株式会社エスワイシステム 様

統合型会計情報システム『FX4クラウド』 ユーザー事例

ダイバーシティー戦略を武器に
高い技術力と顧客満足を実現

2017年に上場したSYSホールディングスの中核会社であるエスワイシステム。1991年の創業以来、独自の人材戦略をベースとした高い技術力を武器に成長を続けてきた。その経営戦略について、同社の後藤大祐専務、伊藤政光取締役、飯田友美マネージャー(総務経理グループ)、原則明顧問税理士に聞いた。

──業容は?

後藤大祐専務

後藤大祐専務

後藤 企業の基幹システムのソフトウエア開発がメインの業務で、金融機関や保険会社、電力会社、製造業などがクライアントになります。このほか、自動車の自動制御装置(ECU)のソフトウエア、あるいはスマートフォンの組み込み型ソフトウエアの開発も手掛けています。

──4年前にジャスダックに上場されました。

後藤 その10年前くらいから準備はしていたのですが、リーマンショックなどで延び延びになり、2017年にようやく上場できました。正確に言うと上場したのはSYSホールディングスで、エスワイシステムはその創業・中核会社になります。ちなみにSYSホールディングスは海外1社(インドネシア)を含め11社を束ねています。

──上場の目的は?

後藤 ご承知の通り、ソフトウエア開発の業界は多重下請け構造になっていて、当社も過去は下請構造における下方の仕事を余儀なくされていました。そうした状況のなか元請けの仕事を増やしたかったのですが、そのためにはやはり「上場企業」という社会的な信頼感が必要だったのです。それと、もう1つの目的は採用面でした。IT業界といえば典型的な労働集約型産業であり、人がすべてです。上場企業になることで、優秀な人材を確保したいという思いは、当然ながらありました。

──強みは?

後藤 自社内でソフトの要件定義から設計・開発、運用・保守まで一貫したサービスが提供できるところでしょうか。それと、社員が安定しているのも強みだと思います。IT業界の転職率は3割くらいと言われていますが、当社は1割を超えていません。そのため、安定した技術と品質をお客さまに提供できているのだと思います。

──働き方改革に熱心だからでしょうか。

後藤 とくに上場以降は平均残業時間や有給取得率などの指標に目標を定めてシステムで管理しながら改善の取り組みをしていて、それも大きな理由の1つでしょう。たとえば、残業時間は平均14時間/月に抑えることに成功しています。
 もう1つは創業からの人材活用の考え方にあると思います。現代表の鈴木裕紀と安田鉄也がそれぞれ26歳と24歳の時に当社を立ち上げた時には、とても優秀な経験者が来てくれるような会社ではありませんでした。そのため、「新卒」と「中途は業界未経験者」に絞って採用し、一からエンジニアに育てる手法をとってきました。さらに、女性、外国人、高齢者の雇用にも積極的に取り組んできました。その意味では、当社は創業当時から「ダイバーシティー」を推進しているといえます。たとえば、女性の比率は現在23%ですが、近い将来には40%に持っていく予定。外国人比率は現在10%弱。これも30%が目標です。

──外国人はどのようなルートで?

後藤 現地の大学に直接アプローチをして会社説明会を開き、意欲のある方を募ります。その際、「日本語ができる人はIT技術のない方」「日本語ができない人はIT技術のある方」をターゲットにします。その両方の能力がある人は、条件だけですぐに転職してしまいますからね。現在、当社には中国や東南アジアなど、9カ国の社員が在籍しています。

ERPパッケージ製品の販売にもチャレンジ

──最近では、受託開発だけではなくERPパッケージソフト『SYSERPクラウド』の販売にも取り組まれているとか。

後藤 実は、この製品は、もともと社内システムだったんです。当社の原価管理や販売管理、勤怠管理システムなどとTKCの『FX4クラウド』や『PX4クラウド』を連携して、全体の業務を統合した基幹システムとして開発してきました。長年、積み上げてきたノウハウを製品化につなげたというわけです。

──TKCシステムとの連携を考えられた経緯は?

伊藤政光取締役

伊藤政光取締役

伊藤 2003年に原先生を当社の顧問に迎え、FXシリーズで財務管理を行ってきました。そして、リーマンショックの少し前に、上場準備のためのシステムの入れ替えを行ったのですが、その時に『FX4クラウド』を導入しました。

『FX4クラウド』は外部とのデータ連携が幅広くできるので、エスワイシステムさんのシステムとも親和性が高く、そこが今回の製品化にいたったポイントのひとつだったと思います。

──製品の特長は?

伊藤 当社の業態は、仕事を受託して納品までが長く、仕掛品の原価計算に難しさがあります。また、外注費や経費の配賦の仕方も絡んできて複雑な計算が求められます。実は、建設業や工事業も同じような悩みを抱えており、『SYSERPクラウド』は、IT業界だけでなく、これらの業界もターゲットにしています。発売以降、評判は上々で、もうすでに導入事例も出始めました。価格も同様の原価計算ができるシステムに比べ、大幅に安いと自負しており、年商10~100億円の伸び盛りの会社がもうワンステップ上がるために活用していただくのに最適な製品だと考えています。

原則明顧問税理士

原則明顧問税理士

 建設工事業の問題点は、月次仕掛工事の額が正確に算定できないこと。構成する要素が煩雑で多くの企業で手が付けられないのです。しかし、この製品を使うと月次仕掛工事の算定が正確にできるし、同時に販売管理も行えるのでニーズはあると思います。

──ところで、『FX4クラウド』のシステム開発事業者としての評価はいかがでしょう。

伊藤 やはり連携のしやすさでしょうか。それと、原先生やTKCのスタッフの方々のフォロー体制が手厚いですね。実は、上場準備の際、会計システムのグループ内の統一のためにTKCだけでなく複数の他社システムも採用候補に挙げて検討した時期がありました。結果、使い勝手、サポート体制、コストなどを総合的に判断して『FX4クラウド』を継続採用した経緯があります。

国内関連会社のシステムを『FX4クラウド』に統一

──どのような運用を──?

飯田友美マネージャー

飯田友美マネージャー

飯田 上場基準を満たさなければならないので、とにかく早くということで、原則、翌月の4~6日くらいに単体、8日までに連結の業績を確定します。それを積み上げて四半期、半期、年次決算へとつなげます。また、「マネジメントレポート(MR)設計ツール」という機能を活用して、取締役会などの業績検討資料や連結会計へつなげるためのデータを作成しています。データを自在に切り出して思い通りの帳表が作成できるMR設計ツールは、すばらしいと思います。はじめて操作した時にはとても新鮮に感じました。

※連結はTKCの連結会計システム『eCA-DRIVER』を使用。

──連結というお話が出ましたが、グループ会社の扱いは?

伊藤 いまは年に2社くらいの割合で連結対象子会社が増えているので、その会社がTKC会員の顧問先でない場合は、都度、原先生にお願いするなどして『FX4クラウド』に変更してもらっています。2030年には30社のグループにするという目標があるので、その際にも、翌月6日以内の月次決算体制を維持できるようすべての会社の会計システムを統一する必要があるのです。

──今後の見通しは?

後藤 2030年30社、年商300億円、従業員3,000名、営業利益24億円という目標に向けて努力し続けます。そのなかでエスワイシステムは中核企業、グループをけん引する企業としてあり続けたいですね。それと、ERPは当社が手がけたパッケージ製品としてはほぼはじめてのもの。これまでは受託開発に特化してきて、あえて手掛けていなかった分野への挑戦です。これを成功させて、さらなる飛躍を実現したいと考えています。

企業情報

株式会社エスワイシステム

設立
1991年1月
所在地
愛知県名古屋市東区代官町35-16
売上高
39億円(2021年7月期)
(SYSホールディングス62億円)
従業員数
507名
URL
http://www.sysystem.co.jp

原則明税理士事務所

所在地
愛知県名古屋市名東区高間町31-6
URL
http://www.harazei.com

『戦略経営者』2022年1月号より転載)