税理士事務所
開業後にすべきこと

人脈づくり

新規顧問先獲得のきっかけで、もっとも多いのが「紹介・口コミ」です。
いかに自分を紹介してくれる人を多く作れるかが重要です。
そのために人脈づくりが欠かせません。

1.人脈のグループ分け

どのような方が、自分のことを紹介してくれるでしょうか。
たとえば、紹介してくれる人脈は、次のようにグループ分けできます。

  • 知人・友人
  • 顧問先
  • 他士業(司法書士、社会保険労務士、行政書士など)
  • 他業種(不動産業、保険業、証券業、リース業など)
  • 金融機関(日本政策金融公庫、最寄りの金融機関・支店など)
  • 税理士(資産税に特化している税理士、後継者を探している税理士など)

2.グループ別に人脈のリスト化

スタート時点で、紹介者の名前をリストアップします。
リストは、継続してコンタクトできるように、次のような項目を管理できると良いです。

  • 基本情報(名前、住所、連絡先、メールアドレス、属性・グループなど)
  • 知り合った情報(出会った年月日、どこで知り合ったかなど)
  • コンタクト情報(最後にコンタクトした日、連絡の方法など)

リスト化してみると、グループ別(上記1)に人脈の数に濃淡があると思います。
今もっている人脈の強いところと弱いところを把握します。
そして、どのような人脈を伸ばしていきたいか、「目標と期限」を設定することをオススメします。

  • 紹介者はひとり(1社)に依存しないこと

    紹介者は、ひとり(1社)に依存しないように、人脈づくりをします。
    ひとり(1社)に依存した場合、もし、その紹介者との関係が途絶えてしまうと、顧問先を増やすことが難しくなります。
    または、紹介先の顧問先からクレームが発生し、紹介者の耳に入ってしまったら、最悪の場合、顧問先との顧問契約が解除となってしまうかもしれません。
    このように紹介者をひとり(1社)に依存してしまうと、事務所経営のリスクになりますので、たくさん紹介者を作っていきましょう。

3.紹介者と顔見知りになる“場”を求めて

紹介者をつくることは、簡単ではありません。
まず、紹介者と顔見知り、知り合いになることからスタートします。
そこで、さまざまな“場”に顔を出して、自分が開業していることを多くの方に知ってもらいます。

  • 顔を出す場所の事例

    • 知人、友人が集まる同窓会
    • 士業・金融機関が主催するセミナー、交流会、懇親会
    • 日本青年会議所(JC)
    • ロータリー、ライオンズクラブ など

もちろん、知り合って名刺交換をしただけで、おしまいではありません。
名刺交換をした方には、翌日に御礼メールを送ります。

  • 「いつでも、○○の件で困っていることがあったら、お気軽にご相談ください」
  • 「○○駅に事務所がありますので、お近くに来たときにはお立ち寄りください」

など、コメントをしておくことが大切ですね。
そうすれば、事務所のウェブサイトをご覧になっていただけると思います。

4.他士業から紹介してもらう方法

税理士は、他士業の先生と関わることがとても多いです。
顧問先のニーズにあった士業を紹介できるかによって、顧問税理士への信頼を高めることもできます。
士業の先生から紹介があれば、紹介ルートの柱が構築できるので、司法書士、社会保険労務士、行政書士など、他士業とのネットワーク作りが重要です。

  • 紹介してもらう前に、先に紹介すること

    お客さまを紹介してもらえる関係になるためには、まずは、自分から士業の先生にお仕事(相談・依頼)をお願いすることです。
    実際のところ、お互いにどのような仕事ができるか、やってみないと分かりません。

  • どのように他士業の先生と知り合うか

    他士業の先生と知り合うには、「紹介」と「交流会」の2パターンあります。

    紹介 :
    顧問先や知人から「知り合いの士業の先生」を紹介してもらうことがあります。
    金融機関も他士業の先生をたくさん知っていますので、紹介を依頼してみると良いでしょう。
    交流会:
    士業の先生が、同じ目的をもって、集まる場である「異業種交流会」などに参加すると良いです。同世代の他士業の先生や開業時期が同じ先生と知り合うことができるかもしれません。

5.他業種から紹介してもらう方法

紹介してくれる方は、自分でお客さまを持っている人です。
具体的には、①顧問先、②他士業の先生、③他業種の方の3パターンです。
①の顧問先からの紹介は、独立開業したときには顧問先がないので、紹介を受けることができません。
結果、独立時に、紹介者となるのは、②他士業の先生と③他業種の方になります。

  • どんな業種の人脈をつくるか

    自社の商品・サービスを営業するときに、税務の知識が必要とされる人が、他業種で税理士を紹介してくれる方になります。たとえば、次のような業種です。

    • 不動産業界
    • 銀行業界
    • 証券業界
    • 保険業界
    • リース業界
  • 自分を紹介してもらう方法

    税理士事務所は数多くあり、紹介者は知り合いの税理士がたくさんいるかもしれません。
    その中で、自分を紹介してもらうには、どうすれば良いでしょうか。

    ひとつ目は、紹介者に「自分の考え方」を伝え続けることです。
    自分の考え方とは、「事務所のビジョン」や「仕事に対する価値観」などです。
    紹介者とは、ともに仕事をしていくため、考え方を共有し、共感してもらえたら、「良い税理士を知っているので紹介するよ」と言ってくれるようになります。

    ふたつ目は、紹介者に「自分のカラー」を印象づけることです。
    紹介者が、ひと言で、その税理士を紹介するときに、なんと言って紹介するか。
    紹介者の目線で考えます。
    自分のセールスポイントが紹介者にインプットされて、シンプルでインパクトのある言葉で、紹介者がアウトプット(誰かに紹介)してくれるようになったら素晴らしいです。

    自分がどんな税理士として紹介されたいか、下線の部分を考えておくと良いです。

    税理士のさんは、税理士です。
    が得意なので、ぜひ紹介させてください。

6.金融機関と仲良くなる方法

金融機関が紹介者になってくれたら力強いです。
独立開業したばかりの税理士事務所だからと思って遠慮せずに、
近隣の金融機関(支店)と仲良くなりましょう。

  • 金融機関へ挨拶に行く

    近隣の金融機関(支店)に開業の挨拶に行きます。
    「近くで開業しました税理士の○○です。今後お客さまの融資相談等でお世話になることがあると思いまして、ご挨拶に伺いました!」と、支店長や融資担当の上席に挨拶します。
    金融機関に挨拶訪問するときは、事務所の開業案内やパンフレットなどを持参します。

    金融機関の立場になってみると、新規の取引先を開拓したいと思っていますので、税理士と親しくなれば、その可能性が高まると考えています。
    ぜひ、勇気を持って、近隣の金融機関(支店)にはすべて挨拶しましょう。

  • 金融機関と接触する機会を作る

    一度、開業挨拶して、終わりにならないように、継続して接触する機会を作ります。
    たとえば、名刺交換した後、月に1度は、「事務所通信」などを持参して、定期的に情報交換する場を作ります。
    今なら、改正消費税法、電子インボイス、改正電子帳簿保存法、電子取引などのトピックがあります。
    コロナ禍での中小企業支援策や資金繰り・経営改善計画など、話題はたくさんありますので、金融機関の行員向けに勉強会を開催できるようになったら関係は深まっていきます。
    その後、金融機関主催のセミナー講師の依頼を受けることができたら、完全に強固な関係が築けます。

    他にも金融機関と接触する機会をつくるために、自分の定期積立口座を開設する方もいます。
    毎月集金に来てもらうことで、情報交換の場をつくり、関係を深めることができます。

秦 勝行(はた まさゆき)

TKC全国会は、開業税理士が独立して3年間で事務所経営を軌道に乗せていただくためにニューメンバーズ・サービス委員会を設置しています。当委員会は、全国各地で活躍する約300名の税理士・公認会計士で構成されています。当サイトの記事は、この委員会で制作された独立開業ノウハウの書籍・セミナー資料をもとに執筆・編集しました。

編集責任者(執筆者) 株式会社TKC

秦 勝行(はた まさゆき)

昭和50年生まれ。千葉県出身。専修大学大学院経営学研究科経営修士課程修了。平成10年、TKCに入社。平成23年、独立行政法人中小企業基盤整備機構に出向。令和3年10月現在、SCG営業本部在籍。