注目の判例

2021年

2021.01.26
遺言無効確認請求本訴、死因贈与契約存在確認等請求反訴事件
LEX/DB25571246/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 1月18日 判決 (上告審)/平成31年(受)第427号 等
本件の本訴請求は、亡Aが作成した平成27年4月13日付け自筆証書(本件遺言書)による遺言について、被上告人ら(亡Aの妻であるX1及び同人とAとの間の子ら)が、本件遺言書に本件遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているなどと主張して、上告人ら(亡Aの内縁の妻であるY2及び同人とAとの間の子ら)に対し、本件遺言が無効であることの確認等を求めたところ、原審は、被上告人らの本訴請求を認容し無効としたため、上告人らが上告した事案で、Aが、入院中の平成27年4月13日に本件遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書し、退院して9日後の同年5月10日に押印したなどの本件の事実関係の下では、本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきであり、原判決中本訴請求に関する部分を破棄し、本件遺言のその余の無効事由について更に審理を尽くさせるために、原審に差し戻した。そして、本件の反訴請求は、上告人Y2らが、被上告人らに対し、本訴請求において本件遺言が無効であると判断された場合に、予備的に、死因贈与契約の成立の確認等を求めるものであるところ、本訴請求について原判決が破棄差戻しを免れない以上、反訴請求についても当然に原判決は破棄差戻した事例。
2021.01.26
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25567304/大阪高等裁判所 令和 2年 9月18日 判決 (控訴審)/令和1年(う)第1206号
覚せい剤取締法違反の事案において、原判決が、本件捜索で押収された覚せい剤在中のチャック付きポリ袋3袋は、麻薬取調官が持ち込んだものであり、その持ち込みを直接の契機とする現行犯逮捕には重大な違法があり、現行犯逮捕後に採取された尿の鑑定書もこれと密接に関連する証拠であるから、これらの証拠能力は認められるべきでないとする弁護人の主張を容れて本件鑑定書等の取調請求を却下した本件証拠決定について、麻薬取締官が捜索開始直後に洗面所付近で写真撮影をしており、その際に本件パケ(上記3袋のうちの2袋。)があった洗面台の前を往来していたことは間違いなく、本件パケが洗面台の上に容易に発見できるような状態で置かれていたことや麻薬取締官が9人で本件捜索に従事していたことも併せ考えれば、捜索開始から約1時間半もの間本件パケが発見されなかったという経緯にはやはり不審な点が残るなどとして、被告人を無罪としたため、検察官が控訴した事案で、本件捜索に当たって麻薬取締官が本件覚せい剤を発見現場に置いた疑いが払拭できないとした原裁判所の判断に不合理なところはなく、その捜査の違法性が重大であることは当然であり、本件鑑定書等はこれと密接に関連するものであって証拠として許容することは将来における違法捜査抑止の見地から相当でないから、その証拠能力を否定して検察官の証拠調べ請求を却下した原審の訴訟手続に法令違反はないとし、また、検察官の挙げる各証拠をもって、被告人の自白の真実性を保障する補強証拠になるとはいえないとして、本件控訴を棄却した事例。
2021.01.19
損害賠償等請求事件
LEX/DB25571240/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 1月12日 判決 (上告審)/令和1年(受)第1166号
上告人が、被上告人に対し、上告人が本件差押転付命令により取得した本件各損害賠償請求権に基づき、4822万3907円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、上告人が被上告人に対して本件示談において合意された損害賠償金の額である4063万2940円(本件示談金額)を超える額の請求をすることができるか否かが争われ、原審が、上告人の請求を、本件示談金額から本件相続人らが支払を受けた3000万1100円を差し引いた1063万1840円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却した判決したことに対し、上告人が上告した事案において、上告人が被上告人に対して本件示談金額を超える額の請求をすることができないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、本件各損害賠償請求権の金額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき原審に差し戻した事例。
2021.01.19
株主総会開催禁止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25567503/東京高等裁判所 令和 2年11月 2日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第1851号
P社の監査役である抗告人(原審債権者)が、P社の株主である相手方(原審債務者)が裁判所の招集許可決定に基づいて総会開催日時を令和2年11月6日午前11時からとして招集した臨時株主総会の開催には違法があるなどと主張して、会社法385条類推適用による監査役の招集株主に対する違法行為差止請求権に基づき、本件臨時株主総会の開催の禁止を求める旨の訴えを本案として、本件臨時株主総会の開催を禁止する旨の仮処分命令を求めたところ、原審は、本件臨時株主総会の招集の手続や決議の方法について、法令若しくは定款に違反し、又はそのおそれがあるものとは認められず、被保全権利を認めることができないとして、抗告人の申立てを却下する旨の決定をしたため、抗告人は、これを不服として抗告した事案において、委任状による議決権行使をする株主に対する相手方のクオカードの贈与の表明を理由として、保全処分として本件臨時株主総会の開催禁止を求める旨の抗告人の申立てについては、保全の必要性を認めることはできないとし、本件申立てを却下した原決定は、その結論において正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.01.12
相続税更正処分等取消請求控訴事件
LEX/DB25567300/札幌高等裁判所 令和 2年12月11日 判決 (控訴審)/平成31年(行コ)第9号
被相続人の相続人である控訴人らが、被相続人に係る相続により取得した土地及び建物(被相続人所有不動産)並びにH社の株式につき、被相続人所有不動産の課税価格を不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて算定するとともに、H社の所有する所有不動産についての不動産鑑定士の鑑定評価を前提に本件株式の課税価格を算定して相続税の申告を行い、その後、別の不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて又はこれを前提として被相続人所有不動産及び本件株式の課税価格を算定して、控訴人Aは更正請求を控訴人B及び控訴人Cは修正申告をそれぞれ行ったのに対し、札幌北税務署長が、土地及び建物の評価は特別の事情がない限り財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達)によるべきであって、不動産鑑定士による不動産鑑定評価に基づいて評価を行うのは相当ではないとして、控訴人らに対し、それぞれ更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことから、控訴人らが、本件各更正処分等には本件各不動産の価額について時価を超える評価をした違法があるほか、本件各更正処分等は行政手続法の要請する理由の提示を欠き違法であると主張して、被控訴人・国に対し、本件各更正処分のうち修正申告ないし更正の請求に係る課税価格及び納付すべき税額を超える部分についての取消し及び本件各賦課決定処分の取消しを求め、原審が、本件各更正処分等は適法であるとして控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した事案で、本件各更正処分等はいずれも適法と認められるとして、本件控訴を棄却した事例。
2021.01.12
発信者情報開示請求控訴事件
LEX/DB25567236/東京高等裁判所 令和 2年11月26日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第1555号
控訴人が、いずれも氏名不詳者である発信者がした、インターネット上の短文投稿サイトであるツイッターへの本件各投稿によって名誉感情を侵害され、また、同1の固定ツイートを削除しなかったという不作為によってプライバシーを侵害されたので、発信者に対する損害賠償請求権行使のために、本件発信者情報の開示を受ける正当な理由がある旨を主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、経由プロバイダである被控訴人ら各自に対し、それぞれ保有する本件発信者情報の開示を求めたところ、原審が、本件各投稿のいずれについても、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが明らかとは認められず、また、固定ツイートを削除しなかったという不作為が不法行為責任を構成するものとは認め難いとして、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、本件発信者情報2は、侵害情報である本件投稿2との関係で、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たるものと認められ、また、本件投稿2は、被控訴人N社を経由プロバイダとして発信されたことも推認されるから、被控訴人N社は、同項の「開示関係役務提供者」に当たるものと認められるとして、原判決中被控訴人N社に関する部分を取り消し、被控訴人N社は、控訴人に対し、情報を開示せよと命じた事例。
2021.01.05
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」会社法分野 令和3年3月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571218/最高裁判所第三小法廷 令和 2年12月22日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1961号
東京証券取引所マザーズに上場された本件会社の株式を取得した者又はその承継人である上告人らが、本件会社が上場に当たり提出した有価証券届出書に架空売上げの計上による虚偽の記載があったなどと主張して、本件会社等と元引受契約を締結していた金融商品取引業者のうち主幹事会社であったM証券株式会社を吸収合併した被上告人に対し、当該株式のうち募集又は売出しに応じて取得したものにつき金融商品取引法21条1項4号に基づく損害賠償を請求し、原審は、本件有価証券届出書には、金商法193条の2第1項に規定する「財務計算に関する書類」に係る部分(財務計算部分)に、重要な事項について本件虚偽記載が存在したところ、被上告人は本件虚偽記載の事実を知らなかったなどとして、被上告人の金商法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責を認め、募集又は売出しに応じて取得した本件会社の株式についての被上告人に対する同条1項4号に基づく損害賠償請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人は、金商法21条1項4号の損害賠償責任につき、同条2項3号による免責を受けることはできないとして、募集又は売出しに応じて取得した本件会社の株式についての被上告人に対する損害賠償請求を棄却した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中、上記請求を棄却した部分は破棄を免れないとし、上告人らの損害額について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。
2021.01.05
再審開始決定に対する即時抗告の決定に対する特別抗告事件(袴田事件第2次再審請求(特別抗告審))
LEX/DB25571224/最高裁判所第三小法廷 令和 2年12月22日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第332号
確定判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、Aは、昭和41年6月30日午前1時過ぎ頃,静岡県清水市(当時)所在のみそ製造販売会社専務であった男性の居宅に侵入して金員を物色中、同人に発見されるや金員強取の決意を固め、殺意をもって、所携のくり小刀で同人の胸部等を突き刺し、物音に気付いて起きてきた同人の妻、長男、次女の頸部等をそれぞれくり小刀で突き刺し、店の売上金等を強取した上、さらに、上記4名を住居もろとも焼いてしまおうと考え、混合油を4名の身体に振りかけてマッチで点火して放火し、4名を殺害して金員等を強取するとともに住宅1棟を焼損したというもので、原決定は、確定判決においてAの犯人性を推認させる最も中心的な証拠は、5点の衣類に関する証拠である一方、それ以外の証拠は犯人性を推認する上では補助的なものにすぎないとし、5点の衣類は犯人が犯行時に着ていた衣類であること、5点の衣類はAのものであることの2点について、確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるような新証拠であれば、刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」といい得るとし、B鑑定及びみそ漬け実験報告書は、いずれもそのような新証拠には当たらないとして、再審開始を認めた原々決定を取り消したため、抗告人が特別抗告した事案で、確定判決において5点の衣類が犯人性の認定における核となる証拠とされたという本件の証拠関係、5点の衣類に付着した血痕のDNA型及び色調をめぐり、原々審及び原審において長期間にわたり審理が重ねられ、原々決定においては再審開始決定がされ、これが原審において取り消されて本件再審請求が棄却されたという審理経過、さらに、原審に至ってH意見書において血液中のたんぱく質とみそ中の糖との間で生じ得るとされているメイラード反応がみそ漬けされた血液の色調に影響を及ぼす要因として初めて主張され、5点の衣類がみそ漬けされた状況を客観的に再現する工夫がされたF実験も、この点に関する専門的知見に基づく検討の必要性を認識させるものであったことなどの原審における審理状況をも併せ考えると、上記の違法が決定に影響を及ぼすことは明らかであり、原決定を取り消さなければ著しく正義に反するというべきであり、原決定を取消し、メイラード反応その他のみそ漬けされた血液の色調の変化に影響を及ぼす要因についての専門的知見等を調査するなどした上で、その結果を踏まえて、5点の衣類に付着した血痕の色調が、5点の衣類が昭和41年7月20日以前に1号タンクに入れられて1年以上みそ漬けされていたとの事実に合理的な疑いを差し挟むか否かについて判断させるため、本件を原審である東京高等裁判所に差し戻すこととした事例(反対意見、補足意見がある)。