デジタル・ガバメント

【デジタル・ガバメント ここがポイント!!】自治体職員によるデジタル・ガバメント推進NPO

2020年10月号Vol.120

【デジタル・ガバメント ここがポイント!!】自治体職員によるデジタル・ガバメント推進NPO

株式会社TKC 地方公共団体事業部 システム企画本部 部長 松下邦彦

 DigitalGovernmentLabs(以下、デジタルガバメントラボ)というNPO法人が今年2月に設立されました。この法人は現役の自治体職員が設立し、活動目的は自治体におけるデジタル・ガバメントの実現を推進することにあります。デジタルガバメントラボ代表理事の千葉大右(だいすけ)氏に話を伺いました。
 千葉さんは、千葉県船橋市情報システム課の課長補佐を務める方です。入庁後、情報システム課で住民記録システムと庁内連携基盤を担当し、戸籍住民課では一連のマイナンバー制度対応に携わりました。また、2017年には総務省業務改革モデルプロジェクト事業で窓口業務のBPRを実施し、18年からは総務省地域情報化アドバイザーに任命されています。

──複数の自治体に勤務する職員が立ち上げたデジタルガバメントラボは、たいへん珍しいNPO法人ですね。

Digital Government Labs(https://www.dgl.jp)

Digital Government Labs(https://www.dgl.jp)

千葉 もともと、自治体職員がICT関連の情報を交換するSNS上のグループがあり、そこに参加していた有志がリアルの場で勉強会を開催していました。勉強会を重ねるにつれて、全国の自治体でデジタル・ガバメントを推進する職員を積極的に支援する必要があること、また、実際のサービスを実現するには民間と協働する必要があることが痛感されました。
 情報交換や勉強会だけであれば任意団体で十分です。ところが、それを超えることを実施しようとすると、任意団体では責任の所在が曖昧となって活動が制限されてしまいます。そこで、法人格を持ち社会的責任を果たせるNPO法人を設立することになりました。

──どのようなメンバーが参加しているのでしょうか。

千葉 私をはじめ、メンバーのほとんどが現役の自治体職員です。所属部署は情報部門のほか、窓口部門や福祉部門などさまざまです。また自治体職員OBや民間企業の方も参加しています。

利用者中心の
行政サービスを目指す

──デジタル・ガバメントの実現が国の重要施策に位置付けられています。自治体のデジタル・ガバメントはどうあるべきとお考えですか。

千葉 利用者中心の行政サービス、これに尽きます。電子化とは、本来、よりよい行政サービスを提供するという目的を実現するための手段です。にもかかわらず、電子申請に代表される過去20年間の行政電子化では、目的と手段が逆転してしまいました。紙の手続きをそのまま電子化しただけのサービスが主流を占め、導入しても使われなくなった事例が多々あります。サービスは、多くの人が利便性を実感できなければ決して普及しません。
 利用者にとって本当に便利で使いやすい行政サービスを実現するには、紙を前提にした手続きを、電子化を前提にして申請様式から業務プロセス全般まで、徹頭徹尾、利用者中心で作り直す必要があります。このように、手続きの業務プロセス全体を一貫して電子化することが、従来のように申請様式だけを電子化するのとは異なる、行政サービスのデジタル化であると考えています。私たちが目指す自治体のデジタル・ガバメントは、利用者中心の行政サービスをデジタル化によって実現するものなのです。

──自治体でデジタル・ガバメントを実現するにあたっての課題と、それを解決する見通しを教えてください。

千葉 自治体は行政サービスの基礎となる住民データを保有していますが、住民データは基本的には自治体の内部でしか活用できず、外部に提供することができません。これが大きな課題だと考えています。
 例えば現状多くの電子申請では、住所・氏名・世帯員等を申請者自らが入力しなければなりません。これらのデータは自治体が保有しており、紙の申請書であれば、プリントして対象者に郵送することができます。電子申請では同様のことができません。特別定額給付金のオンライン申請で、自治体のデジタル・ガバメント実現の課題がここにあることが明らかになりました。
 解決策は、利用者が入力した申請データと自治体が保有する住民データをうまく連携させることです。自治体が保有する住民データをうまく活用すれば、申請者にとっても職員にとっても便利で使いやすい行政サービスを実現できると思います。

──コロナ禍で設立総会が延期されたとのことですが、これまでの活動と今後の予定を教えてください。

千葉 5月にはCodeforJapanとの共催で、特別定額給付金事務の勉強会を開催し、手続きのデジタル化を進めるにあたっての課題を討議しました。また、サービスとしては、内閣官房IT総合戦略室が開発した「おくやみコーナー設置自治体支援ナビ」のお試し環境を提供しています。8月には同室が主催する「自治体ピッチ」に登壇し、これを紹介しました。
 当法人は、自治体におけるデジタル・ガバメントの実現を推進するため、官民を問わずさまざまな人々が広く共創するための枠組みとして活動していきます。活動テーマは、ワンストップサービス、行政手続きのデジタル化、データ利活用、情報セキュリティー、デジタル手続法、等です。こうしたテーマに関連した勉強会を開催するとともに、自治体職員に役立つサービスを提供していきます。直近では、各府省が発出するQAを一元的に検索できるWebサイトの構築を予定しています。

──デジタル・ガバメントに関心のあるすべての自治体職員へ、メッセージをお願いします。

千葉 自治体のデジタル化を職員が一人だけで進めることは大変困難です。つまずいたり悩んだりしたときは、ぜひ私たちに声を掛けてください。私たちのノウハウや研究成果を提供します。また、われわれには意欲のある自治体職員のネットワークがあり、その知見も共有できます。利用者中心の行政サービスを提供するために、デジタル・ガバメントの実現に向けてともに進んでいきましょう。

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