ホームページの運用停止により、ドメイン名の廃止を検討していますが、ドメイン名の廃止にはリスクが伴うと聞きました。リスクの概要とその対策について教えてください。(食品製造業)

 ドメイン名とは、「○○○.jp」「○○○.co.jp」「○○○.com」といった形の文字列で、ウェブサイトのURLやメールアドレスに利用される「インターネット上の住所」のようなものです。また、単に「住所」というだけではなく、ブランド価値やマーケティングの要素としても重視されており、ウェブサイトの閉鎖などで不要になったなどの理由から、登録しているドメイン名を廃止することになったとしても、慎重な対応が必要です。

犯罪に悪用される可能性も

 ドメイン名を廃止した場合、一定期間を経過した後、第三者がそのドメイン名を登録できるようになります。このタイミングを狙って再登録する行為は「ドロップキャッチ」と呼ばれ、それ自体は違法なものではありません。

 しかし、他のウェブサイトからのリンクや検索エンジンによるドメイン名の評価に関する情報は残ります。アクセス数などが見込めることなどから、そのドメイン名が関係のない第三者に登録され、詐欺サイトや偽サイトとして悪用されるリスクがあります。また、廃止されたドメイン名をもとにメールアドレスを作成し、不正利用を通じてSNSやウェブサービスのアカウントの乗っ取り、データ流出といったトラブルにつながる可能性もあります。

 このようなトラブルを防ぐために、ドメイン名の廃止時に特に気を付けておくべきこととして、「該当するドメイン名を使っているウェブサイトやメールアドレスの利用終了を利用者や関係者に事前に周知すること」「メールアドレスを利用した関連アカウントの削除や設定変更を進めること」があげられます。また、ドメイン名の管理体制を強化し、担当者を配置して運用状況を適切に把握できるようにして、廃止までのルールや手順をあらかじめ確立しておくとよいでしょう。

 廃止されたドメイン名が悪用されるなどのトラブルに対しては、DRP(Domain Name Dispute Resolution Policy:ドメイン名紛争処理方針、JPドメイン名ではJP-DRP)という規則(基準)が設けられています。しかし商標侵害などの理由がなければ登録されたドメイン名の利用を差し止めることは難しいため、まずはドメイン名を「自社のブランド」と認識して、廃止のリスクをきちんと理解しておくことが重要です。

 ドメイン名の廃止に関するトラブルを避ける最良の手段は、ドメイン名の登録を維持することです。しかしそれが難しい場合には、上に記した十分な準備と適切な対応を行うことがリスクを最小限に抑えるための対策となり、ブランド価値の毀損や顧客への悪影響を防ぎ、問題解決にかかる時間やコストを抑えることにつながります。

掲載:『戦略経営者』2025年12月号