株式会社美備 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

チームワークと緻密な財務管理で
独自の“清掃”スタイルを実践

北海道苫小牧市で清掃業を営む株式会社美備。名門王子製紙アイスホッケー部(現レッドイーグルス北海道)でプレーをした経験のある下谷内浩二社長は、そのアスリート精神で同社を成長軌道に乗せてきた。顧問税理士である、清宮純税理士事務所の清宮純所長、森恭範監査部長とともに話を聞いた。

──創業の経緯は?

下谷内浩二社長

下谷内浩二社長

下谷内 王子製紙(苫小牧市)のアイスホッケー部でプレーをして、引退後も会社に残り、5年間札幌でサラリーマンとして働きました。その後、地元の苫小牧市に無謀にも(笑)家を建てたのですが、その時にお世話になった建築会社の社長に、新築住宅の(引渡し前)清掃をしてみないかと言われ、この世界(清掃業界)に入りました。

──まったくの異業種ですね。

下谷内 はい。最初は何も分からない状態でした。それこそ、他社の清掃現場を目撃した時には外から観察したりしながら勉強していき、徐々に自分たちの清掃の形を作り上げていきました。

──どのようにして顧客を獲得していったのですか。

下谷内 一軒一軒の飛び込み営業です。ほとんどが門前払い。大変でした。サラリーマン時代には会社に食べさせてもらっていましたが、独立後は自分で食べていかなければなりません。アイスホッケーのプレーヤー時代のハングリー精神を思い出しながら、チャレンジする気持ちで頑張りました。

──選手時代の経験が生かされましたね。

現場には柔軟な発想と対応が求められる

現場には柔軟な発想と対応が求められる

下谷内 はい。たとえば、仕事の一つ一つを試合に模しながら戦略的に考えていくことで、業務クオリティーを上げたり、あるいは、どんな小さな仕事でもチームで解決していくといったチームワーク重視の業務方針にも生かされていると思います。

──現在の業容は?

下谷内 オフィスやマンション、各種施設の清掃を中心に、旅客船(フェリー)、工場・店舗施設などの清掃、あるいは、清掃以外では廃棄物の運搬なども手掛けています。現在、約300件の取引先があります。

──業務に関して心がけていることはありますか。

下谷内 常にお客さまに向き合いながら感謝の気持ちをもって仕事をするということでしょうか。われわれはまったくの後発であり、選択するのはお客さまなので、他社の状況など周りを気にせずに一生懸命仕事をすることを心がけています。

──人員は?

産業廃棄物の運搬も手掛ける

産業廃棄物の運搬も手掛ける

下谷内 6月末現在で195名です。うちパートさんが160名。約200名体制で、24時間365日稼働しています。

──200名近くのスタッフを管理するのは大変なのでは?

下谷内 清宮純税理士事務所の支援のもと、自計化(会計ソフトを導入して自社で経理業務を行うこと)を実践し、『PX2(戦略給与情報システム)』および『SX4クラウド(戦略販売・購買情報システム)』との完全連動のもと、月次決算と部門別管理を行うことで緻密な管理ができています。

緻密な部門別階層管理で会社組織を強くする

──清宮事務所が関与されたのは?

清宮純顧問税理士

清宮純顧問税理士

清宮 顧問になったのが2001年7月です。ほぼ創業からの関係ですね。下谷内社長は、とにかく真面目で素直、そして仕事への取り組み方がいい。普段から真面目にやっているから創業以来の右肩上がりという上昇気流をつかむこともできているのだと思います。

──下谷内社長から見た清宮会計の印象は?

下谷内 日々、勉強させていただいています。とくに森部長には、巡回監査時に当社のスタッフであるかのようにいろいろなことを指導していただいています。

 下谷内社長は、経理面でも勉強熱心な方で、毎月10日前後の巡回監査時には前月の業績(部門別を含む)を完全に把握されておられます。その結果、当日は、前月の業績確認は1時間程度で、あとは未来に向けた経営の話をさせていただいています。

──部門別管理はどのように?

下谷内 大きくは「清掃」部門、廃棄物運搬を含む「環境」部門、貨物船の留綱操作などの「請負」部門の3部門。さらに細かく「清掃」はオフィスの日常清掃、アパートの退去清掃、建築関係のスポット清掃、フェリーの清掃など9部門。それから「環境」は一般廃棄物、産業廃棄物、苫小牧市からの委託業務、下水・建設の汚泥運搬など6部門、さらに「請負」が4部門となっています。

──大変細かいですね。

森恭範監査部長

森恭範監査部長

 細かな部門別管理は、当初からの下谷内社長の意向でした。とくに5年前に『FX2』から『FX4クラウド』にバージョンアップした際に、より細分化して3部門と19部門を階層にして重層的に管理するようにしました。

──なぜでしょう。

下谷内 部門を分ければ分けるほど、強いところと弱いところが明確になり、打ち手が分かりやすくなって戦略の立案に役立ちます。森部長には会話のたびに「選択と集中が大事」と言われており、そのためには部門別管理は必須。将来的には、各部門が独立して採算がとれるようになるのが理想です。

──財務管理重視の姿勢ですね。

下谷内 当社は清宮事務所に育てられたと感じていますし、「会計で会社を強くする」というTKCのスローガンは、まさにその通りだと思っています。

──経営会議での数字の活用は?

下谷内 部門長に関しては、毎週の定例会などで自部門の業績はもちろん、会社全体の数字をすべて開示しています。その際、部門長自ら計算していた数字と、『FX4クラウド』の数字が合致しているかを確認させ、もし数字のずれがあるなら、その原因を追及します。そうすることで、部門長が数字に強くなり、全社的により緻密な管理が可能になるというわけです。

──部門長にはある程度の裁量を与えておられるとか。

「明るく楽しい職場づくり」がモットー

「明るく楽しい職場づくり」がモットー

下谷内 自部門の上げた利益を、どのように使うかを、部門長がある程度決めることができます。なかには利益の何パーセントかを原資にパートの時給を上げた部門長もいます。したがって当社では部門によって時給が違います。また、利益を労働環境の整備や福利厚生面での施策に使ってもいい。ただ、そのためには、部門長が自部門の損益をきちんと把握しておく必要があります。

「数字重視」という意味では、会計上の引当金を細かく計上しているのも美備さんの特徴です。これは経理担当者の向上心と作業レベルが高いからできることです。賞与、厚生費、車両修繕費などをしっかり引き当てて、リアルタイムの財務状況を部門長が把握していくことで、常に正確な損益管理のもとで、正確な手を打つことが可能になるわけです。

──今後はいかがでしょう。

下谷内 前年の年商が6億3,000万円なので、次は7億円の壁を破ること。さらに10億円の壁の突破も、当社の今のスタッフの能力を考えると十分に可能だと思っています。

清宮 そのためには、とにかく仕事に「徹する」ことです。下谷内社長は気力も盛んで考え方もしっかりしているので、ポテンシャルは十分。この会社はまだまだ伸びます。

企業情報

本社社屋

株式会社美備

業種
清掃業
設立
1997年7月
所在地
北海道苫小牧市泉町1-7-8
売上高
6億3,000万円
社員数
195名(パート160名)
URL
https://www.team-vivi.co.jp

税理士 清宮 純
清宮純税理士事務所

所在地
北海道札幌市白石区本通16丁目南4-7
URL
https://jun-seimiya.tkcnf.com

『戦略経営者』2023年9月号より転載)