2015.10.20
間接強制決定変更決定に対する執行抗告事件(諫早制裁金 国の抗告棄却)
LEX/DB25540981/福岡高等裁判所 平成27年 6月10日 決定 (抗告審(執行抗告)/平成27年(ラ)第149号
諫早湾干拓地潮受堤防の排水門の開門に係る間接強制について、佐賀地方裁判所が抗告人(原審債務者)国に命じた現行の間接強制金の額では心理的な強制を加えるには不十分だとして、45名の相手方(原審債権者)ら(佐賀、長崎両県の漁業者ら)が間接強制決定の変更(強制金の増額)を求める申立てをした事案(原審は、間接強制決定のうち、各相手方に対し、遅延の期間中1日につき抗告人が支払うべき金員(1万円)を、原決定送達の日の翌日以降はそれぞれ2万円の割合による金員と変更した)の抗告審において、民事執行法172条2項の「事情の変更」については、支払予告命令発令後に生じた事情の変更に限らず、既に発した支払予告命令の不奏効の場合も含まれ、本件開放義務の内容は、防災上やむを得ない場合を除き一定期間本件各排水門を開放することだけであるから、それ自体、性質上抗告人の意思のみで履行することができるものであり、抗告人の指摘する事情によって本件開放義務を履行することが不可能であるということはできず、本件開放義務を履行することができるにもかかわらず、これを履行しない事実をもって「事情の変更」に当たるといわざるを得ないとし、また、民事執行法172条所定の間接強制金の額は、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額であり、それは執行債権の性質、不履行により債権者が受けるべき不利益、債務者の資力、従前の履行の態様及び債務の性質に照らして、債務名義上の執行債権を実現させるため、執行裁判所が合理的裁量により決するものと解され、単に不履行によって債権者が受ける損害額のみによって決せられるものではないとして、抗告をいずれも棄却した事例。