2021年7月号Vol.123

【行政デジタル化先進事例】大阪府堺市に聞く「ICTを使いこなす自治体」への変革に挑む

大阪府堺市は昨年8月、市民サービスの向上や行政運営の効率化を加速させるため、
『堺市ICT戦略』を策定した。ここで掲げたのは〈ICTを使いこなす自治体〉への変革だ。
その取り組みについて、堺市ICTイノベーション推進室の安野 勝室長に聞く。

住所
堺市堺区南瓦町3番1号
電話
072-233-1101
面積
149.83平方キロメートル
人口
823,290人(2021年6月1日現在)

──堺市では昨年、『堺市ICT戦略』を策定されました。

堺市ICTイノベーション推進室 室長 安野 勝 氏

堺市ICTイノベーション推進室 室長 安野 勝 氏

安野 堺市では、2019年度にICTの活用により〈市民サービスの向上〉や〈行政運営の効率化〉を図るため、戦略等を検討するプロジェクトチームを設置しました。20年2月、その目標達成に向けてICTをどのような理念でどのように活用していくのかという“道筋”を示す『堺市ICT戦略骨子(案)』をまとめ、先導役として同年4月に市長直轄の組織「ICTイノベーション推進室」を発足しました。さらに、ICTの活用に関する全庁的な決定や進捗管理を行うため、市長をトップに、副市長と各局局長で構成される「堺市ICT戦略推進本部会議」も設置しました。
 そして昨年8月、『堺市ICT戦略』を策定しました。
 戦略では〈ICTを使いこなす自治体〉へと変革するため、①デジタルファーストの推進、②新たな技術とデータの積極活用、③業務プロセス・システムの標準化、④ICTリテラシーの向上、⑤情報セキュリティの強化──の五つの戦略に基づいた取り組みを掲げています。

「相談会」で各課の取り組みを支援

──デジタルファーストの推進ということでは先頃、電子申請システムを再構築されるなど、行政手続きのオンライン化へ取り組みを着実に進められています。

安野 行政手続きのオンライン化に向けては、ICTイノベーション推進室を設置して以来、積極的に職員の意識醸成や各種手続きの現状把握などに取り組んできました。また、昨年11月には、市に提出される申請書等への押印の廃止も行われたことから、それに伴い可能となった手続きのオンライン化を全庁に依頼しました。
 さらにサービス基盤ということでは、かねてより市民にも職員にも分かりやすく、またスマートフォンからも利用しやすい新たな電子申請システムの整備が必要と考えていました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で〈お越しいただかない〉市役所の実現が急務となったこともあり、LGWAN-ASPサービスの採用を前提として急きょ導入準備を進めました。その結果、「TASKクラウド スマート申請システム」を採用して、今年4月1日から新たな「堺市電子申請システム」のサービスを開始しています。
 加えて、堺市ではオンライン化を一段と加速させる工夫として、所管課の取り組みを支援する「相談会」を開いています。これは単に各課へオンライン化を要請するだけではなく、「どうやったらできるのか」についてICTイノベーション推進室も一緒に考えて、伴走していこうというものです。これにより、全庁的な取り組みのスピード化を図ります。

──なるほど。相談会というのは面白い試みですね。

安野 そうした行政手続きのオンライン化を進める一方で、ICTに不慣れな方や利用する環境が整っていない方もデジタル化の恩恵を受けられる仕組みづくりも必要です。そこで、窓口対応でもICTを活用し〈お待たせしない、お書きいただかない〉サービスへ取り組みます。「デジタルファーストの推進」と「デジタルデバイドへの対応」を両輪で進めることで、全ての市民や事業者に“誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル社会”を実感していただけるのではないでしょうか。
 なお、窓口対応のデジタル化については、「TASKクラウドかんたん窓口システム」を活用して、今年5月から南区役所において「おくやみ申請サポートコーナー」のモデル実施をスタートしたところです。これにより、経験や知識に関わらず全ての職員が必要な手続きを適切に案内できるようになるとともに、市民の方や事業者の方の申請書の記入にかかる負担軽減にもつながると考えています。

社会情勢の変化にも柔軟対応

──今後の計画をお聞かせください。

現地に現存する日本最古の木造洋式灯台「旧堺燈台」

現地に現存する日本最古の木造洋式灯台「旧堺燈台」

安野 今年5月に開催した「堺市ICT戦略推進本部会議」で、法令などでオンライン化できない手続きを除き、25年度末までに全ての手続きをオンライン化する方針を示しました。
 各局ではオンライン化の難易度が低いものについては22年度末までの実現を目指し、そのための『行政手続きオンライン化推進計画』を策定する予定です。特に年間利用件数が多い手続きについては、早期実現を目指して、ICTイノベーション推進室も積極的に支援していく方針です。
 また、堺市電子申請システムでは利用者サービスの向上を図るため、クレジット収納など電子決済への対応など機能強化を予定しています。
 さらに、窓口のデジタル化では死亡関連以外の手続きにも適用範囲を広げることを検討しております。
 ICTを取り巻く環境は日々進化し、社会情勢も急激に変わり続けています。そうした変化にも柔軟に対応しながら、全庁で一丸となって、これからも〈市民サービスの向上〉と〈行政運営の効率化〉の実現に向け、着実に歩みを進めていきたいと考えています。

〈大阪府堺市南区役所〉人にやさしい「スマート区役所」始動

──現在、「スマート区役所」に向けた取り組みを進めていると伺いました。

区政企画室 主幹 内山貴史 氏

区政企画室 主幹 内山貴史 氏

内山 堺市では、区役所の機能強化を図るとともに地域特性に応じた特色ある行政を進めています。その一つが、南区で令和2年度からモデル区として取り組んでいる「スマート区役所」です。
 スマート区役所について、私たちは〈ICTなど先端技術の導入と、全ての人にとってやさしい空間の創造により、安全・安心で高機能な区民サービスを提供する未来型区役所〉と定義しています。推進にあたっては、①窓口におけるデジタルファースト「お待たせしない」「お書きいただかない」「お越しいただかない」を推進する、②デジタルに不慣れな方を含め、全ての人にわかりやすく、「やさしい区役所」をめざす、との二つの基本的方針を掲げました。
 実は、南区は整備から50年以上経過した泉北ニュータウンを有しており、人口減少・高齢化の進行、住宅や道路などの老朽化などさまざまな課題が顕著となっています。スマート区役所は、ICTを活用して、これらの地域課題の解決を図るとともに、区民の利便性向上と行政サービスの質の向上を実現していこうというものです。

5月に、おくやみ申請サポートを開始

総務課 課長補佐 上山夏枝 氏

総務課 課長補佐 上山夏枝 氏

総務課 参事役(都市内分権推進・市民相談担当) 田所明子 氏

総務課 参事役(都市内分権推進・市民相談担当)
田所明子 氏

上山 窓口におけるデジタルファーストの取り組みの一つが、今年5月から開始した「おくやみ申請サポートコーナー」です。死亡関連手続きは多岐にわたり、これまではご遺族が訪れた窓口で「次に何の手続きをすればいいか」など一つずつ確認しながら手続きをする姿も見られましたが、サポートコーナーを設置したことで、こうした状況が改善されました。
 受付の流れは、ご遺族の方に質問に答えていただき、その結果から必要な手続きを絞り込み、それらの申請書と手続き案内票を印刷してお渡しします。申請書には亡くなった方や申請者の名前が印字されているので、これらを記入する手間を軽減します。また、ご遺族は案内票に従って迷わず手続きを進めることができます。
 現在、インターネットか電話で事前予約を受け付けていますが、直接お越しいただいてもご利用いただけます。これらにより、スマート区役所が目指す〈お待たせしない・お書きいただかない〉窓口サービスの一端を、区民に実感していただけるのではないかと考えています。
 サービスを開始したばかりですが、利用者アンケートの結果を見るとほぼ満足していただいているようで、また職員からも「必要な手続き案内がスムーズにできる」と好評を得ています。

田所 これまでは手続き漏れにより、ご遺族の方に再度来庁していただくこともありました。
 独立したコーナーを設けたことで、必要書類の確認に加えて、分からないことなどもゆっくり落ち着いて相談いただける環境が整ったと感じています。〈不安の解消〉は目に見えるものではありませんが、これも一つの成果だと感じています。

対面&デジタルで進める窓口改革

──おくやみ手続き支援の場合、専用窓口がワンストップで受け付ける方式と、各課で対応する方式の二択がありますが。

大阪府堺市

上山 用者視点で考えれば、ワンストップで全ての手続きが完結するのが理想です。ただ、そのためには集約するスペースの確保や、関係部署が別々に構築しているシステムの連携が課題となります。この点、南区では「だから、難しい」と考えるのではなく、区民サービス向上のために「どう実現するか」を考えた結果、各課で対応する現行の方式を選択しました。

──今後の計画は。

内山 〈お待たせしない〉ということでは、来庁予約の推進や混雑状況の可視化などに取り組む計画です。
 また、〈お書きいただかない〉では、おくやみ申請サポートコーナーの経験を生かし、子育て関連の申請など他の窓口サービスでもかんたん窓口システムを活用していきたいと考えています。昨年度、試験的に認定こども園の入所受け付けでもシステムを活用したのですが、申請にかかる区民の手間や時間の削減、職員の確認作業の軽減につながることが分かりました。
 さらに、〈お越しいただかない〉としては電子申請の拡充が挙げられます。ただ、行政手続きのオンライン化が進んでも窓口対応がなくなるわけではありません。対面とデジタルのベストミックスにより、区民の利便性やサービスのさらなる向上を目指します。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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