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【トレンドビュー】IT新戦略、行政のデジタル化が最重要事項に

2020年10月号Vol.120

【トレンドビュー】IT新戦略、行政のデジタル化が最重要事項に

寄稿 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官補佐 森 麻理子

 2020年7月、政府は『世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進計画』(以下、IT新戦略)を閣議決定しました。今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大下で、デジタル対応についてさまざまな課題が浮き彫りになったことを踏まえ、直近の取り組みとしての新型コロナウイルス感染症拡大に向けたITの活用と、デジタル強靭化による社会構造の変革・社会全体の行動変容の両面について、特に重点を置いて取り組むものとされています。加えて、国と地方を通じたデジタル基盤の構築は、喫緊に取り組むべき事項と掲げました。
 今般の新型コロナの感染拡大を受け、オンライン化・リモート化による社会構造の変革等によるデジタル強靭化を推進する前提として、デジタル・ガバメントの取り組みの必要性が再認識されました。
 具体的には、急速に進展するデジタル技術を徹底的に活用し、国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動においてデジタル技術の便益を享受できるようにする必要があります。このため、地方や民間部門のデジタル化を推進し、デジタルを前提とした新たな時代にふさわしい環境整備を進めていかなければなりません。
 すでに19年12月には、政府は『デジタル・ガバメント実行計画』を閣議決定し、旧デジタル・ガバメント実行計画と比較して地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進に関する内容の充実・強化が図られていたところですが、今回のIT新戦略においても、地方公共団体のデジタル化について詳細に記載がなされています。

注目すべき二つのポイント

 IT新戦略のうち、特に地方公共団体の方々に注目していただきたいのは、以下の二点です。
 第一が〈地方公共団体の手続きのオンライン化の推進〉です。住民の利便性の向上、行政の効率化、感染症の拡大防止の観点、デジタル手続法に規定されたデジタルファースト原則を踏まえれば、地方公共団体の手続きのオンライン化を進めることが重要です。
 大前提として、まず、汎用的にオンライン化を可能とする基盤を全地方公共団体において整備することが必要です。今般の特別定額給付金の支給申請のオンライン化においては、ほぼすべての市区町村がマイナポータルの「ぴったりサービス」を活用しました。
 ぴったりサービスとは、市区町村が利用できる汎用的電子申請受付システムとして国が用意したプラットフォームです。これは当該給付金だけでなく、一度接続すれば市区町村に対するあらゆる手続きで活用できます。なお、地方公共団体が優先的にオンライン化に取り組むべき手続きについては、すでにデジタル・ガバメント実行計画の別紙5に記載しています。
 IT新戦略においては、このうちオンライン化が進んでいない手続き(個人が行う手続き)について、内閣官房や関係省庁が連携して早急に申請フォームのひな型をぴったりサービスにプリセットすることとしています。国と地方公共団体がともにマイナポータルの利便性の向上を図りながら、さまざまな手続きでの活用を推進していきたいと考えています。
 さらに、IT新戦略では、従来の紙を前提とした方法をそのままオンライン化するのではなく、地方公共団体が利用者視点に立った業務改革(BPR)を必ず行い、エンドツーエンドでデジタル化を進めることが明記されています。手続きの性質上、対面を要する場合や住民が対面での手続きを希望する場合など、やむを得ず対面で手続きを行う際も、予約の仕組みの導入などの工夫が求められるため、オンライン化に取り組む際にはこうした点にも留意していただきたいと考えています。
 第二が〈地方公共団体の業務プロセス・情報システムの標準化〉です。
 一般に、市区町村の情報システムは、各団体がパッケージシステムをカスタマイズして利用しています。それらはこれまでの創意工夫の積み重ねの結果である一方、情報システム経費増加の原因となっています。そこで制度を所管する各府省と地方公共団体、ベンダー等が協議をしながら、システムについてどのような機能が求められるのかなどを規定した、いわゆる「標準仕様」の作成を政府全体で推進することになりました。
 市区町村が標準仕様を活用して情報システムの調達を行うことで、調達プロセスの手間を省くとともに、カスタマイズを抑制し、より広域のクラウドサービスを活用しやすくすることを目的としています。また、AI等の新しい技術を標準仕様に合わせて開発することで、幅広い市区町村での技術活用や開発経費の減少も期待されます。
 住民記録業務については9月11日に住民記録システム標準仕様【第1・0版】が公表され、地方税や社会保障の分野でも標準化の議論が始められています。業務を所管する各府省を中心に議論が進められる予定ですので、政府の各種計画に示されているスケジュールを参照しながら、今後の動向を注視していただきたいと思います。
 こうした地方公共団体に対する手続きのオンライン化の推進や情報システムの標準化に加え、クラウド化、AI等の活用、市区町村のデジタル化を抜本的に進めるための計画の策定などが、IT新戦略には盛り込まれています。地方公共団体の方々も一度、目を通していただければ幸いです。

ピンチをチャンスに

 新型コロナの感染拡大は、非常時においても弾力的に対応できる社会への転換の必要性を浮き彫りにしました。
 この機会をチャンスと捉え、従来の手法をデジタルに置き換えるだけの「DigITization(デジタイゼーション)」ではなく、デジタルを前提とした新たな社会基盤を構築する「DigITalization(デジタライゼーション)」の観点から取り組みを進めることが重要です。テレワークによるリモート化等が社会に急速に浸透していく際に、行政の業務の在り方が弊害になることはあってはなりません。
 最後に、地方公共団体のデジタル・ガバメントの取り組みを推進するのは、地方公共団体の方々自身です。国として、IT新戦略等に基づき、地方公共団体の取り組みを支えていきたいと考えています。

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