事務所経営

全国会第3ステージに率先して取り組み会員増強とNMフォローにつなげたい!

ニューメンバーズ・サービス委員会 第2ステージ事務所総合表彰者座談会

とき:平成31年3月23日(土) ところ:TKC東京本社

TKC全国会第2ステージ(2017年~2018年)の事務所総合表彰において、全委員会の中で最も受賞対象会員が多かったニューメンバーズ・サービス委員会。受賞した地域会委員長3名が集い、第3ステージ(2019年~2021年)における地域会での会員増強・NM(ニューメンバーズ)フォロー活動や、自らの事務所経営について語り合った。

出席者(敬称略・順不同)
【表彰項目:書面添付純増件数】
 荒木康仁会員(TKC千葉会)
【表彰項目:FX累計社数】
 久野賢一朗会員(TKC東・東京会)
【表彰項目:書面添付純増件数】
 塩見秀樹会員(TKC近畿大阪会)

司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会委員長
   甲賀伸彦会員(北海道会)

座談会風景

「オールTKC」をベースに強みを育て差別化を図る

 ──ニューメンバーズ・サービス(NMS)委員会は第2ステージの表彰項目に前向きに取り組み、委員長等も含め16名の会員が事務所総合表彰の各項目で受賞することができました。今日は、受賞した皆さまにお集まりいただき、第2ステージの事務所の取り組みと地域の委員会活動について、第3ステージでは委員会として何を目指しどのように取り組んでいくのかなどについてお聞きしたいと思います。まずは、事務所の特徴とTKC入会の経緯を教えてください。

塩見秀樹会員

塩見秀樹会員

 塩見 大阪市北区で開業している塩見です。平成25年、39歳のときに開業して今年で6年目になります。
 事務所の特徴は、建設業に強く、お客さまの割合が多いことです。私はもともと大手建設会社に勤めており、本社の管理部門や土木部にいました。土木部では、トンネル工事の現場に常駐して原価管理を担当し予算と実績を分析して現場責任者への進言を行っていました。職人さんや建設会社の社長からいろいろな相談や質問をされることもあり、中には分からないこともあってそれが悔しくて(笑)。勉強していくうちに、税務や会計が企業に欠かせないことが分かり、公認会計士の資格取得に挑戦し、独立開業したという経緯です。
 建設業者は建築物を施工する場合に許認可を取得する必要があります。通常それは行政書士に依頼するものですが、私の事務所には3名の行政書士がおり、「許認可申請代行だけでなく税務会計と経営助言もできますよ」とアピールして、税務顧問につなげています。
 TKCに入会したきっかけは、いろんなベンダーの話を聞く中でTKC事務所の見学会に誘われ、近畿大阪会の野垣浩会長の事務所を訪問したことです。野垣会長は「事務所経営はTKCのビジネスモデルをそのまま実践している」とおっしゃり、さまざまなノウハウを教えてくれてインパクトが大きかった。これなら自分もチャレンジしたいと思い入会しました。

久野賢一朗会員

久野賢一朗会員

 久野 東京都江戸川区に事務所を構える久野です。父が平成8年に開業して、私は2代目所長です。開業当初の事務所は、ワンルームマンションの1室でお客さんもゼロ件という状態。大学生だった当時から父を手伝い一緒に苦労を乗り越えてきました。卒業後は2年間の民間企業での経理業務を経て、平成12年に正式に事務所の社員となり、平成23年、35歳のときに代表社員に就任しました。
 事務所の強みとしては、①黒字化支援、②相続、③社会福祉法人・保育園──の3本柱をうたっています。父は独立してすぐにTKCに入会し、「オールTKCのやり方、それ以外はやらない」と強い信念を貫いていましたので、私もそれを当たり前に取り組んできました。
 オールTKCを基本業務において徹底的に取り組むことで関与先の黒字化を支援しつつ、他事務所との差別化として、相続業務と保育園の支援に特化しています。検索サイトで「保育園」「税理士」で検索すると、当事務所が上位に表示されるので、1カ月に数件問い合わせをいただけています。

 荒木 千葉県市川市に事務所がある荒木です。私も2代目所長で、大学を卒業した平成3年に今の事務所に入所してからずっと職員として働いてきました。
 外の世界も一度見てみようと、都内の税理士法人勤務も経験しましたが、外に出て改めてTKCの良さを再確認して今の事務所に戻り、平成21年にⅢ型会員としてTKCに入会しました。
 その後、平成24年に事務所を承継して税理士法人を設立。承継とはいえ小さい事務所で、はじめの3年間は関与先拡大に四苦八苦の毎日でした。今は税理士が2人、職員2人という体制ですが、お客さんが増えてきて、職員なしには事務所がまわらないことを痛感し、職員のレベルアップに最も力を入れています。
 特徴は、「とにかくオールTKC」の事務所だということです。それから、事務所名を「やるきコンサルティング」といいまして、これは、新しいことへの挑戦を臆さず、名前負けしないような「やる気」を常に持って一歩を踏み出したい、全力で関与先の発展を追求していきたい──という思いを込めています。私のこの思いが浸透してきているのか、職員たちは皆明るく、元気な雰囲気の事務所だと思います。

つながり重視の委員会活動は事務所経営に相通じる

 ──一方、皆さまは地域会の委員長として、会員増強・フォローに取り組んでいます。塩見さんはニューメンバーズ・フォーラム2017in大阪の実行委員長を務められましたね。

 塩見 1000人規模のフォーラムを主催するのは初めてのことで、最初はどうしていいか分かりませんでした。
 これは事務所経営も同じだと思いますが、一人でできる範囲は限られており、周囲の協力が必要です。誰に・何を・どのようにお願いするか、お願いごとをした相手からアドバイスを求められたときに何と答えればいいのかなど、周囲への気配りが難しかったです。そんなとき、いろいろな悩みや課題を、先輩会員の皆さまや、以前にフォーラムの実行委員長を経験している橋本真一会員に相談させてもらって、なんとか無事に開催することができました。助けてもらいながら、周囲とのつながりをとても深められたように感じます。
 近畿大阪会のNMS委員会としても、皆さんに「こういうことをやりたい」という私の考えを伝えて理解してもらうきっかけになったので、会員増強もうまく進み、委員会として以前よりまとまったように思います。

 ──委員会活動が事務所経営に通じる部分があるという話がありましたが、その点、久野さんはいかがですか。

 久野 確かに委員会活動と事務所経営の根本的な部分は一緒だと思います。会員増強は関与先拡大に、フォロー活動はリーダーとして自分の目指す事務所像をどのように事務所内に伝え、職員を育てていけるかということに、置き換えられると思います。
 東・東京会は、フォローよりもどちらかというと会員増強に自信があって。地域会委員や首都圏東SCGサービスセンターのメンバーと一緒にモチベーションを高めながら目標に向かって取り組んでいくのは得意ですが、フォローにはやや課題があります。これを、私自身の事務所に置き換えてみると、やはり関与先拡大は得意な方ですが、職員育成には課題があると感じています。

 ──荒木さんはどうですか。

荒木康仁会員

荒木康仁会員

 荒木 私も委員会活動と事務所経営は同じという考えです。でも、初めからそう感じていたわけではありません。

 ──何かきっかけがあったのでしょうか。

 荒木 平成21年にTKCに入会してNMS委員会にも入りましたが、今思えば熱意もなく所属していただけでした。ただ、せっかく入会したからにはきちんと理解しようと、TKCのシステムや理念を自分なりに一生懸命勉強したんです。『TKC会報』を読むといいことばかり書いてあるので、「嘘を暴いてやるぞ」というくらいの気持ちもありました(笑)。
 経験や勉強を積み重ねて、入会から3年ほど経ったある日に、急にふと「本当にいいものなんだ」と「腑に落ちた」瞬間があって。そのときに、関与先に対してはもちろん、ニューメンバーズやTKC未入会の税理士・公認会計士の皆さまにも、本腰を入れてこのTKCの取り組みを伝えていきたい、伝えていかなくてはいけないと思ったんです。
 物事を伝えようとするときに、相手にきちんと響くように伝えるためには単に自分が理解するだけではだめで、「相手に一番響くポイント」はどこかを考えるようにしています。考える過程で自分の理解も深まっていきました。
 それから、塩見さんもおっしゃっていましたが、私も「つながり」を重視するようになりました。特に、誰に何を、どのようにお願いするかがとても重要です。ニューメンバーズ会員をフォローしていく上で長い時間をかけて信頼関係を築くことはとても大切です。その中で何かお願いごとをすることになったときには「あなたは私が一生懸命考えてお願いしている相手だ」「私もきちんとフォローするから一緒にやってほしい」という気持ちを丁寧に伝えることが大事だと思っています。これは関与先にも対しても、職員に対しても、同じことだと思います。

表彰制度をきっかけに弱点克服 事務所の一体感も醸成できた

甲賀伸彦委員長

甲賀伸彦委員長

 ──ここからは皆さんの事務所の取り組みについてお伺いします。第2ステージにはどのように取り組まれましたか。

 久野 実は、1年前の委員会会議で、甲賀委員長から「委員長は表彰条件を満たしていて当然」という話を聞いて、ドキッとしました(笑)。恥ずかしながら、その時点ではまだきちんと表彰項目を実践できていなかったんです。
 事務所に戻ってすぐに現状を確認すると、特定の項目は上位にありましたが、中小会計要領は、事務所の方針として率先して取り組んでいるという認識があったにも関わらず、実際の数字を見たら表彰基準の70%にも到達しておらず愕然としました。他の項目についても、自分が思っていたよりもできていなかったことが分かって「こんな事務所ではいけない」と、すぐにSCGやセンター長に相談して、「受賞したいので、手伝ってほしい」と伝え、具体的なアドバイスをいただきながら改善していきました。
 中小会計要領は、基本的にほぼ該当しているはずだったので見直したところ、個別注記表への注記記載漏れやチェックリストの作成漏れという単純なミスも結構あって、そういうものを一つひとつ潰し込んでいくとようやく70%に到達しました。
 改めて、その時点で事務所の現状を見直すことができてよかったと思います。
 表彰項目のFX累計社数については、事務所の経営企画担当者に旗振り役をお願いし、頻繁に現状確認をしながら取り組みました。昨年末頃に新たに関与したお客さまには年内には初期指導を完了し、初回伝送をしてもらうなど、とにかく事務所一体となって、できることを行いました。
TKCモニタリング情報サービス」についても、担当推進リーダーを決めて、事務所を引っ張ってもらいながら推進しました。ですから、今回の受賞は個人の力ではなく、事務所の皆で獲得したという実感です。事務所の目標達成の一つのきっかけにもなり、事務所をまとめるのにも非常にいい機会だったと感謝しています。

 ──「TKCモニタリング情報サービス」は推進してみていかがですか。

 久野 このサービスは、電子申告と似ていると思っています。お客さまに「どうしますか、やりますか?」とお伺いして決めるというよりは、受け入れ体制のある金融機関に対して事務所として迷わずに推進していくもの。おそらく数年後には当たり前のことになっていると思うので、今このタイミングでTKC会員が率先してやらないといけないと思います。

 荒木 世の中の流れがある中で、先頭を切っていけるかどうかというところですよね。さらにTKCは「決算書の信頼性」という点で他の事務所と差別化が図れますので、私たちはますます巡回監査を徹底して取り組まなくてはならないと思います。

 ──書面添付純増件数で受賞された塩見さんは、どのように取り組まれましたか。

 塩見 私は、先輩会員から「書面添付はやればやるほどお客さんとの関係が密になる」「書く内容が豊かになるということは、会社への理解が深まっているということだ」と聞いており、入会当初から書面添付を実践したいと思っていました。
 実際に継続して取り組んでみると、昨年よりも書ける内容が増えていく。巡回監査を通じて、事務所としてお客さんに対する理解が増え、それを目にできることが楽しいです。さらにその過程で、職員たちもお客さまに新たなご提案ができるようになりました。
 それから、「書面添付実践六箇条」を改めて読んで、その通りだと感動したことも大きいです。事務所の職員全員に配って、書面添付の意義を再確認するようにしてきました。

 荒木 第2ステージに本腰を入れたきっかけは、甲賀委員長が檄を飛ばしてくださったということが一つ(笑)。もう一つは、2年前に、当時のTKC全国会会長だった粟飯原一雄最高顧問に「千葉会はもっと頑張れ」と言われたことです。「地元のためにも何か貢献したい。期待を裏切れないな」と感じ、頑張ってみようと思いました。
 表彰項目の中で、事務所が一番推進できそうな項目は書面添付だと考え、事務所に帰ってから職員に「書面添付をやるぞ!」と意気込んで伝えたところ、「書面添付って何ですか?」と言われてしまって(笑)。初めはなかなか思うように進みませんでしたが、その都度丁寧に説明していくうちにコツを掴んでもらえました。次第に、職員たちが「次の巡回監査ではこの項目をきちんと聞こう」「決算のまとめに使おう」など、自ら書面添付を活用してくれるようになって、それに伴って業務品質がぐんと上がった実感があります。
 それから、何よりも職員との関係が、以前よりも密になったと感じます。書面添付はテクニカルにとにかく出せばいいというものではないので、第2ステージ終盤になってからは、私からはうるさく言いませんでしたが、職員たちが表彰を意識してか、最後の半年間は特に頑張ってくれました。
 事務所を数日留守にするので表彰旅行への参加をためらっていたら、職員から「ぜひ行ってください」と言ってもらえて、そのことが一番うれしかったです。今回表彰をいただけたのは、2年前に改めて決意して、「一緒に成長していこう」と事務所一体となって取り組めた成果だと思います。

職員が金融機関に自主的に声がけ経営支援セミナーに7行が参加

 ──第2ステージを終え、関与先の拡大や金融機関との接点が増えるなど、事務所経営に変化はありましたか。

 久野 事務所として、もっと付加価値を提供できる経営をしたいと以前からずっと考えていまして、第2ステージを機にきちんと書面添付に取り組むようになりました。月次巡回監査でお客さまと会ってしっかり話をする、話の中で改善すべきところにお客さまが気づいて改善する──という繰り返しの中で、顕著に業績が上がるお客さまもいます。そういう方には、顧問料アップのお願いを自然にできますので、じわじわではありますが事務所の売上アップにもつながっています。
 まだまだ取り組みの途中で、金融機関からお客さまの紹介が極端に増えたということはありませんが、最近は金融機関の担当者から「決算書に書面添付が付いているのでありがたい」というお言葉をいただけることが多々あるので、「書面添付を実践している事務所」という認識は広まっているのかもしれません。
 先日、あるお客さまからは「銀行から融資してもらうのは無理だと思っていたけど、久野さんのおかげで借りられました」と言っていただけて。もちろん書面添付をしていたことだけが理由ではありませんが、そう言ってもらえると自信になりましたし、勇気が出ました。

 ──金融機関との交流はもともと多かったのですか。

 久野 実は、以前は金融機関との関係をそれほど重視しておらず、毎年開催している経営支援セミナーにも2年前には金融機関の参加は1行だけでした。
 TKC全国会が金融機関との関係を深めているという背景もあり、事務所として「積極的に金融機関との連携を深めよう」という方針を打ち出しました。さらに、「せっかくだから経営支援セミナーにも、支店長クラスの方々に来てもらおう」と事務所内で声がけしながら取り組んだところ、去年開催したセミナーには、メガバンク2行、地方銀行・信用金庫4行、日本政策金融公庫の支店長クラスの方々に来ていただけました。
 もちろん私自身も金融機関への声がけを積極的に行いましたが、職員も自ら進んで金融機関の支店長を連れてきてくれるという行動につながったのでうれしかったです。
 表彰制度をきっかけに「事務所全体で盛り上げて取り組んでいこう」という雰囲気ができるなど、いろいろな面で思いがけない効果が出ています。

 塩見 私が感じる変化は、以前よりも、お客さまが新たなお客さまを紹介してくれるようになったことです。
 私は書面添付連続提出の「表敬状」を活用していまして、3年以上書面添付を連続して実践されたお客さまに、表敬状を立派な額に入れてお渡ししています。社長は表敬状を目立つところに飾ってくれるなど、こちらが想像している以上にすごく喜んでくださいます。中には「なぜ自分は表彰されたの?」と聞いてくる社長がいて、その都度説明しますが、少し時間が経つと表敬状を見ながら「なんでだっけ?」と再び聞かれる(笑)。そのように繰り返し説明するうちに、しっかり理解していただいて、ある社長からは、「塩見に頼むと、表彰してもらえるぞ」と、新たなお客さまをご紹介いただけたこともありました(笑)。書面添付をきっかけにして「塩見の事務所にはいろんなメリットがある。こいつ、いいぞ」と周囲に紹介してくださるようになったことはうれしい驚きでした。

座談会風景

「儲かる」ビジネスモデルを実践しニューメンバーズに見せていきたい

 ──第3ステージがスタートして、NMS委員会としては「2021年9月までに1万1事務所を達成する」という目標を掲げています。会員増強の意義についてどう考えていますか。

 久野 東・東京会は20地域会の中でも会員の平均年齢が高い地域会で、廃業・死亡などの自然退会や、他地域会への移転もあります。関与先拡大も同様ですが、「拡大」なしには純減してしぼんでいく。組織を大きく、強化しなければ、社会的影響力も弱くなってしまうので、地域の活性化に貢献できるよう力を注がなければいけないという使命感のもと、取り組んでいるところです。

 塩見 大阪は商売人の町で、値段にシビアな地域です。お客さんからは「今日、いい天気ですね」と同じくらいの軽いノリで「まけてや」とか「これがなんぼになるの」と言われてしまいます(笑)。
 そのような環境で、とにかく価格を下げてお客さんを増やすという事務所もありますし、一方で顧問料をきちんといただきつつ良質なサービスを提供するという事務所もあって、線引きがすごくはっきりしています。
 ですから、大阪風にいうところの「儲かる」ビジネスモデル、つまり付加価値を生む事務所経営を実践できるTKC会員事務所が増えていかないと、特に若い人は納得してくれません。野垣会長も常に、「もっと儲けな、あかん」(笑)とおっしゃっていて、本当にそうだなと。売り上げが伸びるということは、それだけお客さまに認められて顧問料をいただけるということです。お客さまを支えつつ儲かる仕組み、つまりオールTKCのビジネスモデルをきちんと考え、まずは私たちが実践しなくてはいけないと思います。
 久野さんもおっしゃるように、ニューメンバーズ会員が納得できる仕組みを地域で整えなければ会員は減っていきますので、委員会だけでなく地域会全体としても危機感を持って取り組んでいます。

 荒木 会員増強は、いくらうまいことを言ってお誘いしても中身が伴わなければ会員は増えません。ビジネスとは、サービスを提供してお金をいただくものですが、私はまず「税理士という職業はサービスを提供し、その結果お客さまを幸せにできるものだ」ということを伝えるようにしています。その上で、「TKCでは従来の税理士業務だけではなく、さまざまな新しいシステムや制度を取り入れながら、お客さまの成長を支援している」ことをアピールし、これこそが、一番われわれが目指したいことだとお伝えしています。
 税理士資格を苦労して取った皆さまには、必ず成功したいという思いがあるはず。その思いを叶えながら、お客さまを幸せにできる税理士事務所がたくさん増えて、その結果日本が元気になる──こんなに素晴らしいいことはないという考えが、私が会員増強に取り組む理由です。だから、私は増強が大好きなんです(笑)。

 ──TKC会員は共通の理念でつながっているところが強みですよね。

 久野 例えば職員が100人いる会計事務所は、その地域では大型会計事務所かもしれませんが、社会的影響力があるのかといえば、できることは限られています。TKC全国会という組織はTKCのバックアップのもと1万人以上の会員が全国にいて、社会的影響力を持っている。ここに所属するメリットは、小さい事務所も大きい事務所も同様にあります。会計事務所と金融機関との関係を考えても「TKC会員事務所」というだけで築ける関係もたくさんあると思います。

 荒木 TKC未入会の事務所をお誘いしてセミナーに来てもらえたとき、その事務所は少なからずTKCに興味を持ってくれています。なぜ興味を持ってくれたのか聞いてみると、何か課題があって、それを解決するために、事務所の方向性をどうするか、経営者としてどのようにリーダーシップをとるか悩まれているんです。
 それに対して、「TKCのやり方はこうです。社会の納得を得られる方向に向かってこのような取り組みをしています」ときちんと示せれば、どこまで理解や共感をしてもらえるかという程度はあるにせよ、その方たちが抱えている課題に必ず響いてくれると考えています。
 それでも入会しないというときには、「TKCに入会したら必ず〇〇しなければいけない」など、誤解されているところが少なからずあると思うので、そういう部分を正しく理解してもらうのが委員会の役割でもあります。

TKCの仲間と一緒に税理士を夢のある職業にしたい

 ──最後に、地域会委員長として、それぞれの地域でどのような役割を果たしていきたいか教えてください。

 久野 今後はニューメンバーズ会員の高付加価値経営の支援に力を入れていきたいです。それには、まずは自分の事務所が実践して「背中を見せながら」ということで、しっかり取り組んでいきます。
 それから、第3ステージは東・東京会からも、どんどん表彰対象となるニューメンバーズ会員が出るように、丁寧なフォロー活動を行っていきたいと思っています。

 塩見 儲けることは大事ですが、「何をやってもいいからとにかく儲ける」というのは違うと思っています。TKCビジネスモデルに真摯に取り組んで、関与先を支援して、その結果として儲かっている──という過程も大切です。ニューメンバーズ会員には「こんな事務所になりたい」と憧れる事務所を見つけてもらって、どんどんTKCビジネスモデルを実践してもらいたい。そうすればその後に入会した会員もその姿を目指すという、よい循環ができます。
 微力ながら、私も自分の事務所で率先して取り組みつつ、憧れられる事務所にしていきたいです。

 荒木 第3ステージの運動方針である、「TKC方式の書面添付」「TKCモニタリング情報サービス」「TKC方式の自計化」の三つは、方針だからやるというよりも、税理士として取り組んで当然、いま取り組まなくてはいけないことだと思います。もし不安に思う会員がいれば、ぜひフォローさせていただきます。
 地域会委員長という立場なので、ニューメンバーズ会員の皆さまとは長い付き合いになります。税理士という同じ志を持つ仲間として、ぜひ一緒に同じ方向に向かって取り組んでいきましょうと伝えたいです。「夢・決断・挑戦! つかみとれ未来を!」というスローガンのもと、ちょっと照れますが(笑)、「もっと夢を持とうぜ」「一人では無理だから一緒にやろうよ」と伝えたい。その結果、われわれ税理士が今よりも社会から評価されるようになり、もっと夢のある職業になればうれしいです。

 ──皆さまの事務所がさらに発展して「この人についていきたい」と思われる事務所になれば、続くニューメンバーズ会員も活躍していく──この流れが社会を変えていく礎になればいいですね。今日はどうもありがとうございました。

(構成/TKC出版 小早川万梨絵)

ニューメンバーズ会員への支援体制

 ニューメンバーズ会員の皆さんの最大のテーマは、社会や時代が求める月次巡回監査体制を一日も早く構築することです。目の前には関与先拡大や職員教育の難しさなど数々の荒波が待ち受けていることでしょう。これらの試練を避けて通ることはできませんが、TKCSCGサービスセンターの支援に加え、ニューメンバーズ・サービス委員会のメンバーを中心に先輩会員がニューメンバーズ会員の皆さんを支援いたします。

 TKCとの出会いや会員との縁を大切にされ、第一級の会計事務所構築に向かって情熱を持って取り組んでいただきたいと思います。入会されたニューメンバーズ会員への具体的な支援は主に以下の通りです。

  1. TKC全国会入会セミナー
     TKC入会後、最初に受講していただく研修です。TKC会計人としての基本理念、関与先指導の方法をはじめとする発展する事務所作りのポイント、TKCシステムとサービスの基本コンセプト等について学びます。当セミナーは所長と配偶者をご招待し、1泊2日で研修を受講していただきます。
  2. TKCニューメンバーズ実務セミナー
    「TKC全国会入会セミナー」受講後、各地域会ごとに先輩会員が講師となり実施する研修です。TKCシステムの概要、初期指導の進め方、巡回監査の実務等について学びます。所長のみならず職員の皆さんも一緒に受講いただく研修です。
  3. 会長(支部長)事務所見学会
     各地域会会長または支部長の事務所見学会を開催します。巡回監査の実務、事務所内管理、職員採用・教育等、事務所経営全般を説明いただくとともに、質疑応答、所内見学を実施します。
  4. ニューメンバーズフォローセミナー
     定期的に、事務所経営、初期指導のポイント、巡回監査の実務、経営計画策定支援、自計化推進、電子申告、書面添付への取り組み等をテーマにセミナーを開催します。日頃の事務所経営における疑問点等の解決の場としてご活用いただけます。
  5. TKCニューメンバーズフォーラム
     全国のTKC入会3年未満の会員が参加し、毎年11月に開催しています。地域を超えた会員同士の相互交流やTKC基本理念、TKC全国会重点活動テーマの具体的な実践を通した活気溢れる事務所作りにお役立てください。
  6. ニューメンバーズ会員支援訪問
     入会後の初処理を支援するために、入会後6か月間で、TKC会員がSCGと一緒に新入会員を訪問します(訪問回数は原則3回)。
     訪問を通して「TKC地域会(支部)活動への積極的な参加促進」「関与先の黒字化支援のための月次巡回監査体制の構築」「入会3か月以内にTKC基本システムを利用開始」といったことを支援いたします。

(『TKCニューメンバーズ実務セミナーテキスト 第14版』P1から一部抜粋)

(会報『TKC』令和元年5月号より転載)