2018.07.03
各業務上過失致死被告事件
(保守管理会社の担当者 逆転無罪、シンドラーエレベータ事故 東京高裁)
(保守管理会社の担当者 逆転無罪、シンドラーエレベータ事故 東京高裁)
LEX/DB25560511/東京高等裁判所 平成30年 3月14日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第2179号
本件事故当時、被告人P1(エレベーター等保守管理会社の代表取締役)及び被告人P2(同社専務取締役)、被告人P3(同社メンテナンス部長)らをして、当該エレベーターの保守点検を実施させる体制を採るべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、そのような体制を採らず、エレベーター等保守管理会社がP5の管理を委託された財団法人からP5に設置されたエレベーターの保守点検業務を受託した際、その構造を把握できていないと思われる機種であるにもかかわらず、被告人P3らをして上記調査等を行わせず、同社保守点検員にその保守点検方法等を十分に理解させないまま、その保守点検を開始・実施させ、また、被告人P3は、エレベーターの保守点検を点検員に実施させるに当たり、その保守点検方法等につき十分な調査を行い、その調査結果に基づいて保守点検項目等を策定するとともに、点検員にその保守点検方法等に関して必要な情報を与え、それらを十分理解させた上、その保守点検を実施させるべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、上記調査等を行わず、約2か月後の平成18年5月25日に、5号機のかごが停止してかご及び乗降口が開いた際、ライニングの摩耗の進行によりプランジャーストロークが限界値に達していたため、かごの静止状態を保持することができず、かご及び乗降口の各扉が開いたままかごが上昇し、被害者をかごの床面と乗降口の外枠に挟ませて死亡させたとする事案の控訴審において、原判決の判断は、遅くとも平成18年5月25日時点で本件ライニングに異常摩耗が発生、進行していて、その日の定期点検で、点検員がそのことに気付くなどして本件事故を回避することができたことを前提として、被告人らの過失を認定しているものであるが、本件ライニングの異常摩耗の発生時期を推認させるとした事実の認定やその推認力の評価を誤るなどした結果、上記時点までに本件ライニングの異常摩耗が発生していたことを認めるに足りる証拠がないのに、その事実を認めて被告人らの過失を認定したものであって,経験則等に照らして不合理であり,是認することはできないとし、被告人らに本件公訴事実の業務上過失致死罪は成立しないと判断し、原判決を破棄し、被告人らに無罪の言渡しをした事例。




















