ピノー株式会社 様

右端は経理担当の藤田由美子氏

右端は経理担当の藤田由美子氏

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

受注案件ごとの緻密な業績管理で
新分野の事業を次々に成功させる

福岡県福岡市に本社を構え、イベント企画運営などを手掛けるピノー株式会社。福岡県や佐賀県を中心に文化振興や芸術、アカデミズムの分野に強みを持つ。設立当初から『FX4クラウド』を活用している松本祐典社長に、清水智文顧問税理士、監査担当の宮㟢香奈氏を交え、経営戦略や業績管理について聞いた。

多様な専門性持つ社員が斬新なプロジェクトを企画

──松本社長のご経歴や創業の経緯についてお話しください。

松本祐典社長

松本祐典社長

松本 イベント企画制作を11年経験し、その後2年間ウェブやグラフィックのデザインのディレクションをしていました。その後独立しフリーランスとして福岡市科学館の立ち上げを担当し、その1年後に法人成りして現在に至ります。起業当初から、「ウェブ制作やイベント制作に限定して事業を行っていては、これからの時代の多様な課題解決に対応できない」と考えていました。そこで当社ではプランナー、ライター、映像作家、ロボットエンジニアなど多様な専門性を持つ社員を採用し、多彩な専門家が一緒になって企画を作っていくところを強みにしています。社外のさまざまな人たちとの関係性を積極的に作り出すことが得意で、最近では有田焼で有名な佐賀県有田市と進出協定を締結し、ウェブ制作やイベント運営、EC支援などを通じ商業施設「アリタセラ」の活性化策や同市のまちづくり支援に挑戦していく予定です。

──これまでの実績について教えてください。

松本 プラネタリウムで開催した歌手・手嶌葵さんのコンサート、佐賀県の文化芸術振興の一環で、県立博物館と県立美術館の前で音楽やアートの実演・展示を行う「佐賀さいこうフェス」の運営に協力しています。また、九州大学大学院芸術工学研究院に所属し、さまざまなプロジェクトも会社と並行して取り組んでいます。最近では、トライアルホールディング、宮若市、九州大学が産学官連携で「第1回宮若国際芸術トリエンナーレ」を開催。宮若市はトヨタ自動車九州のある街として知られていますが、九州ゆかりのアーティストの芸術作品の常設や学生コンペティションの開催などを行いました。アートと街づくりの新たな関係について、プロジェクトを通じてたくさんの発見があり、街の発展にアートは欠かせない要素だと考えています。ホームページ制作も手掛けており、現状は芸術、文化、アカデミア関連の案件が多くなっています。

──どのようにして案件を受注されるのでしょうか。

ホームページ作成事例(左)、福岡市科学館ドームシアターイベント「STARRY NIGHT JAM」(右)

ホームページ作成事例(左)、
福岡市科学館ドームシアターイベント「STARRY NIGHT JAM」(右)

松本 自治体や企業、友人の紹介、また一度ご依頼をいただいた方から、「はじめてだけどこんなことをやりたい」という相談があり、それに対し「こういうことができますがいかがでしょうか」と提案することが比較的多いと思います。また県や市の公募への参加も会社の成長とともに増えてきました。昨年、佐賀県立宇宙科学館で、リコー・ジャパンの協力のもとで360度カメラを使ったVR工場見学を行う企画を実施しましたが、これも公募で当社の提案が採択された事例です。

──今年の7月に佐賀県有田町と進出協定を締結しました。プロジェクトの詳細について教えてください。

松本 有田町のまちづくり課の担当者の方と一緒に、地元の陶磁器工業協同組合、有田町の商工会議所、研究機関である佐賀県窯業技術センターなどを訪ね、今存在する課題について具体的なヒアリングを行っています。世界一の技術を誇る有田焼は、先進的な窯業技術の開発が挑戦的に進んでいることに大変驚きました。コロナ禍で観光は国内全体で冷え込んでいますが、これまでいらしたことのない隣町や県内から足を運ぶ方が増え、身近な観光が始まっていることがわかりました。
 おそらく、どの産地も同じように課題はあるので、ヒアリングを進めながら、決してデジタルだけでなく、地元に長く根付く文化を作れるように、今後当社がどのような形で、芸術文化の振興支援ができるかを考えていきたいと思います。

ホールディングス構想を聞き『FX4クラウド』を提案

──清水智文税理士事務所と顧問契約を締結された理由は?

松本 会社設立時に福岡市の商工会議所で税理士を紹介してもらい、3番目にお会いしたのが清水先生でした。最も年齢が若かったのと、厳しいこともちゃんと言ってくれそうだと感じたこと、清水先生からのご提案と毎月決算を締めていきたいという私の要望が一致したことが決め手になりました。記帳を自分で行うのは大変そうだとは思いましたが、父が企業経営者で毎日コツコツ帳簿を付けていた姿を幼少期から目にしていたこともあり、これに向き合っていかないと会社が大きくならないと考えました。

──『FX4クラウド』を導入された経緯は?

清水智文顧問税理士

清水智文顧問税理士

清水 松本社長の頭の中には、新規事業を次々に展開しながらそれらを分社化し、子会社としてピノーの下にぶら下げていくホールディングス化の構想が売り上げゼロの創業時からありました。規模が拡大した成長後のビジョンがはじめからあるのだったら、最初から『FX4クラウド』を導入するのが適切だろうと考えご提案したところ、了解をいただけたという流れです。

──プロジェクトごとの業績管理をしっかりされているとか。

松本 例えば『FX4クラウド』のグループ機能を使ったABCD分析ですね。各プロジェクトを案件ごとに「利益率が高く広報的な価値があるもの」をA、「利益率は高くないが広報的な価値があるもの」をB、「利益率が低く、広報的価値も低い」をDなどとランク付けして比較分析を行っているほか、取引先や紹介者、エリアごとに分けて評価したりしています。会社が成長するにつれ「ここの企業とは今後付き合えないな」という決断をしなければならないときがくるでしょうから、そのときに素早く適切な判断を下すためにもこのような比較は必要だと思います。

──注視されている帳表や勘定科目があれば教えてください。

松本 最も気になるのは、事業内容の性質上その比率が高くなる外注費ですね。イベント一つやるにしろ施工会社、音響会社、照明会社など多くの協力企業の力が必要になるので、全体の売り上げに対する外注費の割合には常に気を配っています。また従業員数が増加中なのに加え、有田に新拠点を開設したことから、厚生費や車両費、交通費の推移にも注意を払っています。

──月次巡回監査ではどのようなことを話し合われていますか。

宮﨑香奈氏

宮﨑香奈氏

宮﨑香奈監査担当 売上高、限界利益、固定費、経常利益、と上から順番に説明し、その後に松本社長から部門別業績や資金繰りについて質問を受けることが多いですね。担当者の私からみてピノーさんは本当にいろいろなプロジェクトを推進しているという印象があり、一度「何屋さんと説明すればいいでしょうか」と聞いたことがあります。その時従業員の方が「なんでも屋さん」と答えられたのが今でも記憶に残っています。とにかく新たな案件の話を聞くたびに「どうやって仕事をとってきたのだろう」と驚かされっぱなしです。松本社長は私が税理士補助業務を始めて最初に担当した社長さまで、ご迷惑をおかけすることばかりでしたが、さまざまな経験を通じ多くのことを学ぶことができ、とても感謝しています。

──「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」も活用されています。いかがですか。

松本 改めて聞かれると「がんばっていかなければ」と思いますが、実際のところMISを普段特別意識することはありません。しかし数字はうそをつきませんから、四半期ごとに財務データが取引金融機関に送信されるのは経営者としてはやはりピリッとしますね。すぐに高級車を買ってしまったりする若い経営者ほど、「誰かに見られている」と気を引き締められるMISのような仕組みが必要なのではないでしょうか。

──今後の抱負をお聞かせください。

松本 ソニーの設立趣意書に会社設立の目的として「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由豁達(かったつ)にして愉快なる理想工場の建設」とありますが、さまざまなテクノロジーが進展した今の時代だからこそ、新規事業を次々に生み出すことで従業員が今後も末永く働ける環境をつくっていくことが中小企業に求められていると思います。
 例えば現在、伝統工芸である久留米絣に詳しい社員を中心に、久留米絣を染める前に糸をまく「くくり」という機械のメンテナンスを請け負う事業を開始する準備をしています。また、映像制作やモーショングラフィックスのセンサーを扱えるスタッフがいるので、2人合わせれば最先端の映像体験を得られる企画ができるでしょう。3Dモデリングで制作したグッズを当社が経営するカフェで販売することも可能です。私たちはそれぞれ専門的な知識を持った人材が一緒になって新しい事業を作っていくやり方で、今後の成長を実現したいと思っています。

企業情報

福岡県、佐賀県を中心に多彩なイベントを企画

福岡県、佐賀県を中心に
多彩なイベントを企画

ピノー株式会社

設立
2018年1月
所在地
福岡県福岡市中央区薬院三丁目12-22美山ビル402
売上高
約1億円
社員数
14名(アルバイト5名含む)
URL
https://pino.ooo

顧問税理士
清水智文税理士事務所

所在地
福岡県福岡市中央区薬院1-8-20KYOYA薬院ビル401号室
URL
https://hls.tkcnf.com

『戦略経営者』2021年11月号より転載)