事務所経営

「年度重要テーマ研修2023」開催レポート(川越会場・岡山会場)

「年度重要テーマ研修2023」が10月から12月にかけて全国各地で開催されている。「未来に挑戦するTKC会計人 巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」をテーマとして、高付加価値経営を実現する全国25名の選抜講師が「事務所経営を本音で語る」基調講演を中心とするプログラムとなっている。10月に行われた川越会場と岡山会場の模様をレポートする。

関東信越会 川越会場
わが事務所の未来への挑戦──ドンキホーテに憧れて理想を生きる
講師:小形剛央会員(神奈川会)

■とき:令和5年10月24日(火) ■ところ:ラ・ボア・ラクテ

 川越会場には、TKC関東信越会埼玉西支部(小林聡一支部長)の会員・職員計69名が参加した。

 冒頭、小林支部長から、「本日の年度重要テーマ研修は単なるテクニックやツールの紹介ではなく事務所経営の方向付けを考えるための内容となります。ぜひ、明日からの事務所経営に役立てていただきたい」との挨拶があった。

 続く基調講演では、神奈川会の小形剛央会員が講師を務め、飯塚毅TKC全国会初代会長の言葉を多く引用しながら、「月次巡回監査の断行」を中心に据えた自らの事務所経営を、熱く語った。

TKC理念から徹底的に学び承継を機に事務所を成長軌道に

小形剛央会員

 先代所長の小形文夫はTKC神奈川会会長などを歴任し、TKC全国会が目指している事務所を作り上げました。

 しかしながら事務所はその後、安定志向になり、関与先数、職員数ともに減少傾向に転じていきました。2013年8月に事務所のメンバーに加わってから「第二創業」ととらえ、事務所を成長軌道に乗せてきました。入所当時と比較すると、五つ星企業は約1.8倍、売上高は約1.7倍となっています。これは、「経済的裕福」だけでなく「真の自利利他の追求」を目的として「より多くの中小企業をTKC方式で支援すること」に事務所全体で取り組んできた結果だと考えています。

 その上で、飯塚毅初代会長の著作、講演等から徹底的に学び、TKC全国会の理念を追求してTKC方式の業務を徹底することを事務所の方針としています。飯塚毅初代会長は『TKC会報』1979年11月号の巻頭言「ドンキホーテの論理」で、「わたくしは、自分がドンキホーテなのかな、と思うときがあります。それで結構です」と述べられております。私もそのように理想を追求していきたいという考えです。また、事務所経営においては、最新の経営学を取り込むことを意識しており、事務所全体で行動するときは「Why」から始めることを徹底しています。

関与先や職員の幸せに巡回監査の断行が欠かせない

 月次巡回監査は「税理士の4大業務」を実施するための基盤であり、事務所経営の中心ととらえています。飯塚毅初代会長の著作や『TKC会計人の行動基準書』をもとに、所内で巡回監査の意義を浸透させています。職員を「事務屋さん」にするのか、関与先を支援できる「アドバイザー」にするのか、関与先や職員の幸せを考えたときに、「巡回監査の断行」は欠かせません。

 今後のビジョンと戦略としては、2030年に売上高10億円を目指しています。『TKC基本講座(第5版)』を事務所全員で熟読・熟考・実践する集団とすることを具体的戦略として、TKC方式による関与先拡大を実現し、成長し続ける事務所でありたいと考えています。

(TKC全国会事務局 松田信之)

中国会 岡山会場
TKCのど真ん中を走り続ける!いつまでも誇れる仕事にするためには
講師:宮下直樹会員(北海道会)

■とき:令和5年10月27日(金) ■ところ:TKPガーデンシティ

 岡山会場には、TKC中国会岡山県支部(江見匡史支部長)の会員・職員62名が集った。冒頭、江見支部長が、「本日の講演は『TKCのど真ん中を走り続ける』というテーマです。変化の時代の今こそ、あらためてこの意義を確認し、明日からの事務所経営に一つでも取り入れ実践していきましょう」と呼びかけた。続いて北海道会の宮下直樹会員が基調講演を行った。

TKCシステムに統一したことで事務所の方向性を明確にできた

宮下直樹会員

 開業当時の目標は、とにかく3年で100件の関与先を獲得すること。そのためにシステムにもこだわらず記帳代行でも何でも引き受けて、やみくもに関与先を増やしました。その結果、自分一人では関与先を回りきれなくなり、スタッフを採用しましたが、多忙を理由に育成できずに3カ月で退職されるという苦い経験をしました。

 これをきっかけに、複数スタッフの同時採用やスタッフの業務効率を上げるために、システムをTKCに統一して研修会を積極的に活用するなど、所内の管理を考えて事務所経営をするようになりました。TKCシステムに統一したことで、事務所が目指すべき方向とTKC全国会の結成目的が合致していることや経営理念の重要さに気づくことができました。

 事務所経営においては、関与先や事務所スタッフを正しい方向に導ける経営理念、経営計画が非常に重要です。そのために、所長自ら研鑽を重ね、常に成長し続ける必要があります。また、事務所の経営基盤強化のためには、関与先拡大とスタッフの採用・教育を同時に進めるとともに、事務所拡大にあわせた組織づくりをしなければなりません。

 事務所経営を続けていくかぎり、その時々で悩みが尽きることはないでしょう。私も今まで数多くの悩みを抱えてきましたが、会務を通じて出会えた全国のTKC会員や、TKC全国会の運動方針によって、ぶれずに歩みを進めてくることができたと考えています。尊敬する先輩会員に「TKCをしっかりやることが差別化につながる!」と言われたことを鮮明に覚えています。その言葉を信じて私は今までもこれからも「TKCのど真ん中」を進んでいきたいと強く願っています。それが事務所成功への道となるはずです。

長の基盤となるのはFXクラウドによる自計化推進

 2023年の事務所活動の目的は、①中小企業の永続的発展の支援、②事務所の経営基盤の強化および従業員満足度の向上、③TKC全国会の運動方針の履行──の3点です。

 この目的を達成するには、事務所規模の拡大が欠かせません。そこで、2031年までにスタッフ20名、売上高3億円を目標に掲げています。この理由は、関与先数の増加によって多くの方に私たちのサービスを体験してもらい、信頼され感謝され、結果として税理士業界全体の地位向上を図るためです。事務所体制の構築、各人の業務負担の軽減のほか、一企業として地域社会へ貢献することが社会的使命であると考えています。

 そのための所長の仕事とは、経営者として関与先拡大に努め、所内の管理を行い、より一層の事務所体制の充実を図ることです。また、数値目標だけでなく、「なぜやるのか」という目的を明確に伝えることも重要です。

 近年、OMSやFXクラウドシリーズ、充実したオンデマンド研修の活用により、スタッフの残業は減少し有給休暇の取得率も向上しています。すべての基盤となるのはFXクラウドによる自計化です。自計化できなければ業務の標準化は図れません。

 いま、自計化は、打つ(入力する)時代から読む時代へと変化しています。銀行信販データ受信機能や証憑保存機能をフル活用して仕訳を読む仕組を構築することで効率化を実現できます。また、自計化の目的は単に社長に簿記を理解してもらうことではなく、適時正確な会計帳簿を基に正しい経営判断が行える体制を構築することです。

 一緒にTKCのど真ん中を進み(まさに一気通貫)、巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援していきましょう。

(TKC全国会事務局 高須亮二)

(会報『TKC』令和5年12月号より転載)