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2025.02.04
「結婚の自由をすべての人に」請求控訴事件 
LEX/DB25621576/福岡高等裁判所 令和 6年12月13日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第584号
同性の者との婚姻届を提出したが受理されなかった控訴人(原告)らが、被控訴人(被告)・国に対し、婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定が、異性間の婚姻のみを認め、同性同士の婚姻を認めていないことは、憲法13条、14条及び24条に違反していることが明白であるにもかかわらず、国会は正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠っており、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、各慰謝料等の支払を求めたところ、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが本件各控訴を提起した事案で、(1)〔1〕本件諸規定のうち、異性婚のみを婚姻制度の対象とし、同性のカップルを婚姻制度の対象外としている部分は、異性を婚姻の対象とすることができず、同性の者を伴侶として選択する者の幸福追求権、すなわち婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利に対する侵害であり、憲法13条に違反するものといわざるを得ず、また同性のカップルを法的な婚姻制度の対象とすることは、およそ公共の福祉に反するものではないとし、〔2〕憲法13条に違反する差別的取扱いが不合理なものであることは自明であるから、これが憲法14条1項にも違反することは明らかであるとし、〔3〕また婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定されるべき旨を定める憲法24条2項に違反することは明らかであるとする一方、(2)本件諸規定を巡る下級審裁判所の判決をみると、その判断内容は区々であり、最高裁判所による統一的判断は未だ示されておらず、これを踏まえると、本件立法不作為につき、国会議員に故意又は過失があると認めるのは困難であるから、本件立法不作為が国家賠償法1条1項の各要件を充足するとはいえないとして、本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.02.04
独占禁止法違反行為差止等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」経済法分野 令和7年4月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621286/大阪高等裁判所 令和 6年 9月12日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1531号
被控訴人(被告)が販売するインクジェットプリンター用の純正品インクカートリッジに関し、使用済みの純正品を回収してインクを充填し、インク残量データを初期化するなどして再使用した再生品インクカートリッジを製造して「エコリカ」ブランドとして販売していた控訴人(原告)が、被控訴人に対し、〔1〕被控訴人が平成29年9月以降現在まで販売している型番BCI-380及びBCI-381シリーズのインクカートリッジ(本件純正品)において、ICチップに記録されるインク残量データを初期化することができない仕様とするなどしたことが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条により禁止される、同法2条9項6号所定の「不公正な取引方法」として昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号(一般指定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)に当たり、被控訴人がこのような不公正な取引を行った結果、控訴人は、本件純正品の再生品インクカートリッジを販売できなかったなどと主張して、独占禁止法24条に基づき、本件純正品につきインク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等を用いないことを求める(本件差止請求)とともに、〔2〕このような不公正な取引は不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、損害の一部及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、被控訴人が競争者の商品を需要者に買わせないよう妨害したということはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.01.28
不作為違法確認等、国家賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年3月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573946/最高裁判所第二小法廷 令和 6年12月16日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第430号
上告人らが、被上告人・国に対し、上告人らがSACO見舞金受諾書を提出しないことを理由に沖縄防衛局長がSACO見舞金の支払手続をとらなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、同項に基づき、上記損害金元金と上記慰謝料の差額に相当する額の損害賠償等を求めたところ、第一審が請求を一部却下し、その余を棄却したため、上告人らが控訴し、控訴審が控訴をいずれも棄却したことから、上告人らが上告した事案で、事実関係等によれば、上告人らと被上告人との間において、SACO見舞金を支給する旨の合意は成立していないというのであるから、上告人らはSACO見舞金の支給を受ける権利を有するものということはできず、また、他に、SACO見舞金の支給に関し、上告人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたというべき事情も見当たらないから、被上告人は、沖縄防衛局長が上告人らに対しSACO見舞金の支払手続をとらなかったことにつき、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負わないとしたうえで、以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとするとして、本件上告を棄却した事例(意見あり)。
2025.01.28
覚醒剤取締法違反、関税法違反、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25621560/千葉地方裁判所  令和 6年11月27日 判決(第一審)/令和4年(わ)第1722号
被告人が、覚醒剤取締法違反、関税法違反、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反の罪で、懲役7年及び罰金200万円を求刑された事案で、本件においては、本件貨物の中身が覚醒剤を含む違法薬物かもしれないとの認識が認められれば、各罪について故意が認められ、また、そのような認識が共犯者との共謀を認定する前提となるところ、麻薬特例法違反の罪については、故意が認められ、本件の経緯によれば、被告人と共犯者との共謀も明らかに認められるから、被告人には、同罪が成立するが、他方で、起訴状記載の公訴事実第1に係る覚醒剤取締法違反(営利目的輸入の罪)については、既遂時、すなわち覚醒剤が隠し入れられた本件貨物がF空港において航空機外に搬出された時点までに、前記認識が生じていたとは認められないから、被告人に故意及び共謀が認められず、同罪は成立しないとしたうえで、本件は、組織的な違法薬物の密輸事案であるところ、本件当時社会経験に乏しく未熟であった被告人が、組織に末端の立場として利用された側面があること、被告人が本件犯行時少年であり現在も若年であること、被告人が反省の態度を示しており更生の意欲も高いことのほか、更生に家族の支援も期待できることに照らせば、被告人を主文の刑に処したうえ、その刑の執行を猶予し、家族の指導監督の下、社会内で更生する機会を与えることが相当であるとして、被告人を懲役1年に処するとともに、3年間その刑の執行を猶予し、一方、本件公訴事実中、覚醒剤取締法違反及び関税法違反の点については、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.21
行政処分取消請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和7年1月17日解説記事が掲載されました
LEX/DB25573869/札幌高等裁判所  令和 6年10月18日 判決(控訴審)/令和4年(行コ)第1号
北海道猟友会甲支部の支部長であり、ヒグマを駆除するためにライフル銃を発射した被控訴人が、公安委員会から銃砲所持許可を取り消す旨の処分を受けたところ、当該処分は銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年6月16日号外法律第69号による改正前のもの)所定の要件を満たさず、また、同公安委員会の判断は裁量権を逸脱・濫用したものであると主張して、控訴人・北海道に対し、その取消しを求め、原審が被控訴人の請求を認容したところ、控訴人が控訴した事案で、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)は、本件建物及びe会館が存した方角(北東及び北)とさほど乖離しておらず、本件一般住宅、本件物置及び本件空き家についても、その方角(北東、北北西及び北北西)が、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)と大きく乖離するものではなかったこと、本件周辺建物5軒は、いずれも本件発射行為をした位置から90メートル以内にあったことを考慮すれば、本件発射行為は、「建物等に向かってする銃猟行為」に当たるというべきであるとし、また、公安委員会の判断が、重要な事実を欠くか、又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとして認めることはできないから、同公安委員会の判断が裁量権の逸脱・濫用に該当するとはいえないとして、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例。
2025.01.21
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和7年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621455/名古屋地方裁判所 令和 6年 3月 6日 判決(第一審)/令和5年(ワ)第2684号
本件交通事故に関して、原告が、被告に対し、損害賠償を請求し、これに対し、被告が、原告の被告に対する損害賠償請求権は、被告が申し立てた破産手続において免責許可決定が確定したときは、同決定の効力により免責されるべきものであると主張した事案で、被告は、運転免許が停止されていた状態で自動車を運転し、本件事故を生じさせたところ、交差点を右折するに際し、横断歩道を歩行中の者を看過したこと自体は過失であるとしても、免許停止中の運転は故意的なものといわざるを得ず、悪質であるから、被告の悪質性に鑑み、傷害慰謝料を増額することが相当であり、原告の症状及び入通院日数を考慮すると、傷害慰謝料は230万円とすることが相当であるが、被告の原告に対する不法行為は、故意又は重大な過失により人の身体を害したものともいえないから、原告の被告に対する損害賠償請求権は、前記破産手続の中で免責許可決定が確定したときは、同許可決定の効力を受けるものであり、被告は、その責任を免れるものと認められるとし、原告の請求は、被告に対する免責許可決定が確定したときは、原告が、本件事故によって発生した、被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権に基づき、被告から同賠償額及びこれに対する令和2年11月18日から同免責許可決定が確定する日の前日まで年3パーセントの割合による金員を受領する権利を有することを確認する限度で理由があるとして認容し、その余の請求は理由がないとして棄却した事例。
2025.01.14
傷害致死、強制わいせつ致傷、傷害被告事件(女児虐待致死事件控訴審逆転無罪判決) 
LEX/DB25621501/大阪高等裁判所 令和 6年11月28日 判決(控訴審)/令和3年(う)第593号
被告人が、養子であった被害児(当時2歳の女児)に対し、〔1〕その左足を骨折させ、〔2〕その肛門に異物を挿入して傷害を負わせ、〔3〕その頭部に強度の衝撃を与えて頭蓋内損傷等の傷害を負わせ、搬送先の病院で死亡させたとして、傷害致死、強制わいせつ致傷、傷害の罪で懲役17年を求刑され、原判決が、〔1〕の事件について、被害児の骨折が他者からの暴行以外の原因で生じた合理的疑いが残り、被告人が同児に暴行を加え骨折させたと認めるには立証が十分ではないとして無罪とし、〔2〕及び〔3〕の各事件につき有罪と認めて、被告人を懲役12年に処したところ、検察官及び被告人が控訴した事案で、〔1〕の事件について、被害児の左足に強い衝撃を与える暴行が加えられ、同児が本件骨折の傷害を負ったことや、その暴行の主体が被告人であったことを認めるには合理的な疑いが残り、立証が不十分とした原判決の判断は正当であり、論理則経験則等に反する点はないとし、〔2〕の事件について、E医師の見解は、本件裂傷の発生原因を異物挿入と特定する根拠を合理的に示したものといえず、これによっては同裂傷が被害児の肛門への異物挿入により生じたと推認することはできず、しかるに、原判示第1の事実を認めた原判決の認定・判断は、論理則経験則等に反する不合理なものであり是認することができず、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判示第1の事実を認めた部分は破棄を免れないとし、〔3〕の事件について、M医師やQ医師らの原審証言等の関係証拠によっては、被告人が被害児の頭部に何らかの方法によって強度の衝撃を与える暴行を加え、同時に頭蓋内損傷の傷害を負わせた事実を認定することはできないのに、原判示第2の事実を認めた原判決の認定・判断は、論理則経験則に反する不合理なものであり是認することができず、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、破棄を免れないとして、検察官の本件控訴を棄却し、原判決中、被告人の有罪部分を破棄して、本件公訴事実中、傷害致死及び強制わいせつ致傷の各点について、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.14
大麻取締法違反被告事件 
LEX/DB25621378/千葉地方裁判所 令和 6年 3月14日 判決(第一審)/令和5年(わ)第216号
被告人が、みだりに、駐車中の自動車内において、大麻である液体約2.122グラム及び大麻であるワックス様のもの約0.204グラムを所持したとして、大麻取締法違反の罪で懲役1年4か月を求刑された事案で、検察官が、被告人に大麻所持の故意を推認させるとして主張する各事実については、検察官が主張するほどの強い推認力があるとはいえず、これらを総合しても、本件リキッドについて、友人からCBDだと聞いて、もらったものであり、大麻と思っていなかったとする被告人の供述を排斥することができないから、本件リキッドについて、被告人が違法な大麻かもしれないと認識していたことが間違いないとまではいえず、本件リキッドが大麻取締法上の「大麻」に該当すると認められるものの、本件リキッドについて、被告人に大麻所持の故意を認めるには合理的な疑いが残るから、被告人に対する本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.07
固定資産評価審査決定取消請求控訴事件 
LEX/DB25621372/札幌高等裁判所 令和 6年 4月19日 判決(控訴審)/令和5年(行コ)第16号
被控訴人会社が、平成30年度の控訴人・小樽市の公売において本件家屋を含む不動産を8900万円で落札してその所有権を取得したが、控訴人市長が、本件家屋の固定資産税に関する価格である令和3年度土地・家屋課税台帳への登録価格を3億1556万7800円と決定したことから、被控訴人が、本件登録価格を不服として審査の申出をし、これに対して、小樽市固定資産評価審査委員会が、小樽市の評価額は適正であるとして審査の申出を棄却する旨の決定をしたことについて、被控訴人が、本件決定につき、〔1〕本件家屋は約17年間使用されることなく放置されていたなどの損耗による評価減点事情があり、また〔2〕本件家屋の地域的状況が劣るなどの需給事情による評価減点事情があるにもかかわらず、固定資産評価基準に従ってこれらの事情が考慮されることなく本件登録価格が決定されたため違法であるなどと主張して、控訴人に対し、本件決定の取消しを求め、原審が本件決定の全部を取り消したことから、控訴人が控訴した事案で、本件家屋は、低層階の窓ガラスの多くが破損しても補修されることなく屋内への雨水等の浸入を許す事態が放置されており、通常の維持管理が全くされてないことは明らかであるから、本件家屋の状況については、通常の維持管理を行う場合に生じる損耗を超えた損耗が生じているといえ、これが長期間の経年劣化に伴う程度の損耗に過ぎないなどということはできないところ、経年減点補正率によることが適当でないとして本件決定を取り消した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.01.07
損害賠償等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野 令和7年2月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621384/大阪高等裁判所 令和 5年12月15日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1308号
大阪府吹田子ども家庭センター所長が、控訴人の長男であるEについて、控訴人から虐待を受けていることが疑われるとして、児童福祉法33条1項に基づく一時保護を開始し、家族再統合に向けた話合いを行うためとして、同法27条1項2号に基づく児童福祉司指導措置決定をしたところ、控訴人が、本件一時保護の開始後に本件児童との面会通信が違法に制限されている(本件面会通信制限)と主張して、被控訴人・大阪府に対し、〔1〕本件面会通信制限の差止めを求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償金の支払を求め(甲事件)、加えて、控訴人が、現時点で本件一時保護を継続することは違法であると主張して、〔3〕本件一時保護の解除(撤回)の義務付けを求めるとともに、本件指導措置決定は違法であるとして、〔4〕本件指導措置決定の取消しを求め(乙事件)、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が、〔1〕人格権に基づき、本件面会通信制限の差止めを求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する慰謝料の支払を求めて控訴した(原審甲事件)事案で、本件所長による本件面会通信制限は、児童福祉法33条の2第2項による適法な措置であり、控訴人の人格権を侵害する違法な行為であるとはいえないから、本件面会通信制限の差止請求及びこれによる国家賠償法1条1項に基づく慰謝料請求のいずれについても理由がないところ、原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.12.24
国家賠償請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野 令和7年2月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621271/東京高等裁判所 令和 6年10月30日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第292号
同性の者との婚姻を希望する控訴人らが、被控訴人・国に対し、現行の法令が、婚姻は男女間でなければできないものとし、同性間の婚姻を認めていないことは憲法14条1項、24条1項、2項に違反すると主張して、国会が現行の法令では男女間でのみ認められている婚姻を同性間でも可能とする立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由に、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料各100万円及び遅延損害金の支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、〔1〕「現行の法令が同性婚を認めていないことの憲法適合性」について、現行の法令が、民法及び戸籍法において男女間の婚姻について規律するにとどまり、同性間の人的結合関係については、婚姻の届出に関する民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けていないことは、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益について、合理的な根拠に基づかずに、性的指向により法的な差別的取扱いをするものであって、憲法14条1項、24条2項に違反するというべきであるとする一方、〔2〕「本件立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法か」について、現時点までに、同性間の人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けていないことが憲法14条1項、24条2項に違反することが、国会にとって明白となっていたということはできないから、国会が、現時点(当審口頭弁論終結日である令和6年4月26日時点)までに、民法及び戸籍法において男女間の婚姻について規律するにとどまり、同性間の人的結合関係については婚姻の届出に関する民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けるに至っていないという立法不作為をもって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるということはできないとして、本件控訴をいずれも棄却した事例。
2024.12.24
過失運転致死、道路交通法違反被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573679/札幌地方裁判所 令和 6年 6月 5日 判決(第一審)/令和5年(わ)第732号
被告人が、信号機により交通整理の行われている交差点において、普通乗用自動車を運転中、自己の運転により上記横断歩道付近で人をれき過して傷害を負わせたかもしれないと認識したのに、直ちに車両の運転を停止して、Aを救護する等必要な措置を講じず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、懲役2年を求刑された事案において、被告人が本件交差点に戻り、黒っぽい物をちらっと見た時点で、被告人は自己の運転により人をれき過して傷害を負わせたかもしれないと認識していたとし、被告人には救護義務違反及び報告義務違反の故意が認められ、救護義務違反及び報告義務違反の罪が成立するとした一方で、被告人が前方注視義務を尽くしていたとしても、停止限界地点より手前でAを発見できなかった可能性は否定できないことなどから、被告人には過失が認められないとして、本件公訴中、道路交通法違反の点については、懲役8か月、3年間の執行猶予を言い渡し、過失運転致死の点については、無罪を言い渡した事例。
2024.12.17
不動産登記申請却下処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野での解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573858/最高裁判所第三小法廷 令和 6年11月12日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第165号
被上告人らは、いずれもBとその夫との間に出生した子であり、C(本件被相続人)は、Bの母の姉であるDの子であるが、Bは、被上告人らの出生後の平成3年▲月にDとの間で養子縁組をし、これにより本件被相続人の妹となった後、平成14年▲月に死亡し、その後、本件被相続人は、平成31年▲月に死亡し、本件被相続人には、子その他の直系卑属及びB以外の兄弟姉妹はおらず、死亡時においては直系尊属及び配偶者もいなかったところ、被上告人らが、民法889条2項において準用する同法887条2項の規定によりBを代襲して本件被相続人の相続人となるとして、本件被相続人の遺産である土地及び建物につき、相続を原因とする所有権移転登記及び持分全部移転登記の各申請をしたが、横浜地方法務局川崎支局登記官は、上記各申請は不動産登記法25条4号の「申請の権限を有しない者の申請」に当たるとして、これを却下する旨の各決定をしたため、被上告人らが、上告人・国を相手に、本件各処分の取消しを求めた事件において、控訴審が、上記事実関係の下において、本件各処分は違法であるとして、被上告人らの請求を認容したことから、上告人・国が上告した事案で、民法889条2項において準用する同法887条2項ただし書は、被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子である場合に、被相続人との間に養子縁組による血族関係を生ずることのない養子縁組前の養子の子は、養子を代襲して相続人となることができない旨を定めたものと解されるから、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができないと解するのが相当であって、本件において、被上告人らは、本件被相続人とBの共通する親であるDの直系卑属でないから、Bを代襲して本件被相続人の相続人となることができず、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2024.12.17
発信者情報開示命令申立却下決定に対する即時抗告申立事件 
「新・判例解説Watch」国際私法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573801/知的財産高等裁判所 令和 6年10月 4日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(ラ)第10002号
抗告人(原審申立人)が、インターネット接続サービスを提供する台湾法人である相手方(原審相手方)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項、8条の規定に基づき、本件各投稿に係る発信者情報の開示命令の申立てをし、原審は、本件各投稿について、台湾に所在する相手方が、台湾に所在する者との間で締結された台湾に所在する者向けのプロバイダ契約に基づき提供したインターネット接続サービスを利用して行われたことがうかがわれるとして、本件申立ては日本において事業を行う者に対する日本における業務に関するものであるとはいえないから、日本の裁判所にプロバイダ責任制限法9条1項3号所定の国際裁判管轄があるとはいえないとして却下されたため、抗告人が抗告をした事案において、本件各投稿は、実質的に見て日本に居住する日本人向けとしか考えられないようなインターネット接続サービスを利用して行われたといえるところ、外国に業務の本拠を置くプロバイダが利用されたからといって、当該業務が「日本における」ものでないとして我が国の国際裁判管轄を否定するのは相当でなく、本件申立ては、「申立てが当該相手方の日本における業務に関するもの」に当たるとして、原決定を取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2024.12.10
難民不認定処分等取消請求事件 
LEX/DB25621201/東京地方裁判所 令和 6年10月25日 判決(第一審)/令和3年(行ウ)第278号
中華人民共和国の国籍を有する外国人男性である原告が、cの思想に従って活動しているc修煉者であることから、中国に帰国すると迫害を受けるおそれがあるとして、法務大臣に出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づき、難民の認定の申請をしたところ、法務大臣から難民の認定をしない処分を受けたため、本件不認定処分の取消しを求めるとともに、原告に対する難民の認定の義務付けを求めた事案で、原告には、迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情に加え、cの思想に従った活動をする者であることを理由として、中国政府による迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を抱くような客観的事情があると認められるから、原告は、難民に該当すると認められ、原告を難民として認定しなかった本件不認定処分は、違法であり、また、本件義務付けの訴えは適法である(行訴法37条の3第1項2号)として、法務大臣が原告に対してした難民の認定をしない処分を取り消し、法務大臣に対し、原告に同法61条の2第1項の規定による難民の認定をすることを命じた事例。
2024.12.10
再審請求事件(福井女子中学生殺人事件第二次再審請求開始決定) 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和7年3月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621140/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 6年10月23日 決定(再審請求審)/令和4年(お)第2号
請求人(当時20歳)が、P2(被害者)方において、P2の二女であるP3(当時15歳)といさかいになって激昂の余り、殺意をもって、被害者に対し、同室にあったガラス製灰皿でその頭部を数回殴打し、同室にあった電気カーペットのコードでその首を絞め、同室にあった包丁でその顔面、頸部、胸部等をめった突きにし、よって、その頃、同所において、被害者を脳挫傷、窒息、失血等により死亡させ殺害したが、請求人は本件当時、シンナー乱用による幻覚、妄想状態で、心神耗弱の状態にあったとして、殺人罪に問われ、名古屋高等裁判所金沢支部が平成7年2月9日に請求人を懲役7年に処し、確定したところ、請求人が第2次再審請求をした事案で、本件殺人事件については、もともと請求人の自白はもちろん、犯人性を直接基礎付ける物証や犯行目撃供述は存在しないところ、確定判決によって、慎重な信用性判断を要する主要関係者供述に依拠して立証された間接事実により請求人が犯人と認定された事案であるが、その主要関係者供述についても、本件殺人事件との関連性が強い客観的裏付けに乏しいものの、最終的に主要関係者が概ね一致して確定判決にいう大要を供述していることを理由に、相互に各供述を補強し、その信用性が肯定されたといえるところ、しかしながら、主要関係者供述が大筋で一致しているからといって、同供述が実際に体験した事実を供述するものとは評価することはできず、確定判決のように主要関係者供述の信用性を認めることは、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則にもとることになり、正義にも反し許されないというべきであるから、主要関係者供述を間接証拠として、犯行可能性、血痕目撃や犯行告白といった間接事実は認定することができず、弁護人らが提出した心理学者作成の鑑定書や、他の新証拠を更に検討するまでもなく、請求人が本件殺人事件の犯人であることについては合理的な疑いを超える程度の立証がされているとは認められず、請求人を犯人であると認めることはできないから、弁護人らの主張には理由があるとして、本件について再審を開始した事例。
2024.12.03
損害金請求事件 
LEX/DB25621110/水戸地方裁判所下妻支部 令和 6年10月23日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第200号
被告市議会の議員である原告らが、被告市議会からそれぞれ出席停止の懲罰(地方自治法135条1項3号)を受けたことについて、同懲罰を原告らに科したのは被告市議会の裁量権を逸脱するものであって違法な公権力の行使であるとして、国家賠償法1条による損害賠償請求権に基づき、被告に対し、それぞれ、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件配布行為はそもそも懲罰事由に当たらないものというべきであるから、本件配布行為を懲罰事由とした本件懲罰1は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとし、また、本件懲罰2の相当性を判断するに際しては前件懲罰において出席停止1日という処分がされたことを前提とすることは相当ではなく、議会における議員の発言の自由の重要性にかんがみると、議会の自律性を踏まえても、本件懲罰2において発言機会を奪う結果となる出席停止3日という処分としたことは重きに過ぎ、議会の裁量権を著しく逸脱した又はこれを濫用したものというべきであるから、本件懲罰2は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとして、原告らの請求を一部認容し、なお、事案の性質にかんがみ、前件懲罰、本件懲罰1及び本件懲罰2においてはいずれも、議長の指名により懲罰動議を発議した議員のみによって懲罰特別委員会が構成され、前記各懲罰を行うことを求める委員会報告がなされ、前記各懲罰に至ったことが認められるところ、このような委員会の構成方法は、委員会へ付託し慎重な審理を求めた古河市議会会議規則162条の趣旨に反するのではないかとの疑問を禁じ得ないところである、と付言した事例。
2024.12.03
損害賠償請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621082/札幌高等裁判所 令和 6年 9月13日 判決(控訴審)/令和6年(ネ)第8号
ホテルの運営を行う被控訴人(被告)会社において宿泊部部長として勤務していた控訴人(原告)が、アメリカ合衆国ハワイ州で挙行される控訴人の娘の結婚式に出席するため年次有給休暇の時季を指定したが、渡航予定日の前日に被控訴人から新型コロナウイルス感染症に関する状況等を理由に時季変更権の行使を受け、渡航及び結婚式への出席ができなかったことについて、当該時季変更権の行使は、時季変更事由である被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働基準法39条5項ただし書)に当たらないから違法であり、違法な時季変更権の行使により精神的苦痛を被ったなどと主張して、被控訴人に対し、労働契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求め、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、不可避に伴う海外渡航によって控訴人自身が新型コロナウイルスに感染する危険性が高まることなどは、被控訴人の事業運営を妨げる客観的事情であると認められるから、本件期間に有給休暇を与えることは被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するといわざるを得ない一方、休暇開始日の前日に至って本件時季変更権を行使したことは、合理的期間を経過した後にされたものであって権利の濫用というほかなく、違法とすべきであるところ、結婚式に参加することができなかったことによる精神的苦痛を上記不法行為と相当因果関係のある損害ということはできず、控訴人の請求は、本件期間開始の前日に本件時季変更権が行使されたことによって休暇取得に対する期待を侵害されたことによる精神的苦痛の限度で相当因果関係が認められ、本件控訴は前記の限度で理由があるとして、原判決を変更した事例。
2024.11.26
地位確認等請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年2月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573841/最高裁判所第一小法廷 令和 6年10月31日 判決(上告審)/令和5年(受)第906号
上告人(被控訴人・被告)との間で期間の定めのある労働契約を締結し、上告人の設置する大学の教員として勤務していた被上告人(控訴人・原告)が、労働契約法18条1項の規定により、上告人との間で期間の定めのない労働契約が締結されたなどと主張して、上告人に対し、労働契約上の地位の確認及び賃金等の支払を求め、第一審が被上告人の請求を棄却したため、被上告人が控訴し、控訴審(原審)が、本件労働契約は大学の教員等の任期に関する法律7条1項所定の労働契約には当たらないとしたうえで、労働契約法18条1項の規定により、被上告人と上告人との間で無期労働契約が締結されたとして、被上告人の地位確認請求を認容し、賃金等の支払請求の一部を認容したことから、上告人が上告した事案で、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当でないというべきであり、本件事実関係によれば、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるというべきであるから、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たると解するのが相当であって、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、前項の部分につき、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2024.11.26
住居侵入、強盗殺人、放火被告事件(袴田事件再審無罪判決) 
LEX/DB25621141/静岡地方裁判所 令和 6年 9月26日 判決(再審請求審)/平成20年(た)第1号
被告人が、住居侵入、強盗殺人、放火の罪で起訴され、被告人を死刑に処する旨の判決が確定したが、その後の再審請求審(第2次再審請求審)が、提出された新証拠は、刑事訴訟法435条6号にいう無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当するとして、再審を開始するとの決定(本件再審開始決定)をしたため、検察官が即時抗告又は抗告を申し立て、差戻前抗告審は、本件再審開始決定を取り消したことから、弁護人が特別抗告を申し立て、最高裁判所は本件を東京高等裁判所に差し戻す旨の決定をし、差戻抗告審が、1号タンクから発見された5点の衣類に付着した血痕の色調に赤みが残っていたことは、被告人を本件犯行の犯人とした確定第1審判決の認定に合理的な疑いを生じさせることが明らかであるとして、検察官の即時抗告を棄却する決定をし、本件再審開始決定が確定したため、再審公判が行われた事案で、被告人の犯人性を推認させる最も中心的な証拠とされてきた5点の衣類は、本件の犯行着衣であるとも、被告人が本件犯行後に1号タンク内に隠匿したものであるとも認められず、本件事件から長期間経過後のその発見に近い時期に、本件犯行とは関係なく、捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされ、1号タンク内に隠匿されたものであって、捜査機関によってねつ造されたものと認められ、また、5点の衣類と被告人を結び付けるという端切れも、捜査機関によってねつ造されたものと認めるのが相当であり、5点の衣類及び端切れは、本件とは関連性を有しない証拠であるから、本件の証拠から排除され、被告人が本件犯行の犯人であることを裏付ける証拠にはならず、そして、5点の衣類を除いた証拠によって認められる事実関係は、被告人が本件犯行の犯人であるとすれば整合するといった程度の限定的な証明力を有するに過ぎず、被告人以外の者による犯行可能性を十分に残すものであるところ、本件の事実関係には、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難な事実関係が含まれているとはいえず、被告人を本件犯行の犯人と認めることはできないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。