監査法人出身会員に聞く

「Face to face」でお客さまの成長を全力で支援したい

岡村勇毅公認会計士・税理士事務所 岡村勇毅会員(近畿京滋会洛西支部)
岡村勇毅会員

岡村勇毅会員

大手監査法人・税理士法人の勤務を経て、平成24年に京都市で独立開業した岡村勇毅会員。お客さまに親身に寄り添いながら、金融機関との連携を活かした経営助言で中小企業の成長を支援し、日本社会に貢献したいと夢を語った。

経営者との生の対話にやりがいを感じた

 ──まずは、ご経歴について教えていただけますか。

 岡村 私は京都生まれの京都育ちで、現在33歳です。平成18年に監査法人に入社して約5年間勤務し平成23年に税理士法人に異動したのち、平成24年に京都市で独立開業しました。現在は自宅近くにオフィスを借りており、職員は4名、関与先は約30件です。

 ──監査法人勤務時代の印象に残っている業務はありますか。

 岡村 監査法人では、上場準備会社から上場会社までさまざまな規模や業種の監査業務を担当しました。その中で上場会社の子会社往査という、売り上げが1億円くらいの中小企業の町工場などを訪問する機会がありました。経営者と直接対話をして、一緒に行動計画を考えたり製品の値段や得意先について聞いたりと、大企業の経理担当者とはなかなかできない生の経営の話や提案ができて面白かった。自分はそういう親身な「Face to face」の感覚に飢えていたんだと気付きました。
 ただ、その社長は、計数管理の話題になった途端に話が空中戦となり「一体どこに行くんや」という状態でした(笑)。管理会計や原価計算などの会計の知識があったら、もっと良い経営をしてもらえるのになと感じましたね。

 ──その後、税理士法人に勤務されているんですね。

 岡村 監査法人と同グループの税理士法人にチャレンジする機会があり、手を挙げて異動させてもらいました。
 そこでは中小企業の税務顧問から国内・クロスボーダーのM&Aにも携わることができました。一方で、国内産業の空洞化も目に見えてきて「この仕事は本当に日本のためになるのか」というジレンマがありました。一度きりの人生に、自分は何のために生きるのかと考えたときに、「中小企業を支えて、日本の社会に貢献したい」という思いに至り、平成24年10月に独立開業したのです。

事務所見学会でレベルの差を思い知らされる

 ──TKCに入会されたきっかけは何ですか。

 岡村 監査法人時代の大先輩に「独立するならとにかくTKCに行け!」と言われたことがきっかけでした。後から聞けば、「税理士の独立性」の法文化(税理士法第1条)に貢献したTKC全国会飯塚毅初代会長について学んでこいという考えだったようです。よく分からないまま「学ばせてください」という姿勢で手土産をもってSCGサービスセンターに挨拶に行きまして、驚かれましたね(笑)。
 その後、近畿京滋会の佐藤正行先生や髙村智先生の事務所見学会に参加させてもらいました。自分には税理士法人の経験がありましたので「どんなものか見てやろう」という程度の気持ちで参加したものの、中小企業や会計事務所をとりまく環境についての知識の差、経営者としてのレベルの差を思い知らされて打ちのめされ、懇親会では萎縮してほとんどしゃべれないほどでした(笑)。TKCに入ったら、自分も成長して、こんなすごい方々に少しは近づけるのかなと考えて入会を決めました。

 ──入会してみていかがでしょうか。

 岡村 やはり、TKC全国会の先輩方や仲間から学ぶことや影響は大きくて、とても刺激になりますね。今でも落ち込むことは多いですが(笑)。とにかく会合や勉強会には欠かさず参加して修行させてもらっているところです。また、セミナー講師でも委員会でも、オファーがあれば極力引き受けています。TKCの会務を行うことが「日本のために何かしたい」という創業当時の自分の思いに応えられることだと考えています。
 先輩方から学びながら、事務所経営は全てTKCのビジネスモデルに乗っかっています。ある意味、業界についていろいろ知らないという「無邪気さ」のおかげで迷うことなくTKCに取り組めていると思います。
 それから、ニューメンバーズフォローセミナーでは、税務の疑問点など、電話等では改めて聞きにくいところを気軽に聞ける場を提供してもらえたので助かりました。そこで、同期のような存在ができることもありがたかったです。

事業再生を通じ金融機関との関係を深める

 ──事務所の強みを教えてください。

 岡村 強みとしては、金融機関との連携による関与先拡大です。
 京都は土地柄もあるのかもしれませんが、営業に行っても、「誰からの紹介や」と一見さんは相手にしてもらえないことが多く、お客さまも人脈もなく開業した私にとっては厳しい環境でした。
 京都信用保証協会が、会計士や税理士等の専門家と連携した中小企業再生のための取り組みをされていて、その一環で「お助けネットワーク」という税理士組織を作られたのですが、ご縁があって、私も一員となることができました。要は、税理士が集まってマル保融資の案件で傷んでいるところを再生しましょうという目的のものです。
 そのモニタリング案件の取り組みを通じて、ある金融機関の審査部と顧問契約ができたり、担当の支店の方との接点が増えて仲良くなれたおかげで、新たな案件や関与先を紹介してもらえるようになりました。
 一見さんには厳しい地域である反面、地域密着型で地銀の力が強く、銀行の紹介があればすんなり受け入れてもらえると思います。間口は狭いけれど、勝手口は結構開いていることに気付きました。

TKCシステムは会計士の感覚になじみやすい

 ──監査法人の経験は事務所経営に活きていると感じられますか。

 岡村 監査法人時代に培った、原価計算、部門別業績管理や設備投資の意思決定などの「管理会計能力」は、税務上のアドバイスにとどまらないプラスアルファの提案をするのに役立っています。
 また、管理会計を目的としているFXシリーズ等のTKCシステムは、公認会計士の感覚に非常になじみやすいと感じましたね。
 それから、組織のルールづくりや業務プロセスの整備等の「内部統制」の観点も、システムの初期指導に役立っています。会社の既存の業務フローの中で「ここでSXを使いましょう」など、新たな提案をして、お客さまと一緒に構築していくのが好きです。
 一般的に、会計士は結論ありきのトップダウン型の考え方、税理士はロジカルに積み上げて結論に達するボトムアップ型の考え方をすると思います。私は両方の経験がありますのでそれらをフル活用して、いいとこ取りができるように努めています。結論重視の中小企業の経営者にはトップダウン型でお話しするようにしています。
 また、監査法人時代にコンサル専門のメンバーから学んだ「カウンセリング」や「コーチング」のスキルも活用しています。継続MASを対話のツールとしてきちんと活用しながら、とにかく話をじっくり聞いて、社長自らに解決策を導き出してもらう。そうすれば納得してきちんと実行してもらえるし、社長の思いが詰まった経営計画になるんです。

 ──親身に寄り添う「Face to face」の感覚を大事にされているということですね。

 岡村 金融機関の融資審査においても、経営者の資質などの定性的な部分にも重きが置かれるようになってきていますので、「Face to face」は今後ますます重要になると思います。
 お客さま一人ひとりと向き合うためには、単にTKCが提供してくれる経営指標(BAST)FX2の数値を棒読みするだけではだめだと考えています。売り上げばかりを気にしている社長も多いですが、業種ごとに着目すべきポイントは異なりますのでお客さまの業種や会社になじむ指標を伝えて、実感してもらいたいです。

「愛のある活動」で不可欠な存在になりたい

 ──今後の抱負をお聞かせください。

 岡村 今後も、お客さまのことを考え抜いて新たな気付きを与え、その結果に感動していただけるような経営助言、「愛のある活動」をしていきたいです。これから先、記帳代行などの単純作業は、人工知能の時代が来てロボットが担うのかもしれませんが、「愛のある活動」は人間にしかできません。
 愛があれば直接お客さまに会いたいと思うので毎月訪問するのも当然ですし、お客さまを守りたいと思うので企業防衛の提案を行うことも自然な流れです。経営会議にも参加させてもらい、外部CFO(最高財務責任者)という形で、お客さまにとってなくてはならない存在になれるよう取り組んでいきます。そうすれば、低価格競争の波に巻き込まれる心配もないと思います。
「中小企業のため」、ひいては「日本のため」という思いを忘れずに、お客さまに寄り添い、TKCには業界の「明日の天気」を教えてもらいながら、経営者として自分の事務所の進むべき方向に舵取りをしていきたいです。

(TKC出版 小早川万梨絵)


岡村勇毅(おかむら・ゆうき)会員
平成24年10月岡村勇毅公認会計士・税理士事務所を設立。
近畿京滋会巡回監査・事務所経営委員長。趣味はラーメンの食べ歩き。
岡村勇毅公認会計士・税理士事務所
 住所:京都市右京区西院西矢掛町32-3 OAKビル3階
 電話:075-323-7066

(会報『TKC』平成28年7月号より転載)