株式会社日本オーエー研究所 様

株式会社日本オーエー研究所

奥山宏昭社長の左隣が杉田雪絵監査役。さらに左隣が尾形朋輝監査役

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

財務データのクラウド管理が
“全社員参加型経営”の土台に

公共系、法人系、金融系など幅広い分野のシステム開発を手がける日本オーエー研究所。同社の奥山宏昭社長は「全社員が計数管理意識を持ち、経営者視点で業務を遂行する」ために『FX4クラウド』を導入、管理会計のみならず、従業員教育にも活用しているという。

奥山宏昭社長

奥山宏昭社長

 昭和58年の設立以来、長きにわたり官公庁、自治体、教育機関といった公共系のシステム開発を手がけてきた日本オーエー研究所。これまでに、「国税電子申告・納税システム(e─Tax)」や「有価証券報告書電子開示システム(EDINET)」、「航空交通管制システム」などの開発に携わるなど、その実績は折り紙つきだ。

 同社が公共系のシステム開発に取り組み始めたのは、大蔵省(現・財務省)主導で行われた「貿易・通関業務のシステム化事業」に関わったことがきっかけである。

「大学卒業後、商社系のアパレル企業に入社し、東南アジア向けの貿易・通関業務を担当していました。いわば、海外メーカーとの調整役です。当時は事務処理がすべて手作業で、中には100ページを超える量の書類を、全て手書きで作成したこともありました。その後、国の主導で貿易・通関業務がシステム化されることになり、この事業に参加して事務処理の効率化に貢献したいという思いから当社を設立しました」(奥山社長)

 その後も、官公庁が展開するシステム化事業に積極的に携わることで、業界内で一目置かれる存在へと成長した。そのうえ、さまざまなプログラミング言語に対応し、顧客のニーズをしっかりと形にする技術力の高さも評判を呼び、今では民間企業や金融機関向けのシステム開発も請け負うなど、活動の幅を広げている。ちなみに、社名の「オーエー」とはOffice Automationの略で、Officeとは「省庁」を意味している。

 一方で、航空管制官のインストラクターを国内の空港に派遣するという、システム開発とは領域の異なる事業も展開している。

「公共系のシステム開発に長年携わってきましたから、公共事業に対する関心を常に高く持っています。航空管制官のインストラクター派遣事業を手がけたのも、政府の入札を目にしたことがきっかけでした。手を挙げる団体が他になかったので、じゃあ当社でやってやろうじゃないかと思ったのがスタートです」(奥山社長)

 奥山社長の関心は教育分野にも向けられている。IT規格の標準化を提言する米国の民間団体「CompTIA」が展開する「CompTIAスカラーシップ・プログラム」に、協賛企業としていち早く名乗りを上げた。このプログラムは、協賛企業がCompTIAの受験料を一部負担することで、資格取得を目指す学生の受験機会を無償で提供するというもの。IT業界の発展のためには、このような教育事業への参画も欠かせないと奥山社長は語る。

 海外展開にも積極的に取り組んでいる。最近では、ベトナムの国家プロジェクトである貿易・通関システムの開発を手がけるほか、モンゴル国際技術大学の学生を受け入れ、プログラミング教育を行うとともに、実際に社員としてプロジェクトにも参加させている。研修が終われば本国に帰還し、技術者として活躍することが期待されているという。

“経営者意識”を醸成する

奥山章雄税理士

奥山章雄税理士

 同社の顧問である奥山章雄税理士が「寝ても覚めても会社のことを第一に考える〝経営の人〟」と表現する社長の手腕は業績にも反映されており、9年連続で増収を記録している。背景には、統合型会計情報システム『FX4クラウド』を活用した「ガラス張りの経営」がある。

「長らく『FX2』を利用していましたが、会社の規模を拡大するにあたって、これまで以上に管理会計を意識する必要があると感じていました。そんなとき、奥山先生から『FX4クラウド』の提案を受けたのです」(奥山社長)

 奥山社長が目指したのは、財務情報の「見える化」だ。かねてより、売上高や限界利益などの数値を全社員に公開していたが、科目や数値の意味するところを理解している社員は少なかった。

 そこで『FX4クラウド』の特長である「財務データのクラウド管理」を活用し、全社員が会計数値を常に閲覧できる体制を整えることで、会社全体の計数管理能力の向上に取り組んだ。

「社員全員が高い計数管理能力を備えて日々の業務に取り組んでもらえるように、全部門分のIDとパスワードを設定しました。閲覧権限は特に設けていないので、部門長であろうが新入社員であろうが、全員が業績を把握することができます」

中村浩記監査担当

中村浩記監査担当

 最新業績を元に全社と自部門の現状を認識し、打ち手を現場でしっかりと考えて行動に移してほしい。そんな奥山社長の思いを『FX4クラウド』が形にしたのである。この取り組みが功を奏し、今では計数管理意識が現場レベルにまで浸透したという。

「これまではトップダウンの予算を『継続MAS』で作成していましたが、今年度からは予算作成を各部門に委嘱しました。奥山社長が目指してきた計数管理意識が社内に浸透し、会計数値を生かす力が現場レベルでついたと判断したからです。今後は、各部門からボトムアップで上がってきた予算を検証した上で全社予算に集約し、『継続MAS』に落とし込む予定です」(中村浩記監査担当)

 これらの数字を元に、毎月の取締役会にて現状報告と打ち手が話し合われる。予算に対する乖離(かいり)や、各部門の現状を議論する上で、『FX4クラウド』は役に立っていると奥山社長は話す。

MIS導入で融資獲得

金融機関からの賞状や記念品が並ぶ

金融機関からの賞状や記念品が並ぶ

 金融機関に対して決算書をオンラインで提供する「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」も、サービス開始当初から利用しており、決算書はもちろん、試算表も月次で提供している。

「MISを導入することで、月次決算が終わるとすぐにデータを提供できるようになったので、金融機関との関係がさらに良好になりましたね。金融機関も、当社の現状を今まで以上に詳しく理解できるようになり、より具体的な提案をしてくれるようになりました。実際、社債の発行など、成果にも結びついています」(奥山社長)

 MISは、取引金融機関が展開する「働き方改革融資」というユニークな融資を受けるにあたっても、効果を発揮した。

「働き方改革融資とは、企業の働き方改革の取り組みを診断し、その結果と今後の取り組み内容に応じて、融資を受けられるという商品です。当社では、産休・育休制度はもちろん、定時退社の推奨や外部研修費の補助を積極的に行うなど、働きやすい職場環境の整備に努めています。この取り組みが評価され、今後、働き方改革の担い手として期待できる〝働き方改革のグロース企業〟として認定を受け、融資を受けることになりました。これも、MISを通じて、金融機関と良好な関係を構築できたおかげだと感じています」(奥山社長)

さらに高みを目指す

 何事も自分で体験してみないと気が済まないと話す奥山社長。聞くところによると、あらゆる会計システムを実際に操作したことがあるという。

「ソフトウエアの展示会に参加することが多いので、この機会を利用して、会計ベンダーのブースに立ち寄ってはシステムに触れるようにしています。最近よく耳にするようになった『クラウド会計システム』も含め、ほとんどの会計システムを触ってみましたが、適法性や操作性、管理会計への活用などあらゆる部分に関して、TKCに勝るシステムはないと思います。何より、〝会計を経営に生かす〟という思想は、TKCのシステムしかありません。そういう意味では、『FX4クラウド』は経営者の右腕となり得るシステムだと感じています」

 今年度から書面添付にも取り組むなど、税務当局や金融機関からの信頼を高める努力も怠らない。現在は株式公開に向け準備中で、奥山社長はさらなる高みを目指して前進している。

企業情報

株式会社日本オーエー研究所

同社では社員一人ひとりが業績を確認できる

株式会社日本オーエー研究所

設立
1983年5月
所在地
東京都千代田区飯田橋2-17-9シティタワー九段下
売上高
21億円
社員数
220名
URL
http://www.noar.co.jp/

顧問税理士 税理士法人奥山会計事務所
税理士 奥山章雄

所在地
埼玉県川口市西青木1-18-10
URL
https://www.okuyama-accounting.com/

『戦略経営者』2019年5月号より転載)