2014.07.29
親子関係不存在確認請求事件
LEX/DB25446514/最高裁判所第一小法廷 平成26年7月17日 判決 (上告審)/平成25年(受)第233号
戸籍上上告人の嫡出子とされている被上告人が、上告人に対して提起した親子関係不存在の確認を訴えで、原審は、被上告人側で私的に行ったDNA検査の結果によれば、被上告人が上告人の生物学上の子でないことは明白であり、また、上告人も被上告人の生物学上の父が乙であること自体について積極的に争っていないことや、現在、被上告人が、甲と乙に育てられ、順調に成長していることに照らせば、被上告人には民法772条の嫡出推定が及ばない特段の事情があるものと認められるとして、本件訴えの適法性を肯定し、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が、現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、民法772条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものとして解され、法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが、民法772条及び民法774条から民法778条までの規定はこのような不一致が生ずることをも容認しているものとし、また、甲が被上告人を懐胎した時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情があったとは認められないとして、本件訴えは不適法なものであるとし、原判決を破棄し、第一審判決を取消し、本件訴えを却下した事例(補足意見及び反対意見あり)。