事務所経営

テキスト『インボイス制度に対応した巡回監査のポイント』を活用しよう!

TKC全国会巡回監査・事務所経営委員会 巡回監査率向上小委員長 岩河 剛

インボイス制度に対応するための「実務家にとっての解説書」

 インボイス制度の開始後、巡回監査の現場において、関与先へどのような指導をするか、どのように証憑や仕訳の正確性をチェックするか悩まれていませんか?
 実際にインボイス制度が始まり数カ月が経過し、巡回監査の現場では関与先と共に実務対応に四苦八苦され、月次巡回監査の時間も増加しているという話を耳にします。
 関与先がインボイス制度に対応して日々の業務を行い、また、会計事務所が巡回監査をスムーズに完了するためにはどうすればよいのか。関与先が「適法な書類(インボイス)」を「適法に交付・取得・保存」できるように私達が指導すること、これが重要です。
 そのような現場対応のために、実務家である会員および職員の皆さんへ向けて解説したテキストが『インボイス制度に対応した巡回監査のポイント』(TKC出版)です。昨年末にTKCより1事務所につき5冊ずつ贈呈されました。
 当テキストは全4章構成となっています。まずは自分でインボイス制度を理解し、次に関与先にも制度を理解・対応してもらうためのコミュニケーションを行い、最後に現場で指導やチェックをするという、実務家の物事の考え方の自然な流れ(ストーリー)を意識して作成した理解しやすい内容となっています。

「インボイスの監査項目」の要点を学び初めてでも現場でしっかり対応できる

 第1章「インボイス制度のおさらいと実務への影響」では、実務的に話題となりやすい論点を取り上げていますので、まずはご自身の知識の復習や整理にお役立てください。
 はじめに、請求書等がインボイスに該当するか否かという「インボイスの要件」を確認します。その上で、仕入税額控除に必要なインボイスの保存が免除され、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「例外取引」を整理しています。また、インボイス制度の開始にあたり導入された様々な「経過措置」のうち、主なものについて、その内容・適用可能な対象者・適用期間を整理するとともに、判定金額やTKCシステムにおける対応についても確認しています。
 第2章「チェックリストを使った『関与先インボイス対応』ヌケ・モレチェック!」では、関与先が「適法な書類(インボイス)」を「適法に交付・取得・保存」できるように、会計事務所として伝えるべき項目をチェックリストとしてまとめています。
 あわせて、どのように関与先へインボイス制度を伝達するかというコミュニケーション方法も紹介しています。関与先へ伝達する内容のみならず、事前準備の方法なども紹介しており、「実務家にとっての解説書」として利用いただけます。
 第3章「インボイスの監査項目と留意点」では、巡回監査で実施する監査手続きを紹介しています。
 この章は、会員および職員の皆さんが巡回監査を実施するにあたり、必ず事前に一読していただきたい箇所になります。なぜなら、現場で関与先から提示された証憑等に、どのような監査手続きをとるべきかについて列挙されており、インボイスに対する監査手続きが初めてであっても、現場でうろたえることなく堂々と対応できることが期待できるからです。
 当テキストを効果的に使うには、事務所内で読み合わせをして、意見交換や事例の共有をすることが有効です。そうすることで、より理解が深まり、巡回監査に対して心のゆとりを持つこともできるでしょう。ぜひ職員一人につき1冊用意して、所内研修等にご活用ください(サプライネットショップから追加購入可能。会員価格税込み715円、品番56367)。
 第4章「こんなときどうする!? 実務Q&A」では、インボイス制度に関連して実務で判断に迷うことが想定される具体的取引事例について、法令や国税庁から公表されている資料をもとに、対応の一例を紹介しています。この事例を通じて会員および職員の皆さんが実務家として現場で判断に迷うことが一つでも少なくなれば幸いです。
 また、巻末資料には「FXクラウドシリーズ仕訳入力時のメッセージ等一覧」を掲載しています。TKCシステムの確認メッセージやエラーメッセージへの対処も事前に予習して巡回監査に臨むことができますので、ご一読ください。

会計事務所の品質向上・提供サービスの向上につなげよう!

 『インボイス制度に対応した巡回監査のポイント』を活用し、円滑にインボイス制度に対応できれば、いつまでもインボイス制度対応に時間を取られることがなくなります。さらに、関与先の書類保存能力や記帳能力の向上が期待でき、関与先に対する記帳指導時間も削減できます。その結果、効率的な巡回監査が可能となり、分析的手続きなどの、今まで取り入れることのできなかった手続きの実施や、関与先が望む経営助言等のために時間をかけられるようになるでしょう。
 インボイスを単なる制度対応にとどめずに、会計事務所の品質・提供サービスの向上につなげるきっかけにできるよう、ぜひ『インボイス制度に対応した巡回監査のポイント』を活用しましょう!

 また、当テキストを解説するオンデマンド研修「インボイス制度に対応した巡回監査のポイント」をProFITで配信中です。オンデマンド研修では、第2章・第3章の内容を中心に、実務面のポイントを詳しく解説しています。こちらもあわせてご視聴ください。    

(会報『TKC』令和6年2月号より転載)