事務所経営

国際税務を強みに仕事の幅を広げお客様を守り共に歩みたい

税理士法人シンフォニア 西山実会員(西東京山梨会)

企業規模を意識せず「伴走型支援」でのサポートを継続した結果、親会社の信頼を得て、顧問税理士不在の子会社との税務顧問契約を締結。大手税理士法人、外資系会社での勤務経験を活かして、国際税務をテーマにした情報発信などの業務拡大を展開している税理士法人シンフォニアの西山実会員(西東京山梨会)にお話を伺いました。

外資系で税務エキスパートとして9年間勤めて平成22年に開業

──西山先生は開業されるまでに、大手税理士法人や一般企業勤務のご経験があるとお聞きしました。まずは税理士を目指された経緯や勤務時代の概要など教えてください。

西山実会員

西山 実会員

西山 実家が自営業で、呉服屋を営んでいたのを、高度成長期で衣服も多様になり父の代になって婦人服屋にしていました。店を閉めると父がレジペーパーを持って店舗兼自宅の2階の事務室に上がり、自ら帳簿付けを始める。子供だった私は、早く遊んでほしくて待っていたのですがなかなか終わらず、1階の居間に降りてくるころには、私は眠くなってしまいましたが、売上が良いときは父の機嫌が良かったです。今から思うと、ちゃんと帳簿も記帳して、会社のこと、家族のことを守ってくれていたのだとよくわかります。そんな父の背中を見ていたからか、会計や税務が身近で自然に税理士も目指すようになりました。進学した中央大学の会計学科では公認会計士や税理士を目指す熱い仲間も大勢いて、今でも交流しています。とは言え私自身は、中学生のときに吹奏楽部でトランペットを吹いていた趣味が高じて、大学時代もオーケストラ活動に夢中だったのですけれども(笑)。
 卒業直後は、資産税を中心とした小規模な会計事務所に就職しましたが、所長と目指す方向が自分の感覚と違ったので、翌年、簿記学校に募集が出ていた大手税理士法人A社に転職しました。そこには平成2年から約11年勤務し、税理士試験は平成4年に合格しました。A社では、いろいろな法人案件を手掛けましたが、先輩から徹底的に指導されたのは「とにかく条文に沿った勉強をして、回答しろ」ということ。結局は、それが王道だということなのでしょう。日本の会社と外資系の担当割合は半々くらいでした。30歳でシンガポールに18カ月駐在などの経験もさせてもらえて、現地の若いスタッフと一緒になって働くことも、シンガポール税制と日本の税制を比較して検討するのも面白かったです。

──国際税務に強いのはそういった経験も大きいですね。順調なA社勤務から、さらに転職を考えられたのはなぜですか。

西山 大きな案件も経験できて、充実はしていましたが、その分、物理的に時間がなかったというのが正直なところです。35歳を目前にして、今が人生の節目という感覚もあったので、良い会社が見つかれば検討しようと登録した転職サイトから、B社に入りました。税理士資格があって、いざとなれば開業して食べていけるのだから、それまでは自分個人ではできないような仕事をもう少しやりたかったのです。
 B社は外資系ですが、その業界では売上世界第1位に入る年もある大会社でした。私の主な仕事は税務申告書の作成のほか移転価格税制に関する国税庁とのやりとりで、それ以外はファイナンス関連のほか、マーケティング部門と分析する管理会計、営業部署の経費精算など、複数部門とのチームワークも経験させてもらいました。またB社では経理についてはシェアードサービスの関連会社を中国に持っていて、中国人の方にトレーニングで日本の税務や精算ルールを説明することもありました。B社には約9年勤めて、平成22年6月に開業しました。

友人の言葉を信じて入会お客様に寄り添う相談相手に

──TKCの入会は、開業と同時ですか。

西山 開業にあたっては、A社で一緒に働いていた信頼する友人の奥澤剛彦先生(東京中央会)に相談しました。自分より先に開業していましたし、奥澤先生が開催する経営革新セミナーにも何回か足を運んでいたからです。すると奥澤先生は余計な細かいことや営業的なことは一切言わずに「西山さんならTKCに合っている」と言うのです。その言葉を信じて、自分からTKC本社の代表電話に電話して入会しました。入会直後に誘われたのが、ニューメンバーズ・サービス委員会の企画イベントでその名も「SUCCESSニシヤマ2010」。私の苗字が「西山」なので、私のためのイベントかと驚きました(笑)。当時は全国会と地域会の違いもよくわかっておらず、「西東京山梨会」の略称とは、あとから知りました。そのイベントで、坂本孝司全国会会長の「会計で会社を強くする」の講演を聴いたとき、帳簿付けしていた父の背中がシンクロして、税理士として父が経営していたような関与先と自分は共に歩み、守りたいと思いました。ですのでうちの事務所のキャッチフレーズは「お客様と共に歩む」なのです。

──まさに「伴走型支援」を掲げていらっしゃるのですね。

西山 税理士としてできること、できないことはあっても放り出したりはしない。お客様の悩みに寄り添える一番の相談相手でいたいです。私は縁あって、税理士会支部で開業月が一緒だった鹿野浩一さんと平成23年に法人化しました。鹿野さんは税務署で長年、相続税の調査を担当してきた経験を持っていて、個人から法人までお客様に寄り添える体制が取れていると思っています。それに税理士法人のいいところは、お互い、パートナーの相手のことをPRしやすいことです(笑)。自分のことで、「あれもこれもできます!」と言うのは抵抗があっても、パートナーのことなら自然に言えて、それが事務所のPRにつながるのです。

根拠条文を付けて回答するなど経理部の立場を考え誠実に対応

──それでは大企業へのシステム・コンサルティング業務についてお聞かせください。はじめて連結納税のシステム導入を担当されたC社はいかがでしたか。

西山 センター長や企業情報の社員から声をかけてもらって、二つ返事で受けたまでは良かったのですが、C社の子会社が約100社(笑)。ただ実は、自分が関与しているほかの外資系企業の中にeConsoliTaxを使っている会社があって、システムは知っていました。eTaxEffectの方は本当に初めてだったので、苦労しましたけれど、その後の稼働は順調で、グループ通算制度への移行も問題ありませんでした。
 このC社に限らず、私はシステムユーザへの年2回の運用コンサルティング訪問を大切にしています。雑談などで交わされる会話から会社が抱える課題が見つかるときもあるので、雑談力を上げるためのネタ収集は常に意識しています。収集元は関与している外資系企業の担当者との会話、税制改正の最新動向やTKCの租税判例研究会で得た知識など、「お客さんが関心を持つことに誠実に関心を持つ」ということを大切にしています。とりわけ判例を読むことを続けていると、大企業の経理部スペシャリスト的な方が出てきても、臆せずに会話ができます。今回、顧問税理士がいないということで直接契約のご相談をいただいたD社の子会社についても、子会社から相談された親会社の方から私の名前を挙げていただけたのは、困ったときの相談相手にふさわしいと思ってくださったということなのでしょうから、嬉しかったです。

──子会社との直接契約されたサービス範囲はどのような内容ですか。支援上、留意されていることはありますか。

西山 四半期決算ごとの税額計算などにおける資料作成のお手伝いのほか、税務相談として、月1回オンラインで対応しています。中堅・大企業を支援する上で、意識していることは、経理部でわれわれと相対している社員はサラリーマンで、自分の役割としてその業務を全うしていることです。中小企業なら、経営者や役員など決定権のある人との関りになりますが、彼らはそうではない。ジョブローテーションもありますし、上申しやすいように根拠条文を付けて回答するなど、相手の立場に立った対応を誠実に行うことで、信頼関係が築けるのではないかと思っています。

中堅・大企業での関与先拡大成功要因

新しい課税制度のコラムをTKCグループHPへ執筆

──西山先生には最近、TKCグループホームページのWebコラム「グローバル・ミニマム課税のポイント解説」(全4回・令和5年6月~8月掲載)をご執筆いただきました。海外に多くの関連会社を持つ会社の経理財務部のベテラン部長と3年目の部下との対話形式での制度解説は、非常にわかりやすいと多くの読者に評価いただいていますが、西山先生の発案だったとか。

西山 実会員

西山 西東京山梨会で以前受講した2名の講師による掛け合い形式の研修が面白くて、そこからのインスピレーションです。グローバル・ミニマム課税は、令和5年度の税制改正で創設されたばかりですから、まずは制度導入の背景と計算の概要を理解してもらいたい。私たち税理士は仕事ですから、条文を読むのは慣れていますけれど、一般の読者は、条文ばかり並んでいたら辛いでしょう。新しい課税制度に対して、想定されるQ&
 Aに答えながら解説する対話形式の方が、少しでも印象に残ると思いました。私自身も今回は、租税資料館で「国際税務」(税務研究会)のバックナンバーを読むなど勉強して書きましたが、多くの方に参考にしていただけたら嬉しいです。

──制度の全体像をとらえる上で、とても有効なコラムだと思います。中堅・大企業への情報発信として、今後、Webコラムではどのようなテーマを取り上げるといいと思われますか。

西山 自分の強みは国際税務の経験なので、タックスヘイブンのほか、もちろんグローバル・ミニマム課税も、今後、詳細が明らかになって発展していくので、続編が必要だと思っています。実際に身近なところでは、海外居住者への講演料の支払い時の源泉徴収の取り扱いなども質問をいただく機会があるのでいいかもしれません。

──貴重なお話をありがとうございました。最後にこれから中堅・大企業への支援業務に取り組みたいと思っている先生方へのメッセージをお願いします。

西山 中堅・大企業への支援をやってきて良かったと思っています。表舞台で実名を出して、こんな大会社のシステム・コンサルタントだとPRする機会はなくても、支援した実績は自分の糧になります。それは普段接している関与先との雑談の中であっても、大会社での事例を語れることが、自分の仕事の幅を広げられていると思います。中小企業の社長さんも顧問税理士が成長しているように見えるというのは嬉しいでしょうし、頼もしく感じていただけるのではないでしょうか。
 せっかく一会計事務所では経験できないことに携われるのですから、TKCから声がかかったら、まずはチャレンジしていただければと思います。

WEBコラム グローバル・ミニマム課税のポイント解説

(インタビュー・構成/中堅・大企業支援研究会事務局 今村こすみ)

事務所概要
事務所名 税理士法人シンフォニア
所在地 東京都調布市布田1-26-10 ニビックビル3階
設 立 平成23年6月(22年6月に個人事務所を開業後、法人化。同年3月にTKC入会)
代表者 西山 実(平成5年9月税理士登録)
職員数 10名(うち巡回監査担当4名)

(会報『TKC』令和6年2月号より転載)