注目の判例

刑事訴訟法

2013.10.15
殺人被告事件
LEX/DB25501669 / 福岡地方裁判所 平成25年 6月14日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第262号
 被告人は、長年にわたって献身的に高齢の実母である被害者の介護を続けてきた中で、うつ病の強い影響で心神耗弱の状態に陥り、自身と被害者の将来に絶望して犯行当日に衝動的に被害者と無理心中することを思い立ち被害者(当時94歳)の頚部をタオルで絞めて窒息死させたとの殺人の事案において、犯行に至る経緯や動機には酌むべき事情が相当程度認められること、被告人が反省の態度を示していること、被害者の長女も被告人の処罰を望んでいないこと、再犯のおそれは乏しいと思われることなどから、刑の執行を猶予するのが相当であるとして、被告人に対し、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2013.10.15
住居侵入、殺人、窃盗、傷害、脅迫被告事件
LEX/DB25501675 / 長崎地方裁判所 平成25年 6月14日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第75号等
 被告人が、同棲相手であったAの家族がAをその意思に反して実家に閉じ込めていると思い込むとともに、同棲中、Aに対し、被告人から逃げたらAの家族を殺すなどと告げていた覚悟を示すためにも、Aの家族を殺害してAを連れ戻そうと企て、長崎県内のAの実家等に侵入し、Aの祖母や母を殺害したなどとされた住居侵入、殺人、窃盗、傷害、脅迫被告事件の事案において、犯行当時の被告人の責任能力について、被告人の各犯行動機は、Aへの過度の執着心・支配欲や非社会性パーソナリティ障害がもたらす欲求不満への耐性及び規範意識の低さ等が重なって形成されたことを考慮すれば、十分に理解可能であり、理不尽ではあるが、突飛な考えとか不可解な動機とは異なるとして、被告人は、各犯行時に、精神の障害により是非弁識能力及び行動制御能力が著しく減退しておらず、完全責任能力を有していたと認めるのが相当であるとして、被告人を死刑に処するとした事例(裁判員裁判)。
2013.10.15
各業務上過失往来危険、業務上過失致死被告事件
LEX/DB25501624 / 東京高等裁判所 平成25年 6月11日 判決 (控訴審) / 平成23年(う)第1545号
 控訴人(被告人。海上自衛官)両名に対する業務上過失往来危険、業務上過失致死被告事件について、原判決が無罪を言い渡し、検察官が控訴をした事案において、被告人両名の過失を認めることはできないとして、控訴を棄却した事例。
2013.10.15
詐欺、有印私文書偽造、同行使被告事件
LEX/DB25501620 / 水戸地方裁判所土浦支部 平成25年 6月11日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第696号等
 被告人は、金融機関職員をして、被告人が土木建築業を営んでおり、融資した金銭を重機購入に充て、被告人が受注している工事代金等で同金銭の返済を受けることができる旨を誤信させ、1144万円余りの金員を振込入金させたとの詐欺、金銭借用証書を偽造し行使したとの有印私文書偽造、同行使の事案において、計画的、巧妙、悪質であること、被害額は多額であること、身勝手な犯行であることなどを考慮し、被告人を懲役2年10月に処した事例。
2013.10.15
殺人、覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25501674 / 福岡地方裁判所小倉支部 平成25年 6月 7日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第785号等
 被告人が、妻(当時50歳)に裏切られたとの思いが一気に高まって、同人を殺害することを決意し、同人に対し、殺意をもって、ナイフで同人の両頚部及び右大腿部を突き刺し、その頚部にタオルを巻き付けて締め付けるなどし、よって、同人を絞頚による窒息兼出血性ショックにより死亡させて殺害した等とされた事案において、本件犯行の際、被害者が真意に基づいて被告人に殺害を嘱託した事実はなく、また、仮に、被害者が「終わりにして」などの言葉を発したとしても、被告人がその言葉を真に殺してほしいという意味のものと認識したとは考えられず、よって、被告人が被害者から殺害を嘱託された旨誤信した事実はないものと認められるなどとして、被告人を懲役16年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.15
殺人未遂被告事件
LEX/DB25445886 / 神戸地方裁判所 平成25年 3月19日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第769号
 被告人は、アパートの居室から3階廊下に出たところ、同じアパート3階の住人で、以前口論をしたことがあったA(当時72歳)から、居室ドアの開閉を静かにするよう注意された上、その顔面を拳で殴られるなどしたことから、これに腹を立て、Aを脅して今後このような態度をとらないようにさせようと思い立ち、穴あき洋包丁(刃体の長さ約12.2センチメートルを持ち出し、3階の廊下で、Aに対して、本件包丁の刃先を向け、更に、Aが本件包丁を持った被告人の右手をつかみ、被告人も左手でAの胸ぐらをつかむなどして揉み合いの状態になる中で、Aの手をふりほどこうとし、Aの身体の至近距離で本件包丁を持った右手を振り回すなどの暴行を加え、その際、Aにより加えられた力も相まって、本件包丁の刃先が、Aの左側胸部に突き刺さったり、右頸部に当たるなどした結果、Aに、全治約45日間を要する、左側胸部刺創、左第3肋骨骨折、血気胸、右頸部切創、右手背切創等の傷害を負わせた事案において、被告人は、脅すためにAに包丁を突き付けたところ、Aが被告人の右手首をつかみ、そのまま押したり引いたりの揉み合いになったため、被告人は手を自由に動かすことができない中で、Aの手をふりほどこうと手を振り回し、Aにより加えられた力も加わり、結果として包丁がAの身体に突き刺さったり、体に触れるなどし傷害が発生したもので、被告人は、狙ってAの左側胸部等を刺したわけではないから、自身の行為がAが死ぬ危険性の高い行為であるとわかって行ったとはいえず、被告人には殺意は認められず、傷害罪が成立するにとどまり、懲役3年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.08
殺人被告事件
LEX/DB25501472 / 東京高等裁判所 平成25年 7月11日 判決 (控訴審) / 平成24年(う)第2246号
 アルコール症センター内で、同じ入院患者である被害者を刺し殺したという事案の控訴審で、被告人は犯行当時、妄想型統合失調症のために責任能力が著しく減退していたものの、責任無能力状態であったとまではいえず、限定責任能力状態であったとした原審の判断は妥当であるとして、被告人側の控訴を棄却した事例。
2013.10.08
電磁的公正証書原本不実記録、同供用被告事件
LEX/DB25501593 / 広島地方裁判所 平成25年 7月11日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第143号
 被告人は、共犯者と共謀の上、新設分割により設立する株式会社につき、休眠会社から資産等の承継があったと仮装して、内容虚偽の「資本金の額の計上に関する証明書」等を作成した上、東京法務局において、同書類等を提出して新設分割による会社の設立登記を申請し、登記官をして、商業登記簿原本である電磁的記録に、会社の資本金が1000万円である旨の不実の記録をさせ、商業登記簿原本としての用に供したとの電磁的公正証書原本不実記録、同供用の事案において、被告人に懲役1年、執行猶予4年を言い渡した事例。
2013.10.08
殺人被告事件
LEX/DB25501467 / 山口地方裁判所 平成25年 6月27日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第220号
 妄想性障害もつ被告人が被害者を殺害したという事案において、犯行が妄想性障害の著しい影響を受けて行われており、被告人は犯行当時心神耗弱の状態にあったとして、被告人に懲役3年を言い渡した事例(求刑懲役18年)。
2013.10.08
殺人被告事件
LEX/DB25501465 / 大阪高等裁判所 平成25年 2月26日 判決 (控訴審) / 平成24年(う)第1159号
 実姉を包丁で突き刺して死亡させたというの事案について、第一審で懲役20年を言い渡された事案の控訴審で、原判決は本件犯行にいたった動機や経緯にアスペルガー傷害の影響があった点を過小評価し、また社会においてアスペルガー障害の受け皿がなく、このことと被告人の反省が十分でないことと相まって再犯のおそれが強いなどとして、これらを被告人の刑を重くする方向の一事項として考慮したが、それは誤っているとして原判決を破棄し、懲役14年を言い渡した事例。
2013.10.01
現住建造物等放火、殺人、殺人未遂被告事件
LEX/DB25501589 / 大阪高等裁判所 平成25年 7月31日 判決 (控訴審) / 平成23年(う)第1649号
 犯行時、被告人に妄想はあったものの、被告人の精神症状により、物事の是非善悪を判断し、その判断に従って行動する能力が著しく減退していなかったと認定した原判決の判断は正当であるとし、また、現在我が国で執行されている絞首刑という執行方法が、それ自体、受刑者に不必要な精神的、肉体的苦痛を与えることを内容とするものとして、人道上も残虐と認められる刑罰であるということはできないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2013.10.01
殺人被告事件
LEX/DB25501585 / 京都地方裁判所 平成25年 7月18日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第50号
 被告人と被害者との夫婦関係修復の意見の違いに起因する殺人事件において、本件の犯情は悪く、被告人の刑事責任は相当重いのであって、子らのために父親が必要である旨の弁護人の主張を踏まえても、本件は酌量減軽をすべき事案とは到底いえないとして、被告人を懲役13年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.01
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(変更後の訴因組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反)、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25501612 / さいたま地方裁判所 平成25年 7月18日 判決 (第一審) / 平成22年(わ)第343号等
 山口組の直参組員であるとともに、二次団体の首領である被告人が、その傘下組織の構成員が殺害されたことから、報復して二次団体の威信を保つため、配下の暴力団構成員らと共謀の上、二次団体の活動として組織により、対立する暴力団組織に構成員に対しけん銃2丁を発射して殺害し、その際、同けん銃2丁とこれに適合する実包と共に所持したという組織的犯罪処罰法の加重殺人、銃刀法の組織的なけん銃発射及びけん銃の加重所持の事案において、被告人を無期懲役及び罰金3000万円に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.01
殺人、死体遺棄被告事件
LEX/DB25501588 / 大阪地方裁判所 平成25年 7月17日 判決 (第一審) / 平成23年(わ)第6151号等
 被告人は、被害者両名を殺害し、又は暴行を加えて傷害を負わせ、若しくはその他の方法で傷害を負わせて死亡させたものと認められるとした上で、被告人は長男に対し、長男を死亡させる危険性の高い行為をそれと分かって行ったと認められるから、被告人には長男に対する殺意を認めることができるとする一方、長男に対して殺意が認められるからといって妻に対しても殺意が認められるとはいえないとして、被告人を懲役28年に処した事例。
2013.10.01
各傷害致死被告事件
LEX/DB25501584 / 名古屋地方裁判所 平成25年 7月12日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第2078号
 刑法207条を傷害致死罪に適用することは文理上問題がなく、必要性も合理性も認められるとした上で、被告人両名が被害者に対し、それぞれ暴行を加えて死亡させたが、どちらの暴行により死因となった外傷性くも膜下出血が発症したのかを特定することができず、同時傷害の特例の適用により被告人両名に傷害致死罪が成立するとして、被告人両名をそれぞれ懲役5年6か月に処した事例。
2013.10.01
各業務上過失致死被告事件
LEX/DB25501547 / 岐阜地方裁判所 平成25年 7月10日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第63号
 被告人両名の重大な過失により、解体作業中の工場の壁が市道に倒れ、自転車で通行中の女子高生を同壁の下敷きにし、死亡させたという各業務上過失致死の事案において、本件解体工事の際、本件壁を一枚壁の状態にせず側壁を残したまま解体作業をするか、あるいは、本件壁を一枚壁の状態にして解体する場合でも、本件壁にワイヤーロープを張って支えたり、壁を重機でつかむなどすれば本件壁の倒壊を容易に防止できたことは、被告人両名の会社における地位及び解体工事に関する知識経験からして容易に認識できたもので、被告人両名が適切な倒壊防止措置を講じてさえいれば本件事故を回避することができたとして、被告人両名をそれぞれ禁錮1年2か月に処した事例。
2013.10.01
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25501551 / 金沢地方裁判所 平成25年 7月 9日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第104号
 被告人は、法定の除外事由がないのに、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し、もって覚せい剤を使用したものであるとして、被告人を懲役1年6か月(執行猶予3年)に処した事例。
2013.10.01
被告人両名に対する保護責任者遺棄(変更後の訴因保護責任者遺棄致死)被告事件
LEX/DB25501611 / 名古屋地方裁判所岡崎支部 平成25年 6月17日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第740号
 被告人両名は、被害女児の親権者として、同児を保護する責任を負っていたものであるが、平成24年4月ころには同児が低栄養状態に陥っていること及び歩行困難等になっていることを認識しながら、共謀の上、同年9月20日までの間、同児に十分な食事を取らせず、適切な医療措置を受けさせずに放置し、同児を衰弱死させたとの保護責任者遺棄致死の事案において、不保護の態様は悪質であること、4歳の女児を死亡させたという結果は重大であること等を考慮し、被告人両名をそれぞれ懲役6年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.01
詐欺、電磁的公正証書原本不実記録、同供用、詐欺各被告事件
LEX/DB25501546 / さいたま地方裁判所 平成25年 6月10日 判決 (第一審) / 平成23年(わ)第71号等
 被告人両名が、共謀の上、土木建築工事の設計・施工及び請負・管理等を目的とする株式会社アーバンエステートが経営破綻状態であり、契約を履行できる見込みがほとんどないにもかかわらず、顧客との間で建設工事請負契約を締結して契約金等を受領したという詐欺、被告人Aが同社の架空増資を行ったという電磁的公正証書原本不実記録、同供用の各事案において、被害者らは、念願のマイホームを手に入れるため、何とか金策をして契約にこぎ着けたにもかかわらず、それから一月も経たないうちに業者が倒産するという憂き目にあったもので、その驚愕、悲嘆の気持ちは察するに余りあるとして、被告人Aを懲役4年に、被告人Bを懲役2年8か月に処した事例。
2013.10.01
傷害致死被告事件
LEX/DB25501550 / 和歌山地方裁判所 平成25年 5月31日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第431号
 被告人が、被害者が窓枠をつかんでいる認識を有しながら自動車を加速させたのは、被害者に対する暴行に当たるというべきところ、かかる行為が被害者を負傷させる危険の高い行為であることは明らかであって、犯行現場の道幅が狭いことや、石垣があることも被告人において認識していたことからすると、被告人には、傷害の未必的故意が優に認められるから、被告人には、傷害致死罪が成立するとして、被告人を懲役3年(執行猶予5年)に処した事例。