従業員数が30人を超え、障害者雇用について意識するようになりました。最新ルールや行政による支援策の全体像について教えてください。(食品加工業)

 2026年7月から民間企業の障害者法定雇用率が2.7%に引き上げられました。これにより、障害者を1人以上雇用する義務のある企業の範囲が「従業員37.5人以上」に広がっています。従業員数が30人を超えた会社にとって、障害者雇用はすでに「自分ごと」の経営課題です。

 従業員数の数え方にも注意が必要です。雇用率算定の基準となる「常用労働者数」は、正社員だけではありません。週の所定労働時間が20時間以上30時間未満のパート・アルバイトは0.5人、30時間以上であれば正社員と同様に1人としてカウントします。「正社員は少ないからまだ大丈夫」と思っていても、パート社員などを合算すると37.5人をすでに超えていたというケースは少なくありません。まず自社の正確な労働者数を確認しましょう。

 今後の動向として2点を押さえておきましょう。

 一つは「障害者雇用納付金制度」の対象拡大です。現在は常用労働者が100人を超える企業のみ、法定雇用率未達の場合に不足1人あたり月5万円を納付する制度ですが、100人以下の企業への対象拡大が議論されています。

 もう一つは「除外率制度」の縮小です。建設業や運輸業など一部の業種では、業務の性質上、障害者雇用が難しいとされてきた歴史的背景から、雇用義務を緩和する制度があります。ただしこの除外率は段階的に縮小されており、25年4月には一律10ポイント引き下げられました。「業種を問わず障害者の職域を広げていく」という政策の方向性は揺るぎません。

誰もが働きやすい職場に

 障害者雇用に取り組むには、まず社内業務の「棚卸し」から始めましょう。ここで大切なのは「障害者にできる仕事を探す」という発想を手放すこと。「手順と指示を明確にすれば、誰もが迷わず取り組める仕事」という基準で見直すと、業務全体の整理にもなります。こうしたアプローチは、高齢者や外国人材、子育て中の社員、新入社員など、多様な人材が働きやすい職場づくりにも直結します。

 図表(『戦略経営者』2026年8月号 P56)に掲載した助成金も積極的に活用しましょう。これらは制度ごとに対象者や雇用条件、申請要件が細かく異なります。採用を決めてから慌てて調べるより、採用活動を始める前にハローワークや地域障害者職業センターへ相談しておくことをお勧めします。

 法定雇用率の引き上げは、確かに対応すべき義務です。しかし視点を変えれば、業務の手順を整理し、誰もが働きやすい組織の仕組みをつくる絶好のきっかけでもあります。早めに準備を始めた企業ほど、焦らず無理なく、そして長く活躍してもらえる障害者雇用を実現できます。ぜひ今から一歩を踏み出してみてください。

掲載:『戦略経営者』2026年8月号