私は開業にあたり、まず「どのような税理士事務所でありたいか」を考えました。
税理士の仕事というと、税金を安くすることや、申告書を作成することを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、私が目指したのは、それだけではありませんでした。それは「中小企業の経営者が数字をひとつの武器として扱うことを当たり前にする」ということです。
中小企業の経営者にとって、数字は単なる過去の結果ではなく、これからの意思決定に使うための道具です。売上が増えているのに資金が残らない、利益は出ているはずなのに将来が不安、値上げをしたいが判断材料がない。そうした悩みは、決算書だけを見ていてもなかなか解決できません。
そこで私は、開業当初から「経営者が自社の数字を自分で見られる状態をつくること」を事務所の方針にしました。領収書や資料を預かって処理するだけではなく、会社の中に数字を見る仕組みをつくる。月次の数字をもとに、粗利、部門別の採算、資金繰り、今後の投資判断について一緒に考える。そのような関わり方を大切にしています。
もちろん、開業当初から理想どおりに進んだわけではありません。目の前の仕事を受けることも必要ですし、売上をつくらなければ事務所は続きません。直接顧客や紹介をしてくれそうな人への伝え方も日々ブラッシュアップしています。それでも、「何でも受ける」のではなく、「どのようなお客様に、どのような価値を提供するのか」を言葉にしておくことは、とても重要だと感じています。
私の場合は、従業員が増え、経営者一人の勘と経験だけでは管理が難しくなってきた会社を主な支援対象と考えました。特に、部門別の採算管理や、値上げ・原価管理・資金繰りなど、数字を使って経営判断をしたい会社です。こうした方針を持つことで、ホームページの内容、面談で話すこと、提案するサービス、スタッフに求める役割も少しずつ明確になっていきました。
私にとっての教訓は「明確に立場を伝える」ということです。言い換えれば「自分の事務所の特徴」をしっかり相手に伝えるということになります。これがあいまいだと、集客、採用などあらゆる面で「何かが違う」「ずれてきている」ことが起こり始めますし、反対に明確であればあるほど「私だからこそ」支援できるお客様がついてくれたり、ビジョンを共にできる仲間が近づいてくるように体感しています。