事務所経営

巡回監査士制度を活用して事務所の経営基盤を強化しましょう!

TKC全国会中央研修所所長 服部久男

キャリアプランを活用した職員育成を

 巡回監査士は、コンサルタント系の民間資格認定団体では最も権威のある公益社団法人全日本能率連盟の認証資格です。主に税理士事務所や税理士法人に勤務する職員を対象とした一般に認知される資格であり、職員の育成およびその資質向上を図ることを目的としています。

 我々の関与先である中小企業が日々生き残りをかけて事業に取り組む中で、中小企業を全力で支援するため、所長と共に活躍する職員を育成するのは会計事務所にとって不可欠なことです。

 巡回監査士制度の活用が、職員の業務品質向上、ひいては事務所の経営基盤強化につながるものとして、中央研修所では当制度をさらにブラッシュアップしていきます。

 その取り組みの一つとして「巡回監査士育成のための標準キャリアプラン」(次頁表)を作成し、巡回監査士を育成するための一貫した教育プログラムの構築を目指しています。このキャリアプランは、「巡回監査士制度の充実プロジェクト」が中心となって作成しており、多くの会員事務所のご意見を参考にしながら毎年更新していく予定です。

 キャリアプランには「業務能力レベル」「専門能力レベル」「必要資格レベル」等の項目ごとに、事務所勤務年数1~5年目までに到達してほしい事柄を示しています。もちろん事務所によって職員育成のスピードは異なりますが、各事務所の体制に合わせながら「標準的な職員育成の目安」としてご参考にしていただければ幸いです。

 また、キャリアプランには巡回監査士補資格を「2年以内」、巡回監査士資格を「5年以内」に取得することを目指すよう明記しています。巡回監査士制度を活用し、所内で資格取得を推奨して職員のモチベーション向上につなげましょう。

 このキャリアプランに沿った企画の第1弾として制作したのは、本年3月末に配信を開始したオンデマンド研修「新入職員研修プログラム」です。当プログラムは「入所1カ月以内」の新入職員向けの研修で、巡回監査士を目指すよう動機付けを図る「TKCオリジナル」の内容であり、すでに1600件を超える事務所が視聴しています。

 TKC会員事務所の職員育成にさらに貢献できるよう、現在、企画の第2弾を進めていますのでご期待ください。

1万5000名超の巡回監査士(補)が活躍

 年1回実施している巡回監査士・巡回監査士補試験には、近年7000名以上が受験し、現在は巡回監査士4485名、巡回監査士補1万575名の、計1万5060名の職員が資格を保有しており、3000以上の事務所で活躍しています。

 巡回監査士制度では、試験の各項目(職業倫理、巡回監査、企業会計、経営助言、所得税法、法人税法、消費税法、相続税法)において、高度な専門知識と倫理観の習得を目的とした研修を行い、試験を実施します。そして、試験の合格者に対して資格付与が行われます。

有資格者を増やし社会の認知度を高めよう

 社会の認知度向上は資格のステータス向上に直結します。優秀な職員の栄誉をたたえ、当制度を広く社会に発信するため、次頁以降に巡回監査士資格保有者の在籍事務所とともに各事務所の巡回監査士・巡回監査士補資格の保有者数を掲載します。

 巡回監査士資格を有する、能力の高い職員が在籍する会員事務所が増えることで、さらに社会からの認知度が高まります。そのことは職員が巡回監査士を目指す励みとなるはずです。職業会計人が社会的使命を果たすため、今後もさらに多くの職員が試験にチャレンジしてスキルアップを図り、中小企業支援に貢献していくことを期待します。

 優秀な職員の育成は、事務所の経営基盤強化にも直結します。そのため巡回監査士・巡回監査士補の在籍人数は、そのバロメーターともいえます。事務所の職員育成や一層の経営基盤強化のため、巡回監査士制度を活用しましょう!

図表

(会報『TKC』令和5年7月号より転載)