有限会社アドバンク 様

有限会社アドバンク 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

高付加価値経営を実現する
印刷会社の新しいカタチ

京都府に本社を置くアドバンクは、食品スーパー向けの「新聞折り込みチラシ」に特化した印刷会社である。その事業領域は単なる印刷業だけにとどまらず、チラシデザインの制作や、チラシ連動型のスマホアプリの開発までおよぶ。同社の渡邉功社長(46)にTKCの『FX4クラウド』を活用した財務戦略について聞いた。

アナログとデジタルのクロスメディア戦略

──印刷業を営まれているとか。

渡邉功社長

渡邉功社長

渡邉 食品スーパー向けの折り込みチラシに特化した印刷を手がけています。京都市内にある本社の1階が「製造部」で、ここで印刷を行い、2階の「制作部」でチラシデザインの制作をしています。

──主な顧客層は。

渡邉 1~3店舗を運営しているような小規模スーパーを軸としています。エリアとしては、京都50%、大阪30%、残りが奈良や兵庫などの近畿圏です。

──現在の経営環境についてお聞かせください。

渡邉 チラシ印刷の価格が下落しており、厳しい経営環境にあります。スーパー各社も広告宣伝に以前ほどお金をかけられない状況のなか、チラシ印刷会社同士の価格競争が激しさを増しています。

──そうしたなかでの経営戦略は?

渡邉 価格競争のうずに巻き込まれてしまうと、結局は自分の首をしめることになりかねません。だから安易に値下げをするのではなく、印刷のほかにプラスアルファの特典をつけることで、食品スーパー各社との関係性強化を図っています。

──特典というと?

渡邉 例えば、チラシ印刷の仕事をすべて当社に任せてくれたスーパーに対し、自社開発したスマートフォンアプリのサービスを無償提供しています。

──そのアプリとはどのようなものですか。

渡邉 『コラボレ』という名前の、来店客と店側の双方にメリットをもたらすアプリです。スーパーはこのアプリを店舗ごとに用意して、来店客にポスターなどを通じてインストール(登録)を促します。
 このアプリを自分のスマホに取り込んだ来店客は、最新のチラシ情報を手元で確認したり、タイムセールのお知らせをプッシュ通知で受け取れるようになるほか、来店するたびに買い物時の支払いに使える「ポイント」が加算されるといった特典が得られます。

──一方で店側のメリットとしては、どんなものがありますか。

渡邉 アプリ登録を通じて取得した来店客の居住地域、年齢、性別などのデータをマーケティングに役立てられるようになります。アプリによって知り得た来店客の居住地域と、チラシの配布地域が大きく食い違っていたとしたら、それは広告予算の無駄遣いでしかない。こうした分析をMAPデータを使って簡単にできるところに『コラボレ』の特徴があります。
 大手や中堅規模のスーパーなら、ポイントカードを用いて、こうしたマーケティング分析をしているのでしょうが、小規模スーパーの場合はそもそもポイントカードを作ること自体がそう簡単なことではありません。しかし当社の『コラボレ』を利用すれば、ポイントカードを作らなくともさまざまなマーケティング分析ができるようになります。

──印刷会社の枠を超えた、魅力的なサービスですね。

渡邉 アナログ(折り込みチラシ)とデジタル(アプリ)を融合したクロスメディア戦略を資金力の弱い小規模スーパーが独力でやるのはなかなか難しい。それを私たちがお手伝いすることで、ウィンウィンの関係を築いていければと思っています。

──『コラボレ』を導入している店舗数は現在どのくらい?

渡邉 スタートしてから3年間でおよそ70店舗まで増えました。アプリの個人ユーザー数は1万人を超えています。ちなみに、『コラボレ』のサービスで成果を上げていることが評価され、2016年に「攻めのIT経営中小企業百選」(経済産業省)に選ばれました。印刷会社としては初ということで、たいへん名誉に感じています。

バックオフィス業務の効率化促す各種機能を活用

──『FX4クラウド』を導入した経緯をお聞かせください。

 
チラシとアプリのクロスメディア戦略を提案

チラシとアプリのクロスメディア戦略を提案

渡邉 以前はTKCの『FX2』を使っていましたが、2017年7月に、『FX4クラウド』に切り替えました。
 会社から離れた場所からでもパソコンで最新業績を見られるようにしたかったのが、導入に踏み切った一番の理由です。わざわざ本社に出向かなければ最新業績が見られないのでは、タイムラグが生じてしまう。これを解消するためにクラウド型の会計システムである『FX4クラウド』を導入する必要があったのです。

村地常夫・顧問税理士 渡邉社長はTKCシステムのさまざまな機能を積極的に活用されています。今年10月から提供がはじまった「スマート業績確認機能」にもさっそく関心を示されています。

渡邉 スマートフォンで手軽に業績確認できるようになったのは、私にとっては実にありがたいこと。当社は月末締めなのですが、毎月20日くらいから今月の売り上げ目標(単月予算)を達成できるかどうしても気になってしまう。これからはスマホを見れば、それがすぐに分かります。場合によっては、「今月は数字が目標に足りていない。頑張って仕事を取ってこい」と、その場で営業スタッフに電話をかけてはっぱを掛けるようなケースも出てくるかもしれませんね(笑)。

村地 また渡邉社長は、バックオフィス業務の効率性を追求していて、仕訳入力作業をもっと効率的にできないかと考えていました。『FX4クラウド』はそのための重要なツールになっています。

──その辺りのことを詳しく教えてください。

渡邉 少し前までは、売掛金のデータなどを販売管理ソフトと会計ソフトの両方に打ち込んでいました。同じ作業を2回繰り返すのは、無駄でしかありません。そこで、販売管理の機能も持たせた自社システムを構築したのを機に、『FX4クラウド』の「仕訳読込テンプレート」を使って、データ連携(仕訳連携)ができるようにしたのです。これによりデータの〝二度打ち〟の手間がなくなり、経理担当者の負担がだいぶ軽減されました。

──同じく仕訳入力作業の省力化が期待できる、「銀行信販データ受信機能」については活用されていますか。

渡邉 はい。この機能も、仕訳入力の省力化という意味で大きな役割を果たしています。インターネットバンキングの取引データ(入出金)などを自動収集し、そのデータをもとに仕訳を簡単に計上できるようになりました。今では、貸借のどちらかに預金科目のある取引の8~9割は手入力しなくて済んでいます。

毎月の業績検討会で限界利益の推移などを確認

──『FX4クラウド』の帳表で、頻繁に目を通しているものがあれば教えてください。

本社1階の「製造部」

本社1階の「製造部」

渡邉 《変動損益計算書》ですね。そこに記されている売上高や限界利益(粗利)が、期首に策定した単年度計画(予算)に比べてどうなのかを必ず確認しています。

村地 毎月開催している業績検討会では、《変動損益計算書》をもとに話し合っています。その月の予算と実績とを比較して、目標に届かなかった科目は何が原因なのかを探ったり、今後どうしていくべきかの対策を考えたりします。

──とりわけ意識している数字は何ですか。

渡邉 限界利益率(粗利率)を特に意識しています。限界利益率が下がらない状況にしておけば、会社を健全な状態に保てると考えています。
 そのためには、業務の〝効率〟をいかに高めていけるかが重要なカギを握ります。国の補助金を利用して、印刷関連の機械やチラシ制作のためのシステムなど、ハードとソフト両面の設備投資を積極的に行っているのはそのためです。例えば、人の手でやっていたインクの色調合・粘度調整を自動でやってくれる「油性インキ自動計量装置(RW─1)」を導入し、より効率的なチラシ印刷を可能にしたのも、それら取り組みの一つです。

──営業戦略のうえで安易な値下げを避けているのも、限界利益率を下げないためなのでしょうか。

渡邉 ええ。どうしても以前より値段を下げてほしいという要請があった場合には、従来よりも薄い用紙に印刷することを提案したりすることもあります。用紙を薄紙化すればその分だけ、原価コストを下げられるからです。当社には、「LED─UV乾燥装置」をオフセット輪転機に取り付けることで、薄紙でもシワを発生させることなく印刷できる特殊技術があります。この技術を使えば、ある程度品質を保ちながら薄紙化することができます。

──薄紙での印刷はどのあたりが難しいのですか。

渡邉 従来のように印刷したものをドライヤーで乾燥させる方法では、薄紙だとどうしても波打ったりシワになってしまいます。それをLEDを用いた特殊な手法で乾燥させることによって、そうした課題を克服しました。これも、競合他社と戦っていくうえでの大きな差別化要素になるでしょう。

──今後の展開はいかがですか。

渡邉 「働き方改革の指針」に従い、残業時間の削減に向けて今年6月から取り組んでいるので、その活動をさらに推進していきたいと考えています。交代勤務、時差出勤などできることから取り組み、2020年までに1カ月あたりの残業を月40時間以下にすることを目標としています。従業員にとって働きやすい環境を作ることが、今後さらに会社を発展させていく上での重要なカギを握ると見ています。

企業情報

有限会社アドバンク

本社2階の「制作部」

有限会社アドバンク

設立
1996年6月
所在地
京都府京都市南区吉祥院嶋野間詰町52
売上高
4億8,000万円
社員数
26名
URL
http://adbank.co.jp/

顧問税理士 村地会計事務所
税理士 村地常夫

所在地
京都府京都市伏見区瀬戸物町732番地
ピックドワンビル3F
URL
https://murachi-jimusyo.tkcnf.com/

『戦略経営者』2018年11月号より転載)