算→財務という流れができたわけですね。

楫 伸税理士

楫 伸税理士

 はい。工場のパート従業員は、社歴やスキルによって時給が違いますし、また、残業の割増し計算なども『タイムパック』で設定しておけば間違いありません。そのデータがそのまま『PX2』に流れ給与計算を行い、さらに自動仕訳されて『FX4クラウド』に連携するわけですから、すごい合理化です。

和田 2年前までは黒板に各人が出退勤をチョークで書くという超アナログなやり方でしたから……。それでは誤りも起きますよね。いまではICカードをピッとかざせばいいだけなので正確だし、従業員の負担も減りました。母親が、ちょうどその頃けがをして、業務から離れなければならなくなったのですが、もし、システム化をしていなかったら大変なことになっていたと思います。

──ここまでの大規模なシステム変更を決断された理由は?

和田 当社は石見銀山まで車で15分、出雲大社までは45分の絶好の場所にある一方で、今後は高速道路の開通などによる環境の変化も予想されます。そんな状況のなかで生き残るには、このロケーションを有効に使って、進化し続けなければなりません。そのために、財務も合理化し、タイムリーに判断できるデータを導き出す体制をつくる必要があると考えました。また、バックヤードの合理化・効率化は人材の有効活用にもつながります。

稗田雅美監査担当

稗田雅美監査担当

稗田 近い将来、高速道路が開通するということでマイナス面を強調する経営者の方が多いなか、和田社長の積極性には目を見張るものがあります。ここへ来て話をうかがうと、いつも楽しい気持ちになるんです。

和田 高速が通るといっても、石見銀山と出雲大社の店舗にとっては、観光客の増加が見込めてむしろプラス材料ですからね。

──今後はいかがでしょう。

和田 この本店をどういう風に変えていくかが、当社の行く末を決めるような気がします。そのために商品開発を機動的に行い、ニーズに対応する品ぞろえをしていく必要があります。また、小売りの比率ももう少し大きくしていきたいですね。もちろん従来通り卸事業にも力を注ぎますが、直販は価格決定権を持てるので、利益が計算できます。幸い息子も後継者として控えていますから、長い目で見た戦略をじっくりと考えていきたいと思っています。 

企業情報

株式会社和田珍味

株式会社和田珍味

創立
1923年
所在地
島根県大田市五十猛町1559-3
売上高
約5億円
社員数
31名
URL
http://wadachinmi.co.jp/honten/

顧問税理士 竹下 績
竹下税理士事務所

所在地
島根県大田市大田町大田イ70-5
TEL
0854-82-2181
URL
http://takeshita-zeiri.tkcnf.com/

『戦略経営者』2016年9月号より転載)