有限会社ケイワン 様

有限会社ケイワン

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

プロジェクト管理機能を活用し
収益力の向上を実現

古都鎌倉に銘菓あり。「鎌倉小川軒」の屋号でケイワンが製造販売している「レーズンウィッチ」は、幅広い年代のファンを抱える人気のお菓子。駅ビルや駅ナカなどに6つの直営店を出している中村友社長が業績管理に活用しているのはTKCの『FX4クラウド』である。中村社長と清水幹雄税理士、加藤嵩之巡回監査担当に話を聞いた。

駅ビルや駅ナカなどに直営6店舗を展開

──人気の高い看板商品があるそうですね。

中村友社長

中村友社長

中村 「レーズンウィッチ」という商品がそうです。サクッとしたビスケット(サブレー)で、香り豊かなラムレーズンと、口どけのよいバタークリームをサンドした洋菓子です。表面のサクサク感と、なかのジューシーさのコントラストをとりわけ大事にしており、幅広い年代のファンがいます。

──創業は1988年だとか。

中村 先代の父(中村敬臣氏)が東京代官山の「小川軒」から独立して会社を立ち上げ、その翌年、「鎌倉小川軒」の屋号で鎌倉本店と戸塚店を同時オープンしました。当社のレーズンウィッチは代官山小川軒の伝統を受け継ぐもので、いまでは地元客のみならず、鎌倉の銘菓として観光客の方たちにも人気です。

──レーズンウィッチ以外の商品についてはいかがですか。

中村 洋生菓子(ケーキ)や、焼き菓子(パウンドケーキ、マドレーヌ、カステラ等)の製造販売もしています。いずれの商品も良質で新鮮な素材を使うとともに、職人たちの手作りにこだわった製法を大切にしています。

──現在の直営店の数は?

看板商品の「レーズンウィッチ」

看板商品の「レーズンウィッチ」

中村 ①鎌倉本店②CIAL(シァル)鎌倉店③大船ルミネウィング店④東京駅一番街店⑤グランデュオ蒲田店⑥戸塚工場直営店の6店舗を運営しています。路面店である①と⑥を除いた4店舗については、いずれも「駅ビル」「駅ナカ」と称される商業施設内にあります。
 また、直営店での販売のほか、百貨店などへの卸売りや、駅ナカや食品スーパーなどで開かれる催事(「全国うまいもの市」などのフードイベント)での販売も行っています。

──駅ビルや駅ナカに直営店を出すようになったのは、どのような経緯からですか。

中村 2008年に東京駅の駅ナカで行われた催事にブースを出したところ思いのほか好評で、それ以来、出店の誘いがたびたび来るようになりました。帰省土産や出張先への手土産として買われる方も多いため、駅に隣接した場所は私たちに適しているようです。

──インターネット通販はされていますか。

中村 ええ、自社のオンラインショップ(ホームページ)やアマゾンを通じて販売しています。もともと以前から電話やFAXでの注文が結構来ており、それが少しずつネット通販に移行していった感じです。ネットからの注文のおよそ半数は、地元神奈川県に在住の方からのもので、お中元・お歳暮などとしてご利用いただくケースも多いです。

──製造拠点は1カ所だけなのでしょうか。

中村 はい、戸塚工場ですべての商品の製造を行っています。以前は、レーズンウィッチを専門に作る第1工場と、それ以外の洋菓子を作る第2工場の2つの製造拠点がありましたが、現在は戸塚工場1カ所に集約しています。

「部門の階層管理」で商品の採算性を分析

──2013年に日本パートナー税理士法人と顧問契約を結んだきっかけをお聞かせください。

中村 私が、創業者である父親に代わって実質的に会社のかじ取りをするようになったのは、今から10年前のこと。会社経営に関する教えを十分に受けないまま引き継ぎをしたこともあり、次第に業績が下降線をたどるようになっていました。そこで毎月、経営上の助言を得られるような会計事務所に代えたいと父親に申し出たところ、「だったらTKCの会計事務所がいいのでは」とのアドバイスをくれました。それで紹介してもらったのが、清水先生のいる日本パートナー税理士法人だったというわけです。

清水幹雄税理士

清水幹雄税理士

清水幹雄税理士 記帳代行サービスに特化していた以前の会計事務所は、月次試算表が出てくるのが3カ月~半年に1回程度だったそうです。まずはスピーディーに業績をつかむためにも「自計化」が必要と考え、TKCの財務会計システム『FX2』を導入してもらいました。さらに「卸売り」「催事」「各直営店」などの業績が個別に把握できるようにと、部門別管理をはじめました。

加藤嵩之・巡回監査担当者 また、材料仕入れ、包装費、賃金、外注費、製品発送費といった、あらゆる費用を工場別(当時2拠点)に管理することも徹底しました。すると、どこに経営の弱点があるのかが少しずつ見えてきたんです。

──何が問題だったのですか。

中村 ひとつは、売り上げに対する人件費の大きさです。当時、工場の稼働時間は大変長く、菓子職人たちを朝から晩まで働かせていました。だから残業代の支払いも多くて結局、月給の2倍を払っているような状態でした。
 そしてもうひとつ、包装資材のコストがかさんでいた点も問題でした。商品点数のみならず販売ロスも多かったため、無駄になってしまうケースも少なくなかったのです。部門別管理によって、こうした問題点が浮き彫りになっていきました。

──そこでどんな対策を取ったのでしょうか。

製造拠点の戸塚工場

製造拠点の戸塚工場

中村 一言でいえば、商品の絞り込みです。主力商品であるレーズンウィッチをはじめとした売れ筋商品と、そうでない商品とを明確に分け、売れ行きがいまひとつの商品については思い切ってラインアップから外しました。そうすれば、菓子職人たちの作業量も軽減されるし、包装資材にかけるコストも減らせるわけです。

清水 2015年に『FX2』から『FX4クラウド』に切り替えてからは、より細かい単位での商品分析ができるようになりました。『FX4クラウド』なら、多階層での部門別管理ができます。この機能を生かして、1段目の階層には「鎌倉本店」などの直営店、その下に2階層目として「レーズンウィッチ」や「パウンドケーキ」などの商品をぶら下げるようにして、「部門の階層管理」をはじめたところ、おのおのの商品の採算がより正確に把握できるようになりました。

プロジェクト管理により出店する催事を取捨選択

中村 また、『FX4クラウド』の「プロジェクト管理機能」を使うことで、催事ごとの損益がわかるようになったのも大きかったですね。たとえば、Aという催事は十分に利益を獲得できたけど、Bという催事はそれほどでもなかったなどという具体的な採算性が数字で明確に判断できるようになりました。

加藤嵩之・巡回監査担当者

加藤嵩之・巡回監査担当者

加藤 プロジェクト管理機能を使えば、決算期ごとに損益が区切られる部門別管理とは違って、任意に登録したプロジェクトごとの損益を集計することができるようになります。催事への出店にあたっては、自分たちで販売スタッフを確保したり、器具を借りなければならないなど、場所代(地代家賃)以外にもさまざまなコストが掛かります。それでもきちんと採算が取れる催事でなければ、参加する意味がありません。このような見極めをするうえで、プロジェクト管理はケイワンさんにとって非常に役立っています。

──この1年間でどのくらいの数の催事に出店されたのですか。

中村 毎月7~8件はコンスタントに出店しているので、年間100件ほどでしょうか。これをもっと採算が取れるところだけに絞り込んでいければと思っています。

──商品や催事の絞り込みを進めた結果、会社の経営状態は改善されていったのでしょうか。

中村 だいぶ良くなっています。おかげさまで本年度の決算では、無事に黒字を達成しており、7年ぶりに従業員に決算賞与を支給することができました。もちろん業績の改善を可能にしたのは、従業員たちの頑張りがあったことも忘れてはならないでしょう。部門別に設定した予算の達成に向けて、みんな本当によく頑張ってくれました。

加藤 予算については、『継続MAS』を使って、部門別の予算に落とし込みました。

中村 各直営店では、自分たちの店舗の月間の予算目標をさらに細分化して、1日の売り上げ目標にまで落とし込んでいます。それを達成できるように日々、みんなが売り上げ獲得に努めてくれています。ちなみに直営店のスタッフには、毎日の売上高などを各店舗にあるパソコンを通じて『FX4クラウド』に入力してもらっています。たとえ経理に関する知識がなくても「仕訳辞書」をうまく使えば、誰でも簡単に入力作業ができます。このようにして店舗での入力作業をはじめたことで、店舗責任者の数字に対する意識はずいぶん変わっていきました。

──現場で入力する体制を整えることで、タイムリーに数字をつかむことができるようになったのでは?

中村 ええ、会社にあるパソコンで毎日のように『FX4クラウド』の画面をチェックしています。さらに「スマート業績確認機能」を利用すれば、外出先からもスマホで会社の業績が見られるとお聞きしたので、近いうちにぜひ使ってみたいですね。

──今後の展開は?

中村 看板商品であるレーズンウィッチの派生バージョンである「セゾンウィッチ」に力を入れようと考えています。レーズン以外の「季節のフルーツ」を使って、季節感を演出する新商品です。発売早々たいへん好評を得ており、新たな人気商品となっています。こうした新商品開発に注力していくことで、「鎌倉小川軒」のファンをさらに増やしていきたいですね。

企業情報

有限会社ケイワン

有限会社ケイワン

設立
1988年9月
所在地
(本社)神奈川県鎌倉市極楽寺1-13-27
(営業本部・生産部)神奈川県横浜市戸塚区戸塚町2779
売上高
5億4,400万円
社員数
65名(パート含む)
URL
https://www.ogawaken.jp/

顧問税理士 日本パートナー税理士法人・横浜支社
税理士 清水幹雄

所在地
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2丁目23番地2
TSプラザビルディング12階
URL
https://www.kijpa.co.jp/

『戦略経営者』2018年12月号より転載)