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2020.09.01
LEX/DB25566315/最高裁判所第二小法廷 令和 2年 6月 8日 決定 (特別抗告審)/令和2年(し)第524号
殺人被疑事件について、勾留及び接見等禁止の各請求に関し、令和2年5月30日富山地方裁判所がした各準抗告棄却決定に対し、検察官から特別抗告の申立てがあった事案において、本件各抗告を棄却した事例。
2020.09.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25565753/宇都宮地方裁判所 令和 2年 4月16日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第651号
被告厚生農業協同組合連合会の開設する被告病院に入院し、腰部脊柱管狭窄症に対する後側固定手術を受けたq4が、その後に死亡したところ、本件患者の相続人である原告らは、本件患者が血栓性疾患又は播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症して、これらの症状の悪化により死亡したものであり、被告病院の医師らは、術後管理としてDICの発生防止措置を取る義務等があるところ、それを怠ったものであると主張して、不法行為(民法715条)ないし債務不履行に基づく損害賠償請求として、被告に対し、それぞれ賠償金及びその遅延損害金の支払を求めた事案で、本件患者は、DICを発症したことにより、本件患者の頭蓋内に出血・血栓を生じたことで、脳ヘルニアを生じ、死亡に至ったものと認めることが相当であり、被告において、発症当日、本件検査を行い、DICに対応する治療を行っていれば、本件患者が以降もなお生存していたと認めることができるから、被告には過失があったといえるとして、原告らの請求を認容した事例。
2020.08.25
財産分与審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25570986/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 8月 6日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第16号
抗告人が、相手方に対し、財産の分与に関する処分の審判を申し立てたところ、原審は、抗告人名義の本件建物等の財産を相手方に分与しないものと判断した上で、抗告人に対し相手方への209万9341円の支払を命じたが、家事事件手続法154条2項4号に基づき相手方に対し抗告人への本件建物の明渡しを命ずることはしなかったため、抗告人が許可抗告した事案で、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき、当該他方当事者に分与しないものと判断した場合、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは、家事事件手続法154条2項4号に基づき、当該他方当事者に対し、当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当であり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2020.08.25
損害賠償(交通)請求事件
LEX/DB25566391/千葉地方裁判所佐倉支部 令和 2年 6月15日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第407号
原告が、被告に対し、被告運転の自家用普通乗用自動車(被告運転車両)と、原告運転の原動機付自転車(原告運転車両)とが衝突した交通事故により、原告は傷害を負い、自動車損害賠償保障法施行令別表第2の後遺障害等級併合7級の後遺障害が遺ったと主張して、自賠法3条及び不法行為に基づき、損害賠償金及び確定遅延損害金合計7163万1887円の支払及びうち5559万7133円に対する平成30年6月26日から支払済みまでの間の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案において、本件事故については、原告、被告共に過失があり、原告と被告の過失割合は、原告30-被告70としたうえで、原告の請求は、3593万3567円に平成30年6月25日までの確定遅延損害金919万2912円を加算した4512万6479円及びうち3593万3567円に対する平成30年6月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求を認める限度で、請求を一部認容した事例。
2020.08.18
準強制わいせつ被告事件
LEX/DB25566316/東京高等裁判所 令和 2年 7月13日 判決 (控訴審)/平成31年(う)第624号
非常勤の外科医として勤務する被告人は、執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者A(当時31歳)が同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し、同人にわいせつな行為をしようと考え、病室で、ベッド上に横たわる同人に対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首を舐めるなどし、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたというもので、原判決が被告人に無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、Aが麻酔からの覚醒時のせん妄状態にあった可能性があるなどとし、その原審証言の信用性に疑義を差し挟む余地が広がり、これと独立した、証明力の強い、Aの原審証言の信用性を補強する証拠が必要であるとした点、本件アミラーゼ鑑定及び本件DNA定量検査について、信用性があるとしても証明力が十分であるとはいえないとした点は、論理則、経験則等に照らして不合理であり、Aの原審証言の信用性や、これを支える証拠の評価を誤ったものであって、是認することができないとし、被告人は、Aに対し、本件公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたことが認められるのに、これが認められないとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、破棄をし、被告人を懲役2年に処した事例。
2020.08.18
未払賃金等請求事件
LEX/DB25566310/横浜地方裁判所 令和 2年 6月25日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第4303号
引越関連事業を主な事業とする被告会社との間で雇用契約を締結し、勤務していた原告らが、被告会社に対し、(1)各未払残業代、(2)被告会社に引越事故責任賠償金名目で負担させられた金員について、法律上の原因を欠く旨主張して、不当利得に基づき、原告aが24万9500円、原告cが37万1500円、原告bが26万4500円の各返還、(3)原告a及び原告bが、未払の通勤手当がある旨主張して、雇用契約に基づき、未払の通勤手当として、原告aが38万3120円、原告bが13万円の各支払、(4)原告cが、被告会社からは業務用携帯電話の支給がなく、個人で業務専用の携帯電話を使用していたが,この携帯電話料金は被告会社が負担すべきであると主張して、不当利得に基づき、4万9563円の返還、(5)労働基準法114条に基づき、本件提訴日である平成29年10月10日から2年以内の上記未払割増賃金等と同額と原告らが主張する付加金(原告aにつき38万2696円、原告cにつき56万3629円、原告bにつき52万1953円)の支払、(6)原告らが、原告らは被告組合に加入しておらず、組合費の控除について同意していないのに、賃金から組合費の控除が行われ、これが被告組合に支払われていたと主張して、被告会社に対しては、雇用契約に基づき、未払の賃金として、平成27年3月分以降に賃金から控除された金員(原告aが1万7000円、原告c及び原告bが各2万4000円)の支払等を求め、被告組合に対しては、不当利得に基づき、入社時から退職時までに賃金から控除されて被告組合に支払われた金員(原告aが5万3000円、原告cが7万3000円、原告bが4万8000円)の各返還の支払等を求めた事案で、原告らの被告会社に対する請求は、請求額を減額した内容で一部認容し、原告らの被告会社に対するその余の請求及び被告組合に対する請求については棄却した事例。
2020.08.11
有印私文書偽造,同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25570972/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月30日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1528号
被告人が、別居中の当時の妻が使用する自動車にGPS機器をひそかに取り付け、その後多数回にわたって同車の位置情報を探索して取得した行為は、ストーカー規制法2条1項1号の「通常所在する場所」の付近における「見張り」に該当しないとして、控訴審判決は、上記行為に同号を適用した第1審判決には法令適用の誤りがあるとしたため、検察官が上告した事案において、ストーカー規制法2条1項1号の「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、機器等を用いる場合であっても、特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものであるとし、「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができるとし、刑訴法410条2項により、引用の判例(福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決)を変更し、原判決を維持するのを相当と認め、所論の判例違反は、結局、原判決破棄の理由にならないとして、本件上告を棄却した事例。
2020.08.11
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和2年10月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570973/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月30日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1529号
被告人が、被害者が使用している自動車にGPS機能付き電子機器を密かに取り付け、同車の位置を探索して被害者の動静を把握した行為について、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反で、被告人が、共犯者と共謀の上、多数回にわたり、元交際相手が使用している自動車にGPS機器をひそかに取り付け、同車の位置を探索して同人の動静を把握した行為は、ストーカー規制法2条1項1号所定の「見張り」に該当しないのに、これに該当するとした第1審判決には法令適用の誤りがあると控訴審判決が判断したため、検察官が上告した事案において、ストーカー規制法2条1項1号の「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、機器等を用いる場合であっても、特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものであるとし、「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができるとし、刑訴法410条2項により、引用の判例(福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決)を変更し、本件を第1審裁判所に差戻した原判決を維持し、本件上告を棄却した事例。
2020.08.04
発信者情報開示請求事件
LEX/DB25570963/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 7月21日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1412号
本件写真の著作者である被上告人(控訴人・原告)が、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)のウェブサイトにされた投稿により本件写真に係る被上告人の氏名表示権等を侵害されたとして、ツイッターを運営する上告人(被控訴人・被告。米国法人)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、上記投稿に係る発信者情報の開示を求めたところ、原判決が、本件各アカウントのタイムラインにおいて表示される画像は、表示するに際して、HTMLプログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために、本件各表示画像となったものと認められるから、本件リツイート者らによって改変されたもので、同一性保持権が侵害されているということができるとし、第1審判決を変更したため、上告人が上告した事案で、本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について、本件各リツイート者は、プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し、かつ、同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきであるとし、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2020.08.04
損害賠償請求事件
LEX/DB25566236/高知地方裁判所 令和 2年 6月30日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第135号
被告が運営する被告病院の集中治療室(ICU)において、ベッドから転落して頭蓋骨骨折等の傷害を負い、脳死とされる状態となり、そのまま意識を回復することなく約3か月半後に死亡した患者(当時26歳・男性)の両親である原告らが、被告に対し、患者がベッドから転落し、脳死とされる状態という重篤な傷害を負った事故が発生したのは、被告病院が患者の転落を防止し、又は、転落により重篤な傷害が発生することを防止するための措置を講ずべき義務を懈怠した過失があったためであり、さらに、患者が死亡したのは、本件事故に加え、その後の不適切な輸液投与を行った過失があったためであるとして、主位的に患者が死亡したことによる損害につき、予備的に患者が脳死とされる状態となったことによる損害(金額は死亡の場合と同額)について、原告ら固有の慰謝料と併せて、債務不履行又は不法行為に基づき、それぞれ損害金の支払等を求めた事案で、被告に本件事故の予見可能性が認められず、また、2月の輸液投与についても、被告に過失があったとは認められないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2020.08.04
私印偽造・同使用被告事件
LEX/DB25566235/京都地方裁判所 令和 2年 6月25日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第1288号
被告人は、甲野花子宛ての宅配荷物を受領しようと考え、マンションの一室(当時の)被告人方で、行使の目的をもって、宅配会社の配達員が配達した前記甲野宛の宅配荷物の配達票の受領印欄に「甲野」と記入し、他人の署名を偽造した上、配達員に対し、これをあたかも真正に成立したもののように装い提出して使用したものである」という公訴事実につき、被告人及び弁護人は、被告人が「他人の署名を偽造・使用」したとの部分以外の部分はそのとおり間違いないが、上記甲野花子とは被告人自身を指す呼称であるから、被告人が自己の署名を使用したに過ぎず「他人の署名を偽造・使用」したとはいえないから無罪を主張した事案において、被告人が「甲野」と配達票に署名し、本名を用いなかったことにより、社会通念上、作成者と名義人の人格の同一性に齟齬を来たすものとはいえないから、被告人が、刑法167条1項にいう「他人の署名を偽造した」とはいえないとし、また、署名が偽造でない以上、当然これを使用する行為が偽造した署名を使用したということはできないとして、証明された事実が法解釈上犯罪を構成せず、罪とならないときに帰着するから、無罪を言い渡した事例。
2020.07.28
わいせつ電磁的記録等送信頒布、わいせつ電磁的記録記録媒体頒布被告事件
LEX/DB25570954/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月16日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第829号
漫画家兼芸術家である被告人が、被告人の作品制作に資金を提供した不特定の者6名に自己の女性器をスキャンした三次元形状データファイル(本件データ)をインターネットを通じて送信して頒布し、被告人が販売する商品を購入した不特定の者3名に本件データが記録されたCD-Rを郵送して頒布した事案の上告審において、本件データがわいせつな電磁的記録に該当し、本件CD-Rがわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するとした第1審判決の認定、評価を是認した原判決の判断に誤りがあるとはいえないとし、また、被告人の本件各頒布行為は、正当行為として違法性が阻却されるものではないとして、本件上告を棄却した事例。
2020.07.28
求償権行使懈怠違法確認等請求及び共同訴訟参加事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和2年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570951/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 7月14日 判決 (差戻上告審)/平成31年(行ヒ)第40号
県教育委員会(県教委)の職員らは、教員採用試験において受験者の得点を操作するなどの不正を行い、県は、これにより不合格となった受験者らに対して損害賠償金を支払ったことにつき、県の住民である上告人(一審原告)らが、被上告人(一審被告・県知事)を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求として、本件不正に関与した当時の教育審議監であったAらに対する求償権に基づく金員の支払を請求すること等を求めた住民訴訟の差戻上告審において、Aは、F及びEと共同して故意に本件不正を行ったというのであり、これにより平成19年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格とされた受験者に損害を加えたものであるから、県に対し、連帯して求償債務を負うこととなり、県は、Aに対し、2877万8376円の求償権を有していたこととなるから、同金額からAによる弁済額を控除した2682万4743円の支払を求めることができるとし、原判決中、上告人らの上記請求に関する部分につき、増額した内容で変更した事例(補足意見がある)。
2020.07.21
損害賠償請求事件
LEX/DB25570946/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月 9日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1856号
交通事故によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った被上告人が、加害車両の運転者である上告人Y1に対しては民法709条に基づき、加害車両の保有者である上告人N社に対しては自動車損害賠償保障法3条に基づき、損害賠償を求めるとともに、加害車両につき上告人N社との間で対人賠償責任保険契約を締結していた保険会社である上告人S保険会社に対しては同保険契約に基づき、上告人Y1又は上告人N社と被上告人との間の判決の確定を条件に、上記損害賠償の額と同額の支払を求めた事案の上告審において、被上告人は本件後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めているところ、被上告人は、本件事故当時4歳の幼児で、高次脳機能障害という本件後遺障害のため労働能力を全部喪失したというのであり、同逸失利益は将来の長期間にわたり逐次現実化するものであり、これらの事情等を総合考慮すると、本件後遺障害による逸失利益を定期金による賠償の対象とすることは、損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められ、また、本件後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり、被上告人について、上記特段の事情はうかがわれないとし、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2020.07.21
親子関係存在確認請求事件
LEX/DB25570943/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 7月 7日 判決 (上告審)/平成31年(受)第184号
上告人が、検察官に対し、上告人は亡Bと亡Aとの間に出生した子であると主張して、上告人とAとの間の親子関係が存在することの確認等を求め、原審は、上告人とAとの間の親子関係の存在確認請求に係る訴えを却下したため、上告人が上告した事案で、平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については、法の適用に関する通則法29条1項を適用し、子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当であり、上告人とAとの間の嫡出でない子の分娩による親子関係の成立についてAの本国法である日本法のほかに韓国法を適用し、韓国民法865条2項所定の出訴期間の徒過を理由に親子関係存在確認請求に係る訴えを不適法とすることはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中、上告人とAとの間の親子関係の存在確認請求に係る訴えを却下した部分は破棄し、上告人とAとの間の親子関係の存否について更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2020.07.21
公務員に対する懲戒処分取消等請求事件
LEX/DB25570942/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月 6日 判決 (上告審)/平成31年(行ヒ)第97号
市立中学校の教諭であった被上告人(原告・控訴人)が、顧問を務める同校柔道部における部員間の暴力行為を伴ういじめの事実を把握しながら、受傷した被害生徒に対し、受診に際して医師に自招事故による被旨の虚偽の説明をするよう指示したこと等を理由に、任命権者である県教育委員会から停職6月の懲戒処分を受けたため、本件処分は重きに失するなどと主張して、上告人(被告・被控訴人。兵庫県)を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原審は、本件懲戒処分の取消請求を認容し、国家賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、本件懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求につき、これらを棄却した第1審判決が正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2020.07.14
通知処分取消等請求事件
LEX/DB25570928/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月 2日 判決 (上告審)/平成31年(行ヒ)第61号
破産者K社の破産管財人である被上告人(控訴人・原告)が、平成7年度から同17年度まで(同11年度を除く。)の各事業年度(4月1日から翌年3月31日までの各1年間。本件各事業年度)において支払を受けた制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が、その後の破産手続において確定したことにより、これに対応する本件各事業年度の益金の額を減額して計算すると納付すべき法人税の額が過大となったとして、本件各事業年度の法人税につき国税通則法23条2項1号及び同条1項1号に基づく更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の各通知処分を受けたため、上告人(被控訴人・被告。国)に対し、主位的には本件各通知処分の一部の取消しを、予備的には上記制限超過利息等に対応する法人税相当額の一部についての不当利得返還等をそれぞれ求める事案の上告審において、本件各事業年度に制限超過利息等を受領したK社が、これを本件各事業年度の益金の額に算入して行った本件各申告はもとより正当であったといえるところ、その後の事業年度に本件債権1が破産手続において確定したことにより、本件各事業年度に遡って益金の額を減額する計算をすることは、本件債権1の一部につき現に配当がされたか否かにかかわらず、公正処理基準に従ったものということはできないとし、上記の減額計算を前提とする本件各更正の請求が国税通則法23条1項1号所定の要件を満たすものでないことは明らかであるとして、原判決を破棄し、本件各通知処分が最後配当及び追加配当がされる前にされたことをもって違法であるということもできないから、本件各通知処分は適法であり、また、上告人が本件債権1及び2の発生原因となった制限超過利息等に対応する法人税相当額を保持することについて法律上の原因がないということもできないとし、被上告人の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2020.07.14
自治会入会等請求事件
LEX/DB25565999/奈良地方裁判所 令和 2年 5月28日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第500号
奈良県天理市内の自治会に居住する原告が、被告が正当な理由なく平成4年から現在に至るまで原告の被告の会員たる地位を認めないことにより、様々な不利益を受け、精神的苦痛を被ったなどと主張して、被告に対し、原告が被告の会員たる地位を有することの確認を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告が被告の会員たる地位を有するものと認めることはできず、被告による不法行為を構成するとは認められないとして、請求を棄却した事例。
2020.07.14
過失運転致傷被告事件
LEX/DB25565713/福岡地方裁判所 令和 2年 5月 7日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第585号
被告人が過失運転致傷の罪で禁錮1年を求刑された事案で、主位的訴因について、被害者車両が本件防犯カメラ映像の見切り地点からほぼ直進して衝突地点で停止したとは合理的な疑いなく証明されているとはいえず、本件事故の原因は被告人が前方をよく見ていなかったからであるとの被告人の捜査段階の供述もそのまま信用することはできないから、そのような事実関係を前提とする主位的訴因の被告人の過失は、その余の点について検討するまでもなく認められず、また、予備的訴因について、仮に被告人が本件道路を進行するにあたり、前方左右を注視し、進路の安全を確認しながら進行していても、被害者車両が本件道路の第一車両通行帯の歩道寄りにいったん停止し、その後急加速して第二車両通行帯に車線変更してくることを予見し、同車両と被告人車両とが衝突地点で衝突することを回避することは困難であり、主位的訴因との関係でも、被告人に、本件事故に関し、予見可能性、結果回避可能性があったというには合理的な疑いが残ることから、主位的訴因、予備的訴因のいずれについても、本件の証拠関係を前提にする限り、各訴因の特定に欠けることはないが、本件では、被告人車両が進行していた車線の左側の車線を進行していた被害者車両が、被告人車両が進行していた車線上にある衝突地点に向けて、急加速して車線変更してきた可能性があり、本件事故に関して被告人に過失があると認めるには合理的な疑いが残り、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるとして、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをした事例。
2020.07.07
不指定取消請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和2年9月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570926/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 6月30日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第68号
平成31年法律第2号(本件改正法)による地方税法の一部改正により、いわゆるふるさと納税として個人の道府県民税及び市町村民税に係る特例控除の対象となる寄附金について、所定の基準に適合する都道府県、市町村又は特別区として総務大臣が指定するものに対するものに限られるという制度(本件指定制度)が導入され、被上告人(国)が上記の指定の申出をした泉佐野市に対して当該指定をしない旨の決定(本件不指定)をしたことについて、上告人(泉佐野市長)が、本件不指定は違法な国の関与に当たると主張して、地方自治法251条の5第1項に基づき、被上告人を相手に、本件不指定の取消しを求め、原審は、泉佐野市は平成31年総務省告示第179号(本件告示)2条3号に定める基準を満たさず指定の要件を欠くとし、本件不指定は適法であるとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件告示2条3号の規定のうち、本件改正規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は、地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとし、原判決を破棄し、上告人の請求を認容した事例(補足意見あり)。