湯守田中屋 様

湯守田中屋

右から2番目は後継者の田中佑治専務、
左端は監査担当の齋藤しおりさん

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

危機を乗り越え次世代へつなぐ
塩原温泉郷の老舗旅館

栃木県塩原温泉郷の玄関口に位置する湯守田中屋。幾度もの経営危機に直面しながらも、その都度再生を果たしてきた。近年は経営改善に取り組む一方で、TKCシステムを活用した管理体制の整備も進めている。田中三郎社長と経理担当の齋藤佐和さん、荻原伸夫顧問税理士に話を聞いた。

──旅館の歴史を教えてください。

田中 1953年に、先々代の田中悌が、電電公社から保養所の運営を任されたのが始まりです。その後、同じく先々代が、この保養所を買い取り1963年に仙郷荘として創業。昭和60年ごろから平成初期にかけて団体旅行が全盛期となり、大規模な増築を行いました。当時は三つの館を運営し、多くのお客さまを受け入れていました。しかし時代の変化とともに団体客が減少し、経営環境も大きく変わっていきました。

度重なる経営危機を乗り越える

──経営危機を何度も乗り越えてこられたそうですね。

田中三郎社長

田中三郎社長

田中 まず、バブル崩壊で経営危機を迎えました。設備投資に伴う借入金が大きかったのですが、そこに来て2003年にメインバンクである足利銀行が破綻しました。それまでは利息中心の返済でよかったものが、銀行破綻後は元本返済も求められ、当時は売上高が約4億円に対し借入金は約12億円だったので、通常の経営努力だけでは解決できない状況でした。
 そこで産業再生機構の支援を受け、債務圧縮や経営改善に取り組みました。株主責任や経営責任、私財提供も求められましたが、会社を存続させるためには必要な決断だったと思います。

──再生の道のりは?

田中 債務は大幅に圧縮され、老朽施設の整理も行い、3館体制から2館体制へ移行。ようやく再建の出口が見えてきたころに東日本大震災です。約1カ月の休館を余儀なくされ、風評被害にも苦しみました。その前後にリーマン・ショックやコロナ禍もありましたが、従業員や地域、関係者の支えによって乗り越えることができました。

──湯守田中屋の強みは?

田中 最大の魅力は自然環境と温泉です。周辺は日光国立公園に囲まれ、豊かな景観が広がっています。また当館の温泉は塩原温泉郷では唯一の硫酸塩泉で、保湿効果や血圧の降圧効果があるとされ、肌がしっとりすると好評です。源泉かけ流しの野天風呂や展望風呂、渓谷風呂などバラエティーに富んだお風呂をご用意しています。さらに首都圏からのアクセスも比較的良く、周辺にはゴルフ場もあります。こうした地域資源が当館の大きな強みになっています。

──経営課題は何ですか。

田中 稼働率の向上です。現在は19室で運営していますが、本来目指すべき稼働率の水準にはまだ届いていません。ただし近年は「単に客数を増やす」のではなく、「適正な価格で販売する」ことを重視しています。稼働率を維持しながら単価を上げる取り組みが少しずつ成果を上げてきています。

──集客面での工夫は?

田中 現在は予約の約8割がインターネット経由です。自社ホームページのほか、楽天トラベルやじゃらんなどのいわゆるオンライントラベルエージェント(OTA)を積極的に活用。専門家にも支援を依頼し、プラン作成や販売戦略の見直しを進めています。ゴルフ宿泊者限定料金や小さなお子さま向けのサービス強化などのプランや、それらに伴う料金設計の最適化です。またレベニューマネジメントにも取り組み、繁忙期と閑散期で価格を調整しています。市場の多彩な情報をサービスや料金設定に取り入れることで、より効果的な販売ができるようになりました。

──人材確保については?

田中 人手不足は深刻です。当館では25人の従業員のうち7人が外国人スタッフで、ネパール出身者を中心に、非常に優秀な人材が活躍しています。お客さまからの評価も高く、日本人スタッフと変わらない戦力になっています。今後も外国人材の力を借りながら、安定した運営体制を整えていきたいと考えています。

TKCシステムをフル活用

──オギハラ税理士法人とのお付き合いは?

田中 2011年からです。

荻原伸夫顧問税理士

荻原伸夫顧問税理士

荻原 産業再生機能による再生がひと段落し、「これから」という時にご指名を受けました。システムについては、当時、旅館業特有の細かい管理を実現するには、『FX4』が最適だと判断し、導入しました。旅館業は概して勘定科目の設定が複雑で、一般的な会計システムでは対応しにくかったのですが、『FX4』なら機能性が高く、柔軟な運用が可能でした。その後、『FX4クラウド』へ移行し、現在まで活用いただいています。

──経理体制は変わりましたか。

齋藤 私はもともとフロント業務を担当していましたが、会計システムの入れ替えを機に経理も担当することになりました。当初は知識がほとんどありませんでしたが、荻原先生をはじめオギハラ税理士法人の皆さまに一から教えていただきました。仕訳辞書の整備や入力方法、帳表管理まで丁寧に支援いただいたおかげで、徐々に業務を覚えることができました。

──『FX4クラウド』のメリットは何ですか。

齋藤 一番は正確性と効率化です。クラウドなので、入力したデータを事務所でも確認していただけるため、勘定科目の誤りや入力ミスを早い段階で発見できます。毎月半ばの巡回監査時には、齋藤しおりさん(オギハラ税理士法人の監査担当者)が来社し、対面で最終確認をしていただいているので、安心して業務を進められています。必要な情報をすぐに確認できるため、とにかく業務のスピードが増しました。現在は、社長も自ら小口現金や売り上げなどの入力を行っています。仕訳や消費税の計算などでミスも目立つのですが、しおりさんの的確な指摘で、無難な形におさまっています(笑)。

──証憑保存機能を活用されているとか。

齋藤佐和さん

齋藤佐和さん

齋藤 レシートや請求書をスキャンして保存しています。以前は証憑書類を紙の台帳に貼り付けて保管していましたが、電子化によって作業時間が大幅に減りました。伝票と証憑がデジタルでひも付くので確認もしやすくなりましたし、チェックを受けやすくなっています。さらに、「銀行信販データ受信機能」を利用することで、金融機関に出向いて記帳確認する必要がなくなり、すごく楽になりました。「支払管理機能」もとても便利で利用させていただています。

──金融機関対応ではどのような効果がありますか。

田中 以前は試算表を紙で提出していたので、情報共有に時間がかかっていました。現在は「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」で、月次試算表が取引金融機関に送信されており、融資などのやりとりもスムーズになっています。金融機関からも「(TKCシステムによる試算表や決算書類は)数字の信頼性が高い」と評価されています。経営者としては大変心強いですね。

荻原 田中屋さんは、とにかくTKCシステムをフル活用されて、業務の効率化を実践されておられるという印象です。『FX4クラウド』も初期の段階で導入いただいているし、証憑保存機能や銀行信販データ受信機能、MISなどもいち早く利用いただいています。齋藤佐和さんは、経理の経験がない状態からいきなり担当されたこともあって、苦労されたと思いますが、システム導入の立役者だし、いまやベテランの域です。

顧客に選ばれる旅館づくりを

定評のある多彩な温泉と料理

定評のある多彩な温泉と料理

──最近の業績改善について教えてください。

田中 客室単価の向上に加え、料理部門の改善が大きいですね。料理部門を2人体制にしたことで、休館日が減り、販売機会を増やすことができています。

荻原 新しい料理長の就任後は原価管理が改善され、品質を維持しながらコストを抑えられるようになりました。
 また、旅館業にはつきものの「館内修繕」ですが、田中屋さんでは、従業員に修繕に関する資格を持った方がおられ、ある程度内製化ができていることで、かなりのコストを抑えておられます。

──今後の展望は?

田中 ようやく良い循環が生まれ始めています。豊かな自然と温泉という資源があり、お客さまも来てくださる。その強みを生かしてさらに収益を高めたいと思っています。事業承継も着実に進んでおり、すでに次男の専務が経営の中心を担い、株式も承継しています。今後はスムーズな世代交代を実現しながら、地域とともに発展していきたいですね。
 当社では、何度も危機を経験してきましたが、そのたびに乗り越えてきました。これからも数字をしっかり見ながら、お客さまに選ばれる旅館づくりを続けていきたいと思います。

企業情報

国立公園の自然にかこまれたたたずまい

国立公園の自然に
かこまれたたたずまい

株式会社田中屋

業種
旅館業
設立
1965年7月
所在地
栃木県那須塩原市塩原6番地
売上高
約2億円
従業員数
24名
URL
https://tnky.jp

オギハラ税理士法人
代表社員税理士 荻原伸夫

所在地
栃木県那須塩原市前弥六217-3
URL
https://ogiharazeirisi.tkcnf.com

(『戦略経営者』2026年10月号より転載)