注目の判例

会社法

2015.03.03
損害賠償請求事件 (アートネイチャー株主代表訴訟 株主側逆転敗訴)
LEX/DB25447074/最高裁判所第一小法廷 平成27年 2月19日 判決 (上告審)/平成25年(受)第1080号
上告補助参加人(一審被告補助参加人)の株主である被上告人(一審原告)が、上告補助参加人の取締役であった上告人(一審被告)らに対し、平成16年3月の本件新株発行における発行価額は商法280条ノ2第2項(平成17年法律第87号による改正前のもの)の「特ニ有利ナル発行価額」に当たるのに、被告らは同項後段の理由の開示を怠ったから、商法266条1項5号の責任を負うなどと主張して、商法267条に基づき、連帯して22億5171万5618円及びこれに対する遅延損害金を被告補助参加人に支払うことを求めた株主代表訴訟で、第一審では、被上告人の請求を一部認容、一部棄却したため、双方が控訴し、原審では、第一審判決は相当であるとして、本件双方の各控訴を棄却し、被上告人が当審で拡張した請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件新株発行における発行価額は「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないというべきであるとして、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人ら敗訴部分は破棄し、上記部分に関する被上告人の請求はいずれも理由がないから、同部分につき第一審判決を取消し、同部分に関する請求をいずれも棄却した事例。
2015.03.03
株主総会決議取消請求事件
LEX/DB25447075/最高裁判所第一小法廷 平成27年 2月19日 判決 (上告審)/平成25年(受)第650号
被告(被控訴人・上告人)の株主である原告(控訴人・被上告人)らが、被告の臨時株主総会で行われた決議について、準共有株式について権利行使者の定めがなく、準共有者間においても権利行使を認めたこと等の決議方法について法令違反の瑕疵があるなどと主張して、その取消しを求めたところ、請求が棄却されたため、原告らが控訴し、控訴審では、会社法106条ただし書きを、会社側の同意さえあれば、準共有状態にある株式について、準共有者中の1名による議決権の行使が有効になると解することは、準共有者間において議決権の行使について意見が一致していない場合において、会社が、決議事項に関して自らにとって好都合の意見を有する準共有者に議決権の行使を認めることを可能とする結果となり、会社側に事実上権利行使者の指定の権限を認めるに等しく、相当とはいえないとして、第一審判決を取り消し、原告らの請求を認容したため、被告が上告した事案において、本件議決権行使は、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられているものとはいえず、民法の共有に関する規定に従ったものではないから、被告がこれに同意しても、適法となるものではないとし、本件各決議は、決議の方法が法令に違反するものとして、取り消されるべきものであるとして、これと結論を同じくする原審の判断は、是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2015.01.20
損害賠償請求控訴事件(アートネイチャー第三者割当増資に係る株主代表訴訟事件(控訴審))
LEX/DB25505193/東京高等裁判所 平成26年11月26日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第4044号
被控訴人(被告)ら補助参加人の株主である控訴人(原告)らが、補助参加人の取締役会は、補助参加人の取締役又は監査役の地位にある被控訴人らに対し、普通株式を発行して割り当てたが、同第三者割当は「特ニ有利ナル発行価格」(旧商法280条ノ2第2項)による発行に当たるにもかかわらず、その理由を開示しなかった法令違反により、補助参加人が損害を負ったとして、被控訴人らに対し、旧商法266条1項5号に基づく損害賠償金の支払い等を求め、原審が請求を棄却した事案において、控訴を棄却した事例。
2015.01.06
MBO株主代表訴訟事件(シャルレMBOに係る株主代表訴訟事件)
LEX/DB25505137/神戸地方裁判所 平成26年10月16日 判決 (第一審)/平成21年(ワ)第3484号
株式会社シャルレの株主である原告が、同社の取締役である被告らに対し、同社の二段階買収たるマネジメント・バイアウト(MBO)を行うに際し、被告らが利益相反等の善管注意義務違反及び忠実義務違反並びに情報開示義務違反にあたる行為をし、そのために本件MBOが頓挫したことから、同社が無駄な費用を支出し、その信用が失墜したと主張して、会社法432条1項、会社法430条及び会社法847条3項に基づき、連帯して、被告らに対し、同社に損害賠償を支払うことを求めて提起した株主代表訴訟において、本件MBOの実施に当たり被告ら取締役が同社に対して負っている善管注意義務のうち、被告Y1らはMBOの手続的公正さ確保に向けての配慮義務と情報開示義務に違反し、また、被告Y2らは情報開示義務に違反する等と示し、それら義務違反と相当因果関係のある損害額を算出して、原告の請求を一部認容した事例。
2014.12.16
株主総会決議取消等請求控訴事件(オリンパス株主総会決議取消等請求控訴事件)
LEX/DB25505084/東京高等裁判所 平成26年8月6日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第1251号
控訴人(被控訴人の株式200株を有する株主)が被控訴人(オリンパス)に対し、平成23年定時株主総会決議について、不正な計算書類や連結決算書類等の報告を前提として行われたものであって、不存在である旨を主張して、会社法830条1項に基づき、その不存在確認を求めるとともに、平成24年臨時株主総会各決議について、(1)議長が控訴人による会計監査人出席の動議を取り上げなかった、(2)招集に当たって株主に提供された連結計算書類が不正な会計処理を含むものであった、(3)被控訴人の役員の説明に説明義務違反があった、(4)議長が質問を求める株主を無視した、(5)議長が株主の不当な発言を制止しなかったなど決議の方法が著しく不公正なときに当たる旨を主張して、会社法831条1項1号に基づき、その取消しを求めた事案の控訴審において、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却するとした事例。
2014.10.28
損害賠償請求控訴事件(西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題)
LEX/DB25504722/東京高等裁判所 平成26年8月28日 判決 (差戻控訴審)/平成23年(ネ)第6338号
控訴人鉄道会社(被告)の株式を取引市場において取得した者らである被控訴人(原告)らが、控訴人鉄道会社が有価証券報告書等に虚偽記載をして上場廃止事由に該当する事実を隠蔽し、損害を被ったなどと主張して、控訴人ら(控訴人鉄道会社、株を保有していた会社、代表取締役)に対し、不法行為等に基づく損害賠償を請求し、第一審は請求を一部認容し、差戻前の控訴審は、損害額を一部減額して認めたため、被控訴人が上告をし、上告受理申立ては受理され、上告人らの敗訴部分について差し戻された事案において、原判決を変更し、被控訴人の請求を一部認容した事例。
2014.10.28
損害賠償請求控訴事件(TFK株式会社(旧武富士)VSメリルリンチ日本証券)
LEX/DB25504720/東京高等裁判所 平成26年8月27日 判決 (控訴審)/平成25年(ネ)第4770号
控訴人(原告)は、被控訴人(被告)甲社から提案され、スワップ・カウンターパーティーを被控訴人甲社の親会社である被控訴人(被告)乙社とする格付きインデックス連動リミティッド・リコース・担保付固定利付クレジット・リンク債券を300億円で購入したところ、期日前償還事由が発生し、償還され、期日前償還金額は3億円余りとなったことから、控訴人は債券の組成に関し注意義務違反や説明義務違反などがあり、これらにより、控訴人は損害を被ったとして、被控訴人らに対し、共同不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償を請求し、原審が請求を棄却した事案において、原判決を取り消し、控訴人らの請求を一部認容した事例。
2014.10.07
富士通社長解任訴訟(元社長敗訴確定)
LEX/DB25504623/最高裁判所第二小法廷 平成26年7月9日 決定 (上告審)/平成25年(オ)第464号等
被上告人兼相手方会社(被告会社、被控訴人会社)の役員であった被上告人兼相手方(被告、被控訴人)らが、英国のファンドの日本法人の代表取締役との間でかねてより親交を有していた上告人兼申立人(原告、控訴人)に対し、同代表取締役らが反社会的勢力に関与しているとの情報を入手した等虚偽の事実を述べるなどして、被上告人兼相手方会社の代表取締役及び取締役からの辞任を強要し、また、その後、病院やホテルの一室に上告人兼申立人を幽閉した等と主張して、上告人兼申立人が、被上告人兼相手方らに対しては共同不法行為に基づき、被上告人兼相手方会社に対しては会社法350条に基づき、連帯して、損害金の支払いを求めるとともに、民法723条の類推適用に基づき、全国版朝刊社会面に謝罪広告の掲載を求め、第一審及び第二審が請求を棄却した事案において、上告を棄却し、上告審として受理しないとの決定をした事例。
2014.10.07
株主総会無効取消等請求事件(日本工営(株)株主総会無効取消等請求事件)
LEX/DB25504636/東京地方裁判所 平成26年6月12日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第34023号
被告の株主である原告が、被告の本件株主総会において、議長が原告の質問に関する審議を打ち切って、原告の質問権を不当に侵害したなどと主張して、被告に対し、本件総会における取締役選任(再任)決議の取消し、無効確認を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料の支払を求めた事案において、本件決議の取消原因となるべき説明義務違反があるということはできず、また、原告は、被告の有価証券報告書に虚偽の記載がある疑いがあることを理由に、本件決議の取消しを求めるが、そもそも有価証券報告書の虚偽記載が本件決議の取消事由となるということもできないと示し、その他、本件決議に無効事由があるとする原告の主張も斥けて、原告の請求を棄却した事例。
2014.08.12
各損害賠償請求控訴事件(西武鉄道事件)
LEX/DB25504317/東京高等裁判所 平成26年6月25日 判決 (差戻控訴審)/平成24年(ネ)第1055号
一審原告ら(上告人)が、一審被告(被上告人)S社がその有価証券報告書等に虚偽記載をし、また、S社株式を所有していたK社においてその虚偽記載に積極的に関与したため、S社株を取得した一審原告らにおいてS社株の上場廃止に伴って損害が生じたと主張して、S社、K社を吸収合併した一審被告P社、S社及びK社の代表取締役であった一審被告Tに対して、損害賠償を請求した事案の差戻控訴審において、虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、取得価額と処分価額の差額を基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価格の下落分を上記差額から控除して算定すべきであるとした上で、民事訴訟法248条を適用して相当な損害額を認定した事例。
2014.07.29
貸金業者登録拒否処分取消等請求事件
LEX/DB25446516/最高裁判所第二小法廷 平成26年7月18日 判決 (上告審)/平成24年(行ヒ)第459号
貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である被上告人が、大阪府知事に対し貸金業登録の更新の申請をしたところ、大阪府知事から、被上告人の監査役が執行猶予付き禁錮刑の判決を受けており、被上告人は法人の役員に貸金業法6条1項4号に該当する者のあることを貸金業登録の拒否事由及び取消事由とする旨を定める同項9号及び貸金業法24条の6の5第1項1号に該当するとして、上記申請を拒否する旨の処分及び貸金業登録を取り消す旨の処分を受けたため、監査役は貸金業法6条1項9号の役員に含まれず、被上告人は同号及び同法24条の6の5第1項1号のいずれにも該当しないなどと主張して、本件拒否処分及び本件取消処分の取消し等を求めた事案の上告審において、貸金業法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれないから、被上告人の監査役が同号の「役員」に該当するものとしてされた本件拒否処分及び本件取消処分は、いずれも違法というべきであるとし、上記各処分の取消請求を認容した原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2014.07.29
新株発行差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25504116/東京高等裁判所 平成26年5月29日 決定 (抗告審)/平成26年(ラ)第1064号
相手方(債務者)の株主である抗告人(債権者)が、相手方が取締役会の決議に基づく本件新株発行(普通株式900万株の募集株式の発行)が会社法210条に定める法令違反又は著しく不公正な方法による発行に当たるとして、本件新株発行の差止を求めた事案の抗告審において、本件新株発行が有利発行に当たり、また、不公正発行に当たると認めることはできないとして、抗告を棄却した事例。
2014.07.08
株主総会決議取消請求事件(第1事件、第2事件)(アムスク株主総会決議取消請求事件)
LEX/DB25503895/東京地方裁判所 平成26年4月17日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第19050号等
原告Aが、被告の本件定時株主総会及び本件種類株主総会における決議について、本件定時株主総会の1号議案に係る配当が会社法120条に違反するなどとして、会社法831条1項に基づき、本件定時株主総会の第2号議案に係る決議のうちHを取締役に選任する旨の決議、両総会における本件全部取得決議を可決する旨の決議の取消を求め(第1事件)、原告BないしGが、主位的に会社法831条3項に基づき、1号議案及び2号議案を可決する旨の決議、本件全部取得決議を可決する旨の決議の取消を求め、予備的に会社法830条1項又は2項に基づき、決議の不存在又は無効確認を求めた(第2事件)事案において、本件種類株式総会の開催前において、被告の定款には、種類株主総会にこえる議決権行使に係る基準日の定めはなかったというのであるから、本件種類株主総会の議決権行使については、会社法124条3項ただし書は適用されないといわざるを得ず、そうすると、被告は、同種類株主総会の議決権行使に係る基準日を定めるためには、その2週間前までに当該基準日を設定する旨の公告をする必要があったにもかかわらず、その旨の公告をしていなかったというのであるから、同種類株主総会の議決権行使に係る基準日の公告は会社法124条3項に違反するとして、本件全部取得決議を取り消し、その余の請求は棄却した事例。