「LEX/DBインターネット」の「新着判例」コーナー
から、実務・研究上重要と思われる「注目の判例」を
ピックアップしてご紹介します。

その他の最新収録判例は、「LEX/DBインターネット」
ログイン後のデータベース選択画面にあります
「新着判例」コーナーでご確認いただけます。

「LEX/DBインターネット」の詳細は、こちらからご確認いただけます。

2023.05.02
排除措置命令取消、課徴金納付命令取消請求控訴事件(マイナミ空港サービス(株)による排除措置命令等取消請求控訴事件) 
「新・判例解説Watch」経済法分野 令和5年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594716/東京高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第70号
被控訴人(原審被告。公正取引委員会)が、控訴人(原審原告)は、八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して〔1〕自社の取引先需要者に対し、S航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知し、〔2〕S航空から機上渡し給油を受けた自社の取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として、S航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する事故等が発生した場合でも控訴人に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより、自社の取引先需要者にS航空から機上渡し給油を受けないようにさせており、これが令和元年法律第45号による改正前の独占禁止法2条5項の私的独占に該当し、独占禁止法3条に違反するとして、令和2年7月7日、独占禁止法7条1項に基づき、排除措置を命じるとともに、令和3年2月19日、控訴人に対し、令和元年法律第45号による改正後の独占禁止法7条の9第2項に基づき、課徴金として612万円を国庫に納付することを命じたのに対して、控訴人が、被控訴人に対し、上記排除措置命令及び上記課徴金納付命令の各取消しを求め、原判決は、上記〔1〕及び〔2〕の行為は、独占禁止法2条5項の「私的独占」に当たり、同法3条の規定に違反すると判断し、控訴人が主張するその余の取消事由の存在も認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決をしたため、控訴人が原判決を不服として控訴した事案で、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.04.25
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25594700/東京地方裁判所 令和 5年 3月29日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第22748号
俳優等として活動する原告が、被告T社が同社のウェブサイトに掲載した記事が原告の名誉を毀損するものであり、被告Y社が、ニュースページにおいて当該記事を配信したことも原告に対する名誉毀損に当たると主張して、被告らに対し、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償金の支払等を求めた事案で、本件各記述は、原告の名誉を毀損する違法な表現であるとし、被告T社がした本件各記述を含む本件記事を公表した行為は、原告に対する不法行為を構成するとして、被告T社に対する請求については、一部認容し、当該記事を配信した被告Y社には不法行為責任を認めることができないとして、被告Y社に対する請求については、棄却した事例。
2023.04.25
傷害被告事件 
LEX/DB25594344/福岡高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第277号
被告人は、Aと数年来同棲していたものであるが、令和4年4月25日夜、同人と2軒で飲酒するなどして共にタクシーを降りた同日午後11時頃から、自ら119番通報した同日午後11時30分頃までの間に、当時の居住先である北九州市内のA方において、A(当時40歳)から馬乗りになられて首を絞められたりする暴行を加えられたのに伴い、自己の身体を防衛するため、防衛の程度を超え、Aに対し、手に持ったペティナイフ(刃体の長さ約11.8cm)で、その左腹部を1回、背部を3回刺す暴行を加え、よって、同人に加療約43日間を要する左腹部刺創、背部刺創、鋭的肝損傷、左外傷性血気胸、第12肋骨骨折及び肋間動脈損傷の傷害を負わせたとして、原審は、被告人の過剰防衛の成立を認め、被告人に対し、懲役1年6月、3年間の刑の執行を猶予を言い渡したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、被告人による暴行が、防衛の程度を超えた行為であると認めた原判決の認定、判断は、被告人の原審公判供述の信用性評価を誤り、ひいては防衛行為の相当性の判断を誤ったもので、論理則、経験則等に照らし不合理なものであり、正当防衛を否定した原判決には、事実誤認があると判断し、被告人の行為は、Aによる急迫不正の侵害に対する防衛行為として必要かつ相当なものであり、正当防衛が成立し、よって、本件公訴事実は、犯罪の証明がないから、刑事訴訟法336条により被告人に対し、無罪の言渡しをした事例。
2023.04.18
債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25572788/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 3月29日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第13号
抗告人は、本件被転付債権は前件転付命令が第三債務者に送達された時点で存在したから、前件転付命令の執行債権は、本件被転付債権の券面額で弁済されたものとみなされ(民事執行法160条)、その大部分が消滅しており、本件差押命令は、同法146条2項が禁止する超過差押えに当たるとして、その取消しを求める執行抗告をしたところ、本件差押命令は超過差押えに当たらないとして、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済の効果が妨げられないとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、本件支払がされた時期等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.04.18
再審開始決定に対する即時抗告申立事件(袴田事件再審開始決定に対する即時抗告棄却決定) 
LEX/DB25594670/東京高等裁判所 令和 5年 3月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(く)第14号
住居侵入、被害者4名の強盗殺人、放火被告事件につき、死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定したため、再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人)が、地方裁判所に第2次再審請求をしたところ、地方裁判所は再審開始の決定をしたため、検察官が即時抗告の申立てをした事案で、原決定は、5点の衣類等のDNA型鑑定に関する証拠(とりわけP1鑑定)及び5点の衣類の色に関する証拠(とりわけ、各みそ漬け実験報告書等)を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当すると認めたものであるところ、DNA型鑑定に関するP1鑑定について再審開始を認めるべき証拠に該当するかどうかを改めて判断するまでもなく、原審において提出された、みそ漬け実験報告書等の新証拠は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するとして、みそ漬け実験報告書等について、刑事訴訟法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」であると認めた原決定の判断には誤りはなく、本件再審を開始するとした原決定は、その結論において是認できるとし、本件即時抗告を棄却した事例。
2023.04.11
共有持分移転登記手続請求事件
LEX/DB25572742/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第324号
上告人は、被上告人に対し、遺留分減殺を原因とする不動産の所有権一部移転登記手続を求める訴えを提起したが、被上告人は、適式な呼出しを受けたにもかかわらず、第1審の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、第1審で、一人の裁判官によって審理されていたところ、同裁判官は、上記期日において口論弁論を終結し、判決言渡期日を指定し、上記の指定に係る判決言渡期日において、上記口頭弁論に関与していない裁判官が、民事訴訟法254条1項により、判決書の原本に基づかないで上告人の請求を全部認容する第1審判決を言い渡したが、上告人は、本件第1審判決には民事訴訟法249条1項に違反する判決手続の違法があり、これは再審事由(同法338条1項1号)にも当たるなどとして、本件第1審判決を取消し、改めて上告人の請求を全部認容する旨の判決を求めて控訴をし、原判決は、本件控訴は不適法であるとして却下したため、上告人が上告した事案で、第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民事訴訟法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法があり、また、上記の違反は、訴訟記録により直ちに判明する事柄であり、同法338条1項1号に掲げる再審事由に該当するものであるから、上記の第1審判決によって紛争が最終的に解決されるということもできないとして、上告人は、本件第1審判決に対して控訴をすることができるとし、本件控訴を不適法であるとして却下した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、改めて審理をさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.04.11
死体遺棄被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和5年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572744/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第196号
被告人は、当時の被告人方において、被告人が出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、死体を遺棄したとして、第1審判決は、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処したが、これに対し被告人が控訴し、原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たるとし、第1審判決を破棄し、懲役3月、2年間の執行猶予を言い渡したため、被告人が上告をした事案で、被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとし、原判決は、「遺棄」についての解釈を誤り、本件作為が「遺棄」に当たるか否かの判断をするに当たり必要なその態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点からの検討を欠いたため、重大な事実誤認をしたとし、本件作為について死体遺棄罪の成立を認めた原判決及び第1審判決は、いずれも判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実誤認があるとして、原判決を破棄し、既に検察官による立証は尽くされているので、当審において自判し、被告人に無罪の言渡しをした事例。
2023.04.04
未払賃金等請求事件
LEX/DB25572682/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月10日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1019号
被上告人に雇用され、トラック運転手として勤務していた上告人が、被上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求めたところ、原審は、上告人の各請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人の上告人に対する本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分を破棄し、上告人に支払われるべき賃金の額、付加金の支払を命ずることの当否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2023.04.04
電子計算機使用詐欺被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25594479/山口地方裁判所 令和 5年 2月28日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第69号 等
被告人は、A銀行の支店に開設された自己名義の普通預金口座に、山口県B町が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(本件誤振込金)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当のオンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、財産上不法の利益を得た行為をしたとして、懲役4年6か月を求刑された事案において、被告人がインターネットに接続した携帯電話機からA銀行の電子計算機に情報を与える行為は正当な権利行使とはいえず、電子計算機使用詐欺罪が成立するとして、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例。
2023.03.28
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572679/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 7日 決定 (異議審)/令和5年(す)第14号
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対し、被告人が弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱があるとして、異議申立てをした事案で、弁護人が上告棄却決定後に、被告人作成の上告趣意書を裁判所に提出した事実につき、原審がした上告棄却決定に何ら判断遺脱はないとして、本件申立てを棄却した事例。
2023.03.28
(日野町事件第2次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594460/大阪高等裁判所 令和 5年 2月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(く)第251号
P3(平成23年3月18日死亡。事件本人)に対する強盗殺人被告事件について、同人を犯人と認め、無期懲役に処した大津地方裁判所の確定判決につき再審の開始を認めた原決定に対し、弁護人が提出した証拠等の証明力を検討しないまま、新規性のある新証拠である限り、その証明力にかかわらず全て旧証拠との総合評価に立ち入った点、及び旧証拠に対する再評価を各証拠の立証命題とは関係なく行った点において、その判断は極めて違法・不当であり、確定判決の心証形成にみだりに介入した違法があるから、これを取消し、請求人らの再審請求を棄却する旨の裁判を求め、検察官の抗告人が、即時抗告をした事案で、事件本人を本件の犯人と認めた確定判決等の事実認定には合理的な疑いが生じており、原審で取り調べられた各新証拠は、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠に当たり、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠があらたに発見されたとし、刑事訴訟法435条6号、448条1項により、事件本人について再審を開始した原決定の結論は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.03.22
マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572676/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 9日 判決 (上告審)/令和4年(オ)第39号
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号利用法。令和3年法律第36号による改正前のもの)により個人番号を付番された上告人(原告・控訴人)らが、被上告人(被告・被控訴人。国)が番号利用法に基づき上告人らの特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集、保管、利用又は提供をする行為は、憲法13条の保障する上告人らのプライバシー権を違法に侵害するものであると主張して、被上告人に対し、プライバシー権に基づく妨害予防請求又は妨害排除請求として、上告人らの個人番号の利用、提供等の差止め及び保存されている上告人らの個人番号の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、第1審は、上告人らの請求を棄却したため、上告人らが控訴し、控訴審も棄却したため、上告人らが上告した事案で、行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報の利用、提供等をする行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできないとし、上記行為は、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではないと解するのが相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.03.22
消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572659/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 6日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第10号
不動産の売買等を目的とする株式会社である上告人(原告・被控訴人)が、本件各課税期間において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(本件各課税仕入れ)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、麹町税務署長から、その全額を控除することはできないとして本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を受けたことから、被上告人(被告・控訴人。国)を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求め、第1審判決は、上告人の請求を全部認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件各課税仕入れは共通対応課税仕入れに区分されるべきものであり、〔2〕本件各更正処分は平等取扱原則に違反するものではなく、〔3〕本件各確定申告において消費税の申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえないから、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法であるとして、第1審判決を取消し、上告人の請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、本件各課税仕入れに係る控除対象仕入税額は、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるというべきであるとし、また、本件各申告において、上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとし、原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.03.22
消費税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572660/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 6日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第260号
不動産の買取再販売等を行う株式会社である被上告人(原告・控訴人)が、本件各課税期間において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(本件各課税仕入れ)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をするなどしたところ、日本橋税務署長から、その全額を控除することはできないとして本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を受けるなどしたことから、上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消し等を求め、原判決は、本件各建物は転売まで住宅として賃貸されることが見込まれていたから、本件各課税仕入れは、個別対応方式による用途区分において共通対応課税仕入れに区分されるべきであり、本件各更正処分は適法であるなどとした上で、本件各賦課決定処分は違法であるとして、その取消請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件各申告において、被上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとし、これと異なる原審の判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第1審判決は正当であるから、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.03.14
動産引渡等請求事件
LEX/DB25572655/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 2日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1176号
被上告人が、被上告人を債務者とする動産執行事件において物資搬送装置一式(本件動産)を買受けた上告人に対し、本件動産の売却は無効であるなどと主張して、所有権に基づき、本件動産の引渡し等を求めたところ、原審は、本件動産の引渡しを求める被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、執行処分が弁済受領文書(民事執行法39条1項8号)の提出による強制執行の停止の期間中にされたものであったとしても、そのことにより当該執行処分が当然に無効となるものではないというべきであり、本件売却は、弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされたことにより当然に無効となるものではないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、所有権に基づき本件動産の引渡しを求める被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.03.14
法人税更正処分等取消請求控訴事件
LEX/DB25572529/東京高等裁判所 令和 4年 9月14日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第36号
連結納税の承認を受けた内国法人である控訴人(原告)が、法人税及び地方法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、英領バミューダ諸島において設立された控訴人の子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は、租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前のもの)39条の117第8項5号括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のうちいわゆる非関連者基準を満たさないなどとして、本件法人税再更正処分及び本件地方法人税再更正処分並びに本件法人税当初賦課決定処分及び本件地方法人税当初賦課決定各処分をしたため、被控訴人(被告。国)に対し各処分について、控訴人主張額を超える各部分の取消しを求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が控訴した事案で、本件再保険契約に係る収入保険料は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に当たるものとし、処分行政庁の判断は誤りであるとして、原判決を取り消し、控訴人の請求をいずれも認容した事例。
2023.03.07
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年5月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572633/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月21日 判決 (上告審)/令和3年(オ)第1617号
上告人(原告・控訴人。憲法を守ることを目的として設立された権利能力なき社団)が、金沢市長の管理に属する金沢市庁舎前広場において「憲法施行70周年集会」を開催するため、金沢市庁舎等管理規則6条1項(平成23年金沢市規則第55号)所定の許可を申請したところ、同市長から不許可処分を受けたことについて、上告人及びその関係者であるその余の上告人らが、被上告人(金沢市)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、第一審判決は上告人らの請求を棄却し、原判決も上告人らの控訴を棄却したため、上告人らが上告した事案で、金沢市庁舎前広場における集会に係る行為に対し金沢市庁舎等管理規則5条12号を適用することが憲法21条1項に違反するものということはできないなどとして、本件上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2023.03.07
貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
LEX/DB25572636/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月20日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第288号
東京都内に事務所を設け、株式会社Aの名称で、「給料ファクタリング」と称する取引を行っていた被告人が、(1)都知事の登録を受けないで、業として、約4か月間、969回にわたり、合計504名の顧客に対し、口座に振込送金する方法により、貸付名目額合計2790万9500円(実交付額合計2734万2120円)を貸し付け、もって登録を受けないで貸金業を営んだという貸金業法違反(同法47条2号、11条1項、3条1項)、(2)業として金銭の貸付けを行うに当たり、約4か月間、33回にわたり、前記株式会社A名義の普通預金口座に振込送金で受け取る方法により、前記顧客のうち8名から、法定の1日当たり0.3パーセントの割合による利息合計11万8074円を101万7816円超える合計113万5890円の利息を受領したという出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反(同法5条3項後段)から成る事案の上告審において、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たるとして、被告人について、(1)貸金業法違反及び(2)出資法違反の各罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.02.28
仮処分命令申立事件
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 令和5年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572503/東京地方裁判所 令和 4年11月25日 決定 (第一審)/令和3年(ヨ)第22075号
債権者が、工芸美術館新築工事、一体化工事及び公園整備工事と称する各工事の実施を計画する債務者に対し、債務者が、これらの工事の一部である本件各工事を行うことにより、版画美術館と称する建物及びその敷地であって芹ヶ谷公園の一部を構成する本件庭園に係る債権者の著作者人格権が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、本件各工事の差止めを求めた事案において、版画美術館は、全体として、「美術」の「範囲に属するもの」であると認められ、かつ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であると認められるから、「建築の著作物」として保護されると示しつつ、本件工事1の1ないし4については、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」として、著作権法20条2項2号が適用されるから版画美術館に係る債権者の同一性保持権が侵害されたとは認められないなどとして、本件申立てをいずれも却下した事例。
2023.02.28
仮の地位を定める仮処分申立事件(面会交流)
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和5年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594097/福岡家庭裁判所 令和 4年 6月28日 審判 (第一審)/令和3年(家ロ)第1045号
別居中の夫婦間において、父である申立人が、母であり、未成年者らを現に監護している相手方に対し、未成年者らとの面会交流を求め、その時期、方法等を定めるよう申し立てた事件を本案として、仮に面会交流を認めることを求めた事案(なお、相手方は、未成年者の長男が申立人の行為に起因してPTSD再燃との診断を受けていること、申立人から生活の監視や精神的いじめ等のDVを受け、別居後も非開示を希望していた住所を探索されるなどし、当事者間に面会交流を実施するための協力関係を築くことが困難であること等を理由に、申立人と未成年者らの面会交流を認めるべきでない旨の意向を有している。)において、実施された申立人と未成年者らとの面会交流の状況を踏まえると、その後の未成年者らに関する診療経過等をもって、面会交流の実施が未成年者の利益に反するものということはできないから、申立人と未成年者らの面会交流を実施するのが相当であるとして、相手方は、申立人に対し、申立人が未成年者らと面会交流することを仮に許さなければならないと命じた事例。