2018.07.17
(袴田事件第2次再審請求(即時抗告審))
LEX/DB25560605/東京高等裁判所 平成30年 6月11日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第193号
請求人(有罪の言渡を受けた者)が、深夜、静岡県清水市(当時)商店の専務方に侵入して金品を物色中、同人(当時41歳)に発見されるや金品強取の決意を固め、同人方裏口付近の土間で、所携のくり小刀(刃渡約12cm)で殺意をもって同人の胸部等を数回突き刺し、さらに、物音に気付いて起きてきた家人に対しても、殺意をもって、同家八畳間で同人の妻(当時39歳)の肩、顎部等を数回、専務の長男(当時14歳)の胸部、頸部等を数回、同家ピアノの間で専務の次女(当時17歳)の胸部、頸部等を数回、それぞれ前記くり小刀で突き刺し、次いで,専務が保管していた商店の売上金20万円余り、小切手5枚等を強取し、さらに専務ら4名を住居もろとも焼いてしまおうと考え、同商店第一工場内に置いてあった石油缶在中の混合油を持ち出して、これを専務ら4名の身体にふりかけ、マッチでこれに点火して放火し、専務らが現に住居に使用しかつ現在する木造平家建住宅1棟を焼損し、上記被害者の専務らを死亡させて殺害したする請求人へ確定判決が出て、請求人が、再審請求(第1次再審請求)をし、同再審請求を棄却する決定をし、これに対する即時抗告及び特別抗告もそれぞれ棄却され、さらに、請求人と再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人・請求人の実姉)が、地方裁判所に本件再審請求(第2次再審請求)を行い、無罪であることを認めるべき新たな証拠として種々の書証等を提出したほか、職権によるDNA型鑑定を求め、同裁判所は、これら書証のほか、DNA型鑑定の結果等に基づき、「再審を開始する」との原決定をした。これに対して検察官が即時抗告を申し立てた事案において、5点の衣類に関する新旧証拠及びその余の新旧証拠を総合評価しても、5点の衣類が犯行着衣であり、かつ、それが請求人のものであるとする確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるような事情は見出せず、そのほか、弁護人が種々指摘する点を踏まえても、捜査機関が、5点の衣類をねつ造したことを示す明白な証拠はうかがわれず、5点の衣類を根拠として、請求人を本件の犯人とした確定判決の認定に合理的な疑いが生じていないことは明らかであるとし、原決定を取消し、本件再審請求を棄却した事例。