注目の判例

環境法

2015.06.02
MOX燃料使用差止請求事件(佐賀・玄海原発 MOX燃料使用差し止め請求棄却)
LEX/DB25506222/佐賀地方裁判所 平成27年3月20日 判決 (第一審)/平成22年(ワ)第591号
被告である九州電力株式会社が玄海原発3号機原子炉でプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX燃料)を使用すると、ギャップ再開による重大事故の可能性があること、及び使用済MOX燃料を長期間保管すれば健康・環境被害等が生じることを主張して、原告らが、人格権及び環境権に基づき、本件原子炉において、MOX燃料を使用して運転することの差止めを請求した事案において、本件MOX燃料の設置許可基準規則15条5項への適合性について原告らの反証は有効になされていないものと評価するのが相当であり、本件燃料設計に関する安全確保対策の安全性に欠ける点があり、かつ、それにより原告らの生命、身体、健康を侵害する具体的危険がるものと認めるに足りないと示すなどして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2015.05.26
風力発電施設運転差止等請求事件(風力発電 騒音受忍限度内 原告敗訴)
LEX/DB25506227/名古屋地方裁判所豊橋支部 平成27年4月22日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第61号
被告(風力発電事業等を目的とする会社)が設置、運転する風力発電施設の付近に居住する原告が、同施設から発生する騒音により受忍限度を超える精神的苦痛ないし生活妨害を被っているとして、被告に対し、人格権に基づき、同施設の運転差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、上記精神的苦痛に対する慰謝料500万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告宅に到達する風車騒音が、一般社会生活上の受忍すべき程度を超えるものであるとはいうことができず、原告が請求する風力発電施設の運転差止め及び損害賠償を認容すべき違法な人格権侵害に当たるものと認めることはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2015.05.26
川内原発稼働等差止仮処分申立事件(川内原発再稼働 仮処分却下)
LEX/DB25506209/鹿児島地方裁判所 平成27年4月22日 決定 (第一審)/平成26年(ヨ)第36号
債権者(川内原発から250キロメートル圏内に居住する者)らが、債務者(電気を供給する事業を営む株式会社)に対し、人格権に基づき、債務者が設置している川内原発1号機及び2号機の運転差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において、債権者らが川内原発に関し具体的危険性があると主張するいずれの事項についても、債権者らを含む周辺住民の人格権が侵害され又はそのおそれがあると認めることはできないとして、申立てを却下した事例。
2015.04.21
大飯原発3,4号機及び高浜原発3,4号機運転差止仮処分命令申立事件
LEX/DB25447198/福井地方裁判所 平成27年4月14日 決定 (第一審)/平成26年(ヨ)第31号
高浜発電所(高浜原発)から250キロメートル圏内に居住する債権者らが、債務者(電力会社)に対し、人格権の妨害予防請求権に基づいて、債務者が高浜原発の3号機及び4号機の運転差止めの仮処分を求めた事案において、(1)冷却機能の維持については、各地の原発敷地外に幾たびか到来した激しい地震や各地の原発敷地に5回にわたり到来した基準地震動を超える地震が高浜原発には到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにしかすぎないといえ、さらに、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できるとし、(2)閉じ込めるという構造(使用済み核燃料の危険性)については、使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ないとし、(3)高浜原発の現在の安全性(被保全債権の存在)については、原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があることが疎明されているといえるとし、高浜原発の事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり、本案訴訟の結論を待つ余裕がなく、また、原子力規制委員会の許可がなされた現時点においては、保全の必要性は肯定できるとして、債務者に対し、高浜原発3号機及び4号機の原子炉の運転中止を認めた事例。
2015.03.17
損害賠償請求事件
LEX/DB25447108/最高裁判所第一小法廷 平成27年 3月 5日 判決 (上告審)/平成25年(受)第1436号
産業廃棄物の最終処分場の周辺地域に居住する被上告人らは、同最終処分場を管理する会社の実質的経営者、産業廃棄物の処分を委託した業者その他関係者を被申請人として、公害紛争処理法26条1項に基づく公害調停の申請をし、被上告人らが、同申請を受けて設けられた徳島県公害紛争調停委員会がその裁量権の範囲を逸脱して違法に、被申請人の呼出手続を行った上、調停を打ち切るなどの措置をしたと主張して、上告人に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めたところ、原審は、被上告人らの請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、本件委員会が、被申請人らに対し本件記載のある期日通知書を送付し、第1回調停期日において本件調停を打ち切った措置は、その裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上違法であるということはできないとし、被上告人らの請求を一部認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決のうち上告人敗訴部分は破棄し、被上告人らの請求は理由がなく、これを棄却した第一審判決は正当であるとし、上記部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2015.02.24
請求異議事件(諫早湾干拓事業訴訟 国の請求退ける)
LEX/DB25505419/佐賀地方裁判所 平成26年12月12日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第7号
原告が、佐賀地裁判決及び福岡高裁判決の本件確定判決によって排水門の解放を求める請求権を認容された者及びその相続人らである被告らに対し、潮受堤防の公共性ないし公益上の必要性は現時点においても失われていない、あるいは「防災上やむを得ない場合」に当たることから、開門請求権の行使を認めるべき違法性は現時点においても認められず、前記各排水門を解放するための強制執行は許されないこと、別件仮処分決定により原告が前記各排水門の解放禁止義務を負っていることからすれば、別件仮処分決定がされたことが独立の異議事由にあたること、これらの事情に鑑みれば強制執行は権利の濫用又は信義則違反に当たること、漁業協同組合を脱退したことにより漁業行使権に基づく開門請求権を失ったことが異議事由に当たる等と主張して、前記確定判決に基づく強制執行の不許を求めた事案において、前記相続人らに対する訴えについては被告適格を欠くとして一部却下し、漁業行使権を失った被告らに対する請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2015.02.03
間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(国営諫早湾干拓事業問題)
LEX/DB25447006/最高裁判所第二小法廷 平成27年 1月22日 決定 (許可抗告審)/平成26年(許)第26号
諫早湾の干拓地で農業を営み、又は同湾内で漁業を営む者等である相手方らが、抗告人に対し、諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門を開放してはならない旨を抗告人に命ずる仮処分決定に基づき、間接強制の申立てをしたところ、原審は、本件仮処分決定に基づく債務は債務者である抗告人が自己の意思のみで履行することができる債務であるとして、抗告人に対し、本件各排水門を開放してはならない旨を命ずるとともに、その義務を履行しないときは、相手方らに対し、1日につき49万円の割合による金員を支払うよう命ずる間接強制決定をすべきものとしたため、抗告人が許可抗告した事案において、抗告人が別件確定判決により本件各排水門を開放すべき義務を負っているという事情があっても、執行裁判所は本件仮処分決定に基づき抗告人に対し間接強制決定をすることができ、抗告人主張のその余の事情も間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないとし、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2015.02.03
間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(国営諫早湾干拓事業問題)
LEX/DB25447007/最高裁判所第二小法廷 平成27年 1月22日 決定 (許可抗告審)/平成26年(許)第17号
諫早湾及びその近傍において漁業を営む相手方らが、抗告人に対し、諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門の開放を抗告人に命ずる確定判決に基づき、間接強制の申立てをしたところ、原審は、本件確定判決に基づく債務は債務者である抗告人が自己の意思のみで履行することができる債務であるとし、抗告人に対し、原々決定の送達を受けた日の翌日から2箇月以内に、防災上やむを得ない場合を除き、本件各排水門を開放し、以後5年間にわたってその開放を継続することを命ずるとともに、上記2箇月の期間内にその義務を履行しないときは、相手方ら各自に対し、上記期間経過の翌日から履行済みまで、1日につきそれぞれ1万円の割合による金員を支払うよう命ずる間接強制決定をすべきものとしたため、抗告人が許可抗告した事案において、抗告人が別件仮処分決定により本件各排水門を開放してはならない旨の義務を負ったという事情があっても、執行裁判所は本件確定判決に基づき抗告人に対し間接強制決定をすることができるとし、抗告人主張のその余の事情も間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないとし、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2014.12.16
公金支出差止等(住民訴訟)請求控訴事件(八ッ場ダム控訴事件)
LEX/DB25505060/東京高等裁判所 平成26年10月7日 判決 (控訴審)/平成22年(行コ)第300号
埼玉県の住民である控訴人らが、国の国土交通省を事業主体として利根川水系吾妻川に設置予定の多目的ダムである八ッ場ダムの建設事業について、同ダムは、治水上及び利水上の必要性がない違法な事業であり、同事業に関する負担金等の支出が違法であるなどとして、地方自治法242条の2第1項1号に基づき、被控訴人埼玉公営企業管理者に対し、八ッ場ダムに関する特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金並びに水源地域対策特別措置法12条1項1号及び2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金の各支出の差止めを求めた等の事案の控訴審において、特ダム法負担金納付通知を根拠とする被控訴人埼玉県公営企業管理者の特ダム法負担金の支出に関する行為は、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反する違法なものということはできない等として、控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する等した事例。
2014.12.16
内海ダム再開発事業認定処分取消請求事件(第1事件)、内海ダム再開発工事収用裁決等取消請求事件(第2事件)
LEX/DB25505091/高松地方裁判所 平成26年10月6日 判決 (第一審)/平成21年(行ウ)第9号等
参加人らが起業者となっている「二級河川別当川水系別当川内海ダム再開発工事並びにこれに伴う県道及び町道付替工事」の土地収用対象地内の土地所有者等及び立木所有者である原告らが、前記事業に係る事業認定が 土地収用法20条3号に違反するとして、被告国に対し、前記事業認定の取消しを求め(第1事件)るとともに、前記事業認定に係る権利取得裁決及び明渡裁決の対象とされた土地の所有者及び同土地内の立木や看板の所有者である原告らが、本件収用裁決に関し、前記事業認定に係る違法を承継するとして、被告である香川県に対し、本件収用裁決の取消しを求め(第2事件)た事案において、第1事件の一部の原告らの訴えを却下し、その余の各事件原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2014.12.09
覚書無効確認請求控訴事件(西いぶり広域連合 VS 三井造船(株)(株)日本製鋼所)
LEX/DB25504983/札幌高等裁判所 平成26年9月16日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第169号
地方公共団体の広域連合である原告(控訴人)が、その設置に係るごみ処理施設について、多額の保守管理費が発生しているのは、本件施設の建設を請け負った被告ら(被控訴人)において、その建設請負契約上保証した性能を満たしていないことによるものであって、いまだその保証期間は満了しておらず、同契約に基づく被告らの性能保証責任は存続しているなどと主張して、被告らが上記性能保証責任を負っていることの確認を求めたところ、請求が棄却されたため、控訴した事案において、被告らの性能保証責任が存続していること自体を確認したとしても、保守管理費の増加分が性能保証事項の違反による追加費用に当たるか否かという本質的な問題が解決されず、本件紛争の直接的かつ抜本的な解決とはならないとし、控訴を棄却した事例。
2014.12.02
強制執行停止申立事件
LEX/DB25504882/佐賀地方裁判所 平成26年9月5日 決定 (第一審)/平成26年(モ)第2号
申立人(国)が、被申立人ら(諫早湾内等で漁業に従事する者ら)に対して、被申立人らを含む者らを原告、申立人を被告とする、諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業において設置された堤防の各排水門の解放を命じた佐賀地裁判決に係る諫早湾開門請求権について、請求異議の事由があるとして、佐賀地方裁判所に提起した請求異議の訴えの判決において強制執行停止決定に対する裁判があるまで佐賀地裁判決に基づく強制執行の停止を求めた事案において、申立てを認め、強制執行の停止を言い渡した事例。
2014.11.25
産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求控訴事件
LEX/DB25504811/東京高等裁判所 平成26年9月25日 判決 (控訴審)/平成25年(行コ)第147号
茨城県知事が補助参加人に対して産業廃棄物処理施設の設置の許可処分につき、原告(控訴人)らを含む周辺住民等442名が、被告(被控訴人)である茨城県を相手に、許可要件を満たさないのにされた違法なものであると主張して、その取消しを求めたところ、原判決は、上記処理施設から2キロメートルの範囲内に居住地又は勤務先がある原告らについては、原告適格を認めた上で請求をいずれも棄却し、その余の原告らについては原告適格が認められないとして訴えをいずれも却下したところ、原告らが控訴した事案において、控訴を棄却した事例。
2014.11.11
各生活環境被害調停申請却下決定取消請求事件(シロクマ訴訟)
LEX/DB25504828/東京地方裁判所 平成 26年9月10日 判決 (第一審)/平成24年(行ウ)第322号等
我が国に住所を有する個人25名並びにいわゆる環境保護団体及び特定非営利活動法人が、公害紛争処理法26条1項の規定に基づいてした生活環境被害調停の申請に係る公害等調整委員会の本件却下決定1及び本件却下決定2の取消しを求めるとともに、ツバルに住所を有する個人18名及び我が国に住所を有する個人2名が、同項の規定に基づいてした調停の申請に係る公害等調整委員会の本件却下決定3の取消しを求めた事案において、本件各訴えのうち本件却下決定2の取消しの請求に係る部分は、原告適格が認められないとし、訴訟要件を欠く不適法な訴えであるから却下し、本件却下決定1及び本件却下決定3については適法であるとして、原告らの請求を棄却した事例。
2014.09.30
残土受入事業差止等請求事件
LEX/DB25504566/札幌地方裁判所 平成26年7月31日 判決 (第一審)/平成23年(ワ)第1786号
原告らが、被告会社に対し、被告会社の本件事業による残土埋立てにより、原告守る会につき、守る会土地の所有権が侵害されるおそれがあるとして、本件事業の差止めを求め、原告守る会が、被告会社の本件事業により、本件土地に残土が埋め立てられ、残土除去費用の損害を被ったとして、被告会社及び代表取締役である被告Aに対し、損害賠償を求めるなどした事案において、被告会社は、本件請求区域内外において、残土受入事業を拡大させているのであり、今後も広く本件請求区域内の土地に残土を埋め立てることが見込まれるから、将来、埋立未了守る会土地上に残土を埋め立てるおそれがあるものと認められるとし、請求を一部認容した事例。
2014.09.30
木曽川水系連絡導水路事業公金支出差止請求事件
LEX/DB25504570/名古屋地方裁判所 平成26年7月24日 判決 (第一審)/平成21年(行ウ)第49号
木曽川水系フルプラン等に基づく木曽川水系連絡導水路事業に関して、愛知県は、流水の正常な機能の維持と増進をその目的に含む水資源の開発又は利用のための施設の新築等に要する費用の一部等を負担するものとされているところ、原告らが、被告愛知県知事が、本件負担金の支出命令をすること等が違法である旨主張して、本件負担金の支出命令の差止め等を求めた事案において、本件事業実施計画やその前提となる本件フルプランが裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したことにより著しく合理性を欠き、そのため予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するということはできないし、客観的にみて県が本件事業実施計画又は本件フルプランの瑕疵を是正又は解消することができる蓋然性が大きいという事情があるということもできないとし、請求を棄却した事例。
2014.09.30
間接強制決定に対する執行抗告事件
LEX/DB25504550/福岡高等裁判所 平成26年7月18日 決定 (抗告審(執行抗告))/平成26年(ラ)第232号
債権者(相手方)らと債務者(抗告人)との間の諫早湾干拓地潮受堤防北部及び南部各排水門開放差止仮処分事件の決定に基づいて、債権者らが、(1)債務者は、間接強制の決定送達の日から、各容認債権者らとの関係で、開門をしてはならない、(2)間接強制の決定送達の日以降、債務者が(1)の義務に違反したときは、債務者は、各容認債権者らに対し、金2500億円を支払えとの間接強制の申立てたところ、原決定は申立ての一部を容認したため、債務者が執行抗告をした事案において、債務者が本件開放禁止義務に違反して本件各排水門を開放するおそれが認められるなどとし、抗告を棄却した事例。
2014.08.12
許可処分無効確認及び許可取消義務付け,更新許可取消請求事件
LEX/DB25446527/最高裁判所第三小法廷 平成26年7月29日 判決 (上告審)/平成24年(行ヒ)第267号
宮崎県北諸県郡高城町に設置された産業廃棄物の最終処分場を事業の用に供する施設として、宮崎県知事が参加人に対してした産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の各許可処分及び各許可更新処分につき、高城町ほかの地域に居住する上告人らが、被上告人を相手に、上記各許可処分の無効確認及びその取消処分の義務付け並びに上記各許可更新処分の取消しを求めた事案の上告審において、上告人X1を除くその余の上告人らは、いずれも本件処分場の中心地点から約1.8kmの範囲内の地域に居住する者であって、本件環境影響調査報告書において調査の対象とされた地域にその居住地が含まれており、本件処分場の種類や規模等を踏まえ、その位置と上記の居住地との距離関係などに加えて、環境影響調査報告書において調査の対象とされる地域が、一般に当該最終処分場の設置により生活環境に影響が及ぶおそれのある地域として選定されるものであることを考慮すれば、上告人X1を除くその余の上告人らについては、本件処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるものと想定される地域に居住するものということができ、著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから、本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有するものと解するのが相当であるとして、上告人X1を除くその余の上告人らが本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決のうち上記の上告人らに関する部分は破棄を免れず、また、上記の上告人らについて本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める訴えを却下した第一審判決も取消しを免れないとし、本件各許可処分及び本件各更新処分の適法性等について審理させるため、原判決のうち上告人X1を除くその余の上告人らに関する部分につき、本件を第一審に差し戻すべきであるとした一方で、上告人X1が本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとして上告人X1の訴えを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、上告人X1の上告は、棄却した事例。
2014.08.12
間接強制申立事件
LEX/DB25504250/長崎地方裁判所 平成26年6月4日 決定 (第一審)/平成26年(ヲ)第2001号
申立人(債権者・干拓地農業者、漁業者)らと被申立人(債務者・国)との間の諫早湾干拓地潮受堤防北部及び南部各排水門開放差止仮処分事件の保全命令の正本により、債権者らが、(1)債務者は、別紙4(開門方法)記載1ないし3の方法による各排水門の開門をしてはならない(ただし、調整池から諫早湾海域への排水を行う場合を除く。)、(2)間接強制の決定送達の日以降、債務者が(1)の義務に違反したときは、債務者は債権者らに対し、金2500億円を支払えとの間接強制を申し立てた事案において、債務者が、今後、本件開放義務を履行するために、本件対策工事の一部や仮設的な対策工事を行うなどして、別紙4(開門方法)記載1ないし3の方法による本件各排水門の開門をし、本件開放禁止義務に違反するおそれがあり、また、別件各確定判決に基づく本件開放義務の存在は、本件開放禁止義務を履行する上での、事実上の障害に当たるということはできないとした上で、債務者が本件開放禁止義務に違反して、別紙4(開門方法)記載1ないし3の開門(ケース1、ケース3-1、ケース3-2)のいずれかをした場合、債務者に対し、各開門方法に対応する主文掲記の各債権者らに対する1日当たり合計49万円の間接強制金の支払をあらかじめ命じるのが相当であるとした事例。
2014.07.15
葛城市クリーンセンター建設許可差止請求控訴事件
LEX/DB25504165/大阪高等裁判所 平成26年4月25日 判決 (控訴審)/平成25年(行コ)第146号
奈良県葛城市當麻に居住する原告(控訴人)らが、被告(被控訴人)の知事である行政処分庁において、葛城市に対し、金剛生駒紀泉国定公園の第2特別地域内に所在する計画図の赤線で囲まれた部分の土地に一般廃棄物処理施設の建設に係る自然公園法20条3条に基づく許可をすることの差止めを求めたところ、原審は、処分行政庁が本件許可をするとの蓋然性があるといえないし、本件許可によって「重大な損害を生ずるおそれ」があるともいえず、さらに、原告らの主張する損害はこれを「避けるため池に適当な方法がある」として、訴えを却下したため、原告らが控訴した事案において、本件訴えを不適法であるとして訴えを却下した原判決は相当であるとして、控訴を棄却した事例。