2022.06.28
北朝鮮帰国事業損害賠償請求事件
★「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和4年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
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LEX/DB25592517/東京地方裁判所 令和 4年 3月23日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第26750号
昭和34年から昭和59年までの間に、本邦に居住していた在日朝鮮人及びその配偶者らを対象として、朝鮮民主主義人民共和国への集団帰国を推進する、いわゆる北朝鮮帰国事業が実施され、〔1〕原告らが、被告(朝鮮民主主義人民共和国)は、帰国事業において北朝鮮が地上の楽園であるなどと虚偽の宣伝を行って北朝鮮への渡航を勧誘し、それに応じて昭和35年から昭和47年までに北朝鮮に渡航した原告らを北朝鮮内に留め置いた行為が国家誘拐行為であって原告らの移動の自由等を侵害したものであるなどと主張する(本件不法行為1)とともに、〔2〕原告Aが、被告が北朝鮮内に居住する原告Aの家族が北朝鮮から出国することを妨害し続けている行為が原告Aの家族と面会交流する権利を侵害するものであると主張して(本件不法行為2)、被告に対し、不法行為に基づき、原告一人当たり慰謝料1億円の支払等を求めた事案で、民事訴訟法3条の3第8号にいう「不法行為があった地」とは、加害行為そのものが行われた地(加害行為地)と加害行為によって惹起された結果が発生した地(結果発生地)の双方を含むと解され、また、日本国内に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき、「不法行為があった地」が日本国内にあるとして日本の裁判所の管轄権を肯定するためには、原則として、被告がした行為によって原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明される必要があると解されることを前提としたうえで、本件不法行為1については、原告らが、被告に対し、被告が原告らを被告国内に強制的に留置した行為によって原告らの居住場所及びそれに伴う国家体制を自ら選択する権利を侵害したとして不法行為に基づき損害賠償金の支払を求める訴えは、日本の裁判所が管轄権を有しないから不適法であるとし、本件不法行為2については、いわゆる緊急管轄を肯定すべきとの主張も採用できないことからすれば、本件不法行為2に係る訴えは、日本の裁判所が管轄権を有しないから不適法であるとして却下し、本件不法行為1のうち勧誘行為の不法行為による損害賠償請求権は、改正前民法724条後段に規定する除斥期間の経過により消滅したとして、請求を棄却した事例。