税務官公署出身会員に聞く

真心を込めた本音の付き合いで関与先との信頼関係を築く

須藤光一会員(関東信越会茨城支部)
須藤光一会員

須藤光一会員

平成18年7月に退官後、同年8月に自宅で事務所を開業し、まもなく5年目を迎える須藤光一会員。月次巡回監査の実施により「本音の付き合いで信頼関係を築くことが大事」だと語る。

機械化調査情報官としてパソコンを猛勉強

 ──ご経歴を教えてください。

 須藤 昭和46年税務大学校に入校し、関東信越国税局の普通科31期の採用です。47年3月に真岡税務署に配属されてから、退官まで茨城県、栃木県、埼玉県の税務署と国税局調査課で、法人税調査の仕事をしていました。
 転機になったのは、平成10年7月に浦和署の機械化調査情報官(現:情報技術専門官)として配属されたことです。

 ──それまでの業務との違いは?

 須藤 パソコンで電子化されている法人の税務調査が中心で、そのための知識が必要になりました。配属されたものの、私はパソコンといってもせいぜいゲームのソリティアをするくらいしかできませんでしたので(笑)、テキストを見ながら毎日2時間、2、3カ月かけてパソコンの操作を一生懸命勉強しました。
 その時の業務は、主に財務、給与、販売、在庫管理等をパソコン又はオフコンで行っている法人の調査及び会計ソフトの分析などを通じて、パソコンを利用した調査支援を行っていました。
 これを機に、ある程度パソコンを使えるようになったので、妻から「あの時にパソコンを覚えておいてラッキーだったわね」と言われます。

会員事務所見学会で「そこまで言う?」

 ──TKCへの入会を決めた主な理由は何でしょうか?

 須藤 会社法が施行された頃、TKCではそれに対応した研修が行われているという話を聞き、情報が早くサポート体制がしっかりしているなと思っていました。また、TKC会員が関与している案件は税務調査に行っても指摘事項が少ないという印象もあり、納税者に対する指導が行き届いているとも思いましたね。他にも、税務署時代の先輩の稲見正雄先生と長谷川泰男先生が同じ茨城支部でTKCに入会していたこともあり、平成18年8月に税理士登録後、9月にTKCに入会することになりました。

 ──ニューメンバーズ・サービス委員会主催の事務所見学会には参加されましたか。

 須藤 入会する前に、茨城支部の高谷豊先生の事務所へ行きました。そのとき、高谷先生がご自分の収入まで教えてくれて「そこまで言う?」とびっくり(笑)。さらに「ご自由に書類を見てください」と言われて本当に驚きましたね。その後はプライベートでもお邪魔するようになり、今でもお付き合いが続いています。開業時には、顧問報酬の決め方など事務所経営の具体的なところまで教えていただき随分参考になりました。

 ──TKCに入会していかがでしたか。

 須藤 入会して良かったことは、生涯研修が充実していることですね。TKCは毎月1回、支部で実務に即した研修を実施しているのでとても参考になります。私は、隣の栃木支部の研修に出向いたこともあります。また、TKCシステムも非常に優れていて、税制改正への対応が早いところも安心できるポイントです。

講師として活躍する須藤会員

茨城支部の職員研修で講師として活躍する須藤会員

研修講師は知識の棚卸しの機会

 ──現在の関与先数は?

 須藤 法人8件、個人19件でご紹介の案件が多く、ほとんどが茨城県内の関与先です。月次巡回監査も法人全件、個人は事業所得の案件で6件、合わせて14件実施しています。困ったときにはいつでも相談にのれるよう、時には休日に対応することもあります。
 FX2を導入している関与先には、巡回監査のときに社長さんと一緒に業績をすぐに確認し、タイムリーな話ができるところにメリットを実感しています。
 また、昨年から継続MASを導入した法人が1件あり、「期末までの業績予測」をお見せしたところ非常に喜ばれました。結果的に、予測した数字とほとんど変わらない業績になりました。

 ──茨城支部の研修講師もされているそうですね。

 須藤 研修委員の時、初級職員研修の講師を依頼され、今年で4回目になります。研修講師をすることで知識として頭に入っていたことを洗い出し、棚卸しをする良い機会になりました。今年6月には「はじめての書面添付実践研修会」、7月には「第6期いばらき『匠』養成塾」の研修講師も担当する予定です。

 ──事務所経営のモットーを教えてください。

須藤会員と洋子夫人

JR下館駅と大田郷駅のほぼ中間地点で開業
右は洋子夫人

 須藤 お客さまから信頼されることが、税理士としてもっとも大事なことだと思っています。実は、経営状態が厳しい関与先に対して「今日は本音で言わせてもらう。それが嫌なら別の税理士にしてもいい」と言って厳しい助言をしたこともあります。お互い本音で言い合える仲にならないと信頼関係を築くことはできません。ただ厳しいことを言うだけではなく、関与先に対しては「愛」という字のように、真ん中に心を込めて接するように心掛けています。
 ある会社の社長さんからは「須藤先生のところより安い顧問料のパンフレットが送られてきたよ。でも、いくら安くても替えない。これからも頼むよ」と言われたことがありました。これは本当に嬉しかった。今後も関与先との信頼関係を大切にしていきたいと思います。

(TKC出版 益子美咲)


須藤光一(すどう・こういち)会員
 平成18年8月税理士登録、同年9月TKC入会。茨城県内を中心に定期演奏会を行っている「下館マンドリンクラブ」に所属しギターを担当。58歳。
 ■須藤光一税理士事務所  茨城県筑西市西方56-1

(会報『TKC』平成23年7月号より転載)