事務所経営

「安定」を着実に積み重ね、地域社会に幸せの輪を広げていきたい

税理士法人クリアパートナーズ(近畿兵庫会姫路支部)
山本清輝会員・清尊会員
左から山本清尊会員、清輝会員、賢志会員

左から山本清尊会員、清輝会員、賢志会員

兵庫県姫路市で65年、親子3代にわたり地域に根差した事務所経営を行っている税理士法人クリアパートナーズ。会長の山本清輝会員、所長の清尊会員、そして清尊会員の弟で東加古川事務所所長の賢志会員に、これまでの事務所の歩みやこれからの事務所の展望などを語っていただいた。

事務所創立65年、親子3代で「TKC1本」の長いお付き合いを重視

 ──清輝先生のお父さまの清先生も、税理士でいらっしゃったそうですね。

 清輝 はい。私の父の清は、税理士法が制定された翌年、昭和27年に税務署を退官して開業したそうです。父の代から数えれば、事務所はもう創立65年になりますね。
 私は昭和42年に父の事務所に入って父の仕事を手伝っていました。そして昭和50年に税理士資格を取得し、TKCに入ったんです。「コンピュータは若いお前がやれ」ということでね。私が30歳のときでした。先発会員は姫路全体で15人くらいのころでしたね。

 ──TKC入会のきっかけは何だったのでしょうか。

 清輝 先輩からの勧めがあったことと、単純にシステムが使いやすいと思いました。当時の入力方法は、コード番号を振ってオリベッティの穿孔機にテープを通すもので、他社と比べて操作がシンプルで分かりやすかったんです。
 何より飯塚毅先生は、「租税正義の護持者は税理士である」「税理士は企業に正しい数字を与え、未来計算をして企業を育てていく役割がある。それが税理士の道だ」というお話をされていましたから、その考えに素直に共感したんですよね。
 当時は全部手書きの時代でしたから、「ペンだこ」ができるんですよ。伝票から元帳に転記して、一生懸命ソロバンはじいて試算表を作ったり決算を組んだりして、試算表の貸借がきちっと合えば喜んでいました(笑)。大変な思いをして決算書・申告書を作るけれど、経営者からは「税金をなんとかしろ」とか、「俺のカンのほうが合ってる」なんて言われることもある。父の仕事を手伝いながら、「税法をゆがめてしまうことにならないかな」「過去の数字ばっかり計算して何になるんやろう」という思いも少なからずあったんです。

 ──飯塚初代会長に直接会われたことはありますか。

 清輝 はい。導入セミナーで飯塚先生が姫路に来られた折には、先発会員と一緒に皆で食事しました。でも私はそのころ入会歴も浅かったから、飯塚先生の前にはなかなか行けなかったですね。先輩たちから「おい、こっち来て飯塚先生と話をせんかい」と言われておそるおそる近寄ると、飯塚先生からは「君たち、もっと税法と国税通則法を勉強しなさい」と叱られましたね。飯塚先生はすべての条文が頭の中に入っているし、時折ドイツ税法まで混じってくるから対等なお話なんてできません(笑)。でも「若いもんがこれから頑張らなきゃいけないんだぞ」とよく励ましていただきました。

 ──TKCシステムへの移行はうまくいきましたか。

 清輝 入会後は、先輩たちが開いている勉強会やTKC主催の研修会に行き、移行のノウハウやコツを学びました。経営者にとって早く会社の数字を見ることがいかに大事で、そのためのシステムはTKCでなければダメなんだということを一生懸命説明して、経営者の意識を変えるのに力を入れていました。そのうちに、「企業経営の羅針盤になるデータをくれるなんて素晴らしい」「部門計算ができるのはありがたい」と喜んでくれる社長が徐々に増えていった感じです。
 私は恵まれていたと思います。初代の父が築いてくれた事務所の基礎があったからこそ、私は飯塚先生の言われたとおりに「TKC1本」であせらずじっくりできたんですから。当時は経営者に対して生意気なこともたくさん言っていたと思いますが、それでもついてきてくれたお客さまがあって今がある。初代のときから今日まで長くお付き合いいただいているお客さまも多いです。それに黒字企業も多く、破産や夜逃げは1件もありません。
 これはTKCシステムを大事にしてきたからこそですし、本当にありがたいことだと思います。

「お父さんはすごいな」との思いが税理士・会計士を目指したきっかけ

 ──清尊先生と賢志先生が税理士・公認会計士という職業を選ばれたのは、やはりお父さまの影響でしょうか。

税理士法人クリアパートナーズ(姫路事務所)の皆さんと賢志会員

税理士法人クリアパートナーズ(姫路事務所)の皆さんと賢志会員

 清尊 それはありますね。実は、私は小学生のころパイロットになりたかったんです(笑)。ただ、父がどういう仕事をしているのかよく分からなかったものの、地元の社長さんと父親が話している姿を見て、子ども心になんとなく「お父さんはすごいな」という思いがありました。それからだんだん大きくなるにつれて、地元で働けてお客さまに感謝される税理士という仕事はいいものだな、と割合自然に思うようになりましたね。
 大学卒業後はすぐに父の事務所に入所せず、滋賀大学の大学院で管理会計を勉強していました。私が院生だった1990年代当時は、アメリカのキャプランやクーパーが提唱した「活動基準原価計算(ABC)」という考え方が流行っていて、すごく面白かったです。このとき勉強したことは今でも役に立っています。研究者を養成するようなカリキュラムだったので、講師として学生に講義することもありました。研究者への道を進むことも頭を過ぎりましたが、自分はやっぱり研究より実務向きだと思っていたころに、平成9年に祖父が亡くなり、父の呼びかけもあって事務所に戻ってきました。

 ──賢志先生は(株)TKCにお勤めだったそうですね。

 賢志 はい。平成9年の入社です。私は次男なので、将来は姫路に残らず、どこか別の場所でサラリーマンをするんだろうなと子どものときから漠然と考えていたのですが、TKCに入社して考えが変わりました。入社後はシス研のOMS技術部の配属となり、OMS導入の仕事も担当していろいろな事務所にお邪魔する中で、改めて税理士という職業や父の仕事内容を客観視できました。それで会計人業界に興味を持つようになり、公認会計士を目指そうと。税理士ではなく会計士を選んだのは、上場企業・大企業も見られるというのが大きかったですね。
 (株)TKCを退社してから勉強をして平成14年に会計士の資格を取得し、東京の監査法人に勤務しました。監査法人での仕事は充実していましたが、30歳を過ぎてから、「地元に貢献したいな」という思いが徐々に出てきたんですよね。ちょうど同じ時期に「そろそろ帰ってきたら」という話になり、平成18年に姫路に戻ってきたんです。

 ──地元にお二人の息子さんが戻ってこられたのは、父親としていかがですか。

 清輝 やっぱりうれしいですよね。私はずっと「楽しみながら仕事をする」ことを大事にしていたんです。事務所旅行もそうですが、子どもたちが小さいころから夏休みには必ずどこかに家族で遊びに行っていたんですよね。皆でハワイに行ったり、ゴルフをしたり。私は若いときはヨットに乗っていましたから、ヨットレースで優勝する姿を間近で見せたりしたこともありました(笑)。税理士としての仕事をきっちりすれば、会社が良くなってお客さまに喜んでいただけるし頼りにもしてもらえる。事務所の職員も家族の皆も楽しい思いができるし、こんな良い仕事はないよ──という姿が伝わればいいなと思っていたので、本当によかったなと思います。

名前に「クリア」の意味を持つ4人で「クリアパートナーズ」を組織

 ──平成24年に法人化されています。

事務所旅行

JR姫路駅から徒歩約15分ほどに位置する税理士法人クリア
パートナーズと税理士法人クリアパートナーズのロゴ。
法人名の「クリア(Clear)」の「C」と「パートナーズ
(Partners)」の「P」をモチーフに、①人が手をつないでいる
様子、②人との縁が無限に広がる様子──を表している。

 清輝 それより少し前に、同じTKC会員で、懇意にさせてもらっていた東加古川の西尾透先生から法人化しないかといった相談がありました。「私はもう65歳だし、後継ぎを考えないといけないのだけど、西尾事務所には後継者が誰もいない。山本先生のところは息子さんが2人おられるね。一緒にどうですか」と。
 もともと私も、息子が2人で同じ事務所にいるより、別事務所で独立したほうがいいという気持ちがありました。西尾先生は同じTKC会員で、公認会計士として事務所を作られていたから、すんなり法人化の話がまとまりました。

 ──法人名「クリアパートナーズ」の由来は?

 清尊 社員税理士の名前にある「清」「賢」「透」から「クリア」、そして「お客さまのパートナーになりたい」という思いを込めて「クリアパートナーズ」としました。名付け親は賢志です。

 賢志 何か共通するものがないか考えていて、社員税理士の名前の漢字から着想しました。「決算書の透明性」「お客さまの悩みをクリアにしたい」という意味も含んでいます。こだわったのは、地名や「山本」「西尾」といった個人名を入れないようにすること。せっかく法人にするなら、特定の地域や個人に縛られない名前にしたいという気持ちが強かったんですよね。

 清輝 私も西尾先生も、TKC会員として決算書の透明性を目指してずっとやってきたわけですから、案を聞いたときは「良い名前だな」と思いました。だから法人名もすぐ決まりましたね。

 清尊 経営理念や行動指針も、法人設立のときに4人の会議で決めました。

 清輝 いまでも法人全体に関わる大事なことは4人で決めますが、実務的なことは若い2人に任せています。

承継のポイントは急に線を引かず時間をかけてじっくり「なじませること」

 ──法人化に伴い、姫路事務所では清輝先生から清尊先生へ所長を交代されました。2回めの事業承継ですね。

藤本定明氏(千葉県柏市)から贈呈された書

平成11年11月、山本会計ビルの新築祝として親戚の藤本定明氏
(千葉県柏市)から贈呈された書。応接室に飾られている。

 清尊 平成24年ですから、私が41歳のときです。でも、バトンタッチ期間は長めにとろうということで、私が35歳のころからいろいろと任せてもらったり、外にもどんどん出て行ったりするような体制を取っていました。ただ、最終決定権は私にありますが、力不足なところはいまだに父に頼っています。

 清輝 いまでも私は事務所に毎日出てきていますよ。皆の相談相手になれるからね。事業承継したからきっちり線を引いて後は全部任せた──ということは、あえてしていません。

「背顔」
人の背中が何かを語りかけている
希望と夢をもちつづけている人の背は
どことなく大きく広い
人生を悲観的に生きている人の背は
なんとなく小さく見える
もしかすると人の背は
他人にかくすことのできない
もう一つの顔かも知れない
自分では一生見ることのできない
この背中が
素晴らしい顔となるよう
私は努力をつづけたい

 清尊 お医者さんでも、大先生と若先生がいますよね。そのほか関与先企業の事業承継を見ていても、代替わりしたあと社長が前に出てはいくけれども、困ったときは会長も出てくるというところが多いです。会計事務所もいわば中小企業ですから、バトンタッチ期間を長くとって承継するほうがうまくいくと思いますね。

 清輝 所長交代してからは私は言いたいときもあるけど、いかに辛抱するかだね。このままだと危ないなと思ったときには私から言うようにしていますけど、辛抱が大事。

 清尊 辛抱しているな、というのは、隣で見ていて分かります(笑)。

 賢志 東加古川事務所の所長交代もゆるやかでした。法人設立してからしばらく私は東加古川事務所の副所長で、平成27年にバトンタッチして所長に就任しました。西尾先生は法人の副会長という立場ですが、今もいろいろな場面で支えてもらっています。

 ──急な交代をしない、明確に線を引かない、というのはユニークですね。

 清輝 実は、私は父から「早く継げ」と言われていたことがあって、すごくプレッシャーだったんです。毎年、税理士試験の前に「いま俺が死んだら事務所が閉まるんや。早く資格取れ」と言われてね(笑)。資格が取れたからよかったですけど、結構辛かったので自分の子どもには言わないようにしようと。だから、じわじわとした承継の仕方を選んでいるんです。
 それに、急に所長が交代したらお客さまが納得しないでしょう。だからなじんでいつの間にか代わっていけばいい。そのうち、たぶん私が75歳くらいになったらお客さまはついてこなくなるでしょうから(笑)、そのときにすっと引く。それまでに、お客さまに「あの事務所に見てもらえるなら安心だ」と納得してもらえるような体制を、事務所全体として整えておきたいと思っていますね。

 清尊 いま法人全体では5人資格者がいます。だから、いろいろな角度からお客さまを支援することができます。
 例えば、東加古川事務所には公認会計士が2人いますから、上場会社やその子会社、社会福祉法人などのさまざまな業態を得意としています。姫路事務所は税理士3名がおり、巡回監査・書面添付・経営助言をきっちり行うTKCの標準的なサービスを提供していくような棲み分けになっていますが、父のようなベテランもいれば、女性税理士もいます。それに私はいま兵庫県立大学大学院で会計講座を持っているので、お客さまからは「いろいろな税理士がいる、特殊な税理士法人」という評価をいただいているようです。

 清輝 法人化して、優良企業からお声掛けいただくことが増えてきました。ある社長から「資格者は何人いますか」と聞かれて「全部で5人ですよ」と答えたところ、「5人いれば将来も心配しないですむ」という理由で、お客さまになっていただけた先もあります。急な承継をしないということにも通じることですが、お客さまに安心していただくというのは本当に大事なことだと思いますね。

時代対応で新たな付加価値を追求しつつ事務所の良い文化は続けていきたい

 ──清尊先生が3代目として意識されていることはありますか。

事務所旅行

「見聞を広めてもらいたい」(清尊会員)と、年1回スタッフ持ち回り
の企画で海外もしくは国内への事務所旅行を実施しているという。
写真は2017年6月の沖縄旅行。

 清尊 今の時代に対応した事務所でありたい、ということでしょうか。祖父の時代は手書き、父の代ではコンピュータ会計でしたが、いまは坂本孝司TKC全国会会長が言われるように、会計・税務・保証・経営助言の四つの分野の専門家としての役割を発揮していくことを大事にしていきたいと思います。
 特に、「中小会計要領+書面添付」による保証業務は重視しています。父の代から書面添付は重視していたので税務調査はほぼないのですが、これからは税務署だけでなく金融機関からも「クリアパートナーズのサインがある決算書は安心」と言っていただけるような高品質の決算書を提供していく。そのために「TKCモニタリング情報サービス」は本当に重要ですので、積極的に推進していきたいですね。その結果、融資審査も早く進むといったことにつながれば、いまの時代に応じた付加価値の提供になるはずです。
 安心して書面添付できる方とお付き合いさせていただきたいので、顧問契約時には経営者の納税意識や経営姿勢をきちんと聞かせていただいております。これは父の代から変わらないスタンスです。そのほうがお互いストレスがないですからね。
 それから、いまは情報が溢れている時代なので、お客さまの発展に本当に必要な情報を提供していくことも会計事務所の重要な役割だと思います。毎年の経営支援セミナーはもちろん、改正税法の情報もいち早くお伝えするようにしています。また商工会議所や中小企業大学校等からセミナー講師依頼をいただいたら、必ずお受けするようにしています。情報提供すること自体が、事務所の存在を広く周知させることにもなりますしね。
 時代対応していくこととあわせて、父の代から続く事務所の良い文化は、これからも続けていきます。「TKC1本」で事務所経営を徹底していくことはもちろん、視野を広げるための皆で行く事務所旅行もそうですし、「事務所綱領」の唱和や、専門書の読み合わせもコツコツ続けて業務品質を上げていきたいと思います。

良い習慣をコツコツと積み重ねてお客さま・職員が皆幸せになれる事務所に

経営理念
 私たちは、法律業務の専門家集団として、
 優れた情報・サービスの提供を通じてお客様を支援し、
 地域社会の発展に貢献します。

経営方針

  • 原理原則に従った経営を行い、信用・信頼を重んじ、お客様と永遠のパートナーとなれる様努めます。
  • 時代の変化を先取りし、自己研鑽を積み重ね、さらなる進歩を目指し挑戦します。
  • 良い習慣を身につけ、誠実さ・素直さ・情熱・感謝の心をもった社員を育てます。

 ──事務所の理想像を教えてください。

 賢志 経営理念・経営方針の通りに、地域社会の発展に貢献できるよう、お客さまの永遠のパートナーになれるような事務所を目指していきたいと思いますね。

 清尊 お客さまも職員も、良い習慣をコツコツと積み重ねて、皆が幸せになれる事務所が理想です。あるべき姿をお互いに言い合って、お客さまと共に長く成長し続ける関係を続けていきたいですね。やっぱり安定が一番です。税理士5人の個性を活かし、そして磨き上げながら、幸せの輪を地域社会にじわじわと大きく広げていければと思っています。
 それから、税理士業界全体がもっと社会に認められるようにしていきたい、という思いがあります。1件の事務所が頑張っても無理がありますが、業界全体として「会計で会社を強くする」という方向に進んでいければ税理士業は衰退しないはずですし、税理士業界がもっとよくなると思っていますので、そのために何ができるかを追求していきたいですね。

 ──お二人にかける言葉はありますか。

 清輝 やっぱり兄弟仲良く事務所運営を続けてほしいね。親として、それだけは切に願っています。


山本清輝会員・清尊会員(やまもときよてる・きよたか)会員
税理士人クリアパートナーズ(姫路事務所)
 兵庫県姫路市延末1-73-1

(TKC出版 篠原いづみ)

(会報『TKC』平成30年1月号より転載)

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