黒澤建設株式会社 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド)
TKCモニタリング情報サービス ユーザー事例

充実した連携機能を活用し
2部門の業績管理を精緻化

「人生にワクワクを」とのモットーを掲げ、高級食パン店をオープンするなど、異色の経営が注目を集めている黒澤建設。業容の拡大にともない、このほど会計システムを移行。原価管理ソフトとのデータ連携機能を活用して経理業務の省力化を図り、早期の業績把握に努めている。黒澤誠社長は「クラウド型のシステムで、より迅速に打ち手を施せるようになった」と話す。

斬新商品で人気を呼ぶモデルハウス併設のパン店

──施工されている住宅の特徴を教えてください。

黒澤 「自由設計」をコンセプトに、天井が高くて開放的なアメリカンテイストの住宅を売りにしています。メインの顧客層は、20〜40代の方々。施主さまの思いをかたちにし、期待を常に上回ることをモットーにしています。

──強みを挙げるとしたら?

黒澤 基礎工事から屋根の板金工事まで、うち1社で完結できるところですね。建設業界は人手不足で、基礎工事を行える外注さんを探すのに苦労していました。それなら、自社で手がけた方が手っ取り早いと考え職人を募り、一貫施工するようになったんです。

丹野税理士 従業員さんはみな優秀で、仕上がりも早くかつ丁寧。仕事ぶりが評価され、リピートされる取引先も少なくありません。

──どんなルートで商談を獲得していますか。

黒澤 住宅の新築やリフォームを検討されている方をお客さまから紹介してもらう場合が多いです。本社近くのモデルハウスにご案内するとイメージがわくようで、大抵の方は「建てたかったのはこんな家だよ」とおっしゃいます。営業はあまり得意ではないので、うちの住宅に興味を持って相談してもらえるよう、しかけることに注力しています。

──昨年4月にオープンされた高級食パン店が話題をよんでいます。

黒澤 山形駅の近くに繁盛しているベーカリーがあり、自分もやってみたいと思ったのがきっかけです。以前からモデルハウスを見学された方に、そのお店の商品を手土産として差し上げていました。ちょうど本社そばの土地の地主さんから土地の購入を打診されていて、新たな事業を始めて、町を盛り上げたいという思いもありました。置賜地方初の高級食パン店として、地元の人々を中心にひいきにしてもらっています。

──異業種ですから、オープンにはご苦労もあったのでは……。

黒澤 ベーカリーの開業プロデュースを手がける企業の支援を受け、パンの製造方法から店舗運営のノウハウまで、10日間ほどみっちり学びました。スタッフたちがお店のバックヤードで、全てのパンを手づくりして提供しています。パンづくりは気温や湿度で出来具合が変わり、とても奥深い。製法をひととおりマスターするのは大変でした。
 開業に際しては丹野先生にご支援いただき、事業再構築補助金に採択されたのも大きかったです。

丹野 私の事務所では、認定支援機関として関与先企業さまの各種補助金申請支援に注力しており、「高級食パン店を兼ね備えたモデルハウス新築事業」という計画名で申請し、採択されました。社長と事業計画策定にいそしんだのを思い出します。

──商品開発はどのように?

黒澤 社内で話し合ってアイデアを出し、ベーカリーの支援会社に相談して商品化しています。「メロンパン食パン」や「あまおう苺あん食パン」など、変わり種の商品も多いです。数量限定のパンを発売してSNSで情報発信しつつ、次はどんな新商品が出るんだろう、とワクワクさせるよう心がけています。

最新業績データを即座にスマートフォンで確認

──今年から『FX4クラウド』を活用されていると聞きました。

黒澤 ベーカリーが評判を呼び、モデルハウスに立ち寄られるお客さまが増え、住宅建設の受注件数が伸びています。以前は戦略財務情報システム『FX2』を利用し、住宅建設部門とベーカリー部門に分けて業績管理していました。両部門とも取引量の増加に比例して経理業務の負荷が増し、仕訳入力などを簡素化したいと考えていたんです。そんなとき、監査担当の長岡さんから紹介されたのが『FX4クラウド』でした。

長岡 黒澤建設さまでは、経理を担当されている社長の奥さまが『FX2』に非常に精度の高い仕訳を入力されていました。ベーカリーを開業され、日常業務がいっそうお忙しくなるなか課題にあがっていたのが、いかに日々の仕訳入力にかかる負担を減らし、業績を効率的に把握できる体制を整えるか。市販の業務ソフトと柔軟に連携できる『FX4クラウド』なら、社長のご要望に応えられるのではと思い、システムの移行を提案しました。あわせて、IT導入補助金の活用もおすすめしました。

──システムを移行されて経理業務はどう変わりましたか。

黒澤 住宅建設部門では、『FX4クラウド』のほか原価管理ソフトも利用しており、事務担当者が売上原価等のデータを入力しています。以前は『FX2』と原価管理ソフト双方に同一の仕訳を入力するケースもあったようです。システム移行後、原価管理ソフトに入力した仕訳を『FX4クラウド』に連携できるようになったため、経理業務の省力化を図れました。加えて、FXシリーズに備わる「証憑保存機能」を活用して、取引先から届いた請求書や領収書をスキャナーで読み込んで、電子データとして保存。仕訳入力時、読み取った内容が初期表示されるので入力の手間が減り、従来エクセルシートで運用していた現金出納帳も不要になりました。

黒澤后雪経理担当 仕訳入力に要する手間が減った分、月次業績をよりタイムリーにつかめるようになりました。『FX4クラウド』に移行して間もないですが、巡回監査時に長岡さんから操作方法を丁寧に教えてもらえるので安心です。将来的には、ベーカリーで使用しているPOSレジとの連携も行えたらと思います。

──注目されている経営指標は?

黒澤 やはり《変動損益計算書》に表示される売上高や限界利益額の推移です。スマートフォンから「スマート業績確認機能」を立ち上げて、業績ダッシュボード画面で売上高と限界利益額をよく確認しているほか、運転資金の動向にも気を配っています。外出中であっても気になるときに、重要指標をすばやく把握できるところが重宝しています。

ふたつの取り組みで決算書の信頼性を高める

──金融機関に対して最新業績を定期的に報告されているとか。

黒澤 丹野先生のおすすめにより、「TKCモニタリング情報サービス」を活用して、月次試算表データを2行の取引金融機関に送信しています。コンスタントに報告することで金融機関担当者から、業績をリアルタイムにつかめ助かっています、という感想をうかがえ、当社に対する評価も向上してきていると感じます。

──ちなみにこれまで税務調査に入られたことはありますか。

黒澤 創業来このかたありません。書面添付(※)を継続的に行っているおかげかもしれないですね。

丹野 顧問契約直後は経営者の人となりを確認する必要があるため、関与した最初の決算時に書面添付は原則として実施していません。黒澤建設さまでも関与して2期目の決算時から毎期実践しています。

──目標を教えてください。

黒澤 やりたいことがたくさんあるんですよ。例えば、モデルハウスを活用したカフェ事業。家の中にカフェがあれば、ご近所の方々もモデルハウスにいっそう立ち寄りやすくなるでしょう。あと、業務スーパーもいずれ手がけてみたい。衣食住のうち「食」と「住」にこだわり、事業展開していくつもりです。

※ 「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

企業情報

黒澤建設株式会社

業種
木造建築工事業
創業
1996年4月
所在地
山形県西置賜郡白鷹町鮎貝7193
売上高
1億4,000万円
社員数
11名
URL
http://industrialbuilders.jp/

顧問税理士 丹野 覚
丹野覚税理士事務所

所在地
山形県山形市馬見ヶ崎4-13-10
URL
https://tanno-tax.jp/

『戦略経営者』2023年8月号より転載)