原材料価格の高騰など経営環境は依然厳しいですが、今冬も賞与を支給する予定です。どの程度を目安としたらよいでしょうか。(機械設計業)

 今年の冬季賞与は増加する見通しです。民間企業全体の賞与相場を展望すると、今冬の1人当たり支給額は42万4,000円と、前年を2.6%上回ると予想されます。ただし、これまでの業績や価格転嫁力の差によって、企業間の強弱がはっきりと分かれそうです。

 まず、大企業では、春の交渉を通じて、その年の冬までの賞与額を決定する「夏冬型」を採用しているケースが多く、今夏並みの賞与の伸び(全規模で前年比+2.9%)が維持されると見込んでいます。

 この背景には、前年度の好調な企業業績が挙げられます。財務省「年次別法人企業統計調査」によると、2024年度の法人企業(全産業)の経常利益は前年から7.5%増と、4年度連続の増益を記録しました。対米ドルの為替レートが150円前後の円安圏で推移したことで、海外からの配当が円建てで増加したほか、国内でも価格転嫁がある程度進んだことが収益を押し上げました。大企業では、こうした好調な前年の業績が冬季賞与の原資拡大につながったといえます。

 加えて、賞与算定のベースとなる基本給(所定内給与)が引き上げられたことも、賞与支給額の増加に寄与しました。25年の春闘賃上げ率(定期昇給を含む)は5.25%と、前年の5.10%を上回る高い伸びとなりました。

回復見込まれる国内需要

 大企業とは対照的に中小企業では、賞与額が前年並みにとどまり、1人当たりの平均支給額は30万円弱が目安となるでしょう。中小企業でも、「夏冬型」を採用している企業の賞与は、前年の業績を反映して高めの伸びとなることが予想されますが、「夏冬型」を採用していなかったり、労働組合を組織していない企業では、前年から減額となるケースが多いと見込んでいます。こうした企業では、支給時期直前の業績を賞与に反映する傾向があり、足元の経営環境が悪化していることが賞与を下押しすると考えられます。

 中小企業の業績が悪化している背景として、トランプ関税が挙げられます。これにより米国向けの輸出が弱まっており、製造業を中心に収益を下押ししています。10月に開催された日本銀行の支店長会議でも、好調なAI関連の受注が業績を下支えしているが、関税引き上げの影響で資本財などの受注が下振れているといった企業の声が報告されています。

 このように足元の経営環境は芳しくないものの、26年の景気を展望すると、世界経済が回復に向かうとともに、わが国の輸出も持ち直すと考えられます。さらに、高騰してきたエネルギーや食料の価格が次第に落ち着いてくることで、個人消費をはじめ国内需要も回復することが見込まれます。不透明感が高い経営環境が続いていますが、物価高や人手不足等の構造的な課題を踏まえると、従業員の定着やモチベーション向上に向け、積極的な待遇改善を打ち出す姿勢が重要となります。

掲載:『戦略経営者』2025年12月号