2022年7月号Vol.127

【インタビュー 栃木県真岡市】DX推進で目指す全ての人に優しい
「ハイフレックス市役所」

栃木県真岡市長 石坂真一氏
インタビュアー 本誌編集人 飛鷹 聡

石坂真一市長のリーダーシップの下、全庁を挙げてDXを推進する真岡市。
多様化するニーズや社会変化に対応し、一人ひとりに最適なサービスを全ての人に届けることで
〈誰一人取り残さないまち〉の実現を目指す──その取り組みについて伺う。

図表1 分析対象団体プロフィール(サービス実施期間別)

石坂真一(いしざか・しんいち)
栃木県真岡市生まれ。参議院議員の政策担当秘書などを経て栃木県議会議員に。2017(平成29)年5月15日から現職

──DX推進の現状を教えてください。

石坂 今年3月に『真岡市DX戦略計画』を公表しましたが、実は真岡市ではDXという言葉が広まる前からさまざまな取り組みを展開してきました。中でも、現在のDX推進につながる取り組みとなったのが、タブレット型パソコンの導入です。ペーパーレスの推進と事務効率の向上を狙って実施したもので、2017~18年度にかけて全職員のパソコンをノート型から変更。また、新庁舎へ移転した20年度からは無線LANの使用も開始しました。
 さらに、AI/RPAなど最新のデジタル技術も積極的に活用しています。特にAIは「AI-OCR」などで業務を効率化するだけでなく、市民サービス向上の点でも採り入れています。一例が「FMもおか」(20年11月開局)で採用したAIアナウンサーで、市のお知らせを毎日放送するとともに、災害発生時には職員が入力した原稿で迅速に緊急情報を発信できます。
 並行して注力してきたのが、DX人材の育成と職員の意識改革です。本市では、DX推進の中心的な役割を担う係長職をDX推進員、意欲的にDXに取り組みたいと希望する職員をDX協力員として任命しました。しかし、DXを一過性のブームとしないためには、“特定の職員だけがやる”のではなく全職員が“自分事”と捉えて行動することが不可欠です。その土壌づくりとして、①副市長・部課長職向けDX研修会、②推進を担うDX推進員・DX協力員によるワークショップ、③若手職員によるDX座談会、など広く階層別の研修に力を入れています。そうした活動が評価され、「第1回日経自治体DXアワード・デジタル化人材育成部門」を受賞しました。
 そして今年4月にはデジタル戦略課を発足し、DX推進を一段と加速しているところです。

全職員が“ワンチーム”で挑む
市民起点のサービス改革

──DXビジョンに「ハイフレックス市役所」を掲げています。

石坂 ハイフレックスとは、さまざまな行政サービスをアナログとデジタルから〈利用者が選択できる〉ことを表した言葉です。いま社会環境やライフスタイルが変化する中で、市民の行動や価値観も多様化しています。例えば、若い世代を中心に「スマートフォンで簡単に手続きしたい」というニーズが高まる一方で、高齢者の場合は「窓口で話を聞いて手続きしたい」という方がまだ多くいらっしゃいます。そうした中で市民一人ひとりのニーズに応えるためには、行政サービスのデジタル化を進めつつ、人と人のつながりなどアナログが持つ価値も大切にしていかなければならないと考えています。
 そこでDXミッションに〈デジタル技術の活用によりアナログの価値を高め 新たな価値を全ての市民及び関係者に継続的に届け 誰一人取り残さないやさしい都市(まち)の実現〉を掲げました。

デジタル×アナログで
新たな体験価値を創出する

石坂 現在、取り組みを進めているのが、「3ない(来させない・待たせない・書かせない)市役所」です。窓口にタブレット端末を置いて、すでに〈書かせない〉環境は整備しました。引き続き、いつでも・どこでも手続きが完結する〈来させない〉と、窓口での対面手続きが必要な場合は事前に来庁予約ができる〈待たせない〉の実現に取り組みます。
 また、ユニークなところでは「オンラインいちご狩り」を実施しました。真岡市はいちごの生産日本一で、コロナ禍の影響を受ける生産者の支援を目的に企画したものです。オンラインを通じて収穫したいちごは後日宅配され、例えば入院中で外出が難しい子どもたちにも楽しんでもらえるなど好評を博しました。この取り組みはまさに市民起点で、地域の人材や施設、産業などアナログな世界とデジタルを融合して〈これまでにない価値〉を創出した一例といえるでしょう。

──今後の計画を教えてください。

石坂 3ない市役所の実現など、引き続きDX推進に取り組みます。デジタル技術の積極活用も継続しますが、これらはあくまでも目標を実現するための手段であり、DXで目指すのは行政サービスを通して市民や関係者の満足度を最大化することです。
 その点では新たな価値体験の創出とともに、市民視点で事業やサービスを見直し継続的に価値を提供できる仕組みの具体化が必要と考えています。
 加えて、われわれ自身も従来の仕事のやり方や常識にとらわれず徹底したBPRを進め、適切にデジタル技術を活用していくことが欠かせません。そのポイントとなるのは〈職員の意識改革〉で、引き続き全職員の情報リテラシー向上を図ることに加え、意欲の高い職員についてはDXエキスパートやDXスペシャリストへとステップアップできる「デジタル人材認定制度」も計画しています。
 そうした取り組みを通じて、市民・職員をはじめ、全ての関係者に優しいハイフレックス市役所を実現していきたいと考えています。

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