注目の判例

環境法

2019.12.03
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570444/広島高等裁判所 令和 1年 7月25日 判決 (控訴審)/平成31年(う)第75号
被告人が、自己の所有する伐採木を所有地内で焼却したことについて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に問われた事案の控訴審において、被告人が焼却した本件伐採木は燃料として保管されていたもので、廃棄物処理法2条1項の廃棄物に該当しないのに、これが廃棄物に該当された点、本件焼却行為は罰則適用の除外事由を定めた廃棄物処理法施行令14条4項に該当するのに、これに該当しないとした点において、判決に影響を及ぼすことが明らか法令適用の誤りがあり、また、被告人を懲役6月(執行猶予2年)及び罰金30万円に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとの控訴趣意について、法令適用の誤りに関する主張は斥けたものの、罰則適用に関しては、廃棄物処理法25条1項15号、16条の2の本罰則の適用対象のうち、本件焼却行為は、比較的軽い部類に属するとして、原判決を破棄して、被告人を罰金30万円に処した事例。
2019.09.24
請求異議事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570454/最高裁判所第二小法廷 令和 1年 9月13日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1874号
国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う被上告人(控訴人・原告。国)が、佐賀地裁及び福岡高裁の各確定判決において諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門の開放を求める請求が一部認容された上告人(被控訴人・被告)らに対し、本件各確定判決による強制執行の不許を求めた請求異議訴訟で、原審が、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、本件各確定判決に係る請求権は、本件各漁業権1から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権のみならず、本件各漁業権2から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権をも包含するものと解されるから、前者の開門請求権が消滅したことは、それのみでは本件各確定判決についての異議の事由とはならないとし、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人らに関する部分を破棄し、本件各確定判決が、飽くまでも将来予測に基づくものであり、開門の時期に判決確定の日から3年という猶予期間を設けた上、開門期間を5年間に限って請求を認容するという特殊な主文を採った暫定的な性格を有する債務名義であること、前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していることなどを踏まえ、前訴の口頭弁論終結後の事情の変動により、本件各確定判決に基づく強制執行が権利の濫用となるかなど、本件各確定判決についての他の異議の事由の有無について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見、及び、意見がある)。
2019.05.14
不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 6月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25562586/宇都宮地方裁判所 平成31年 3月 7日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第403号
地方公共団体である原告が,被告(国)から補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にいう補助金等を交付された後に、被告から当該補助金相当額である1億9659万0956円の納付を命じられ(本件納付命令)、同金員を被告に支払った(本件返納)ところ、本件納付命令は無効であるから、被告は本件返納により法律上の原因なく1億9659万0956円を利得し、原告は同額の損失を被ったものであると主張して、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき1億9659万0956円の返還の支払等を求めた事案において、本件返納は、本件納付命令を根拠にするものと認められず、返還合意を根拠にするものとも認められないから、法律上の原因がないものと認められるとして、原告の請求を全て認容した事例。
2019.01.22
建築変更確認取消裁決取消請求控訴事件
LEX/DB25561882/東京高等裁判所 平成30年12月19日 判決 (控訴審)/平成30年(行コ)第199号
控訴人(原告)らが建築主となって建築する共同住宅(本件マンション)の建築計画について、指定確認検査機関である株式会社都市居住評価センター(原処分庁)が建築基準法6条1項前段に定める建築確認処分(原処分)をし、その後、同項後段に定める建築計画変更確認処分(本件処分)をし、被控訴人参加人を含む本件マンションの周辺住民(審査請求人ら)が本件処分の取消しを求めて審査請求をしたところ(26建審・請第1号審査請求事件)、東京都建築審査会(裁決行政庁)が、本件マンションの建築計画には条例違反の違法があるなどとして本件処分を取り消す旨の裁決(本件裁決)をしたことにより、控訴人らが本件裁決は違法であると主張して、被控訴人(被告。東京都)に対し、本件裁決の取消しを求め、原審が、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの請求は理由がないから棄却するのが相当であると判断し、本件控訴を棄却した事例。
2018.10.16
請求異議控訴事件
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LEX/DB25561114/福岡高等裁判所 平成30年 7月30日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第19号
国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う控訴人(国)が、佐賀地裁の判決及び福岡高裁の判決によって、諫早湾干拓地潮受堤防の北部排水門及び南部排水門の開放を求める請求権が認容された者らを被告として、上記各判決による強制執行の不許を求めたところ、原判決は、控訴人の請求のうち、一部の一審被告らに対する訴えを却下し、一部の一審被告らに対する請求を認容したが、その余の一審被告である被控訴人らに対する請求についてはこれを棄却したため、同棄却部分を不服として控訴人が控訴した事案(なお、原判決のうち上記訴え却下に係る一審被告らに関する部分及び上記請求認容に係る一審被告らに関する部分については、いずれも不服が申し立てられなかったため、上記各一審被告らは被控訴人となっていない。)で、控訴人の被控訴人らに対する請求はいずれも理由があるから認容すべきであるところ、これと異なる原判決中被控訴人らに関する部分は不当であり、本件控訴はいずれも理由があるとし、民事執行法37条1項に基づき同法36条1項の処分を命じた事例。
2018.09.04
損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25560858/東京高等裁判所 平成30年 6月28日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第3038号
第1審原告(貨物自動車運送事業等を営む株式会社)が、本件土地及び建物を所有していた第1審被告(風水力機械等の製造及び販売等を目的とする株式会社)に対し、第1審被告から物流ターミナル等の建設を目的として本件土地及び本件建物を代金848億円で売買契約を締結し買い受けたが、本件土地から広範囲にわたって発見されたスレート片が石綿を含有していたと主張して、本件売買契約に基づく瑕疵除去義務の不履行又は本件売買契約上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償として、本件スレート片の撤去及び処分費用、物流ターミナルの建設工事が遅れたことに伴う追加費用、逸失利益、弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、第1審原告の請求額を減額したうえで一部認容したため、第1審原告及び第1審被告の双方が、それぞれ原判決のうち敗訴部分を不服として、本件各控訴した事案において、約56億1000万円の支払いを命じた原判決に続き契約上の過失を認め、賠償額を約59億5000万円に増額した内容で変更した事例。
2018.08.21
損害賠償請求事件 
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LEX/DB25560627/高松地方裁判所 平成30年 4月27日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第86号
被告の経営するホームセンターにおいてカラーボックス6個を購入した原告が、カラーボックスに使用されている有機系塗料から放散されたホルムアルデヒド等の化学物質により化学物質過敏症を発症し後遺障害を負ったと主張して、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として、治療費等の合計7897万3750円のうち7021万9000円の支払等を求めた事案において、被告には、多量のホルムアルデヒドを放散する本件カラーボックスを原告に販売したことにつき過失があり、このような本件カラーボックスの販売は、不完全履行に当たると認め、原告の請求を一部認容した事例。
2018.07.10
許可処分義務付け等請求事件
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LEX/DB25560541/水戸地方裁判所 平成30年 6月15日 判決 (第一審)/平成28年(行ウ)第9号
被告の知事が、原告がした国定公園の特別地域内における太陽光発電設備の新築の許可申請に対し不許可処分をしたため、原告が、被告に対し、同処分の取消し及び同申請に対する許可処分の義務付けを求める事案で、取消訴訟について、本件申請は、被告が主張するいずれの不許可事由にも該当しないというべきであり、そうであるにもかかわらず被告の知事が本件不許可処分をしたことについては、裁量権の逸脱、濫用があるといわざるをえないとして、取消訴訟に係る原告の請求は理由があるとし、また、義務付け訴訟についても、被告の知事が原告に対し本件申請を許可しないことは、その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるから、原告の本件申請に対する許可の義務付けの請求には理由があるとし、請求を認容した事例。
2018.05.29
原子力発電所設置許可処分取消等請求事件、大間原子力発電所建設・運転差止等請求事件、原子力発電所建設・運転差止等請求事件
LEX/DB25449377/函館地方裁判所 平成30年 3月19日 判決 (第一審)/平成22年(行ウ)第2号
被告電源開発が経済産業大臣の設置許可処分に基づき青森県下北郡大間町に建設に着手した大間原子力発電所(本件原発)について、原告66名が、被告電源開発に対し、人格権に基づく侵害予防として,本件原発の建設及び運転の差止めを求めるとともに、原告ら1164名が、被告らに対し、本件原発の危険性に対する不安のため甚大な精神的苦痛を受けているなどとして、被告電源開発に対しては不法行為に基づき、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料各1000万円の一部請求として各3万円の連帯支払を求めた事案で、原告らが、規制委員会が本件原発の安全審査に用いる具体的審査基準に不合理な点があると主張するいずれの事項についても、不合理であるとは認められず、未だ規制委員会の判断がなされておらず、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点(本件口頭弁論終結時)においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等の具体的危険があるとは認められないとし、原告らの被告電源開発に対する本件原発の建設及び運転の差止請求を棄却し、また、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等に対する原告らの不安感は抽象的なものにとどまると認められ、原告らの主張する法益侵害が生じているとはいえず、原告らの被告らに対する各慰謝料請求も棄却した事例。
2018.05.01
補償協定上の地位確認請求控訴事件
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LEX/DB25549794/大阪高等裁判所 平成30年 3月28日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1602号
公害健康被害補償法に基づく水俣病の認定を受けた亡P4の相続人である被控訴人(原告)P2及び亡P5の相続人である被控訴人(原告)P3が、水俣病を発生させた企業である控訴人(被告。化学製品製造会社)と水俣病の患者団体の一つである水俣病患者東京本社交渉団との間で、昭和48年7月9日に締結された水俣病補償協定に基づき、控訴人に対し、本件協定に基づく補償を受けられる等の、本件協定上の権利を有する地位にあることの確認を求め、原判決は、被控訴人らの本件各請求をいずれも認容したことから、控訴人が控訴した事案において、P4らは、本件協定の本文第三項にいう「協定締結以降認定された患者」として、本件協定の適用を求め得る地位にあるとはいえないといわざるを得ないとし、被控訴人らの本件請求は、いずれも理由がないことに帰着するから、これを棄却すべきであり、これと異なる原判決は相当でないとし、原判決を取消し、被控訴人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.04.24
損害賠償請求事件(東電に賠償命令 原発避難者 「ふるさと喪失分」認定)
LEX/DB25549758/東京地方裁判所 平成30年 2月 7日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第33633号
平成23年3月11日当時、福島県南相馬市小高区又は原町区に生活の本拠としての住居等を有していた者又はこれらの者の相続人である原告ら321名が、東日本大震災により発生した東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の放出及び避難指示等により、本訴提起時原告ら(合計335名)は、自らの本来の住まい以外の場所での生活を強いられ、従前の生活を送れないことによる甚大な損害を被り、また自身の人生と生活の拠点である小高を奪われてしまったことにより不可逆的な損害を被り、その共通する慰謝料等の額は少なくとも1人当たり合計3828万円を下らない等と主張して、本件原発について原子炉の運転等をしていた被告(東京電力)に対し、原賠法3条1項本文に基づき、慰謝料の一部請求として、訴訟承継を経ていない原告らについては被告が認める850万円を超える部分である1人当たり2978万円及び弁護士費用300万円の合計3278万円の支払等を、訴訟承継を経た原告らについては上記債権のうち相続した額の支払等をそれぞれ求めた事案において、憲法が保障する居住・移転の自由や人格権を侵害されたとし、請求を一部認容し、被告に総額約11億円の支払を命じた事例。
2018.03.20
各水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件
LEX/DB25549278/東京高等裁判所 平成29年11月29日 判決 (控訴審)/平成28年(行コ)第259号
1審原告らが1審被告(新潟市)に対し、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定申請棄却処分の取消しを求めるとともに、1審原告q11において、亡q1が、そのり患していた疾病が同法施行令1条に基づく別表第2の1において定める新潟県の区域のうち、新潟市及び豊栄市の区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを、1審原告q11を除く1審原告らにおいて、自己が、り患している疾病が上記区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定をすることの義務付けをそれぞれ求め、原審は、1審原告q2の訴えのうち水俣病である旨の認定をすることの義務付けを求める部分及び1審原告q11の訴えのうち亡q1が水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを求める部分をいずれも却下し、1審原告q2及び1審原告q11のその余の請求をいずれも棄却し、また、1審原告らの請求を公健法所定の水俣病にかかっていると認定しいずれも認容したため、1審原告q2、1審原告q11及び1審被告がそれぞれ控訴した事案において、1審原告らの請求はいずれも理由があるから、原判決中、1審原告q2及び1審原告q11に係る部分をそれぞれ取消し、1審原告q2及び1審原告q11の請求をいずれも認容し、1審被告の控訴を棄却した事例。
2018.03.13
伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立(第1事件、第2事件)却下決定に対する即時抗告事件
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LEX/DB25449168/広島高等裁判所 平成29年12月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第63号
抗告人(債権者。伊方発電所3号機の周辺に居住する住民)らが、相手方(債務者。電力供給を行う一般電気事業者)が設置運転している発電用原子炉施設である伊方発電所3号炉及びその附属施設は、地震、火山の噴火、津波等に対する安全性が十分でないために、これらに起因する過酷事故を生じる可能性が高く、そのような事故が起これば外部に大量の放射性物質が放出されて抗告人らの生命、身体、精神及び生活の平穏等に重大かつ深刻な被害が発生するおそれがあるとして、相手方に対し、人格権に基づく妨害予防請求権に基づき、本件原子炉の運転の差止めを命じる仮処分を申し立て、原審は、本件原子炉施設から放射性物質が外部に放出される事故が発生し、抗告人らの生命、身体に危険が生じるおそれがあるとは認められないとして、抗告人らの本件仮処分命令の申立てをいずれも却下したため、抗告人らが即時抗告した事案において、火山事象の影響による危険性の評価については、本件原子炉施設が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理であり、相手方で、本件原子炉施設の運転等によって放射性物質が周辺環境に放出され、その放射線被曝により抗告人らがその生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける具体的危険が存在しないことについて、主張、疎明を尽くしたとは認められないとし、抗告人らの申立ては、火山事象の影響による危険性の評価について、被保全権利の疎明がなされたというべきであるとして、原決定を変更し、相手方は、平成30年9月30日まで、伊方発電所3号機の原子炉を運転してはならないとした事例。
2017.12.19
協定遵守請求事件
「新・判例解説Watch」H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449049/名古屋地方裁判所 平成29年10月27日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第3609号
漁業協同組合である原告が、電気事業を営む株式会社であり、火力発電所を保有、運転している被告に対し、火力発電所の運転による水温の上昇等の影響で、原告の漁獲量が減少し、損害が発生しているなどとし、原告と被告との間で締結された協定書に基づき、主位的に、原告と別紙協議目録記載の事項について協議することを求め、予備的に、被告が原告に対し同協議に応ずる義務を負うことの確認を求めた事案において、本件協定書に基づく協議対象は、本件協定書締結当時に建設が予定されていたA火力発電所5号機及びB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関する事項に限られると解されるところ、次期石炭灰処分場建設計画は、B火力発電所4・5号機の操業に関する事項に当たり、本件協定書に基づく協議の対象に当たると解するのが相当であるとし、予備的請求を一部認容した事例。
2017.09.26
障害補償費不支給決定取消等請求事件
「新・判例解説Watch」H29.12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448889/最高裁判所第二小法廷 平成29年 9月 8日 判決 (上告審)/平成28年(行ヒ)第371号
水俣病の認定を受けた被上告人(原告・控訴人)が、公害健康被害の補償等に関する法律(公健法)に基づく障害補償費の支給を請求したところ、熊本県知事から、被上告人の健康被害に係る損害は損害賠償請求訴訟の結果、原因者により全て填補されているとして、障害補償費の不支給処分の決定を受けたため、上告人(被告・被控訴人。熊本県)を相手に、その取消し等を求め、原審が、第1審判決を取り消したため、上告人が上告した事案において、被上告人は、原因者であるチッソに対して、被上告人の水俣病による健康被害に係る損害につき損害賠償請求訴訟を提起したものであるところ、前訴確定判決は同損害の全てについての賠償をチッソに命じたものと解されるから、被上告人がこれに基づく損害賠償金を受領したことにより、熊本県知事は、被上告人に対する公健法に基づく障害補償費の支給義務の全てを免れたものであり、本件不支給処分が公健法13条1項に違反するものということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼす明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、公害健康被害認定審査会の意見を聴かないことにより本件不支給処分が違法になる旨の被上告人の主張に理由がないことも明らかであり、被上告人の同処分の取消請求は理由がないから、これを棄却した第1審判決は是認することができ、被上告人の控訴を棄却した事例。
2017.07.18
玄海原子力発電所3号機再稼働差止仮処分申立事件(第1事件)、玄海原子力発電所4号機再稼働差止仮処分申立事件(第2事件)
LEX/DB25448731/佐賀地方裁判所 平成29年 6月13日 決定 (第一審)/ 平成23年(ヨ)第21号 等
第1事件債権者らが、人格権又は環境権に基づき、債務者(電気事業会社)が設置している玄海原子力発電所3号機の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案(第1事件)、第2事件債権者らが、人格権又は環境権に基づき、債務者(電気事業会社)が設置している玄海原子力発電所4号機の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案(第2事件)において、債務者が、基準地震動の合理性及び配管の安全性について相当の根拠、資料に基づき疎明したということができ、債権者らの疎明を検討しても、本件各原子炉施設の安全性に欠けるところがあるとは認められないから、債務者が本件各原子炉施設を運転することにより、債権者らの人格権を侵害するおそれがあるとは認められず、本件各申立てに係る被保全権利の疎明があるということはできないなどとして、第1事件及び第2事件の本件各申立てをいずれも却下した事例。
2017.07.04
伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立事件(第1事件、第2事件)
LEX/DB25545650/広島地方裁判所 平成29年 3月30日 決定 (第一審)/平成28年(ヨ)第38号 等
伊方原発3号機の運転差止仮処分命令を申立てた第1事件及び第2事件の各債権者らにおいて、債務者が設置、運転している発電用原子炉施設である伊方発電所3号炉及びその附属施設は、地震、火山の噴火、津波等に対する安全性が十分でないために、これらに起因する過酷事故を生じる可能性が高く、そのような事故が起これば外部に大量の放射性物質が放出されて債権者らの生命、身体、精神及び生活の平穏等に重大かつ深刻な被害が発生するおそれがあるとして、債務者に対し、人格権に基づく妨害予防請求権に基づき、本件原子炉の運転の差止めを命じる仮処分を申し立てた事案において、基準地震動の策定、耐震設計における重要度分類、使用済燃料ピット等の安全対策、地すべりと液状化現象による危険性の評価、制御棒挿入に係る危険性の評価、基準津波の策定、火山事象の影響による危険性の評価、テロリズム対策、シビアアクシデント対策のそれぞれにつき、新規制基準の定めが不合理であるということはできないし、本件原子炉施設が上記の各点につき新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断が不合理であるともいえないなどとし、第1事件及び第2事件の各債権者らの申立てをいずれも却下した事例。
2017.07.04
仮処分命令認可決定に対する保全抗告事件
LEX/DB25545751/大阪高等裁判所 平成29年 3月28日 決定 (抗告審)/平成28年(ラ)第677号
滋賀県内に居住する相手方(債権者)らが、原子力発電所を設置している抗告人(債務者。電力会社)に対し、各原発が耐震性能に欠け、津波による電源喪失等を原因として周囲に放射性物質汚染を惹起する危険性を有する旨主張して、人格権に基づく妨害(予防)排除請求権に基づき、各原発を仮に運転してはならないとの仮処分を申し立て、これを認容する原決定をがなされたため、抗告人が保全異議の申立てをし、原審が原決定を認可したのに対し抗告人が保全抗告をした事案において、各原発の安全性が欠如していることの疎明があるとはいえないとして、原決定を取り消し、相手方らの仮処分申立てを却下した事例。
2017.06.27
補償協定上の地位確認請求事件 
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LEX/DB25545811/大阪地方裁判所 平成29年 5月18日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第11819号
水俣病の認定を受けたd及びeの各相続人である原告らが、水俣病を発生させた企業である被告と水俣病患者東京本社交渉団との間で昭和48年7月9日に締結された水俣病補償協定に基づき、被告に対し、本件協定に基づく補償を受けられる等の協定上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案において、本件協定の本文第三項の「認定された患者」に該当するためには、その文言のとおり水俣病の認定を受けたことのみで足り、それ以外の要件は付されていないというべきであるとし、dらは、本件協定の本文第三項の「認定された患者」に該当し、dらの権利義務を承継した原告らは、受益の意思表示をしていることから、被告に対して本件協定に基づく補償給付を求めることができる地位を有すると認め、原告の請求を認容した事例。
2017.06.06
嘉手納基地爆音差止等請求事件 
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LEX/DB25545477/那覇地方裁判所沖縄支部 平成29年 2月23日 判決 (第一審)/平成23年(ワ)第245号
本件飛行場の周辺に居住し、若しくは居住していた者又はその相続人である原告らが、本件飛行場において離着陸するアメリカ合衆国の航空機の発する騒音により健康被害を受けていると主張して、日米安保条約及び日米地位協定に基づいてアメリカ合衆国に本件飛行場を提供している被告に対し、人格権、環境権又は平和的生存権に基づき、毎日午後7時から翌日午前7時までの間における本件飛行場における航空機の離発着禁止等を求めた事案において、本件飛行場の航空機の運航等によって、原告らは相当に大きな騒音に曝露され、少なくとも本件コンター上、W75以上を超える区域に居住する原告らについては法的保護に値する重要な利益の侵害があると認められること等、特に本件コンター上W95以上の地域については、航空機騒音対策緊急指針において緊急に対策を講じるべきとされた強度の騒音曝露状況が現在も続いている等として、原告の請求を一部認容した事例。