有限会社やさい工場 様

有限会社やさい工場

左から巡回監査部の井上さくらさん、露口和夫顧問税理士、
西田明良社長、仲谷博勝巡回監査担当

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

10店舗の業績を迅速に把握し
未来志向の経営にシフト

大阪府南部エリアを中心に「野菜の店にしだ」を展開している、やさい工場。店舗に毎朝直送される商品の鮮度の高さを売りに、地域住民を引きつけている。近年は、駅ビル内テナントの運営や「ドライブスルー八百屋」の開設など、西田明良社長による意欲的な取り組みが目立つ。価格競争に陥らない店舗づくりの方策を尋ねるべく、同社の運営する飲食店「はつが野テラス」を訪問した。

日常生活のインフラとしてコロナ時代のニーズに対応

──展開されている青果店の特徴を教えてください。

野菜の店 にしだ和泉中央エコールいずみ店

エコール・いずみ本館1階に入る、
「野菜の店 にしだ和泉中央エコールいずみ店」

西田 生産者と直接取引し、入手しづらい商品を仕入れることで、青果専門店ならではの品ぞろえを心がけています。仕入れた日に店頭販売できる体制をとっており、鮮度も売りにしています。飲食店等への卸売りも行っていますが、売り上げ比率は10%ほどです。

──昨今はレジ袋の有料化や客同士のソーシャルディスタンス確保など、店舗運営が大変では?

西田 レジ前の飛沫(ひまつ)感染防止シートや手指消毒液の設置など、ひととおりのコロナ対策を実施しています。青果店はいわば生活インフラ。コロナ禍にあっても、幸い周囲に感染者が発生することなく営業を継続でき、2020年5月期の売上高は前年比110%を達成できました。外食する機会が減り、ご家庭で食事をとる方が増えたことが背景にあるとみています。

──「はつが野テラス」の状況はいかがでしたか。

「はつが野テラス」

「はつが野テラス」では、旬の青果をふんだんに使用した
メニューを提供する

西田 4~5月にかけてお客さまが激減し、一時閉店せざるを得ませんでした。休業期間中に新たな試みとして実施したのが「ドライブスルー八百屋」です。インスタグラムで開催を告知し、お客さまには購入希望商品を事前に指定し、クルマで来店してもらいました。
 販売した商品は、当社が選んだ2,000~5,000円の旬の野菜を詰め合わせたセット。3日連続で開催したところ、1日に100セットほどを売り上げた日もあり、大変盛況でした。その後も特売情報を随時発信していて、反響は毎回とても大きい。インスタグラムのフォロワーも、いつの間にか1000人をこえました。

露口顧問税理士 和泉市は宅地造成が進み、人口が急増している地域です。ソーシャルメディアを日常的に利用している、30~40代の住民が多いのかもしれません。

──今後の発展が楽しみな商圏ですね。日ごろ実施されている集客、販促活動というと?

西田 全店舗で朝市を毎週開催しているほか、店頭に料理のレシピを設置するなどして、提案型の売り場構成にしています。例えばこの時期なら鍋料理。ハクサイやシイタケ、エノキ等の鍋食材の特売日を設けたり、旬の時期を考慮した品ぞろえにしています。
 また、5月に和歌山市にオープンした新店舗の店頭にはモニターを設置し、レシピ紹介用の動画を制作しているところです。

──それにしてもユニークな企業名ですね。

西田 私は2代目社長で、現会長である父が設立時に名付けました。父は従来トマトファミリーという会社を経営していましたが、20年ほど前にやさい工場を設立し、私が社長に就任。同時に当社に会社を一本化しました。

店舗別損益計算書で店長の意識変革を促す

──『FX4クラウド』を導入された経緯を教えてください。

商品

西田 税理士法人パートナーズ関西さんと顧問契約を結んだのは2019年5月です。露口先生からTKC方式による自計化システムの活用を勧められ、導入を決めました。

露口 私は西田社長と同い年で、初対面のときITツールの活用が得意そうな方だなと感じました。当時経理担当者の方は、店舗のレジシステムから切り出した売り上げデータや、エクセルシートに入力した仕入れデータを元に、損益状況をエクセルシートに集計されていました。なにしろ10店舗ありますから、集計作業は負担になっていたはずです。そこで『FX4クラウド』ならレジシステムから切り出したデータを読み込んで、店舗別の損益を簡単につかめますと提案したところ、トントン拍子で話が進みました。

──『FX4クラウド』を運用されている拠点は?

西田 はつが野テラスにある事務所をはじめ、3カ所です。それぞれの店舗の担当者が「エクセル読み込み機能」を使って、各店の売り上げデータを読み込み、連動処理を行っています。「マネジメントレポート(MR)設計ツール」により〈店舗別損益計算書〉が自動で作成されるので、集計にかかる手間を大幅に軽減できました。

──TKCシステムを導入され、どんな点が最も変わりましたか。

西田 一番変わったのは、業績を毎月確認しながら経営できるようになったところですね。〈店舗別損益計算書〉を元に、人件費や販売促進費などの経費科目の金額を正確に把握し、問題点があれば早期に対策を施せます。月次巡回監査では業績数値の見方や改善点をアドバイスしてもらえるので、将来について検討する機会が増え、経営に対する意識が180度変わりました。

──直近の巡回監査で話し合われた内容は?

西田 今年6月にオープンした、南海和歌山市駅直結の商業施設「キーノ和歌山」で、当社が運営している生鮮食品売り場「ロックスターファームズ」についてです。巡回監査時には、新店舗の売り上げの推移を確認したり、今後の計画を打ち合わせたりしています。

仲谷監査担当 はつが野テラスに毎月訪問し巡回監査後、西田社長と専務に対して業績報告を行っています。青果は販売価格を1円変えるだけで、業績に大きな影響を与えるため、店舗ごとの目標利益率を念頭に置き、価格設定が適正であるかなどを話し合っています。

──システムはスムーズに利用を開始できましたか。

セルフ式のレジ

来店客が清算を行うセルフ式のレジを採用

西田 当初、事務担当者は経理業務についてあまり詳しくありませんでしたが、パートナーズ関西の井上さんの親身な指導により、「エクセル読み込み機能」等を活用して効率的に運用できています。

井上 月次巡回監査には私も同行し、おもに『FX4クラウド』の操作に関連する質問に対応しつつ、運用をサポートしています。先日『PX2』(戦略給与情報システム)も導入され、10月分給与処理から利用していただくべく、設定を行っているところです。

──月次業績を社内外に公表されていると聞きました。

西田 毎月第1土曜日に店長会議を開催して、「MR設計ツール」で作成した〈店舗別損益計算書〉と〈日別売り上げ仕入れ表〉を配布し、各店の損益状況をリアルタイムで共有しています。店舗の業績が見える化され、店長は利益を生む方策を考えるようになり、数字に対する意識が変化してきたと感じています。
 また「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を活用し、取引金融機関のうちメイン行に対して、月次業績データを送信しています。前期の決算時は、口座を開設しているすべての金融機関に業績データを送信しました。

露口 私の事務所では、関与先企業さまに対してMISの活用を積極的に提案していますが、月次業績の開示に対する経営者の考え方はさまざまです。そんななか、業績の好不調にかかわらず月次データをコンスタントに送信していただいている西田社長の姿勢は、すばらしいと感じています。

──将来の構想をお聞かせください。

西田 これまでは郊外型の店舗をメインに展開してきましたが、今後はロックスターファームズのように駅に近い立地にも店舗を開設していきたいと考えています。現在も鉄道会社などから駅ビルや沿線開発にまつわる相談をいただいている状況です。
 ドライブスルー八百屋を試してみて、消費者の購買行動が劇的に変化したことを実感しました。これからもITツールを活用し、新しい行動様式に対応した店舗づくりに取り組んでいきます。

企業情報

有限会社やさい工場

有限会社やさい工場

創業
1973年
所在地
大阪府和泉市はつが野3-1
売上高
21億4,000万円(2020年5月期)
社員数
210名(パートを含む)
URL
http://www.yasai-kojyo.com/

顧問税理士 露口和夫
税理士法人パートナーズ関西

所在地
大阪府和泉市桑原町247番地6
URL
https://www.tuyuguti-tax.jp/

『戦略経営者』2020年12月号より転載)