三水ホテル 様

三水ホテル

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

棟ごとの計数管理を徹底し
顧客から選ばれる旅館を目指す

房総半島の南東部に位置し、鴨川シーワールドで有名な千葉県鴨川市。日蓮聖人が誕生した時にタイが群生したといわれる「鯛の浦」のエリアに「魚彩和みの宿三水」はある。太平洋をのぞむ絶好のロケーションを生かしたつくりで、保養のため宿泊する人が絶えない。旅館を切り盛りする吉田安男社長に、日々の財務管理を基盤にすえた経営戦略を語ってもらった。

和洋折衷の「別邸」で高級路線に拍車をかける

──施設のプロフィールを教えてください。

吉田安男社長

吉田安男社長

吉田 昭和38年に株式会社三水ホテルを設立し、現在の場所に鉄筋7階建ての旅館を開業しました。平成24年11月には本館のとなりに別館である「三水別邸」をオープンし、本館別館合わせて33室で営業しています。

──古いルーツをお持ちだとか。

吉田 本館の向かいにある誕生寺の門前で、祖母が茶店を営んでいたのが商売の始まりと聞いています。誕生寺は日蓮聖人降誕の地といわれる場所に建立されたお寺です。その後、昭和28年に父が木造の旅館を開き、宿泊業をスタートしました。

──客室の特徴をお聞かせください。

吉田 別邸は別荘のようにご利用いただける宿というコンセプトで、お部屋に半露天風呂や海を一望できるテラスが付いています。本館も5年ほど前に改装し、ロビー、客室、お風呂をリニューアルしました。寝湯付きの客室など、3タイプのお部屋の中から選んでいただけます。

──料理は「地産地消」を謳(うた)われています。

吉田 このあたりは古くから鯛の浦と呼ばれ、海産物が豊富にとれ、なかでも伊勢エビの漁獲高は三重県に匹敵するといわれています。それから金目鯛も有名で、房総沖のものはブランドになっています。当社は地元の天津漁港の入札権を持っていて、新鮮な魚介類を市場価格の約3割引きで仕入れられるのが強みです。お米や野菜も地元産にこだわり、房総半島産の食材をほぼ100%使用しています。

──観光目的の宿泊客が多いのでしょうか。

客室

吉田 以前は会社の慰安旅行や観光で来られる団体客が大半でしたが、最近は旅館で保養したいとお越しになるお客さまが多いようです。近隣の首都圏エリアから来られる方が80%以上を占めているためか、房総半島は近場ということもあり、めぼしい観光地はひと通り回ってしまっているのかもしれません。温泉にゆっくりつかり、おいしい料理を食べてのんびり過ごすというのが主要な目的になってきていますね。

──宿泊すること自体が目的になっているわけですね。

吉田 はい。別邸の客室はゆとりのある空間を設計し、ご自宅にいるような居心地のよさを感じられるのがうりで、年に3~4回お越しいただけるお客さまもいらっしゃいます。

──集客活動はどのようにされていますか。

吉田 旅行代理店からの送客は減少傾向にあり、インターネット経由の宿泊予約が60%をこえます。具体的には自社のウェブサイトから予約できるほか、じゃらん、楽天トラベル、一休など6種類の宿泊情報サイトに登録しています。8月が一番の書き入れ時で、例年、ゴールデンウイークが終わると夏休みシーズンまで集客に苦戦していましたが、高価格帯の別邸がご好評をいただき採算ラインに乗るようになってきました。

──高級路線を進めているのはなぜですか。

吉田 高価格帯の宿泊施設は需要に対して、数がまだ不足していると考えたためです。一年を通して割安な宿泊料を設定しているホテルチェーンはすでにあり、ビジネスモデルを確立している大手と真っ向から勝負しても勝ち目はありません。価格ではなく、快適さや雰囲気などの付加価値で勝負するため、ある程度の宿泊単価をいただくのは欠かせないと思います。

建物ごとに部門に分け仕入れと人件費を重点管理

──美保税理士と顧問契約を結んだいきさつをお聞かせください。

吉田 会社をさらに成長させるため会計について指導していただける税理士を探していたところ、地元の金融機関から紹介されたのが美保先生でした。顧問契約を結んだのはちょうど別邸が完成した時期でしたので、かれこれ3年ぐらいのお付き合いになります。

──昨年から『FX4クラウド』をご利用いただいていると聞いています。

吉田 毎月月次監査の後、売り上げ、経費の推移を監査担当の鈴木さんと話し合っていますが、そのなかで当社に最適な財務会計システムとして『FX4クラウド』の利用をすすめられました。当月の月次業績が翌月にはわかるところを重宝しています。

──以前はどのように業績を把握していたのでしょうか。

吉田 美保先生の事務所でTKCのシステムにデータ入力してもらい、《変動損益計算書》などの資料を提供していただいていました。当月の業績がわかるのが2~3カ月後で、経費が前月にくらべて増えているとき、どんな取引が発生していたのか記憶が鮮明でない場合もあり、原因を追究するのに時間を要していました。

美保哲夫顧問税理士

美保哲夫顧問税理士

美保 『FX4クラウド』をおすすめした理由として、社長の頭の中に新鮮な記憶が残っているうちに業績をつかんでいただきたいという思いがありました。また、私の事務所のある八千代市から三水ホテル様を訪問するのに車で2時間ほどかかるため、クラウド型のシステムであれば、よりきめ細かい支援を行えると考えました。

──現在の経理体制を教えてください。

吉田 本館の事務室で経理担当者が日々、伝票を入力しています。私はふだんデスクに向かっている時間が少ないので、気になる点があると随時経理担当者のパソコンをのぞいて確認しています。

──重点的に確認している科目は?

吉田 経費の50%以上を占める仕入れと人件費です。この2つの科目のチェックを怠ると経営の足を引っ張りかねないため、仕入れは食品と飲料に分けるなど、とくに重点的に管理しています。

──自計化された効果のほどはいかがでしょう。

吉田 翌月には前月末時点の最新業績を把握でき、急激な増減のあった勘定科目を分析できるようになり、助かっています。たとえば水道料金が前年同月や前月とくらべて極端に増えていれば、漏水や無駄づかいがないか予想し、分析するわけです。傷口を早期に絆創膏(ばんそうこう)でふさぐことができるんですね。

鈴木康之監査担当

鈴木康之監査担当

──気づきを得て早期に手が打てるようになったと。

吉田 ええ。また、以前は科目ごとの予算管理は年間ベースで行っていましたが、『FX4クラウド』を導入してからは月単位に予算の進(しんちよく)捗(しんちよく)状況を確認できるようになったのもメリットです。

鈴木 巡回監査と経営会議のため、毎月2回お伺いしています。会計事務所のパソコンで『FX4クラウド』を開き訪問前に伝票をチェックできるので、目標を達成するための打ち手を話し合う時間をより多く割けるようになりました。

──日ごろ『FX4クラウド』のどんな機能を活用していますか。

吉田 本館と別邸を部門として登録し、売り上げ、経費を分けて管理しています。『FX4クラウド』で集計した数字を元に土日祝日、平日ごとの売り上げ推移などがわかるスプレッドシートを独自に作成し、業績分析に生かしています。

県主催の台湾視察に参加インバウンド獲得に注力

──近年の訪日外国人の増加は追い風になっていますか。

料理等

吉田 房総半島は観光地としてまだ認知されていないのが現状です。インバウンド客を誘致するため、英語と中国語の案内パンフレットをつくったり、昨年は千葉県観光課が組織した同業者による協議会のメンバーとして台湾を訪問しました。森田健作知事を先頭に4泊5日で台湾中を回り、現地旅行会社の担当者を招いて千葉県や自社の宣伝、市場調査を行いました。

美保 吉田社長は非常に勉強熱心で、出張の際ホテルに宿泊したとき、参考になった点をお伝えする機会がありますが、すでにご存じであることが少なくありません。社長の経営判断に必要なデータは何かを常に念頭に置き、計数的な観点からアドバイスさせていただいています。

──将来のビジョンをお聞かせください。

吉田 この近辺には宿も多く、設備の充実度では新設のホテルに勝てませんから、安心できるサービスを地道に提供しつづけることがもっとも大切だと考えています。お客さまからの信頼感を高め、この地域で真っ先に選んでいただける旅館にしていきたいです。

企業情報

三水ホテル

三水ホテル

設立
1963年6月
所在地
千葉県鴨川市小湊182-2
売上高
約4億円
社員数
50名(パート含む)
URL
http://www.sansuihotel.com/

顧問税理士 美保哲夫
美保税務会計事務所

所在地
千葉県八千代市八千代台東1-28-12
TEL
047-483-4776
URL
http://www.miho-kaikei.jp/

『戦略経営者』2015年11月号より転載)