税理士による開業コラム

私は平成25年12月に税理士試験に合格するまで、ハローワークに12年間勤務しました。合格したのはよいのですが、税務署出身ではないし監査法人に在籍していたわけでもありません。また、会計事務所どころか民間企業での経験もなく、企業会計の実務にも全く触れたことがありませんでした。会計ソフトも総勘定元帳も見たことがなかったのです。

税理士試験に合格してから、いくつかの民間職業紹介会社に登録をして転職活動をしたのですが、紹介会社からは「実務経験がない有資格者を採用する会計事務所は通常ない」と言われました。そのため、税理士登録できれば有利になるかもと考え、登録の可否を税理士会に確認したところ「公務員を辞職してからでないと登録審査はできないので税理士になれるかわからない」と言われ、苦労して取得した税理士資格を活かすことを諦めていました。

嫁と子供と住宅ローンを抱えて、もし脱公務員に失敗したときには公務員には戻ることができません。公務員のままでいても単身赴任ばかりで、子供が小さいうちから家族は離れ離れ。生活が苦しいながらも安定した生活を捨てられるか、合格後は日々悩み続けていました。

私のターニングポイントは、税理士になることを諦め、せめて合格の喜びを味わうために参加した大手予備校の合格祝賀会と、そこで知ったTKCのセミナーでした。この時に税理士先生との繋がりができ、開業ノウハウ等を学べたことが、脱公務員して税理士業界に飛び込むきっかけになりました。TKCでは開業前や開業後間もない方向けに、定期的に事務所経営や税理士業務に関するセミナーを開催してくれています。色々な立場で開業した先輩方の話を聞き、場合によっては直接アドバイスを受けることができます。本を読むだけ、勤務しているだけでは決して得られません。

人生、何がターニングポイントになるかわかりません。私の場合は、このTKCのセミナーが人生を大きく変えたターニングポイントでした。今後、もしこのような集まりに参加する機会があれば、だまされたと思って、気軽に参加してみてはいかがでしょう？ひょっとしたら、人生のターニングポイントになるかもしれません。

脱公務員をした後も登録審査で紆余曲折あり、平成28年6月に税理士登録にこぎつけることができました。その後、急遽独立開業する機会が巡ってくることに。しかし、最低限の実務経験しかない新米税理士が、 周りの何十年のベテラン税理士先生や職員と同じように業務をこなせるのか、新規関与先を開拓できるのか。10年やってもまだ税務の実務は一人前にならないと言う人もいて、不安ばかりです。
そんな時、TKCのセミナーで先輩の税理士先生に言われたことを思い出しました。

「何年勤務して実務経験を積んでも、開業後の実務には及ばない」
「新しい案件がきても、とりあえず受けてそこから必死に勉強して身につければよい」

当時、経験のなかった自分にはとても無理なことだと思って聞いていました。しかし、いざ自分が独立開業してやってみると、受任から納品まで自分の資格と責任で取り組んで学んだ実務や、現実の事例をもとに学んだ実務は、机上の勉強で学ぶ知識とは全く違うと感じるものばかりです。
当然、ゼロからすべてを自分で調べて学ぶのは困難です。そのためにTKCでは先輩税理士からの支援や、様々な研修が用意されています。私はこの支援で、税理士実務だけではなく新規関与先の開拓のノウハウも学ぶことができました。

公務員しか経験ないのに、民間で仕事ができるのだろうか。
別業界から実務経験なしで税理士になれるだろうか。
そもそも登録のための実務経験は満たせるだろうか。
顧客ゼロであてもないのに、生活していけるだろうか。

そんな中、ある税理士先生から言われた「人生は一度きり、後悔しない？」の一言。

私は、あの時に税理士にチャレンジして本当によかったと思います。
税理士資格は人生を変える可能性のある、素晴らしい資格です。
税理士試験合格に向けて勉強を続け、合格後いつかは独立開業を目指して頂けたらとてもうれしいです。