2018.10.09
納税告知処分等取消請求事件
LEX/DB25449691/最高裁判所第三小法廷 平成30年 9月25日 判決 (差戻上告審)/平成29年(行ヒ)第209号
上告人(被控訴人・原告。権利能力のない社団)が、その理事長であったAに対し、同人の上告人に対する借入金債務の免除をしたところ、所轄税務署長から、上記の債務免除に係る経済的な利益がAに対する賞与に該当するとして、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたため、被上告人(控訴人・被告。国)を相手に、上記各処分(ただし、上記納税告知処分については審査請求に対する裁決による一部取消し後のもの)の取消しを求めた事案の差戻後上告審において、給与所得に係る源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為が無効であり、その行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたときは、税務署長は、その後に当該支払の存在を前提として納税の告知をすることはできないものと解され、当該行為が錯誤により無効であることについて、一定の期間内に限り錯誤無効の主張をすることができる旨を定める法令の規定はなく、また、法定納期限の経過により源泉所得税の納付義務が確定するものでもないとし、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について、法定納期限が経過したという一事をもって、当該行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないというべきであるとし、上告人が法定納期限の経過後に本件債務免除の錯誤無効を主張することは許されないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。しかしながら、上告人は、本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの、納税告知処分が行われた時点までに、本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず、上告人の主張をもってしては、本件各部分が違法であるということはできないとして、本件各部分が適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。