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左端が経理担当の松本瑞生氏

左端が経理担当の松本瑞生氏

福岡県直方市で住宅設計・施工、リフォーム事業を展開する野崎住宅は、『DAIC2クラウド』による原価・経費の緻密な管理を通じて利益率を向上させた。藤田歌織社長、管理部の中津八諸氏、経理担当の松本瑞生氏に、矢野博一顧問税理士を交え、業績管理のポイントを語ってもらった。

──創業から現在までのいきさつを教えてください。

藤田 1973年に父である先代(野嵜京一会長)が住宅設備の販売業をこの直方の地で立ち上げました。その後、リフォーム、戸建て住宅や店舗の設計・施工、アパート経営や土地活用のサポートなど事業のすそ野を広げていき、現在に至ります。私は2021年に入社し、監査役、常務を経て24年に社長に就任しました。

藤田歌織社長

藤田歌織社長

──入社前は多種多様な職業を経験されたそうですね。

藤田 一般の住宅や医療施設などの清掃、飲食店の経営、リンパケアセラピストなど、さまざまな仕事に携わってきました。特にリンパケアセラピストは天職だと感じており、この道を究めるつもりでいたのですが、先代が病気を患い一線を退くことになったため、後を継ぐ決意を固めました。家業に携わるのは初めてで最初は戸惑うことも多かったのですが、お客さまや社員、現場の職人さんたちと接するなかで次第にこの仕事の面白さを肌で感じるようになりました。特にリンパケアセラピスト時代に大切にしていた「お客さまの心と体を整える」という姿勢と、ハウスメーカーという仕事の醍醐味である「十人十色の暮らしに寄り添う」という考え方にはお互いに通じるものがあります。どちらも「お客さまのより良い生活を支える」という点で共通しており、そこに今の仕事の大きなやりがいを感じています。

「十人十色の暮らしに寄り添った家づくり」が同社のモットー

「十人十色の暮らしに寄り添った家づくり」が同社のモットー

顧客にとことん寄り添い夢の詰まった家づくりを実現

──事業のアピールポイントを教えてください。

藤田 土地探しから設計・施工、住宅ローンの相談まで、お客さまの夢が詰まった家づくりをワンストップで対応している点が当社の強みです。特に時間をかけているのがお客さまとの面談で「どういう家に住みたいのか」「場所はどこがいいのか」「どれくらいの予算を想定しているのか」などを丁寧にヒアリングしています。当社は業界のなかでも、特にお客さまとの打ち合わせに時間を割いている会社だと自負しています。

中津 お客さまと金融機関とのやり取りを当社がお手伝いすることもあります。住宅ローンの手続きに際しては、お客さまの要望や家づくりに対する思いなど、書類だけでは伝わりにくい要素があります。そうした点を金融機関の担当者に丁寧にお伝えするなど、お客さまと金融機関とのコミュニケーションを円滑に行うためのサポートも意識して取り組んでいます。

中津八諸氏

中津八諸氏

──顧客にとことん寄り添う姿勢を大切にしているのですね。

藤田 お客さま向けのサービスとして、実際に家づくりに用いる材料の製造工程を見学する機会を積極的に設けています。先日も当社の営業担当者がお客さまとともに、八女市(福岡県)にある八女杉の製材工場を見学しました。このお客さまは「自然と一体となれる家に住みたい」という夢を持たれており、八女杉をふんだんに使用した家を建てることになりました。その後、家は無事に完成し、現在は自然の温もりに囲まれながらご家族で暮らしておられます。

──足元の景況はいかがでしょう。

藤田 同業者の例にもれず、当社も資材や人件費の高騰、住宅ローンの金利上昇の影響を受けています。その一方で、当社は顧問税理士である矢野博一先生によるサポートのもとでコスト管理を徹底しています。原価や経費の推移を定期的に確認・分析するとともに、改善策を議論・実行する習慣が定着しているので、この2~3年にかけて限界利益率、経常利益率がいずれも改善傾向にあります。また、住宅の販売価格を検討する際には、コストの上昇分をそのまま価格に転嫁するのではなく、原価の見直しや経費削減など自社でできる改善策を踏まえたうえで設定しています。

コストを緻密に管理し業績改善への打ち手を検討

──矢野税理士が税務顧問に就いたいきさつを教えてください。

藤田 当社がお世話になっている司法書士の先生の紹介で知り合いました。

矢野 野崎住宅さんとの関係は21年にさかのぼります。当初は会長の確定申告や相続税対策の相談を中心に担当していましたが、22年から税務顧問として関与し、会計・税務面から野崎住宅さんの経営支援に携わることになりました。

矢野博一顧問税理士

矢野博一顧問税理士

──『DAIC2クラウド』の導入を勧めた経緯は?

矢野 もともとは他社の会計システムで経理を行っていたのですが、工事現場別に原価を管理しておらず、経費を費目別に分けずに一括で計上するなど、当時はコスト管理が緻密に行われていませんでした。実際、売上高に対して限界利益、経常利益が伸び悩んでいたことから、会社の数字を"見える化"し、足元の業績から自社の課題や今後の打ち手を迅速に導き出すための体制を構築するべく、23年の夏に『DAIC2クラウド』への切り替えを提案したのです。

藤田 矢野先生が税務顧問に就く前は業績をタイムリーに把握する手段がなく、利益が出ているのかどうかを判断するには決算書が出来上がるのを待つ必要がありました。矢野先生が話されたように、売り上げは伸びているはずなのに期待したほど利益につながっていないと感じていました。経理体制を抜本的に見直したいと考えていたところ、矢野先生から「会計システムを切り替えませんか」と提案を受けたのです。

──会計システムを『DAIC2クラウド』に切り替えたことの効果は?

藤田 『DAIC2クラウド』で原価を工事現場別に、経費を費目別に管理しているので、コストの発生状況を正確かつ緻密に把握することができています。当社では管理職以上の社員が出席する「リーダー会議」を毎月開催しており、足元の業績にもとづいて課題を洗い出すとともに、現場ごとに発生している無駄なコストや費用対効果の低い経費の削減などについて議論を行っています。また、毎月20日前後に矢野先生に来社いただき、前月の業績を確認しながら今後の打ち手を検討する機会を設けるようになったことも、利益率改善の大きな要因となっています。

矢野 毎月の業績報告会では《365日変動損益計算書》を確認しながら、藤田社長、中津さんと足元の業績を振り返っており、報告会後は社長と中津さんとともにメインバンクを訪問し、バンクミーティングを開催しています。バンクミーティングでは社長から事業の概況を、中津さんから今後の受注見込みを、私から現在までの業績の推移について報告するとともに、金融機関担当者からの質疑応答なども交えて会社の状況を包み隠さずお伝えしています。このほか、野崎住宅さんは「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)で決算書をデータで提供されるなど、迅速かつ透明性の高い業績開示にも取り組んでおられます。

本社の隣にはショールームを構える

本社の隣にはショールームを構える

限界利益率が大幅に改善前期は過去最高益を見込む

──『DAIC2クラウド』の導入以降、利益率はどのように変化しましたか。

中津 『DAIC2クラウド』の導入当初は限界利益率が15%、経常利益率が2%程度でしたが、現場ごとの原価の発生状況や経費の動向を注視し、素早く対策を打ってきたことで現在は限界利益率が25%、経常利益率が8%と改善しています。前期(26年8月期)は過去最高益を見込むなど、これらの取り組みは着実な成果につながっています。

──では、普段の経理業務で感じておられるメリットは?

松本 「銀行信販データ受信機能(※)」は本当に便利ですね。以前は通帳を見ながら取引を1件1件入力していたのですが、現在はワンクリックで取引データがシステムに入ってきますし、学習機能によってほぼ修正することなく仕訳計上できています。私自身、宅地建物取引士の資格を持っているので、経理業務が効率化されたことで空いた時間を物件概要書の作成や土地の調査など、宅建士としての専門業務により多くの時間を充てられるようになりました。

──今後の目標を教えてください。

藤田 「十人十色の暮らしに寄り添う」という理念のもと、お客さまの夢を形にする住まいづくりを継続して取り組んでいきます。新築住宅の販売やリフォームなどを通じてお客さまの快適な暮らしを支えながら、地域に必要とされる会社であり続けたいですね。

※銀行信販データ受信機能…複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを自動受信し、その取引データをもとに仕訳ルールの学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる機能

(取材協力・矢野博一税理士事務所/本誌・中井修平)

会社概要
名称 株式会社野崎住宅
業種 木造住宅建築業
創業 1973年4月
所在地 福岡県直方市感田2138-1
売上高 約4億円
従業員数 8名
使用システム DAIC2クラウド
URL https://nozaki-house.com/index.php
顧問税理士 矢野博一税理士事務所
税理士 矢野博一
福岡県北九州市小倉北区浅野2-1-21
駅西幹線ビル603号
URL: https://yano-zeirishi.tkcnf.com

掲載:『戦略経営者』2026年10月号