職場での熱中症対策が6月1日に義務化されたと聞きました。どのような備えが求められるのでしょうか。(造園工事業)
気象庁発表による2024年夏(6〜8月)の平均気温偏差(1991年~2020年の30年間を基準とした偏差)は+1.76度と、23年と並び最も高い値となっており、近年の気温上昇は職場における熱中症の発生に影響を強く及ぼしています。
職場における熱中症による死傷者数(熱中症による死亡者と休業4日以上の業務上疾病者の数)の状況(厚生労働省25年1月7日時点の速報値)によると、24年の死傷者数は1,195人で、うち30人が死亡者です。死亡者数は22年以降、3年連続で30人以上という状況です。死傷者数を月別にみると、全体の約8割が7月と8月に発生しているため、これからの時期はより一層注意する必要があります。
このような状況を踏まえ、労働安全衛生規則の改正が行われ、25年6月1日から施行されています。死亡ケースのほとんどが、「初期症状の放置」と「対応の遅れ」が原因であることから、死亡災害を未然に防ぐための「体制の整備」「手順の作成」「関係者への周知」が義務化されました。違反者には、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、法人に対しても50万円以下の罰金が科されます。
フロー図などの活用を
熱中症の初期症状を放置させないためには、自身や周りの人たちが、身体に現れるささいな違和感(めまい、頭痛、吐き気、ふらつき、生あくび、大量の発汗、手足のつり、けいれんなど)にいち早く気づき、その異変を伝える必要があります。熱中症の自覚症状がある人や熱中症のおそれがある人を見つけた人が、報告するための体制(緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先と所在地など)を事業場ごとに定め、周知する必要があります。
また、熱中症のおそれがある人を把握した場合に、すばやく的確な判断ができるよう、熱中症の症状悪化を防止するための処置の流れ(作業からの離脱、身体の冷却、意識の異常等の確認、医療機関への搬送が必要なのか、経過観察で様子を見るのかなど)をフロー図等で示し、周知することも必要です。外国人労働者が多い事業所などでは、多言語で対応したり、アイコンやピクトグラム、写真やイラストを活用してもよいでしょう。
周知方法は、朝礼やミーティング、メール、イントラネットによる伝達、社内掲示などが考えられます。死亡事案のほとんどは救急搬送前後に発生しています。身体に異変を感じたときは我慢することなく、すぐに報告できる環境づくりが大切です。今回対象となるのは「WBGT値(暑さ指数)が28以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」ですが、熱中症は屋外作業のみならず、屋内作業でも発生します。重篤化すると死に至ることを常に意識し、一人一人が安全に過ごせるよう事業所全体で取り組みましょう。