注目の判例

民法(家族法)

2020.02.12
婚姻費用分担審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」家族法分野 7月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570671/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 1月23日 決定 (許可抗告審)/平成31年(許)第1号
妻である抗告人は、夫である相手方に対し、婚姻費用分担調停の申立てをし、離婚の調停が成立したが、同調停において、財産分与に関する合意はされず、いわゆる清算条項も定められなかった。上記婚姻費用分担調停事件は、離婚調停成立の日と同日、不成立により終了したため、上記申立ての時に婚姻費用分担審判の申立てがあったものとみなされて、審判に移行し、原決定は、抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから、離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして、これを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないとし、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2020.01.07
遺留分減殺請求事件
LEX/DB25570618/最高裁判所第三小法廷 令和 1年12月24日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1551号
亡Aの長女である被上告人が、Aがその所有する一切の財産を長男である上告人に相続させる旨の遺言をしたことにより遺留分が侵害されたと主張して、上告人に対し、遺留分減殺請求権の行使に基づき、第1審判決別紙遺産目録記載の各不動産について遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続を求めるとともに、上告人が上記遺言によって取得した上記財産のうち解約済みの預貯金及び現金並びに上記各不動産の一部について上告人がAの死後に受領した賃料に係る不当利得の返還等を求め、被上告人の遺留分の侵害額の算定に関し、合資会社の無限責任社員であったAが、退社により本件会社に対して金員支払債務を負うか否かが争われた事案の上告審において、無限責任社員であるAが本件会社を退社した当時、本件会社は債務超過の状態にあり、退社時における計算がされた結果、Aが負担すべき損失の額がAの出資の価額を超える場合には、定款に定めがあるなどの特段の事情のない限り、Aは、本件会社に対してその超過額の支払債務を負うことになるとした事例。
2019.12.03
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570471/宇都宮地方裁判所真岡支部 令和 1年 9月18日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第30号
原告が、原告と同性婚の関係にあった被告A及び後に被告Aと婚姻した被告Bに対し、被告らが不貞行為を行った結果、原告と被告Aの同性の事実婚(内縁関係)が破綻したと主張して、共同不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案において、同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当であるとして、原告の請求を一部認容した事例。
2019.11.05
損害賠償請求事件(第1事件、第2事件)
「新・判例解説Watch」憲法分野 1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25564040/東京地方裁判所 令和 1年10月 2日 判決 (第一審)
婚姻後の夫婦の氏として、夫は夫の氏、妻は妻の氏を称する旨を記載した婚姻届を提出しようとしたところ、民法750条及び戸籍法74条1号の各規定(本件各規定)を根拠に婚姻届を不受理とされた者である原告らが、本件各規定が憲法14条1項、24条又は国際人権条約に違反することが明白であるにもかかわらず、国会が本件各規定について正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠ったことにより、婚姻をするについての自由を制約され、法律上の婚姻(法律婚)に認められる民法や税法等の法律上の権利・利益,事実上の様々な利益を享受できず、また、夫婦であることの社会的承認を受けることができない不利益を被り、それらにより多大な精神的苦痛を受けたとして、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料各50万円の支払を求めた事案で、本件各規定は、憲法14条1項又は24条に違反することが明白ではなく、また、女子差別撤廃条約又は自由権規約に違反することが明白であるともいえないから、本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2019.09.03
遺産分割後の価額支払請求事件 
LEX/DB25570429/最高裁判所第三小法廷 令和 1年 8月27日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1583号
亡Aの妻であるB及びAの子である上告人がAの遺産について分割の協議を成立させた後、被上告人がAの子であることを認知する旨の判決が確定し、被上告人が、上告人に対し、民法910条に基づく価額の支払を求めた事案の上告審で、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、当該分割の対象とされた積極財産の価額であるとし、相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても、異なるものではないと判示したうえで、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができるとし、上告を棄却した事例。
2019.07.23
「新・判例解説Watch」家族法分野 9月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570294/東京高等裁判所 平成31年 4月10日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第246号
控訴人Aが、甲府刑務所に収容されていた当時、同控訴人と養子縁組をしていた亡Dに対して信書を発信しようとしたところ、甲府刑務所長が信書の発信を禁止する決定をしたことについて、国家賠償を請求した事案の控訴審において、控訴人AとDとが、同性愛関係にあり、両名が、助け合って共に生活しようという意思を持って、養子縁組を行った本件においては、両名に縁組意思を認めることができ、養子縁組は有効というべきであり、Dは刑事収容法128条所定の親族に該当するとして、原判決を取り消し、被控訴人の請求を一部認容した事例。
2019.05.21
間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25570221/最高裁判所第三小法廷 平成31年 4月26日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第13号
相手方(妻)が、抗告人(夫)に対し、両名の長男の引渡しを命ずる審判を債務名義として、間接強制の申立てをし、原決定は、抗告人に対し、長男を相手方に引き渡すよう命ずるとともに、これを履行しないときは1日につき1万円の割合による金員を相手方に支払うよう命ずる間接強制決定をしたため、抗告人が許可抗告した事案で、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、具体的に想定することが困難というべきであり、本件審判を債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じて心理的に圧迫することによって長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されず、権利の濫用に当たるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、相手方の本件申立てを却下した事例(補足意見がある)。
2019.05.07
損害賠償請求事件(夫婦別姓訴訟 請求棄却)
LEX/DB25562555/東京地方裁判所 平成31年 3月25日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第217号
原告らが、戸籍上の氏が民法上の氏とは別個に存在することを前提に、現行の戸籍法において、日本人同士の婚姻により配偶者の氏を民法上の氏として称することとした場合に、婚姻前の氏を戸籍法上の氏として称することを認める制度が設けられていないことについて、そのことが、遅くとも、離婚後も離婚の際に称していた氏を称することを認める制度が戸籍法に設けられた昭和51年の段階、又は、日本人が外国人との婚姻の際に自己の氏を配偶者の称している氏に変更することを認める制度や、日本人が外国人との離婚の際に自己の氏を当該変更の際に称していた氏に変更することを認める制度が戸籍法に設けられた昭和59年の段階において、憲法13条、14条1項及び24条に違反する状態となっていたのであるから、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合に該当し、本件旧氏続称制度を設ける立法措置を執らないという国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるところ、原告らにおいて本件立法不作為により精神的苦痛を被った旨を主張して、被告(国)に対し、損害賠償として、原告ら各自に対し、それぞれ55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)の支払等を求めた事案で、本件旧氏続称制度の不存在が憲法に違反しないなどとして、原告らの請求を棄却した事例。
2019.03.26
売買代金請求本訴、損害賠償請求反訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25570082/最高裁判所第一小法廷 平成31年 3月 7日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1372号
本件本訴は、上告人が、被上告人に対し、売買契約に基づき代金2813万8940円及び遅延損害金の支払等を求めたもので、被上告人は、上告人による債権の仮差押命令の申立てが被上告人に対する不法行為に当たるとし、これによる損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなどして、上告人の本訴請求を争い、原審は、本件損害賠償債権の額を本件逸失利益等の損害合計1522万4244円とし、本件売買代金債権は本件相殺によりその一部が消滅したと認め、上告人の本訴請求を一部認容したが、上告人が上告した事案で、本件仮差押申立てと本件逸失利益の損害との間に相当因果関係があるということはできないとして、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、別紙記載の部分を破棄し、本件逸失利益以外の本件仮差押申立てと相当因果関係のある損害の有無等について更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2019.03.19
養子縁組無効確認請求事件
LEX/DB25570071/最高裁判所第三小法廷 平成31年 3月 5日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1197号
亡B(亡C及びその実姉の叔父の妻)を養親となる者とし、亡Cを養子となる者とする養子縁組届に係る届書が、平成22年10月に町長に提出された。被上告人(当該実姉の夫)は、平成25年12月に死亡した亡Bの平成22年7月11日付けの自筆証書遺言により、その相続財産全部の包括遺贈を受け、被上告人は、平成28年1月、亡Cから遺留分減殺請求訴訟を提起された。亡Cが平成29年10月に死亡したため、上告補助参加人(亡Cの妻)は、上記訴訟を承継した。被上告人が、検察官に対し、本件養子縁組の無効確認を求めたところ、原審は、被上告人が本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないとして本件訴えを却下した第1審判決を取消して、本件を第1審に差し戻しを命じたため、上告人が上告した事案で、養子縁組の無効の訴えを提起する者は、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人の訴えは不適法であり、これを却下した第1審判決は相当であるとし、被上告人の控訴を棄却した事例。
2019.02.05
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
「新・判例解説Watch」憲法分野・家族法分野 4月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449940/最高裁判所第二小法廷 平成31年 1月23日 決定 (特別抗告審)/平成30年(ク)第269号
抗告人(申立人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき、性別の取扱いを女から男にすることを求めたところ、第1審が抗告人の申立てが却下されたため、抗告人がこれを不服として即時抗告をしたが、即時抗告審でも却下されたため、抗告人が特別抗告をした事案で、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の本件規定の下では、本件規定の目的、制約の態様、現在の社会的状況等を総合的に較量すると、本件規定は、現時点では、憲法13条、14条1項に違反しないとした事例(補足意見がある)。
2019.01.16
面会交流審判に対する抗告事件
LEX/DB25561709/東京高等裁判所 平成30年11月20日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(ラ)第1661号
別居中の夫婦間で、未成年者の実父である相手方が、未成年者を監護養育している実母である抗告人に対し、相手方と未成年者が面会交流する時期、方法等につき定めることを求めたところ、原審は、抗告人に対し、面会交流をさせなければならない旨を命じる審判をしたため、抗告人が、原審判を不服として即時抗告をし、本件申立てを却下するとの審判に代わる裁判を求めた事案において、原審判と同様の頻度、時間、引渡方法、代替日の定めにより相手方と未成年者の面会交流を行うのが相当であるが、その際には、抗告人が面会交流に立ち会うことができる旨を併せて定めるのが相当であると判断し、原審判を変更した事例。
2018.11.27
離婚等本訴請求・同反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件
LEX/DB25561398/東京高等裁判所 平成30年 9月27日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第2147号 等
控訴人(兼附帯被控訴人・被告(反訴原告))と夫婦関係にある被控訴人(兼附帯控訴人・原告(反訴被告))が、控訴人に対し、悪意の遺棄及び婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して、民法770条1項2号及び5号に基づき離婚を求めると共に、離婚に伴う慰謝料300万円の支払等を求め、これに加えて、長男及び二男の親権者を被控訴人とすること、養育費の支払、財産分与(共有不動産の分与を含む。)、年金分割を求めたのに対し、控訴人が、反訴として、離婚、離婚に伴う慰謝料500万円の支払、親権者を控訴人とすること、相当額の財産分与等を求めたところ、原審は、双方の離婚請求を認容した上で、長男及び二男の親権者をいずれも被控訴人と定め、控訴人に対し、長男及び二男の養育費として、それぞれが満20歳に達する日までの間、各月額6万5000円の支払を命じ、財産分与については、控訴人に対し、本件不動産の控訴人持分全部の譲渡及び財産分与を原因とする同持分全部移転登記手続を命じたほか、59万1631円の支払を命じ、年金分割については、請求すべき按分割合を0.5と定め、被控訴人のその余の本訴請求及び控訴人のその余の反訴請求をいずれも棄却したため、控訴人は、原判決中の親権者指定、財産分与及び慰謝料請求に関する部分を不服として控訴し、被控訴人は、原判決中の養育費,財産分与に関する部分及び慰謝料請求に関する部分を不服として附帯控訴した事案で、原判決は相当であると判断し、本件控訴及び本件附帯控訴を棄却した事例。
2018.11.06
公金違法支出損害賠償等請求事件
LEX/DB25449756/最高裁判所第三小法廷 平成30年10月23日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第185号
鳴門市が経営する競艇事業に関し、市が平成25年度において漁業協同組合である上告補助参加人らに対して公有水面使用協力費を支出したことが違法、無効であるとして、市の住民である被上告人(原告・被控訴人)らが、地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき、上告人(被告・控訴人)を相手に、当時の市公営企業管理者企業局長の職にあった者に対する損害賠償請求及び参加人らに対する不当利得返還請求をすること等を求める住民訴訟の事案の上告審で、市が本件各請求権を放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であるとは認め難いというべきであり、本件議決が市議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできないとし、本件議決を受けて、上告人がA及び参加人らに対し、本件各請求権を放棄する旨をそれぞれ通知したことにより、その放棄は有効にされ、同請求権は消滅したものと判断し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.06.05
婚姻費用分担審判に対する抗告事件
LEX/DB25560120/東京高等裁判所 平成30年 4月19日 決定 (抗告審)/平成30年(ラ)第125号
妻である相手方(原審申立人)が、夫である抗告人(原審相手方)に対し、婚姻費用分担金の支払を求める調停を申し立てたが、不調により審判手続に移行し、原審は、抗告人に対し、平成28年8月分から平成29年10月分までの未払婚姻費用分担金合計90万円及び同年11月から当事者の同居又は婚姻解消に至るまで毎月6万円の各支払を命じる旨の審判をしたため、抗告人は、これを不服として、本件抗告を申し立てた事案において、原審判を一部変更し、抗告人は、本件調停が申し立てられた平成28年8月から、毎月4万7000円を支払うべきところ、これを全く支払っていないから、平成28年8月から平成30年3月まで、20か月分合計94万円を直ちに支払うべきであり、平成30年4月1日以降は、当事者の同居又は婚姻解消に至るまで、毎月末日限り、月額4万7000円を支払うべきであるとした事例。
2018.05.15
子の引渡し仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
(平成29年12月 5日最高裁判所第三小法廷(平成29年(許)第17号)(LEX/DB 25449093)の原審)
LEX/DB25549514/福岡高等裁判所那覇支部 平成29年 6月 6日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第21号
抗告人が、長男の親権に基づく妨害排除請求として、相手方に対し、長男の仮の引渡しを求めた事案の即時抗告審において、長男の親権者を抗告人と定めた上で協議離婚がされたが、実際には親権者で父である抗告人と別居後長男を監護してきた母である相手方との間で、長男の監護に関し、いずれが長男の監護をするにふさわしいかをめぐる紛争が存在しているのであるから、長男を抗告人に引き渡すべきか否かの判断を行うに当たっては、父又は母のいずれの監護に服することが子の福祉に沿うかという観点からの検討を加えることが必要不可欠であり、その判断は、本件では親権者変更の調停の審理の経過及び経過を踏まえてされることが望ましいものであるから、本件の本案については、子の監護に関する処分として、家事審判事項に該当するというべきであり、地方裁判所に対してされた家事審判事項を本案とする本件申立ては不適法であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2018.05.15
子の引渡し仮処分申立事件
(平成29年12月 5日最高裁判所第三小法廷(平成29年(許)第17号)(LEX/DB 25449093)の原原審)
LEX/DB25549513/那覇地方裁判所 平成29年 4月26日 決定 (第一審)/平成29年(ヨ)第31号
債権者が、長男の親権に基づく妨害排除請求として、債務者に対し、長男の仮の引渡しを求めた事案において、本件の本案は、家事審判事項であり、地方裁判所に管轄がない不適法なものであり、そして、家事審判事項については、審判又は調停が係属する家庭裁判所が審判前の保全処分をすることができるとした家事審判法105条、157条1項3号の趣旨に照らすと、本件申立ても、やはり地方裁判所に管轄がない不適法なものというべきであるとして、本件申立ては、審尋を経るまでもなく、却下するほかないと示し、なお書きにおいて、本件申立ての趣旨及び理由に照らし、本件を家事事件手続法に基づく審判前の保全処分の申立てと見る余地はないから、本件を家事事件手続法9条1項により家庭裁判所に移送することもできないと示した事例。
2018.03.06
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する即時抗告事件
LEX/DB25549283/広島高等裁判所岡山支部 平成30年 2月 9日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第17号
抗告人(申立人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき、性別の取扱いを女から男にすることを求めたところ、原審が抗告人の申立てを却下したため、抗告人がこれを不服として抗告した事案において、性別の取扱いの変更を認める要件の一つとして、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号が定めることが、立法府が有する裁量権の範囲を逸脱するとは認めることはできないとして、憲法13条に反しないとし、申立てを却下した原審判を相当であるとして、抗告を棄却した事例。
2018.02.20
損害賠償請求事件
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LEX/DB25548884/神戸地方裁判所 平成29年11月29日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第1653号
原告D(原告Aの母)は、夫(婚姻関係にある配偶者)から継続的に暴力を振るわれ、離婚の手続を取ることができないまま別居し、夫との婚姻継続中、原告Aの生物学上の父と交際し、原告Aを懐胎し出産し、原告Dは、夫に原告Aの存在を知られることを恐れ、その出生届を提出することができず、原告Aの実父が提出した原告Aの出生届は、夫の嫡出推定が及ぶことを理由に不受理とされ、原告D及び原告Aは、妻や子に夫に対する嫡出否認の訴えの提起が法律上認められていないことから、結果として、原告Aは無戸籍となり、原告B(原告Aの子)及び原告C(原告Aの子)は、原告B及び原告Cは、母である原告Aに戸籍がないため、その戸籍に入ることができず、原告Aと同様に無戸籍となったことにつき、民法774条~民法776条(本件各規定)は、父(夫)にのみ嫡出否認の訴えの提訴権を認めることによって、合理的な理由なく、父と子及び夫と妻との間で差別的な取扱いをしており、社会的身分による差別(憲法14条1項)に該当し、同項及び憲法24条2項に違反していることが明らかであり、国会(国会議員)は本件各規定の改正を怠っており、その立法不作為は、国家賠償法上違法であると主張した原告らが、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、精神的損害に対する慰謝料及び弁護士費用として、金員の支払を求めた事案において、本件各規定についての憲法適合性に関する原告らの主張はいずれも理由がないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2017.12.19
子の引渡し仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
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LEX/DB25449093/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月 5日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第17号
離婚した父母のうちその長男の親権者と定められた父である抗告人が、法律上監護権を有しない母を債務者とし、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として、長男の引渡しを求めた仮処分命令の申立てをしたところ、原審が、本件申立ての本案は家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分の審判事件であり、民事訴訟の手続によることができないから、本件申立ては不適法であるとして却下したため、抗告人が許可抗告した事案において、抗告人が母に対して親権に基づく妨害排除請求として長男の引渡しを求めることは、権利の濫用に当たるというべきであるとし、本件申立ては却下すべきものであり、これと同旨の原審の判断は、結論において是認することができるとして、抗告を棄却した事例(補足意見がある)。