税理士による開業コラム

税理士資格の魅力はなんといっても「専門性の高さ」と「独立開業に向いている」ということではないでしょうか。独立開業するということは、自分の知識や経験をサービスとして、お客様にダイレクトに提供できるということです。会社（や税理士事務所）に勤務している場合、会社の方針に沿って仕事をしなくてはいけませんよね。一方で、「もっとこうしたらお客様に喜ばれると思うのに・・・」という自分の意思を実現できるのが、独立開業です。

とはいっても、税理士資格は一朝一夕に取得できるものではありません。ご存知のとおり、長い勉強期間が必要です。他のライバルから頭一つ抜きんでて競争試験に合格するためには、長期間に渡ってモチベーションを維持し続ける必要があります。モチベーションを維持するコツは、夢を描き、その夢を実現するための現実的な目標を設定することです。私は、その目標を「独立開業」に設定していました。夢を強くイメージし、そして目標を明確にして突き進んでいくと、気づいたら夢がかなって開業税理士になっていることでしょう。

とはいえ、夢を見ているだけでは夢はかないません。夢をかなえるためにはその夢までの道のりを小さな目標に細分化して、ひとつひとつ達成していく必要があります。「小さな目標に細分化する」とは、たとえばこのように考えます。独立開業→税理士資格取得→実務経験→税理士試験突破→まずは1科目→模試で上位10％→月次テストにおいてクラス内で5番以内→対象範囲の問題集を3周解く→出勤前に毎日自習室で2時間勉強→時間確保のためにテレビやSNSは捨てる…こんな具合に「いま」やることまで落とし込んでいきます。私は1日の「勉強やることリスト」も作成していました。

私は、税理士になる前は、「税理士になって自分の事務所を設立したい」と夢見ていました。お客様と事業の話をしながら税務や会計のアドバイスで役に立ちたい、そしてお客様に喜んでもらえたら楽しそうだなとイメージしてきました。そのために、税理士資格取得はもちろんのこと、実務経験を積む税理士事務所も、お客様と近い距離で仕事ができる事務所を選びました。今振り返ってみると、この経験がとても役立っていると実感しています。

独立開業した後の生活は、独立開業前にイメージしていたものよりもずっとおもしろく、充実しています。やることは自分ですべて考えて決定していくため、お客様の役に立ちそう、ということがあれば制限なく試すことができます。もちろん事務所経営のために、採算もきちんと考えていく必要はありますが、それもまた独立開業ならではの楽しみだと思います。

開業税理士と一口に言っても、積極的に職員を採用して規模拡大を目指す税理士や、一人ですべてをこなす税理士など、様々なスタイルがあると思います。ただ、事務所経営を軌道に乗せるためには、共通する“大切なこと”がひとつあります。それは、「税理士同士の横のつながり」です。これを意識して構築することで、事務所経営の悩みがあったときに相談できたり、アドバイスをもらったりすることができます。これが事務所経営において大切だと思っています。

TKCに入会すると、研修会や勉強会がたくさんあるので、多くの先輩税理士の先生方と会うことができる機会があります。パワフルで親切な先生が多く、先輩の経験談を聞いていると、自分もこんな税理士になりたい！と新しい夢ができます。事務所経営に必要なノウハウや秘訣も惜しみなく教えてくださるので、独立開業してもしTKCに入会したら可能な限り多くの場に顔を出すことをおすすめします。

税理士業はお客様から感謝されながら報酬もいただけるとても恵まれた職業である、と先輩の税理士から聞いたことがあります。勤務税理士時代にそれを聞いたときは、「その通りだよなあ」程度に思っていましたが、開業税理士となった今は、その言葉が身に染みて理解できます。税理士は、その中でも特に開業税理士は、お客様のお役に立ちながら、自分自身の自己実現もできる素晴らしい職業だと感じています。

このコラムが、読んでくださっている方の税理士試験に向けた学習のモチベーション向上と独立開業の後押しの一助となったらとても嬉しく思います。