2024.12.03
損害金請求事件
LEX/DB25621110/水戸地方裁判所下妻支部 令和 6年10月23日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第200号
被告市議会の議員である原告らが、被告市議会からそれぞれ出席停止の懲罰(地方自治法135条1項3号)を受けたことについて、同懲罰を原告らに科したのは被告市議会の裁量権を逸脱するものであって違法な公権力の行使であるとして、国家賠償法1条による損害賠償請求権に基づき、被告に対し、それぞれ、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件配布行為はそもそも懲罰事由に当たらないものというべきであるから、本件配布行為を懲罰事由とした本件懲罰1は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとし、また、本件懲罰2の相当性を判断するに際しては前件懲罰において出席停止1日という処分がされたことを前提とすることは相当ではなく、議会における議員の発言の自由の重要性にかんがみると、議会の自律性を踏まえても、本件懲罰2において発言機会を奪う結果となる出席停止3日という処分としたことは重きに過ぎ、議会の裁量権を著しく逸脱した又はこれを濫用したものというべきであるから、本件懲罰2は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとして、原告らの請求を一部認容し、なお、事案の性質にかんがみ、前件懲罰、本件懲罰1及び本件懲罰2においてはいずれも、議長の指名により懲罰動議を発議した議員のみによって懲罰特別委員会が構成され、前記各懲罰を行うことを求める委員会報告がなされ、前記各懲罰に至ったことが認められるところ、このような委員会の構成方法は、委員会へ付託し慎重な審理を求めた古河市議会会議規則162条の趣旨に反するのではないかとの疑問を禁じ得ないところである、と付言した事例。
2024.12.03
損害賠償請求控訴事件
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LEX/DB25621082/札幌高等裁判所 令和 6年 9月13日 判決(控訴審)/令和6年(ネ)第8号
ホテルの運営を行う被控訴人(被告)会社において宿泊部部長として勤務していた控訴人(原告)が、アメリカ合衆国ハワイ州で挙行される控訴人の娘の結婚式に出席するため年次有給休暇の時季を指定したが、渡航予定日の前日に被控訴人から新型コロナウイルス感染症に関する状況等を理由に時季変更権の行使を受け、渡航及び結婚式への出席ができなかったことについて、当該時季変更権の行使は、時季変更事由である被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働基準法39条5項ただし書)に当たらないから違法であり、違法な時季変更権の行使により精神的苦痛を被ったなどと主張して、被控訴人に対し、労働契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求め、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、不可避に伴う海外渡航によって控訴人自身が新型コロナウイルスに感染する危険性が高まることなどは、被控訴人の事業運営を妨げる客観的事情であると認められるから、本件期間に有給休暇を与えることは被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するといわざるを得ない一方、休暇開始日の前日に至って本件時季変更権を行使したことは、合理的期間を経過した後にされたものであって権利の濫用というほかなく、違法とすべきであるところ、結婚式に参加することができなかったことによる精神的苦痛を上記不法行為と相当因果関係のある損害ということはできず、控訴人の請求は、本件期間開始の前日に本件時季変更権が行使されたことによって休暇取得に対する期待を侵害されたことによる精神的苦痛の限度で相当因果関係が認められ、本件控訴は前記の限度で理由があるとして、原判決を変更した事例。
2024.11.26
地位確認等請求事件
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LEX/DB25573841/最高裁判所第一小法廷 令和 6年10月31日 判決(上告審)/令和5年(受)第906号
上告人(被控訴人・被告)との間で期間の定めのある労働契約を締結し、上告人の設置する大学の教員として勤務していた被上告人(控訴人・原告)が、労働契約法18条1項の規定により、上告人との間で期間の定めのない労働契約が締結されたなどと主張して、上告人に対し、労働契約上の地位の確認及び賃金等の支払を求め、第一審が被上告人の請求を棄却したため、被上告人が控訴し、控訴審(原審)が、本件労働契約は大学の教員等の任期に関する法律7条1項所定の労働契約には当たらないとしたうえで、労働契約法18条1項の規定により、被上告人と上告人との間で無期労働契約が締結されたとして、被上告人の地位確認請求を認容し、賃金等の支払請求の一部を認容したことから、上告人が上告した事案で、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当でないというべきであり、本件事実関係によれば、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるというべきであるから、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たると解するのが相当であって、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、前項の部分につき、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。