事務所経営

金融機関との距離をぐっと縮めたMIS普及活動 中小企業支援のために引き続き推進しよう!

とき:令和2年3月6日(金) ところ:TKC東京本社

昨年、TKCモニタリング情報サービス(MIS)は、各地域会の強力な推進活動により利用申込件数が飛躍的に伸び、本年1月に20万件を突破した。中小企業支援に向けた金融機関との実質的な連携強化のために、杉山巡回監査・事務所経営委員長の進行のもと、昨年「利用件数目標達成率」第1位の中部会の木村会長と第2位の静岡会の畑会長、中小企業支援委員会の増山委員長に、活動の成果や金融機関との連携事例などを語り合っていただいた。(なお本座談会は新型コロナウイルス感染拡大の影響にともない、TKC東京本社と会計事務所をテレビ会議システムでつないで実施された。)

出席者(敬称略・順不同)
 木村茂徳TKC中部会会長
 畑 義治TKC静岡会会長
 増山英和TKC全国会中小企業支援委員会委員長

司会/杉山美智晴TKC全国会巡回監査・事務所経営委員会委員長
オブザーバー/TKC高橋栄一次長、西田宏也課長、島田聡課長代理

座談会風景

中部会と静岡会が全国のMIS推進を牽引 会員・SCG一体の活動で全国一位に!

 杉山 本日の座談会では、昨年MIS推進に向けて地域で取り組んだ活動内容や金融機関との連携が深まった事例などを語り合っていただき、全国会第3ステージ2年目の運動に弾みをつけていくきっかけとしたいと思います。いま木村会長と私はTKC東京本社にいますが、畑会長と増山委員長の2名にはそれぞれの事務所(静岡県・茨城県)からテレビ会議システムでご参加いただきます。
 ではさっそくですが、昨年、坂本孝司全国会会長が緊急提言「TKCモニタリング情報サービスの爆発的な普及を願う」を4月に全会員に発信されてからMISは加速度的に推進されました。中部会と静岡会は単年度件数目標の達成(中部会113%、静岡会104.8%)とともに、社数・事務所数目標も見事達成しましたが、まず率直な感想をお聞かせいただけますか。

木村茂徳TKC中部会会長

木村茂徳TKC中部会会長

 木村 これまでの中部会の実績からすると、おそらく皆さん中部会が全国1位を取るのはあり得ないことと思われていたと思います(笑)。私はそのあり得ないようなことを本気で実現したいと思い、地域会の総会や秋季大学、生涯研修や支部例会などことあるごとに、「皆さん、中部会はMIS推進のトップを目指して取り組もう!」と呼びかけ続けてきました。
 活動当初はなかなか実績が出なかったのですが、坂本会長による緊急提言が発信され、その緊急提言を持参して私が会員事務所を個別訪問したことや、統括支部長や支部長などのリーダーが奮起し、SCGセンターの社員の皆さんとも一緒に熱心に取り組んでくれました。そうした活動が結果として表れ、うれしく思っています。

 杉山 畑会長は昨年の活動を振り返っていかがですか。

  静岡会は件数・社数・事務所数の3部門の目標を達成するという思いで取り組んできました。件数目標についてはずっと1位でしたが、中部会が最後の最後に劇的な逆転をされまして(笑)、残念ながら2位となりました。
 皆で懸命に取り組んだので悔しさもありますが、MISプロジェクトメンバーをはじめ会員とSCG社員一体となった活動ができたからこそ当初の目標が達成されたわけです。私も木村会長と同様に地域会行事のあらゆる場面でしつこいくらいにMIS推進の必要性をお伝えしてきましたが、皆がそれに応えてくれて志高く活動できたことをありがたく思います。

 杉山 静岡会が先頭を切って引っ張っていただいたことで、他の地域会も刺激を受けて活動が進んでいきました。
 増山委員長は金融機関との連携強化に尽力された中小企業支援委員会の委員長として、昨年のMIS推進活動にどのような感想をお持ちですか。

 増山 地域会会長や支部長の強いリーダーシップの下での会員とSCGの皆さんの現場での頑張りと目標共有による活動の一体感が非常に印象的でした。共に成し遂げた目標達成であったと思います。
 また、活動が進むにつれてMISの意義に賛同される金融機関の方々がどんどん増え、未実践の関与先企業だけでなく会員事務所へも熱心に推進を呼びかけられたのは画期的なことでした。それはMISが金融機関にとっての利便性だけでなく、金融円滑化により中小企業を支援するものであるという本質を理解いただけたからだと思います。今年1月に20万件が達成された際には共に喜んでくださる金融機関の方が数多くおられて、そうした“仲間”ができたことをうれしく思います。

「MIS定例推進会議」でSCGセンターと情報共有し金融機関へ効果的に推進

 杉山 地域会でのMIS推進の具体的な取り組みについて畑会長からお話しいただけますか。

畑 義治TKC静岡会会長

畑 義治TKC静岡会会長

  成果に結びついた活動はいくつかあります。まず、「MIS定例推進会議」です。昨年は私を含め巡回監査・事務所経営委員会と書面添付推進委員会、中小企業支援委員会の担当副会長と委員長、静岡・浜松の両センター長、事務局長の総勢10名で計6回開催しました。その会議でセンターとこれまで以上に連携し情報共有を進め、具体的な目標を設定することや活動内容を練ることができたことで、スムーズな実践へと至りました。
 二つ目は、私自身が、県内39の会員事務所を一軒一軒回ったことです。アポイントなしに伺いましたが、所長面談率が7割を超えました。直接お話ができたおかげで、その後9割以上の事務所がMIS推進に取り組み、特に新規実践事務所数と社数の大幅な増加につながりました。
 三つ目は、二つの地方銀行と四つの信用金庫の全ての支店に窓口会員が訪問し、坂本会長の緊急提言の内容をお伝えしたことです。支店長には、MISにより税務署に電子申告した決算書、申告書と全く同じデータが同時に提供される点を特に強調してお話ししました。
 あわせて金融機関の方には、支店の中でTKCマークの決算書を紙で受け取った場合はその融資先にMISでの送付をお願いしてほしいと依頼しました。MISの利用設定は簡単で、料金がかからない点も知っていただきました。
 金融機関に対して特に効果があったのは書面添付シンポジウムです。事前の呼びかけに力を入れて、県内金融機関等の担当者58名に参加いただけたことは、MISや会員事務所の取り組みを知っていただくうえで非常に意義がありました。
 またMISを1件以上実践した会員の名簿を作り金融機関へ配るという取り組みもしました。会員には事前に「書面添付シンポジウムに参加する金融機関に名簿をお渡しするから最低でも1件やってください」と案内し続けました。

 杉山 昨年の全国的な推進活動においてとりわけ効果があったのは「MIS定例推進会議」でしたが、静岡会ではうまく機能させて、金融機関へのアプローチについてもしっかり協議したようですね。

  はい。金融機関の支店訪問についてもこの会議で決めました。こちらからの説明事項の優先順位など細かい点までかためてから窓口会員が事前に伝えに行き、訪問後は結果を報告する仕組みも設けました。全ての支店に伺い、ほぼ全ての支店長に会っていただけたのは、この会議で話し合い、計画から実行までスムーズに実施できたからです。SCGセンターも一緒に汗をかいてくれました。

 木村 SCGの活躍が大きかったのは中部会も同じです。会議では各支部の進捗状況を「見える化」して、具体的な推進策を考えアイデアを出し合いましたが、情報の共有だけでなく分析も行ない、次に打つ手を練りました。静岡会に追い付くにはあと何件必要という具体的な数字をタイムリーに各支部で共有するというやり方もこの会議で考案されたものです(笑)。

同じ決算書が提供方法で信頼性が変わってしまうことを強調

 杉山 木村会長、中部会では具体的にどのように推進に取り組まれましたか。

 木村 中部会が成果をあげた要因の一つに「統括支部制度」があります。全国的に同様のことが言えると思いますが、大都市部の支部活動の活性化のために、二つあるいは三つの支部を「統括支部」として一つの活動エリアとして捉えたものです。統括支部長には中部会正副会長会に出席し決定事項をいち早く支部に情報伝達する役割を担ってもらい、これまでなかなか実績が上がらなかった都市部の支部が今回非常に活発な活動となり、それが地域会全体に波及しました。
 統括支部の中の大規模支部、中規模支部、小規模支部による推進活動が互いに競争意識をもって展開され、支部長とSCGセンターの社員の方たちは統括支部長の下でキャラバン隊を組んで地道な声かけ運動なども行いました。各リーダーが組織の中できちっと役割を果たしてくれた点が中部会の特徴として挙げられます。
 また、中部会のエリアには信用保証協会が、愛知と岐阜、三重の県の保証協会に加えて、名古屋市と岐阜市に市の保証協会があります。この五つの信用保証協会にもMISが提供できる環境にあったことも特徴です。
 会員事務所への訪問は私も力を入れました。支部例会等に出席されない会員にMISに取り組む背景について直接話したかったのです。

 杉山 訪問先ではどのようなお話を?

 木村 特にお伝えしたかったのは、私たちTKC会員事務所が月次巡回監査を通じてせっかく作った決算書が、同じ決算書であるにもかかわらず、紙か電子かの提供方法だけで金融機関にとって信頼性が変わってしまうという現実です。改ざんの余地がある紙ではなく、税務署へ電子申告で提出したものと同じデータをMISでそのまま送ることによって信頼性が得られる点をご説明しました。
 MISの普及は何より関与先企業へのスムーズな融資を実現し、最終的に経営者保証ガイドラインに沿った融資、円滑な事業承継支援等に貢献できるものです。そのためには利用件数を増やして社会にアピールしなければならない。そうした私の思いをしたためた文書も持参しました。
 お会いできなかった会員には文書を名刺と一緒に置いて帰りましたが、ある会員からは翌日すぐに電話があり、「わざわざ来ていただき大変恐縮です。MISに取り組む意義がはっきりわかったのでもう安心してください」と。その後数百件の実践へと行動に移されました。

  こちらが思う以上に会長による訪問を喜んでいただけるのは大変ありがたいことです。これまでTKC活動には、あまり熱心でなかったかもしれませんが、そこは同じ会員同士。大半は顔を合わせて話すと理解していただける方ばかりでした。
 良かったのはそのとき事務所経営の悩みなどもお聞きし、「そうした悩みを解消できるのがTKCの研修や会務です。ぜひこれからは出てきてくださいね」とお伝えできたことです。その意味で、事務所の個別訪問などのMIS推進活動を通じて地域会の活性化は一歩も二歩も前進しました。

■木村会長が会員事務所の個別訪問時に持参した文書

TKC中部会の結束力で「TKCモニタリング情報サービスを爆発的に普及させる」
圧倒的な力を発揮するときが来た!

 TKC中部会会員事務所における、TKCモニタリング情報サービスの推進件数が1万5千件を超えました。これもひとえに会員先生方の日々の活動の賜物であると感謝申し上げるとともに、TKC中部会の結束の力強さを感じております。

 このサービスで決算書の提供を受けている中部会の30の覚書締結金融機関からは、中小企業の経営者が積極的に財務内容を開示する姿勢を評価し、「信頼性が高い決算書であると識別できること」「情報の非対称性が解消されること」に着目して、さらに提供数を増やしてほしいという要請が別紙の一覧のように出されております。

 また、各金融機関においては提供された決算書を行内で事前に閲覧し、当該企業への金融支援に資するための準備が着々と進んでいるようです。このサービスを開始した金融機関の中には、提供された情報を支店行員が閲覧できる行内イントラネットを構築された銀行も有り、各支店からは融資先企業とより深い話ができるようになったと、大変好評であるとのことです。

 すでに、中部会の3県下に本店を置くいくつかの金融機関から、TKCモニタリング情報サービスの推進を要請する文書が先生の事務所宛に届いています。金融機関からの要請に沿って実践するのではなく、先生には事前に実践行動を起こしていただくことをお薦めいたします。

 今、まさにTKC中部会が結束して、圧倒的な力を発揮するときが来たのです。

 坂本全国会会長と同様に、是非とも先生にTKCモニタリング情報サービスの爆発的な普及の一翼を担っていただくことを切にお願い申し上げ、本日の訪問のご挨拶とさせていただきます。

※申込手順等にご不明な点があれば担当SCGまで問い合わせてください。

令和元年10月吉日

TKCモニタリング情報サービスで
全国トップを目指すTKC中部会
会長 木村 茂徳

今年は金融機関の融資・渉外担当者に直接TKC会員の取り組みを伝えていく

 杉山 中小企業支援委員会はMIS推進において金融機関向けの活動を担い、昨年はMIS利用を要件としたTKCローンや経営者保証を不要とする融資スキームが数多く開発されましたね。

増山英和中小企業支援委員長

増山英和中小企業支援委員長

 増山 昨年の各地域でのトップ対談はMIS利用促進に向けた具体的な提案をされ、実績に結びついた地域が多くありました。トップ対談の開催自体が目的化されることのないように、各地域会、支部の状況や覚書締結金融機関との関係性などを踏まえた金融機関とTKC側の担当者間による事前協議を重視したことで、トップ対談でよりジャストフィットした提案が行えたと思います。
 トップ対談によって全支店へのMISポスター設置や、専用融資商品の開発に加え、MISの利用件数を支店業績基準に採用する金融機関もありました。
 また、MIS推進の進捗と具体的打ち手を検討するための協議会を開催する中で、「MISの意義を行職員に理解させたい」などと、支部との合同勉強会を提案いただき、実施した金融機関も少なくありませんでした。
 一方で、MISで決算書等を提供しても、金融機関から紙の決算書を求められるというケースもありました。金融機関のトップや支店長の皆さまに趣旨をご理解いただけても必ずしも現場の融資・渉外担当の方々にまで伝達されるとは限らないことを知りました。
 そうした状況を踏まえ、今年は当委員会は、MISやTKC方式の書面添付を現場の行職員の方々に直接お伝えしていく活動を展開します。特に金融機関本店等で開催される行職員研修会にTKC会員を講師として派遣し、金融機関からの要望が多い合同勉強会を効果的に開催できるように支援してまいります。
 TKC会員においては、金融機関からの期待に応えられるよう事務所体制を整えていることが重要です。その点で、ブランドイメージ、信用失墜につながらないように、認定支援機関として経営助言業務に取り組んでいくことは不可欠です。今年は認定支援機関としてのスキルアップを目指す研修、関与先による金融機関への決算報告会を支援するノウハウの習得を目的とした研修を実施する予定です。

「決算書の信頼性は識別可能」の理解が浸透 課題は1支店あたりの件数増加

杉山美智晴TKC全国会巡回監査・事務所経営委員長

司会/杉山美智晴巡回監査・
事務所経営委員長

 杉山 MIS導入前後で金融機関との関係に変化などがありましたらお話しいただけますか。

  最近よくお聞きするのが「TKC会員事務所が作成支援した決算書の信頼性は高いとあらためて感じている」という声です。特に書面添付や記帳適時性証明書、中小会計要領チェックリストに、「決算書の信頼性は識別可能である」という点で非常に価値を感じられている気がします。
 金融機関は月次や四半期、半期の状況も知りたいので、MISで決算書だけでなく月次試算表の提供数も増やしていかないといけません。その意味で、月次巡回監査の質と率の向上は、今後TKC会員事務所の取り組みを社会に知っていただくうえでより大切になると思います。
 また私が会長になってから三つの信用金庫以外の金融機関全てに通算で24回トップ対談を実施しました。MISが他の銀行で浸透し始めているからか、その3信金のうち一つの金融機関から昨年の暮れに会談の依頼があり来月対談を予定しています。運動の広がりが出てきました。
 TKC会員事務所の業務内容を知っていただく活動としては、金融機関を積極的に支部例会にお招きしています。さらに、1年半くらい前から財務省東海財務局静岡財務事務所との研修と交流会を2回実施しました。

 木村 中部会も昨年の書面添付シンポジウムに財務局の方をお招きしてご挨拶いただきました。参加された金融機関にはインパクトがあったと感じましたので、今後も継続していきたいと思います。
 また支部例会に金融機関が参加される動きは進んできています。MISによって決算書や書面添付を実際に受け取り、素晴らしいと思った書類を有効活用するために、さらに支店単位でTKC会員との交流を進めたいという意識が、支部例会への参加という意思表示として表れてきていると思います。
 一方でMISは金融機関に認知されてきていますがまだ実用化されてない。その意味で1支店あたりの件数の増加は非常に重要です。

 杉山 数の点で言えば、実践事務所数はすでに5000件を超えています。しかしその実践事務所の中でも、まだまだMISを標準業務としていない事務所も多く、社会(金融機関)の納得のためには標準業務とする事務所の拡大が必要になります。
 ですから未実践事務所へのアプローチはもちろん、すでに実践している事務所にもしっかり数を意識していただき、各金融機関の支店での実践件数を出していく。今年は当委員会としても特に数にこだわり活動していきたいと思います。

MISで電子申告と同時に決算書が送付されることが粉飾防止につながる

 杉山 増山委員長は金融機関の変化についてどう感じていますか。

 増山 MISが提供された当初は「紙の決算書を受け取りにいかなくて済むので効率化につながった」というご意見が多かったのですが、今となっては笑い話ではないでしょうか。いまや金融機関の方々がMISや提供される帳表の本質を理解し、取引先の支援にどう活用していったらよいかを共に考え始めています。
 昨年は特に書面添付シンポジウムで金融機関の方々に、電子申告と同時に決算書等が送付されることで粉飾防止になり、「決算書の信頼性は識別可能である」ことをご理解いただきました。それが起爆剤となり、その後のより密度の濃い協議会や合同勉強会等の企画につながりました。
 ある信用金庫ではMISで提供される決算書等の信頼性の高さに注目し、MISで所定のデータを提供した企業のみが利用できる専用当座貸越商品を提供されました。この商品とMISをテーマに、融資・渉外担当とTKC会員との合同勉強会を重ね、個々の会員事務所と金融機関担当者の間で急速に関係構築が進んでいます。会員と金融機関担当者がそれぞれの困りごとについて気軽に相談しあえる関係ができたようです。同時に、せっかく誕生した専用ローンをしっかり活用して育てていくことも大切です。
 もう一つ、ある金融機関の方は書面添付について税理士が資格をかけてまで作成して決算書・申告書の信頼性を高めていることを知り、あらためて添付書面の中身を見たら事業性評価に非常に有用であることに気付いたということです。あわせて事業性評価、本業支援のためには、年に1回の決算書のみでなく期中管理・支援(モニタリング)をしたいので月次試算表を提供してほしいという声をふまえ、ローカルベンチマークの非財務情報などのオプション帳表をしっかり提供していくことが次のステップとなります。

 杉山 岐阜の事例をお話ししますと、岐阜県信用保証協会は「MISへのお返しを」ということで、MISでの提供による決算書の内容をチェックし、評価してくれています。例えば「こんなに良い内容であれば個人保証を外してもいいですよ」と、信用保証協会から顧問税理士であるTKC会員に連絡してくれる取り組みを始めていただいたのです。大変ありがたいと思います。

 増山 先進的な取り組みですね。信用保証協会との連携は今後より重要になります。
 TKC会員の取り組みを評価していただく中で、金融機関の中には取引先の企業概況書などの一項目に「税理士がいるか」「TKC会員かどうか」「書面添付が付いているか」などの項目を新たに追加しているところが出てきています。

  静岡のある信用金庫はそういった取り組みを10年以上前からされています。これから取り組もうとお考えの金融機関は結構出てくるはずなので、そのためにもMISの数がもっと増えないと効果が発揮されないと思います。

 増山 金融機関の方はMISは良いものと聞いていても実際にそれを目にしなければ腑に落ちないものです。今後、決算書等を大量に提供し、あわせて決算書の信頼性が高い根拠をTKC会員から直接お伝えしていくことが重要です。
 数年前、日本政策金融公庫への全国的なTKC会員事務所見学会の開催により、我々の業務について理解を深めていただくことができました。同じ趣旨で、覚書締結金融機関への会員事務所見学会も開催してまいります。

 杉山 金融機関による会員事務所見学会は大切です。私の事務所も昨年暮れに県の信用保証協会をお招きして実施しましたが、数年経つと金融機関のメンバーは異動等で替わられることが多いため、繰り返し実施していくことが必要だと思います。

関与先の信用力を高めるために実践件数をさらに増やしていこう!

 杉山 最後にそれぞれのお立場から、金融機関との連携強化やMISの件数拡大に向けてひと言ずつお願いいたします。

 木村 金融機関との連携という点では、中部会の場合、信用保証協会、日本政策金融公庫との連携が先行していますので、地銀、第二地銀、信用金庫についても同じようなレベルまで高めたいと思います。
 MISの推進活動については、年が明けてからなんとなく一服感が漂っている気がします。しかし中小企業支援に向けてMIS実践件数を増やす活動に終わりはないので、今一度力点を置いて活動していきたいと思います。

  金融機関とは引き続きトップ対談を繰り返し開催して、我々の運動を深く理解していただきたいと思います。
 それとあわせて金融機関との交流会を、ブロック別、支部別に積極的に開催するとともに、行職員への研修会を、各金融機関で行える仕組みづくりをしていきたいと思います。
 静岡会も実践事務所はまだ6割にとどまっています。利用社数と件数の増大を図っていきたいと思います。

 増山 昨年12月24日に事業承継に焦点を当てた経営者保証ガイドラインの特則が公表され、外部専門家による情報の検証を活用し、開示した情報の信頼性を高める取り組みを推奨すると示されました。これに基づけば書面添付、MISは極めて有効になるので、この点も含めてさらなる推進を図りたいと思います。
 当委員会としては、こうした業務に取り組むTKC会員事務所の卓越性などを正しく外部へお伝えしていく活動を引き続き展開してまいります。

 杉山 皆さんのお話から、昨年は金融機関からMISに大きな期待が寄せられ、金融機関との距離がぐっと縮まった1年だったと思います。改ざんされる余地のないMISによって金融機関と税理士の間にあった壁が取り払われ、交流も盛んになりました。今年もこの動きをさらに盛り上げていくために、我々は金融機関にとってMISを見慣れた当たり前のものとするために、件数にこだわっていかなくてはなりません。信頼性の高い決算書をMISで大量に金融機関へ提供し、関与先の信用力を高めていきましょう!

(構成/TKC出版 清水公一朗)

(会報『TKC』令和2年4月号より転載)