大新産業株式会社 様

大新産業株式会社

自動化が進む大分工場

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

7工場の本社一括管理で
経理業務が劇的に効率化

国内7拠点でプラスチック成形部品を製造する大新産業。金型設計から部品組み立てまでの一貫生産と品質の高さで大手メーカーからの信頼も厚い。岩﨑誠司社長に菅野栄子取締役、盛泉総務課主任、山岸崇裕顧問税理士を交え、『FX4クラウド』導入で実現した経理業務の大幅な合理化について聞いた。

プラスチック成形一筋54年精密部品で高い品質を追求

──製品や製造拠点の現状についてご説明ください。

岩﨑 当社は1964年の創業当初からカメラや事務機の精密部品を手がける、プラスチック成形一筋の会社です。トナーカートリッジ部品が約6割、カメラの部品が約2割、その他プリンター本体の部品、スキャナー部品などといった売り上げ構成で、子会社を含めた製造拠点は伊勢原工場(神奈川県伊勢原市)、福島工場(福島県伊達市)、鏡石工場(同鏡石町)、阿見工場(茨城県阿見町)、茨城工場(同稲敷市)、大分工場(大分県大分市)、宮崎工場(宮崎県木城町)の7拠点です。また成形機は合計で約90台(型締め力7~650トン)を保有しています。

──生産体制の特徴や強みについて教えてください。

岩﨑 当社はプラスチック成形がメインですが、成形に付随する印刷や塗装などの2次加工、部品数点からなるサブユニットの組み立ての工程までを行えるのが強みとなっています。さらに2011年には、難易度の高いカメラや事務機部品の金型で高い技術力をもつ企業を100%子会社化し、金型の設計製作からサブ組み立てまでの一貫生産体制を整えました。

──売り上げ拡大に向け取り組んでいることは?

岩﨑 取引先の大手メーカーが、当社のような下請け企業に対し「バリューエンジニアリング(VE)」の考え方に基づいた「VE提案」を積極的に求めるケースが多くなっているため、顧客満足度を高める提案型の経営を心がけています。例えば部品に使用する樹脂は発注会社が通常指定しますが、当社で検討した結果、機能を満たしたうえでより安価に調達できる代替材があれば、積極的に提案するようにしています。コスト低減につながるこうした「VE提案」が採用された場合は取引先から評価され、受注の機会が増えるからです。

──プラスチック成形業界もグローバルな競争が激しくなっていると思いますが……。

岩﨑 価格では安価な海外勢には勝てないので、納期や品質で対抗するしかありません。特に品質の追求については、極めて高い目標である「クレームゼロ」の実現を会社方針に掲げ、全社的に注力しています。
 例えば金型のゲート部(樹脂の入り口)に異物が詰まって、製品の一部に樹脂が回らない「ショートショット」と呼ばれる不良成形品を外に出さないよう細心の注意を払っています。万が一こうした「重欠点」の部品を出荷してトナーもれなどが発生してしまった場合、会社存続の危機も招きかねない大変な問題になってしまいますから。従って検査工程が非常に重要で、当社では小物以外のほとんどについて全数検査を行っています。一方で最新の大分工場では、カメラで自動判別して基準を満たしたものだけをロボットがつかんで運ぶ検査・梱包(こんぽう)工程の自動化も進めており、最新技術を使った検査レス化に向けた取り組みも推進しています。

──品質第一の姿勢を大事にされているのが伝わります。

岩﨑 よく社員に話をするのは、「体質と体制がよくなれば品質もよくなるし、すべてがうまくいく」ということ。ここでいう体質とは、品質を守ろうという社員の意識のことで、体制とは帳表類の整理や作業の標準化、仕事の仕組み作りのことを意味します。これらの実践を通じた日々の努力で常に高い品質を目指すことが、会社の力を強くしていくと信じています。

データ連携フル活用で1カ月の作業が一瞬に

──山岸先生と顧問契約を結んだ経緯について教えてください。

菅野 私は以前から、「年に1回の申告書作成や、税務調査時の立ち会いだけではなく、経営に関するいろいろな相談に乗ってくれる提案型の税理士が近くにいると助かるな」と思っていました。企業買収による拠点増加で経理業務がより複雑になったタイミングで、社長に「税理士を変えたい」と相談。その後、紹介を受けた税理士のうちの一人が山岸先生だったというわけです。若く意欲的で、物事をはっきりと指摘してくれる人柄と、吸収した子会社が使っていた『FX2』を見て「これはいい」と思っていたことから、2012年4月に山岸先生と顧問契約を結びました。『FX4クラウド』は翌2013年1月から利用を開始しています。

──早い段階からの導入をすすめられた理由は?

山岸 ひとことでいうと、それまでがアナログで非効率だったからです。他社の会計ソフトを拠点ごとにスタンドアローンで使っている状態で、それぞれの工場が作成したデータを本社に送付し、それを本社の経理で統合集計するという手間のかかる作業が避けられない体制でした。あまりの業務量に、特に本社の経理部は残業と休日出勤が当たり前のような状況で、「『FX4クラウド』を活用すれば必ず効率化します。信じてください」とお願いしたのを覚えています。

菅野 以前は各工場で入出金と支払い業務をしており、それらのデータを各工場が1カ月ごとに本社に送っていたので、経理の状況が1カ月たってからでないと分からない状況でしたが、『FX4クラウド』の導入でリアルタイムの把握と本社による一括管理が可能になりました。同じ取引でも各工場で異なる科目を使っていたりしましたが、『FX4クラウド』によって見える化が実現したことにより、共通の科目を使うよう電話ですぐに指導できるようになり、経理業務の統一化も急速に進展しています。何よりどこにいてもデータを閲覧できるし、入力できるというのが素晴らしいですね。

──「仕訳読込テンプレート」機能を活用されているとか。

 売り上げから仕入れ、支払いに至るまですべての局面で活用しています。例えば6月の実績では売り上げで1万5983件、支払いで347件のデータ連携を行いました。仕入れや買掛金、未払い費用についてもデータ連携を行い、業務効率の改善に努めています。

──売り上げのデータ連携の数が多いですね。

 日々の製品部品ごとに売り上げデータを連携させているからです。以前はエクセルファイルにフィルターをかけ、一つ一つの機種名をキーワードに抽出してそれを転記して資料を作成していましたが、山岸先生から「口座別管理を活用することによって機種別管理が可能になる」とアドバイスいただき、販売管理システムとデータ連携させるようになりました。決算時に1カ月かけていた作業が、今ではボタンひとつ押せば一瞬で済んでしまいます。

──「銀行信販データ受信機能」についてはいかがですか。

 メインバンクとの間の7月の入出金データでは、190件行いました。一度仕訳入力すると学習機能によって選択肢のなかから選ぶだけでよくなるのが便利なのと、数字の入力間違いによって残高が合わないという事態を避けられるのでとても助かっています。電話料金や電力料金など毎月同じ名称で引き落とされるものについては、すべて本社の口座に一元化し、効率化できました。

──部門別管理はどのようにされていますか。

菅野 本社と7工場を合わせた8事業所に分け、1事業所それぞれに総務、資材、成形、QA(品質管理)、技術、組み立ての部門を置いており、縦串と横串で業績を比較することが可能になっています。工場ごとの比較はもちろん、例えば成形部門全体の業績推移も一目で確認できるので、非常に分かりやすくなったと感じています。

「MR設計ツール」駆使し休日出勤残業ゼロを実現

──独自の帳表が作れる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」は利用していますか。

 月次の収支報告書はもちろんのこと、「MR設計ツール」を活用して作成している資料は多岐にわたり、数えたらきりがないくらいです。製品単価を見直すために半期ごとに行っているレート計算でも、特定の勘定科目・部門の数字をすべて自動的に吐き出すことができるので、大幅に作業が楽になりました。8事業所ごとにとにかくいろんなパターンの資料を作成しているなかで、部分と全体の合計が合わなくなることが多々あったのですが、このツールをうまく活用することで、そうしたことがなくなりました。これは非常に画期的なことです。

菅野 以前は数日かけて決算内訳書を作成していましたが、盛主任が「MR設計ツール」を駆使して決算内訳書を一人で完成させてしまいました。『FX4クラウド』の活用で経理業務全般の効率が大きく改善したため、以前は私を含め本社の経理業務は2~3人が担当していましたが、現在は盛主任が独りで大半の処理を行っています。残業や休日出勤もほとんどゼロになり、空き時間に現場の応援にいってもらうこともできるようになりました。これも山岸先生と監査担当の横川さんが全面的にサポートしてくれているおかげと感謝しています。

──今後の抱負を。

岩﨑 長年一番頭の痛かった後継者問題がようやく解決して一安心しています。今年のはじめに思い切って息子に「継がないか」と持ちかけたところイエスと言ってくれたのです。コンビニエンスストアの販売管理システムなどにかかわるITの仕事をしていましたが、退職して8月に本社採用しました。当社生産拠点のなかでも総合力の高い宮崎工場で2~3年修行させた後、各拠点で経営の実際を学んでもらう予定です。資質はあると思うので、10年くらいかけてじっくり事業承継を進めていきたいですね。

企業情報

大新産業株式会社

大新産業株式会社

設立
1964年8月
所在地
神奈川県伊勢原市鈴川5-6
売上高
約37億円
社員数
約200人

顧問税理士 山岸崇裕(税理士・公認会計士)
税理士法人山岸会計

所在地
東京都新宿区新小川町1-14
リープレックスB’s 2階
URL
https://www.zyamagishi.jp/

『戦略経営者』2018年9月号より転載)